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データ分析

BigQuery を使用した高度なデータ分析でファッション業界を牽引する Arvind Fashions Ltd の取り組み

2023年2月9日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 2 月 2 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

インドの小売ファッション業界でよく知られている大手小売企業 Arvind Fashions Ltd を支柱として、Arvind Ltd はアパレル業界に 90 年以上携わってきました。

毎年のフランチャイズ増加でポートフォリオを拡大し続ける Arvind Fashions Ltd(以下「Arvind」)の成長には、目を見張るものがあります。その有力ブランドとしては、Tommy Hilfiger、Calvin Klein、Sephora、Arrow、U.S. Polo Assn.、Flying Machine などが挙げられます。

さらに将来の成長への確固たる礎を築くために、Arvind は収益性と顧客満足度の向上に照準を合わせたデジタル トランスフォーメーション(DX)の取り組みをスタートさせました。Arvind の進める DX の主目標は、既存のアプリケーションから価値を引き出し、新しいインサイトを獲得して、復元性の高いシステムによる堅牢なワークフローを構築することです。

インサイトとアナリティクスの課題解決に Google Cloud を使用することは、パンデミック中の生産性とコラボレーションのツール活用を皮切りに Google Cloud との関係を深めていた Arvind にとって当然の選択でした。

主な課題:

Arvind の企業アプリケーション資産は、SAP、Oracle POS、ロジスティクス管理システム、その他のアプリケーションの混合で構成されています。多種多様なアプリケーションの混在は、すべてのデータを集約して小売インサイトを引き出すことや、それと同時に商品の鮮度を維持することへの障壁となっていました。

たとえば、売上報告と在庫調整の既存プロセスは、自動および半自動のデスクトップ アプリケーションを組み合わせて運用されていました。このため、大量のデータを低レイテンシで処理するためのインフラストラクチャのスケーリングが困難でした。

組織全体のさまざまな関係者に一貫性あるインサイトを提供するデータ プラットフォームの構築には、部門にまたがるマスター データの同期化が不可欠です。

ソリューション アプローチ - 最新のデータ プラットフォーム

上述の課題を解決したうえ、データ分析プラットフォームの構築でさらなる改善を目指すには、いくつかの方法があります。たとえば、データレイクに基づくアプローチでユースケースごとのハイブリッド データ資産を構築するのも一つの方法です。どのようなアプローチを取るにしても、一定の原理に基づいてソリューションを定義することが重要です。

Arvind の事例では、データ プラットフォームは Variety(多様性)、Variability(可変性)、Velocity(速さ)、Volume(量)の 4V をサポートすべきというビジネスの原則が重視されました。この 4V の一つひとつがファッション小売業で成功するために重要なビジネスの回転軸となります。季節ごとに無数に展開されるファッション トレンドに対応するには SKU の Variety(多様性)が必要であり、特別な行事、週末、さまざまなお祝い事などで変動するショッピングの来店客数には Variability(可変性)をもって対応する必要があります。顧客ニーズへのアジャイルでレスポンシブな対応には Velocity(速さ)が不可欠であり、豊かなインサイトを引き出すにはデータの Volume(量)も重要です。

Google BigQuery を原動力とするデータ プラットフォームは、まさにこれらのニーズを満たすためにうってつけでした。

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ソリューション アーキテクチャ - 現在の機能と将来の展望

BigQuery は、Google Cloud におけるデータとアナリティクスのプラットフォームの母体となるものです。そのサーバーレス構成によって、データ エンジニアリング チームはインサイトとアナリティクスのみに注力できます。ストレージとコンピューティングが分離され、個別のスケーリングが可能な点も優れています。この BigQuery が、元データとキュレートされたデータの両データゾーンの処理に活用されました。

BigQuery のプロシージャなら、データ ウェアハウス内で元データをそのままの状態で処理できます。このプロシージャの活用により、データを低レイテンシで、しかも使い慣れた SQL で処理することが可能となりました。

もちろん、高度なアナリティクスとインサイトも忘れていません。Google Cloud はシンプルさをソリューション提供の基本原則としており、BigQuery の ML によるデータ分析が複雑な要件に対しても分析モデルを作成、トレーニング、デプロイできることは折り紙付きです。また、BigQuery とシームレスに統合する Looker Studio からもデータを活用できます。

当事例で構築されたデータ プラットフォームには、以下の基本原則と特長が反映されています。

  • シンプルなのにすべてを網羅 - データレイク、データ ウェアハウス、データ処理、データ活用、分析をはじめとする広範な技術的機能を備えたソリューションが必要でした。同時に、導入が簡単で運用中のオペレーションも実行できるシンプルさが必要でした。

  • アジリティ - 高品質の分析ユースケースには、膨大な時間と労力とスキルが必要になるのが一般的です。シンプルなソリューション構築と同時に、長期的なアジリティを確保するテクノロジー サービスの選択を徹底しました。

  • セキュリティ - インサイトのアナリティクスのオペレーションが民主化されてこそ、組織の真の成功が実現します。しかし、データを幅広いコミュニティで利用可能にしながらも、データ ガバナンスとセキュリティを確保する必要があります。

  • 容易なオペレーション - データ エンジニアリング チームは通常、インフラストラクチャの設定や運用管理に多くの時間を割きます。しかし、BigQuery を使用すれば、チームはインフラストラクチャ運用を心配せずに、アナリティクスにデータをフィードするパイプラインとモデルの構築により多くの時間を費やせます。

  • 費用 - ストレージとコンピューティングを切り離すことで、柔軟な価格設定が可能になりました。従量課金制モデルは、費用の管理において最適なソリューションです。

ビジネスへの影響

店舗単位の在庫データ(最大 800 店)の取り込み頻度が増加し、毎日行えるようになりました。データ量と処理量が増加しても、BigQuery はシームレスにスケーリングできています。また、新しいプロセスとダッシュボードの導入で、データの照合や根本原因の分析も可能になっています。オペレーション効率の改善は生産性の向上につながり、重要なプロセスの処理時間が短縮されました。

さまざまな照合処理で発生する誤差は、データ プラットフォームがもたらす機能性によって桁違いに激減し、減少率は 300 倍にも達しています。データ プラットフォームのおかげで、誤差を見つけるだけでなく、その根本原因の特定も可能になりました。

さらに、Arvind Fashions Ltd は、データ プラットフォームからのインサイトを活用して、既存する一部のビジネス プロセスとシステムの強化にも成功しています。

Arvind Fashions Ltd と Google Cloud の取り組みには、今後も大きな成果が期待されています。エッジデバイスへのアプリの追加、ウェアハウス アナリティクス、顧客データ用の高度プラットフォーム、デザインのライフサイクル予測、スタイル コードなど、キックオフの準備が整ったイニシアチブが目白押しです。



- Arvind Fashions Ltd、最高情報責任者 Satish Panchapakesan 氏
- Google Cloud、カスタマー エンジニア兼データ分析スペシャリスト Mandar Chaphalkar

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