メディア リーダーがジェネレーティブ AI を活用する 3 つの方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 4 月 19 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
デジタル時代は、メディアとエンターテイメントの従来の成功方程式を覆し、コンテンツの制作、配信、体験、収益化の方法を変える新しいテクノロジーを先導しています。視聴者は、消費するものに対してより多くの選択肢や柔軟性、力を持つようになっため、今日のメディア企業は、継続的な変革に取り組まなければ、遅れをとったり、通用しなくなったりする恐れがあります。
ジェネレーティブ AI により、新たな変革の波が押し寄せています。ジェネレーティブ AI は、自然言語でユーザーと対話し、記事の概要、レポート、その他のテキスト出力から、画像、動画、音声などのマルチモーダル コンテンツまで、まったく新しいデータを作成できる AI の一種です。そもそも、メディアとエンターテイメントは、コンテンツの作成や創造性に関わるものですが、この新しいテクノロジーは業界にとって何を意味するのでしょうか。
Google Cloud は、より効率的な制作方法からユーザー エクスペリエンスの向上に至るまで、クリエイティブ業界にとって大きなチャンスがあると考えています。もう少し詳しく見てみましょう。
Google Cloud を活用したメディア向け AI
Google Cloud は、長年にわたって大規模言語モデル(LLM)やその他のジェネレーティブ AI テクノロジーに取り組んできました。それらのテクノロジーは Document AI などのプロダクトに何年にもわたって影響を与え続けており、最近 Google は、企業がジェネレーティブ AI 基盤モデルにアクセスして調整できるようにする Vertex AI でのジェレネーティブ AI のサポートや、デベロッパーが数分で chatbot などのジェネレーティブ アプリを構築できるようにする Generative AI App Builder を発表しています。
私たちは、パーソナライズ、検索とレコメンデーション、予測分析などのために AI を活用して、世界中のメディア&エンターテイメント業界のお客様を支援してきました。そして今、ジェネレーティブ AI が増えつつあるなかで、メディア リーダー、技術者、クリエイターがパワフルな AI を仕事に活用することを検討し、準備するのに役立ついくつかのアイデアを持っています。
メディア業界のイノベーションに対する 3 つの視点
メディア&エンターテイメント業界における多様化や複雑化はとどまるところを知らず、企業は、オーバー ザ トップ(OTT)のサブスクリプションによるストリーミング サービス、24 時間地上波 TV チャンネル、スポーツ イベントのライブ配信、デジタル ジャーナリズム、従来の出版、ユーザー作成の短いソーシャル動画など、さまざまな分野に対応しています。メディア業界のこれらのセグメント間の境界はますます曖昧になっていますが、すべてに共通しているのは、直接的または間接的に収益化できる魅力的な視聴体験において、訴求力のあるコンテンツを提供することに重点を置いていることです。
これを踏まえ、メディア企業やエンターテイメント企業には、以下の 3 つの視点を通して、ジェネレーティブ AI のような革新的なテクノロジーの適用を検討することをおすすめします。
コンテンツの作成、制作、管理の改善
視聴体験の強化とパーソナライズ
収益化の向上
コンテンツの作成、制作、管理の改善
ジェネレーティブ AI は、コンテンツ作成におけるさまざまな側面を誰でも利用できるようにし、文章、イラスト、効果音、特殊効果などの作成において新しい可能性を切り開きます。最近のテクノロジーの成熟は非常に速いため、メディア業界の一部では、ジェネレーティブ AI がクリエイティブな職業の終焉を意味するのではないかという懸念が上がっています。しかし、その逆の可能性が高いと私たちは考えています。写真や録音、コンピュータで生成した画像が新しい創造性を可能にしたように(古いものを時代遅れにするのではなく)、ジェネレーティブ AI は新しい表現のかたちを可能にし、これまでの表現をより充実させる可能性を秘めているのです。
たとえば、ジャーナリストは、ジェネレーティブ AI を使用することで、大量の情報を合成、分析して調査を迅速化したり、記事コンテンツの下書きや要約の作成に役立てたりすることができます。映画やテレビのプロデューサーは、このテクノロジーを活用し、照明や色彩といったシーンの細部を迅速に調整したり加工したりできる新しい AI 対応インターフェースを使用して、制作後の編集プロセスを加速できます。放送局は、ジェネレーティブ AI を活用して、膨大なビデオ映像ライブラリを検索してアクセスできるようにして、より説得力のあるストーリーを伝えることができます。このように、潜在的なユースケースはまだまだ数多くあります。
ジェネレーティブ AI は、素晴らしいクリエイティブな職業を危うくするどころか、執筆者、アーティスト、編集者、その他多くの人々を退屈で平凡な日常的な作業から解放し、より多くの時間を創造的な活動に集中できるようにします。
視聴者体験の強化とパーソナライズ
今日、世界中のすべてのメディア企業では、ほとんどの消費者のスイッチング コストが非常に低いという現実に直面しています。そのため、加入者の解約や、視聴者が競合プラットフォームのコンテンツ エクスペリエンスに乗り換えるのを抑えるために、少ない負担で訴求力のある視聴体験を提供するための投資を行う必要に迫られています。
ジェネレーティブ AI は、メディア企業がデジタル コンテンツ プラットフォームにおいて、より高度な検索とレコメンデーションを可能にするなど、視聴者を引き付けて維持するのに役立ちます。自然言語から音声や動画コンテンツまで、高度なマルチモーダル機能を備えたジェネレーティブ AI は、よりパーソナライズされた視聴体験を実現するのに最適です。
消費者は、「選択のパラドックス」、つまり膨大な量のコンテンツ ライブラリがオンデマンドで提供されているストリーミング プラットフォームで、視聴したい興味深いコンテンツを見つけられないことに不満を抱くことがよくあります。近い将来、消費者が利用しているコンテンツ プラットフォームに質問するだけで、そのときの気分、特定の種類のシーン、俳優の組み合わせ、賞のノミネート、または事実上考えられるあらゆる質問を基に視聴したい番組を探せるようになることを想像してみてください。そして、これは氷山の一角にすぎません。視聴者が消費するパーソナライズされたコンテンツをキュレートし、組み合わせ、さらには作成することさえできるジェネレーティブ AI の可能性を想像してみてください。
収益化の向上
消費者によるコンテンツの消費が、従来の劇場や地上波 TV 番組から、さまざまなプラットフォーム、デバイス、コンテンツ タイプにわたるデジタル サービスまで拡大するなか、メディア企業は収益化の維持と向上という課題に直面しています。広告およびサブスクリプション モデルに対する従来の経済学的なアプローチでは、多くの場合、十分な ROI を提供できないことが証明されています。
ジェネレーティブ AI は、メディア企業が視聴体験の収益化を改善するのに役立つ可能性があります。また、前述のように、強化されたパーソナライゼーションは解約を抑制する役割を果たし、サブスクリプションや広告収入を維持したり拡大したりするのに役立ちます。さらに、ジェネレーティブ AI を活用することで、よりターゲットが絞られ、コンテキストに応じた、パーソナライズされた広告によって、広告収入をさらに高めることができます。その場ですぐに生成されるディスプレイ広告と動画広告を想像してみてください。それらの広告では、プロダクトの仕様、メッセージ、スタイル、色、その他無数の特徴がパーソナライズされるため、エンゲージメントが向上し、クリック率(CTR)が増え、結果として広告 CPM(インプレッション単価)が高まります。
今後の展望
ジェネレーティブ AI は、メディア企業がコンテンツの作成、エンゲージメント、収益化を根本的に変革する大きなチャンスを提供します。すでに魅力的なサービスが市場に出ていますが、今後さらに多くのサービスが提供されるでしょう。
Google Cloud はこれからも、AI に関する深い経験と専門知識を基に構築を継続し、メディア&エンターテイメント業界と協力しながら、有意義なビジネス成果をもたらす、訴求力がありアクセスしやすく、信頼性の高い責任ある AI ソリューションの開発に取り組んでいきます。世界中のメディア企業のお客様やエコシステム全体のパートナーの皆様とともに、未来を創造していくことを楽しみにしています。この革新的なトピックについて詳しくは、Google Cloud の AI & ビジネス ソリューション担当バイス プレジデントの Phil Moyer による「Debunking five generative AI misconceptions(ジェネレーティブ AI に関する 5 つの誤解を解く)」をご覧になるか、Google Cloud のジェネレーティブ AI 向け Trusted Tester Program をご確認ください。
- Google Cloud、メディア分析および AI 担当ソリューション リード Lluis Canet