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Google Cloud での SAP

ABAP SDK: SAP S/4HANA で Alphabet の AI / ML ソリューションを強化する

2024年2月15日
Google Cloud Japan Team

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※この投稿は米国時間 2024 年 2 月 2 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

昨年の SAP Sapphire において、Google の親会社である Alphabet は、Google Cloud で SAP S/4HANA システムを活用して、財務、サプライ チェーン、ロジスティクス、計画、配給などの重要な事業運営を管理することを明らかにしました。これにより、Alphabet は 500 億件を超えるトランザクションを統合して毎月数テラバイトのデータを処理できるようになり、Alphabet のグローバル オペレーションをより適切にサポートできるようになりました。

事業運営を拡張するために、Alphabet は ABAP SDK を使用して多くの Google Cloud のプロダクトとサービスを活用しています。Google Cloud の SAP エンジニアリング チームによって作成された ABAP SDK は、Google Cloud API を ABAP で正確に表現することで、SAP と Alphabet の社内システム間の統合ポイントを提供し、意思決定を促進する AI / ML ソリューションを強化し、ビジネス プロセスの自動化を実現します。ABAP SDK には、認証、セキュリティ、データのシリアル化などの機能が組み込まれているため、Alphabet のデベロッパーは Google Cloud のプロダクトやサービスとの統合がしやすくなり、価値創出までの時間を大幅に短縮できます。

ABAP SDK: 卓越したエンジニアリングのストーリー

社内での導入以来、ABAP SDK は財務、企業資産管理(IT、音声や動画、不動産)、サプライ チェーン(動脈物流や静脈物流を含む計画と調達から支払いまで)、ビジネス イベントの通知、例外アラート、ビジネス プロセスのモニタリング、データ ウェアハウジングのミッションクリティカルなアプリケーションを実行するために、Alphabet の多くの本番環境ユースケースで使用されてきました。セキュリティとスケーラビリティは Alphabet のビジネス ユーザーにとって重要な要件であり、ABAP SDK を使用することで迅速に実現できました。Alphabet は、SAP のビジネス トランザクション分析のコンテキストで ML 推論を実行し、ML 予測を明らかにするためにも ABAP SDK を使用しています。

本番環境で使用された Google Cloud による優れたユースケースをいくつか紹介しますので、ご参考ください。

  • Pub/Sub を使用して SAP から複数のサブスクライバーに情報をストリーミングする - SAP は、多くのマスターデータおよびトランザクション データ オブジェクトについて、信頼できる情報源です。SAP は、アプリケーション間のデータの整合性を確保するために他のアプリケーションに情報を送信します。1 秒未満の速度と信頼性の高いメッセージング サービスが鍵となります。Alphabet では、SAP のストリーミング Pub/Sub メッセージをさまざまなユースケースに使用しています。これには、信頼性の高い管理を提供するためのネットワーク機器のステータス、注文状況の追跡、在庫状況の追跡、トランザクションの送信ステータス、注文コメント、コマース ポータルから注文処理チームへの変更が含まれます。
  • オーケストレーションのために Pub/Sub を使用する - Alphabet では、API 経由で送信される一括データ処理をスケーリングするために、SAP 以外のエンタープライズ アプリケーションに SAP OData を使用して、SAP Application Interface Framework(AIF)に一括更新を送信しています。SAP AIF 非同期処理完了により、Google Cloud CPS メッセージが生成され、API クライアントが処理結果を確認できます。ABAP SDK は、ジョブ、ビジネス イベント、ログを含む多くのユースケースのオーケストレーションにおいて重要な役割を果たします。
  • 財務ドキュメントの多言語翻訳を自動化する - SAP S/4 は、複数の現地語による法定報告の信頼できる情報源です。Alphabet 境界システムは、英語で仕訳記入データを送信しますが、さまざまな財務ドキュメントのヘッダーと行テキストは、会社のコード定義に応じてその地域の言語で維持される必要があります。Alphabet は ABAP SDK を使用して Google 翻訳をシームレスに操作し、財務ドキュメントがシステムや法的要件を遵守するようサポートします。
  • 的確な意思決定のために Google Cloud で AI / ML モデルを統合する - Alphabet が SAP を使用して世界中の IT ハードウェアの注文の管理を始める前は、フルフィルメント チャネルでの注文のルーティングは時間のかかるプロセスでした。ルールベースの意思決定表は、場合によっては費用対効果の高い注文ルートを予測できますが、注文の大半は手作業によるレビューが必要で、非常に非効率的でした。この問題に対処するために、Alphabet エンジニアリング チームは BigQuery ML モデルを開発して、過去の手動による意思決定に基づいてルートを予測し、ABAP SDK を使用して BigQuery ML の予測結果をリアルタイムで読み込みました。この継続的な学習モデルによりルートをより的確に予測できるようになり、手作業によるレビューの必要性が減り、配送プロセスが自動化されました。
  • 費用の高い HANA ストレージから添付ファイルをオフロードする - Alphabet は、ABAP SDK を利用して SAP 環境内のすべてのアプリケーションの添付ファイル(ドキュメント)の管理の合理化と簡素化を行っています。必要なストレージ容量の規模が大きかったため、添付ドキュメントのストレージを Hana DB インメモリから低コストでセキュリティに優れた Cloud Storage バケットにオフロードすることが不可欠でした。ABAP SDK を使用することで、SAP のクリティカル ユーザー ジャーニー(CUJ)に影響を与えることなく、SAP アプリケーションから Cloud Storage への添付ファイルの読み書きをシームレスに行うことができました。ドキュメントへのエンドユーザーのアクセスは、標準的な Google Cloud セキュリティ モデルを活用し、SAP で与えられた承認に基づいて厳密に制御されます。

社内向けから一般提供へ

長年にわたり、多くのお客様から、SAP システムと Google Cloud サービスを簡単に統合する方法を求められてきました。昨年の ABAP SDK のリリースにより、2019 年から Alphabet の事業運営をサポートしているのと同じ ABAP SDK が Google Cloud のお客様に一般提供されるようになりました。SDK を無料でダウンロードし、いくつかの簡単な手順で利用を開始できます。

一般公開ドキュメントには製品の最新情報が含まれていますが、Google Cloud デベロッパー コミュニティ フォーラムへの協力や参加もお待ちしています。また、GitHub の公開リポジトリもご用意していますので、デベロッパーはサンプル プログラムやクイックスタートを開発環境にクローニングできます。ABAP SDK を使用してエンタープライズ ソリューションやビジネス ソリューションを作成するために皆様をサポートすることを楽しみにしています。

-Google、エンジニアリング マネージャー Sujan Gade

-Google、エンジニアリング テクニカル リーダー Richard Yang

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