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AI & 機械学習

Vertex AI Search の新しい生成 AI 機能とエンタープライズ対応機能

2023年11月13日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 11 月 3 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

Google が今年に入って発表し、8 月に一般提供を開始した Vertex AI Search は、情報検索と生成 AI に関する Google の豊富な経験を活用して、企業の顧客、従業員、その他の関係者が重要な情報を素早く見つけ、データ全体の隠れた情報を明らかにし、生産性を向上させることができるよう支援するものです。

Vertex AI Search の機能は簡単にセットアップできてすぐに使えるため、数週間から数か月間かかっていた検索アプリケーションの構築が、わずか数時間から数日で済むようになります。さらに、カスタム エンベディングを追加して大規模言語モデル(LLM)を活用できる機能により、Vertex AI Search は情報発見のための調整可能な検索拡張生成(RAG)システムを提供します。リリース以来、Vertex AI Search と Vertex AI Conversation はイントラネットやウェブサイトの検索からデジタル アシスタントまで、生成 AI とセマンティック検索を組み合わせた幅広い用途でご利用いただいています。

たとえば Forbes は最近、Vertex AI Search and Conversation を使用して作成した専用のニュース検索ツール、Adelaide のベータリリースを発表しました。このツールは、信頼性の高い Forbes の報道を基に、AI 主導でパーソナライズされたレコメンデーションと分析情報を訪問者に提供します。検索と会話に基づいた Adelaide のアプローチでは、過去 12 か月間にわたる信頼性の高い Forbes のコンテンツ アーカイブを調べ、継続的に学習し、個々の読者の好みに合わせます。それにより Forbes の世界中のオーディエンスは、簡単かつ直感的にコンテンツを見つけることができます。

「先を見据えて、AI がいかにして社会を良くするツールとなり、生活を向上させることができるかについて、オーディエンスに理解を深めてもらえるよう取り組んでいます」と語るのは、Forbes のチーフデジタル情報オフィサー、Vadim Supitskiy 氏です。「Adelaide は、Forbes のオーディエンスがニュースやメディアのコンテンツに関わる方法に革命を起こし、最初から最後まで、よりパーソナライズされた、示唆に富む体験を提供する仕組みになっています。」

GE Appliances は、家電製品の SmartHQ Assistant 機能に Vertex AI Search を利用しています。GE Appliances のクラウド プロダクトおよび IoT サービス担当シニア ディレクターの Adam Jones 氏は次のように述べています。「GE Appliances は常に、ユーザーの共感を得られる製品や体験を提供するよう努めています。今年の前半に SmartHQ Assistant 機能をロールアウトしたことで、ユーザーが家電製品をシームレスに操作できるようになりました。Vertex AI Search を活用して、パーソナライズされた体験をかつてないスピードと正確さで提供できるようになりました。」

この勢いをそのままに、Google は本日、カスタマイズ性の向上、グラウンディングとコンプライアンスの機能の拡張を発表します。これにより、お客様はさらに強力で安全な検索、チャット、パーソナライズされたレコメンデーションが可能なアプリケーションを開発できるようになります。

ビジネスニーズに合わせてカスタマイズされた検索

Google の新しい生成 AI 機能は、AI 主導の検索を細かくカスタマイズしたい組織(特に大企業)のニーズに応えます。

カスタマイズ可能な回答: カスタマイズ可能な回答(プレビュー版)により、Vertex AI Search では、要約や回答の生成に使用されるプロンプトをデベロッパーが設計し、提示される情報のスタイル、トーン、長さ、形式を設定できます。さらにユースケースによっては、デベロッパーがエンドユーザーにプロンプトの一部を公開することもできます。一般的には、「短い」、「長い」、「カジュアル」、「フォーマル」などの回答スタイルを提供するプルダウン オプションとして公開します。

たとえばユーザーが「Vertex AI Model Garden とは何ですか」と質問した場合、標準的な回答は次のようになります。

Vertex AI Model Garden は、ML モデルの発見、管理、デプロイのためのマネージド サービスです。Google やパートナー事業者から提供される事前トレーニング済みモデルに対する統合インターフェースと、モデルのカスタマイズ、調整、本番環境へのデプロイのためのツールが用意されています。

一方、「シンプル」にするよう求められた場合の応答は、次のように出力されるかもしれません。

Vertex AI Model Garden は、画像分類、自然言語処理、翻訳などのタスクのための ML モデルを見つけて使用する場所です。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/original_images/image1_FkS9u6o.gif

Vertex AI Search では、要約や回答を生成するために使用されるプロンプトをデベロッパーが設計し、提示される情報のスタイル、トーン、長さ、形式を設定できます。

検索の調整: 組織のドキュメントとデータを検索するアプリをデベロッパーが構築できるだけではありません。今月中に発表されるプレビュー版から、Vertex AI Search ではドキュメントのランキングの調整に組織独自のデータも使用できるようになるため、結果の正確性が高まります。Vertex AI Search なら、小規模なトレーニング セット(関連するドキュメント セグメントからの回答を含む 50~100 個の質問など)でも十分にランキングを上げ、検索体験を向上させることができます。

ベクトル検索と Vertex AI Embeddings による検索エンジンの DIY: エンべディングを使用した e コマースや広告配信などの複雑なユースケースのために、独自の検索、レコメンデーション、その他の生成 AI アプリケーションを構築することを考えているお客様に向けて、ベクトル検索と Vertex AI Embeddings を提供しています。

  • ベクトル検索(旧 Vertex Matching Engine): データをベクトル エンべディングとしてインデックス化し、最も関連性の高いエンべディングを大規模かつ瞬時に検索します。近似最近傍法(ANN)ともいう検索アルゴリズムを実行し、低レイテンシで高い再現率を実現しながら、高いスループットを処理できます。ベクトル検索を利用しやすくするために、Google は、デベロッパーがコーディングなしでインデックスの作成とデプロイを行えるよう、UI をアップデートしました。また、小規模なインデックスのインデックス時間を数時間から数分間に短縮し、フィルタリング機能とドキュメントを改善しました。ベクトル検索とすべての機能強化について詳しくはこちらをご覧ください。
  • Vertex AI Embeddings: Vertex AI は、外れ値検出、分類、コンテンツ モデレーション、セマンティック検索、レコメンデーションなどのユースケースに対応するために、複数のデータ モダリティにわたる一連のエンべディング モデルを提供しています。Vertex AI の Text Embeddings モデルと Multimodal Embeddings モデル(テキストと画像に対応)はどちらも一般提供されています。そしてこのたび、テキストと画像に加えて動画にも対応した、新しい Multimodal Embeddings モデルがプレビュー版で登場しました。この 3 つのデータ入力タイプはすべて同じセマンティック空間を共有できるため、動画ファイルを使用した新しいユースケースが可能になります。こうしたエンべディングは、ベクトル検索にアップロードして他の Vertex AI サービスや基盤モデルと組み合わせることで、予測 AI や生成 AI のアプリケーションを強化できます。

データに基づいて結果を出力する: グラウンディングの新たなオプション

ほとんどの企業が生成 AI に抱いている懸念として、基盤モデルでハルシネーションが発生しやすいのではないかというものがあります。生成 AI アプリで提示される結果について、組織はどのようにしてユーザーの信頼を築けばよいのでしょうか。Vertex AI Search には、組織がなじみのある情報に基づいたデータを利用できる多様なオプションがあります。

  • 企業データを基礎とする: 結果を自社データの事実に基づくものにし、結果とともに要約と引用を含めることで、組織は、ユーザーがさまざまなデータソースにわたって結果の確認と検証を行うことを可能にできます。この機能は Vertex AI Search の核となる構成要素であり、一般提供されています。デベロッパーは Vertex AI Connectors を通じて、多くの主要な企業向けアプリケーションにデータソースを拡張できます。
  • 特定の公開データセットを基礎とする: 多くの従業員が Wikipedia などのサードパーティの公開データセットに定期的にアクセスしたいと考えるような組織のために、Google は公開データセットでのグラウンディングもテストしています。この新しいオプションにより、デベロッパーは従業員や関係者のデータ検出ニーズに対応して幅広い情報源を活用し、同じデータについて複数の情報源を個別に検索していた時間と労力を削減できます。

現代的な企業向けのコンプライアンス第一の検索

企業データを検索するアプリケーションをデベロッパーが作成する際には、何よりもそのデータのセキュリティとプライバシーのことが頭に浮かびます。企業データ(Google Cloud に保存されている顧客データ、入力プロンプト、モデル出力、調整データを含む)は、組織独自の Google Cloud インスタンスに保存されます。Google が許可なくこのデータにアクセスしたり、このデータをモデルのトレーニングに使用したりすることはありません。また、HIPAAISO 27000 シリーズ、SOC-1/2/3 など、コンプライアンスとセキュリティのさまざまな基準に対応しています。こうした基準は、顧客データの透明性、アカウンタビリティ、機密性、完全性を確保するために役立ちます。

このたび、データに対する Google 社員の管理者権限についてお客様に知っていただくために、アクセスの透明性のサポートを拡大しました。Virtual Private Cloud Service Controls(VPC-SC)は、お客様の従業員によるデータへの侵入やデータの流出を防止します。また、お客様がコアコンテンツを独自の暗号鍵で暗号化できる顧客管理の暗号鍵(CMEK)をプレビュー版で公開しました。

Google Cloud は、最高水準のプライバシー、セキュリティ、コンプライアンスの機能により、お客様が生成 AI の可能性を最大限に活用できるよう支援しています。Google Cloud の目標は、システムの保護、透明性の確保、柔軟で常時利用可能なインフラストラクチャの提供によって信頼関係を築くとともに、そのすべての取り組みを AI に関する原則に基づいて行うことです。

組織の目的は、Google 品質の検索結果によって公開ウェブサイトの検索を強化すること、従業員が情報をいち早く見つけられるようにすること、パーソナライズされたレコメンデーションをユーザーに提供することなど、さまざまです。Vertex AI Search を利用すれば、Google の情報検索技術を最先端の生成 AI モデルと組み合わせて最大限に活用し、高度にカスタマイズ可能な生成検索とレコメンデーションのアプリケーションを簡単に構築できます。詳細については、Vertex AI Search のウェブページをご覧いただくか、Google Cloud セールスチームにお問い合わせください。

-Google Cloud プロダクト管理および AI 担当シニア ディレクター Lisa O'Malley

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