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Google Cloud での SAP

Rodan + Fields、Google Cloud で SAP を使用してオンライン ショップのビジネス継続性を達成

2020年12月25日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2020 年 12 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

2002 年設立の Rodan + Fields は米国の大手スキンケア ブランドであり、その画期的な製品ラインナップは世界中の消費者から高い支持を得ています。同社は近頃、以前から使用している IT インフラストラクチャを見直し、もっと現代的でスケーラブルなソリューションが必要であるとの認識に達しました。具体的には、重要な SAP ワークロードの管理を簡素化したり、最新の IT サービスを利用したりでき、企業の成長に伴ってスケール可能なソリューションです。いくつかの選択肢を注意深く検討したのち、ミッション クリティカルな SAP ワークロードを Google Cloud に移行することに決めました。

Rodan + Fields はビジネス継続性を最重要課題と捉えており、それが Google Cloud に移行する決め手となりました。同社が求めていたのは、人為的ミスや、悪質行為、自然災害などの予測不能な、ビジネスに大きな損害をもたらす恐れのある事象から保護してくれるインフラストラクチャ ソリューションです。特に、以下のビジネス インフラストラクチャの 2 つの中核的な要素を保護することを目指し、Google Cloud と提携して、クラウドネイティブな自動復元機能をもつシステムの設計、実装に取り組みました。

  • SAP Hybris: オンライン ショッピングおよび顧客エクスペリエンスを管理するための e コマース プラットフォーム

  • SAP ERP: 商品の製造から流通まで、ロジスティクス全体を支援するリソース プランニング プラットフォーム

Google Cloud 上で SAP Hybris を使って、e コマースの復元力を高める

Rodan + Fields はオンライン ショッピング エクスペリエンスに SAP Hybris を活用していて、そのワークロードを保護してビジネスを継続することが最重要課題であると考えていました。コンサルタントによるアドバイス提供から販売までの全プロセスをオンラインで行っている同社のグローバル収益はすべて e コマースサイトに基づくため、24 時間年中無休で安定したサイト運営を行うことは絶対に欠かせない条件です。たとえば、製品の閲覧から、注文、サポートへの問い合わせまで、顧客がすばやくスムーズに行えるような環境を整えないと、会社の売上および評判に甚大な悪影響が及ぶリスクがあります。同社の IT チームは、重要な e コマース サービスのリスクを最小化するため、e コマース インフラストラクチャの主要なデータ保護要件を以下のように定義しました。

  • 高可用性(HA): 局所的な障害が発生した場合に、稼働時間を継続できるようにする

  • 障害復旧(DR): 大規模な障害(自然災害による地域的な影響など)が発生した場合に、迅速かつ自動的に復旧を行えるようにする

こうした要件に対応するため、Rodan + Fields と Google Cloud は共同で設計に取り組み、コンテナベースのアプリケーション管理、地理的に冗長なストレージといった特長を持つアーキテクチャを実装しました。

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SAP Hybris の高可用性および障害復旧

Rodan + Fields は、スケーラビリティおよびネイティブの高可用性という特長を兼ね備えた Google Kubernetes Engine(GKE)の導入を決めました。特にスケーラビリティについては、最大 15,000 ノードのクラスタに対応しており、これはクラウドベースの Kubernetes サービスとしては最多となります。GKE で Hybris アプリケーション スタックを実行すれば、ユーザー数に応じて Kubernetes クラスタを自由に拡張(または縮小)することが可能です。他のオンライン ショップと同様に、同社のサイトへのトラフィックは急激に増加する傾向があり、特に 1 か月のうち数日に集中します。GKE によって弾力性を高め、企業のビジネス要件に応じてインフラストラクチャのサイズを「適切に調整」できるようになった結果、コストを最小に抑えられるようになりました。

上の図に示すように、障害発生時に Hybris ポッドが自動的に(かつ直ちに)再デプロイされる仕組みになっているため、Hybris サービスの高可用性という要件も満たされます。さらに、GKE のリージョン クラスタリング機能を使って、ポッドをセカンダリ ゾーンで再デプロイすることもできるので、あるゾーンで障害が発生した場合でも、重要な e コマース インフラストラクチャの運営を継続して行えます。

クラウドで「障害復旧」と言うと、通常、特定のリージョンで予想外の障害が発生したときに復旧する能力を指します。この機能を持たせるため、Rodan + Fields では Hybris インフラストラクチャの以下の 3 つの主な要素を保護する DR 戦略を実行しました。

  • Hybris サービス: Rodan + Fields が Terraform の infrastructure-as-code(IaC)スクリプト開発を担当し、GKE ベースの Hybris サービス(およびその負荷分散)をセカンダリ リージョンで自動的に再生成、構成できるようにしました。

  • e コマース データベース: マルチリージョンの Cloud Storage に定期的にバックアップを格納するよう、Cloud SQL を構成しました。これにより、プライマリ リージョンが使用不可能になった場合でも、セカンダリ リージョンを使用できます。

  • e コマース アセット用の共有ファイル ストレージ(メディア ファイル、製品の画像など): ファイル システムのバックアップを、マルチリージョンの Cloud Storage に定期的に格納します。上述の要素と同様に、プライマリ リージョンが使用不可能になった場合でも、セカンダリ リージョンを使用できます。

このような DR 対策を取り入れて、自動化されたテストしやすいフェイルオーバー プロセスを実現しました。具体的には、Hybris を実行しているプライマリ リージョンが使用不可能になった場合、Terraform スクリプトによって Hybris サービス インフラストラクチャをセカンダリ リージョンに再デプロイしたうえで、関連するデータベースと共有ストレージをバックアップから復元するという仕組みになっています。

SAP ERP でロジスティクスの復元力を高める

Rodan + Fields のもう一つの要件は、製造や流通に関連したコストのかかる問題を防ぐため、ERP システムにクラウドネイティブのビジネス継続戦略を取り入れることです。同社は世界規模の運営プランニングとロジスティクス プロセスに対応する SAP ERP Central Component(ECC)を活用しています。SAP ECC は 24 時間年中無休で稼働することが前提であり、以下のような保護要件が重要となります。

  • バックアップ: 人為的ミスや悪質行為が発生した場合、影響を最小限にとどめるため、ECC を以前の状態に戻せるようにする。

  • 障害復旧: 大規模な障害(自然災害による地域的な影響など)が発生した場合に、速やかに復旧できるようにする。

これらの ECC 保護要件を満たすため、以下に示すように、VM スナップショット、SAP データベース レプリケーション、地理的に冗長なストレージなど、バックアップおよび DR の機能を備えたアーキテクチャを設計、実装しました。

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まず、永続ディスクのスナップショットを使用してバックアップを作成し、SAP ECC VM システムの状態(構成データなど)とデータディスクを復元できるようにしました。スナップショットは、事前に定義したポリシーに従って定期的に作成され、マルチリージョンの Cloud Storage に格納されます。人為的ミスやシステムエラーが発生した場合は、適切なスナップショットを使って、過去の正常な状態に迅速に復旧することが可能です。

Rodan + Fields はさらに、障害復旧に対応するため、ERP アプリケーション スタックの以下の主要素を保護できるような自動化された多層的アーキテクチャを実装しました。

  • SAP ECC VM システムの状態: バックアップ用と同じ VM スナップショットを使用します。スナップショットはマルチリージョンの Cloud Storage に格納されるため、プライマリ リージョンが使用不可能になった場合、セカンダリ リージョンで復元することが可能です。

  • 共有 NFS データ(SAP ECC VM に使用されるデータ): スケールアウトに対応した Filestore(旧称 Elastifile)の NFS ストレージ クラスタに格納され、セカンダリ リージョンのライブクラスタに非同期で複製されます。

Rodan + Fields は、Hybris の保護に使用した DR 戦略を補完する形で、SAP ECC 保護を目的とした、自動化されたテストしやすい DR プロセスを実装しました。同社の統合パートナーである NTT が Terraform スクリプトの作成を担当し、ERP DR プロセスを以下のように自動化しました。1)フェイルオーバー リージョンで新しい VM を自動作成する(永続ディスクのスナップショットを使用)、2)フェイルオーバー リージョンでセカンダリ Filestore クラスタを使用して、フェイルオーバーを自動的に実行する。GitHub に格納された Terraform スクリプトに、ERP サービスの再生成に必要な ECC 情報が含まれています。

クラウドを巡る今後の計画

Rodan + Fields は、SAP ワークロードを Google Cloud に移行したことで、現代的かつスケーラブルなインフラストラクチャを手に入れ、ビジネスを保護する強力なビジネス継続戦略を実現しました。ユーザー アクセスのピーク時は、Hybris インフラストラクチャを 10 分で 10 倍にスケールし、数百万単位の追加収入につなげています。さらに、このブログの公開日時点で、同社は Google Cloud に運用移行後の 1 年間、計画外の ERP 障害ゼロという記録を達成したことになります。

今後の計画もすでに進行中です。

同社はビジネス バリューをさらに増加させるため、引き続きワークフローのモダナイゼーションに取り組み、Google の以下のようなクラウドネイティブ機能やサービスを活用していきたいと考えています。

  • マシンイメージを使用して、保護アーキテクチャをさらに簡易化する

  • ERP データを BigQuery と統合し、データ ウェアハウス機能を強化する

Google Cloud で SAP をデプロイした Rodan + Fields の事例についてさらに詳しくお読みください。その他の Google Cloud への SAP 導入事例については、ソリューション ページおよび YouTube チャンネルをご覧ください。

-Google Cloud ソリューション エンジニアリング担当バイス プレジデント Hamidou Dia

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