業界のリーダーたちが教えてくれるデータの未来
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 3 月 20 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
将来を見据えたビジネスを実現する最善の方法の一つが、データが豊富なプラットフォームを構築することであると、業界をリードするおよそ 3 分の 2 の組織が断言しています。McKinsey & Company の委託で実施された調査では、業界で最も成功を収める企業の特性の一つとして、データをビジネス上の一要素として捉えるだけでなく、「データこそがビジネスの柱である」として行動する点が取り上げられました。
これは皆様の企業にとってどのような意味を持つのでしょうか。また、競合の一歩先を行く手法と視点をチームで確立するにはどうすればよいのでしょうか。
分析アプリケーションとトランザクション アプリケーションのビジネス変革を推進するうえで、データが不可欠な要素であることに疑いの余地はありません。生成されたデータは AI を活用したビジネス インサイトを引き出す源となり、企業のリアルタイムでの優れた意思決定を助け、さらにデータドリブン アプリケーションの構築と運用の基礎となります。データ戦略を成功に導くうえで、3 つの重要な要因があることを Google Cloud のお客様が教えてくれました。リーダーたちは「オープン」かつ「インテリジェント」で「柔軟」なアーキテクチャを構築しようとしているのです。今回のブログでは、これらの言葉が意味すること、そしてこれらを自社に採り入れる方法についてご紹介します。
オープン アプローチ
緊密な連携の取れた閉鎖された IT 環境では、適切な制御によってより高い価値が創出されるという考えは一見論理的に思えます。しかし、テクノロジーのイノベーションの進むペースは、限られたテクノロジーから必要なソリューションを構築する企業の速さを上回っており、同じクラウドに保管された単一ソースから必要な全データを取得するという点においても、企業は後れを取っています。
最新の予測において、2021 年はマルチクラウドの年になると IDC は述べています*。製造業や小売業、医療など、あらゆる業界の企業は、自社とは異なる選択をする可能性の最も高いパートナーと連携することが求められるため、これは自然な流れと言えます。つまり、必要なデータ、使用するプロトコル、コラボレーションに使用するアプリケーションが多岐にわたることになるのです。CIO はインターフェース、テクノロジー スタック、クラウドのいずれかが複数になる事態に直面することになります。競争に勝つために、CIO はオープンかつ多様性に対応できる環境を構築する必要があります。
この多様性の影響を受けるのはクラウドやデータストアを選ぶ場面だけではなく、パートナーとのビジネスモデルを構築する自社の能力も同様です。エンタープライズ モダン スタックにおいてオープンソースは重要な考慮事項です。これまで繰り返し取り上げられてきたように、オープンソース ソフトウェアは世界を席巻できる可能性を秘めています。
革新性において競合を上回っている企業では、オープンソースに集中的に投資しているベンダーとも連携しています。オープンソースを早い段階から導入することで、業界のリーダーたちはエコシステムの拡大に貢献し、コミュニティがもたらすイノベーションからいち早くメリットを得ることができます。
2021 年にオープンソースを採り入れるには、コミュニティを立ち上げ、商用とオープンソース両方で複数のクラウド、ベンダー、ビジネスモデルから適切なものを選べるようになる必要があります。
以下のリンク先もぜひご覧ください。
Google Cloud が、ハイブリッド クラウドやマルチクラウドでお客様を成功に導く 3 つの方法(参照先)
BigQuery Omni - マルチクラウドの分析でデータを活用(参照先)
Google Open Source サイト(参照先)
よりインテリジェントなインサイト
「オープン」なマインドセットによって、人工知能などの重要なワークロードの運用化が加速されることにリーダーたちは気付くことになるでしょう。Gartner では次のような予測を立てています。「2025 年までには、AI オーケストレーション プラットフォームを実装している企業の 50% が、ベンダーの独自サービスとともにオープンソース テクノロジーを使用して最先端の AI 機能を提供するようになる。」** つまり、「インテリジェントな企業」になるうえで「オープン」であることが重要な要素になるのです。
しかし、そもそも「インテリジェント」とはどういう意味なのでしょうか。業界をリードする組織では 2 通りの方法で「インテリジェンス」が具現化されています。インテリジェンスには「オペレーション」に関するものと「イノベーション」に関するものがあります。
「オペレーショナル インテリジェンス」とは、インフラストラクチャの運用を最適化するための手法のことです。その好例の一つが Google の Active Assist です。このサービスは、ポリシー、コスト、ネットワーク、コンピューティング、データ、アプリケーション プラットフォームにおけるインテリジェンスを実現します。運用におけるインテリジェンスとは、「自己調整」、「自己回復」、「自己駆動」の各能力、そして運用上の効率性と信頼性を高めるアルゴリズムの使用を指すものです。
もう一つのインテリジェンスは、人工知能を使用してカスタマー エクスペリエンスを高め、インサイトの作成を加速するというものです。プロダクト推奨ソリューションは、消費者がより良いプロダクトを見つけるのに役立ちます。また、異常検出システムは、金融アナリストが不正行為を迅速に検出して顧客と自社の保護に有効です。
私はよく、「AI」とは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略というだけでなく、「Applied and Invisible(応用された見えない存在)」の略でもあるという冗談を言ったりします。これは、AI が最大限の効力を発揮するのは、ビジネスを支えるアプリケーションに適切に組み込まれ、各社のビジネス上の問題やユースケースに合わせて応用される時であるというお客様から長年学んできた気付きが元になっています。
ユーザーが前から知っていて気に入っているアプリケーションと人工知能を連携させれば、いずれは誰でも人工知能が利用できるようになる機会がやってきます。フランスの多国籍公益事業会社 Veolia(VEOEY)が、分析用自然言語インターフェースである Data QnA を使って技術者以外の従業員が迅速に回答を得られる環境を実現した事例をぜひご覧ください。
皆様のニーズとも共通点がある PWC の事例も見逃せません。この世界的なプロフェッショナル サービス組織では、これまで以上にアクセスしやすいデータを従業員に提供する取り組みの一環としてコネクテッド シートを使用しています。また、スプレッドシートのスマートフィルやスプレッドシート スマート クリーンアップなどの機能では、馴染みのあるアプリケーションにネイティブに組み込まれた Google AI を活用できます。
インテリジェンスの実現を目指す際は、AI とデータを念頭に作られた最新型のアプリケーションを見つけるようにしましょう。より多くの人が分析と人工知能を利用できることを目指したツールを見つけてください。より多くの人が馴染み深いアプリケーションで機械学習機能を利用できるようになることで、企業は短期間で「オープンかつインテリジェントな企業」へ変貌するという目標を達成できます。
以下のリンク先もぜひご覧ください。
豊富な選択肢
オープンかつインテリジェントなデータ アーキテクチャを構築する過程で、企業は摩擦に直面することがあります。組み合わせる必要のあるテクノロジーの中には、柔軟性や互換性に欠けた価格モデルを持つものもあるでしょう。また、小規模なパイロット評価ではうまく機能しても、急速に増加する現実のワークロードには対応できないテクノロジーもあるかもしれません。また、バッチレベルの作業では使えても、リアルタイムのニーズには対応できず、ニーズを満たすためにまったく異なるツールセットを導入することを余儀なくされるソリューションもあり得ます。
価格、規模、そして機能の豊富さについては妥協してはいけません。将来的に必要とされるエンタープライズ データ アーキテクチャのコンポーザビリティを実現できるかは、選択と柔軟性にかかっています。Gartner では、「2023 年までには組織の 60% が 3 つ以上の分析ソリューションからコンポーネントを統合し、インサイトを行動へとつなげる分析を活用したビジネス アプリケーションを構築するようになる」と予測されています。***
「道具の法則」に注意せよ
「コンポーザビリティ」のトレンドによって、どのベンダーと手を結ぶかという決断を迫られることになります。ベンダー 1 社だけでは望んでいる答えを得られないことに徐々に気付くことになるでしょう。あらゆるテクノロジーが利用でき、さまざまなビジネスモデルやデプロイ オプションが用意された、うまく連携のとれたエコシステムによって価値が創出されます。
業界のリーダーたちが特に注目しているのが「道具の法則に注意せよ」という言葉です。「道具の法則」は「ハンマーの法則」とも言われ、馴染みのある道具に依存しすぎる傾向を表した認知バイアスのことです。Abraham Maslow が 1966 年に述べているように、「ハンマーしか持っていなければすべてが釘のように見える」というものです。
業界のリーダーたちは自社のユースケースを注意深く研究します。そして、導入するシナリオのタイプ、各従業員カテゴリで向上できる生産性(いわゆるペルソナ)に注力します。また、もともと構築していたもの(いわゆる「センター オブ デザイン」)の効率性を最大化するために導入するソリューションのコア機能を調査します。
データ ウェアハウスとして機能するデータレイク ソリューションをベンダーが次に提案してきたとき、そのソリューションで自社が得るものと失うものは何かを尋ねてみましょう。こうしたテクノロジーの収束は実際に発生していますが、特定のソリューションの用途を本来の「センター オブ デザイン」の枠を超えて拡大させる場合、それに伴うトレードオフについて事前に評価しておく必要があります。ハンマーはさまざまなことに使えますが、その主な用途はあくまで釘を打つことだからです。また、ユースケースに応じて、同じプロダクトのライセンス取得方法を使い分ける場合もあります。たとえば、Google BigQuery の価格オプションを見てみましょう。同じデータ ウェアハウス製品をクエリ単位の課金(オンデマンド)、アロケーション(フラットレート)、両方の組み合わせという 3 つの異なる価格モデルで利用できます。また、Dataflow FlexRS の価格オプションなら、高度なスケジューリング手法を使ってバッチ処理コストを削減できます。
Unity も「オープン」かつ「インテリジェント」で「柔軟」なデータ アーキテクチャの実現に成功した組織の一つです。同社では Dataproc や Dataflow、BigQuery などのテクノロジーを組み合わせて使用しています。もう一つの好例が Vodafone です。同社では、あらゆるユーザーとデータに対応するデータ オーシャンのビジョンを推進しています。Google Cloud のこうしたお客様事例が、皆様のお役に立てば幸いです。「オープン」かつ「インテリジェント」で「柔軟」なアーキテクチャの実現を目指すうえでお手伝いできることがございましたら、ぜひ Google Cloud チームまでお問い合わせください。
以下のリンク先もぜひご覧ください。
*IDC のプレスリリース、IDC Expects 2021 to be the Year of Multi-Cloud as Global COVID-19 Pandemic Reaffirms Critical need for Business Agility、2020 年 3 月
**Gartner、Predicts 2021: Operational AI Infrastructure and Enabling AI Orchestration Platforms、Chirag Dekate 氏他、2020 年 12 月 2 日
***Gartner、Predicts 2021: Analytics, BI and Data Science Solutions - Pervasive, Democratized and Composable、Austin Kronz 氏他、2021 年 1 月 5 日
-Google Cloud データ分析担当責任者 Bruno Aziza