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Google Maps Platform

Google Maps Platform で DX を推進し、カスタマーサービスの向上と業務効率化に挑戦する東京電力

2023年5月19日
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Google Maps Platform Team

今日の記事は、東京電力ホールディングスのグループ会社である東京電力エナジーパートナーにおいて、全社のデジタル トランスフォーメーション(DX)を推進する飯塚孝高氏(同社 DX 推進室チームリーダー)によるものです。飯塚氏は Google Maps Platform などを基盤に、カスタマーサービス部門の総合的な DX を推進。さらに良質なカスタマー体験の提供と業務の効率化という 2 つの目的を達成しながら、「みらい型インフラ企業」というビジョンの実現に邁進しています。(冒頭画像の提供元:東京電力ホールディングス公式インスタグラムアカウント

安全を最優先しながら責任を貫徹し、安心で快適なくらしのためにエネルギーの未来を切り拓く。東京電力ホールディングス株式会社はこの経営理念の下、お客さまの生活や企業の成長に不可欠なエネルギーとサービスを提供し続けています。私が所属している東京電力エナジーパートナー株式会社は、電気やガスの小売事業部門であり、お客さまのエネルギーの負担を軽減するご提案も含め、きめ細やかなサービスを展開しています。

DX でカスタマーサービスの充実と業務効率化を推進

お客さまとのつながりをより一層充実させるために、私たちは 2019 年 7 月に DX による改革に着手し、翌年 4 月には DX 推進室を正式に設置。サービスの高度化と業務の効率化を図るようになりました。従来、エネルギー産業はあまり変化のない分野でした。しかし業界全体を取り巻く環境は激変しています。電力の自由化や各社による新たなサービスの提供が始まり、カスタマーサービスには一層の品質が求められています。

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そこで私たちは、各種手続きやサポートなどのカスタマーサービスの分野で、より簡単で便利、質の高いカスタマー体験を提供しつつ、コールセンターのコストを抜本的に削減することを目指しました。これを実現すべく、お客さまから問い合わせを受付たり、サポートをさせていただく窓口業務では、ウェブに設置したフォームやチャット、自動音声などでもすぐに対応できるように「接点」をオムニチャネル化し、効率化を図りました。

以前のカスタマーサービスは、コールセンターをベースにしており、電話口でお伝えいただいた情報に基づいて、オペレータが所在地の検索や確認、必要なサポートの内容を確認する方法をとっていました。そのため場所を正確に把握するのに時間がかかる、あるいは適切なサポートをフレキシブルに提供するのが難しいという課題を抱えていました。これらの課題を解決できれば、お客さまにさらに寄り添った、温かみのあるサービスを提供できるようにもなります。

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取組み事例 ~オペレーション改革×データ利活用~

Google Maps Platform を選んだ理由

オムニチャネル化を軸とした DX を推進する際には「地点」と呼ばれる位置情報を正確に把握し、活用できるプラットフォームが何より重要になります。

そもそも弊社の業務では、電気やガスをどの建物に供給しているのかを管理することが必要不可欠です。カスタマーサポート業務でも、お客さまの居住地や契約内容を正確に識別することが求められます。地点情報はその根幹となりますし、情報の精度を高めなければ DX の推進自体が難しくなります。この根本的なニーズを満たすために導入したのが Google Maps Platform でした。ちなみに選定の際には、他社の製品との比較はあまり行いませんでした。私は Google マップをプライベートでも使っていましたし、入力した検索条件が完全でなくても、きちんと住所が表示され、ナビでも目的地をスムーズに設定できるといった機能性の高さを十分に認識していました。何より Google Maps Platform は、実用的で使いやすい API が豊富に揃っています。加えて、各 API の仕様や使い方、サンプルなどがわかりやすく文書化されています。また株式会社ゴーガ(以下、ゴーガ)さんのような優秀な開発パートナーがいることもわかりましたので、DX を推進するプロジェクトが始まったわずか半年後の 2020 年の年明けには、Google Maps Platform の導入を決断しました。Google Maps Platform は、私たちの業務の根幹となる地点情報を提供する基盤として、それだけ魅力的だったからです。

アジャイル型の開発で、わずか 3 か月で実装を完了

プロジェクトが始まるとゴーガさんと定期的に連絡を取りながら、開発作業や実装作業を進めていきました。Google Maps Platform 上で登録しなければならない地点情報は数千万か所にもおよびましたので、実装作業では API の仕様上限に達しないようにリクエストを分散したり、Google Cloud のサービスも活用しながら、長時間タスクを処理できるようにしたりする工夫は必要でした。

しかし、このような細かな点を除けば、開発段階で大きな問題は一切発生しませんでした。ゴーガさんは地図情報のスペシャリストで、さまざまな課題を解決してきた経験と知見を持っていますので、自分たちが思い描いた通りにスピード感を持って作業を進めることができました。事実、かくも大規模なプロジェクトでありながら、実装はわずか 3 か月で完了しました。

その要因としては、Google Maps Platform 自体の開発のしやすさが挙げられます。Google Maps Platform は先程述べたような特長に加え、アーキテクチャが合理的で、Google Cloud の各サービスとの連携も容易なので、どんなプロジェクトでも開発が迅速に進むと思われます。

Google Maps Platform の優れた特長は、アジャイル型の開発も後押ししました。通常、大規模なプロジェクトはウォーターフォール型で進める傾向が強く、ともすれば小回りが利かなくなりがちです。しかし私たちは少数精鋭の体制で、個々の課題ごとに開発やテスト、修正を行っていく方式を採用しました。まず私がガイドラインを提示し、ゴーガさんが開発を担当。随時、連絡を取りながらソリューションを確立し、フレキシブルに機能を加えていくことができました。Google Maps Platform 自体、アジャイル型の開発プロジェクトときわめて親和性が高いことは、大きな追い風になりました。

利便性と正確性の向上、新たな業務の可能性も視野に

現時点で、私たちは 2 種類の Google Maps Platform の API を活用しています。1 つ目の Places API は、お客さまにウェブ上の問い合わせフォームで住所をご入力いただいたりする際に、オートコンプリートで情報を推測して表示し、入力を容易にする機能を実現するために利用しています。オートコンプリート機能は、お客さまから連絡を受けたオペレーター側がお客さまの住所情報を伺い、社内のシステムに入力する際にも使われていますので、お客さまとオペレーターの双方にとって、利便性と正確性の向上に寄与しています。

2 つ目の Geocoding API は、オムニチャネル上のチャットや音声認識、ウェブフォームなどで入力される住所情報から、より正確な地点を特定するために利用しています。最も頻繁に利用している API ですね。これまで弊社の契約管理システムでは、電気やガスの供給地点に関する情報は、テキスト情報として保存されていました。しかし私たちは地点情報をすべて緯度経度に変換した上で、データベースに統合しました。この結果、テキスト情報をベースにしていた頃に比べて地点を検索する速さや正確性、検索の柔軟性は大きく向上しました。

なお、Places API は、法人向けの営業活動を拡充するための、サブプロジェクトでも活用しています。私たちは日本有数のインフラを備えていますが、そこには店舗の営業時間やサービス内容、利用者の口コミやレビューなどさまざまな情報が存在しています。現在は Places API でこれらの情報を分析しながら、エネルギーの活用に関する新たな提案をしたり、より多角的なサービスを展開したりする可能性を模索しています。

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TEPCO EP チャットサポート AI の画面例
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WEB フォームでのプレイスオートコンプリートの利用

従来に比べ 3 倍ものオペレーション効率の改善を実現

Google Maps Platform の導入は、大きな効果をあげました。

お客さまとの接点を段階的にオムニチャネル化し、新たなコンタクトセンターで受付業務ができるようになった結果、毎月、30 万件ほどの問い合わせに対応できるようになりました。これはコールセンターでオペレーターが電話対応していた頃に比べ、2 倍から 3 倍のオペレーション効率に相当します。カスタマー経験の向上と業務効率化の両面において、相当なインパクトをもたらしました。たとえば、オムニチャネルにはチャットを利用したサポートも含まれていますが、お客さまがチャットに入力した曖昧な住所情報から正しい地点を検索することによって、オペレーターは短時間でより正確な処理ができます。しかも電話での対応と異なり、一人のオペレーターが複数のチャットに同時に対応できるようになるので、効率も一段とアップするのです。

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オペレータ業務の画面例

一方、Google Maps Platform を使って地点情報を緯度経度に変換していく試みは、弊社の契約管理システムの中に残っていた不正確な情報や、誤って入力された情報を洗い出し、データベースの正確性を高める効果ももたらしました。地点情報の中には、緯度経度に変換した際に Geocoding の結果の精度があまり良くないものもありましたので、ゴーガ経由で Google Cloud に改善要望をあげることも実施しました。このように緯度経度で地点を把握できるようにしていくのは、業務の合理化に寄与します。

さらに述べれば、Google Maps Platform の導入は、私たちが進めているコールセンター業務のフルクラウド化においても一翼を担いました。従来はオンプレミスの環境で自社ビルにコールセンターの拠点をおいていましたが、コロナ下ではオペレーターが在宅で仕事をするケースも増えましたし、業務継続性を高めるべく拠点を分散する必要性も高まってきています。これらのニーズや課題に対応する上でも、Google Maps Platform は確実に役立っています。

「みらい型インフラ企業」のビジョン実現を目指して

私たちは Google Maps Platform が提供する位置情報の正確性や扱いやすさを十分に把握した上で導入に踏み切りましたが、検索精度の高さや使い勝手の良さは予想以上でした。そもそも Google は、まず一般のコンシューマー向けにサービスを開発・提供し、その機能を拡張・洗練させながらビジネス向けのソリューションとして提供していますので、その分だけ実用性が高いのだと思います。

私たちは Google の他の製品も活用していますので、このような特長は日々の業務でも幾度となく実感しています。たとえばデータ分析では Google Analytics に加え、昨年からは BigQueryVertex AILooker などの導入も進めています。特に Looker は Google Maps Platform と連携することで、さまざまな分析やビジネスの新たな分野への展開が可能です。

お客さまに選んでいただける会社になるべく、業務の根幹となる地点情報を扱う基盤として Google Maps Platform を導入し、オムニチャネルと DXを推進して、カスタマーサービスのオペレーション自体を変革する。この最初の段階に関しては、本当に大きな成果が得られました。しかも Google Maps Platform にはさまざまな可能性があり、導入する領域はどんどん広がっていくことでしょう。

私たちが追求しているカスタマーサービスの向上に終わりはありません。今後も Google Maps Platform を活用しながら、より良いカスタマー体験を提供し、「みらい型インフラ企業」というビジョンの実現に向かって、歩み続けていきたいと考えています。

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東京電力エナジーパートナー株式会社

東京電力エナジーパートナーは、東京電力グループの小売電気事業・ガス小売事業を担っています。お客さまのエネルギーの負担を軽減するご提案も含め、きめ細やかなサービスを展開しています。

インタビュイー

DX 推進室チームリーダー 飯塚 孝高氏

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