Gen App Builder の対話型 AI により生成 AI 搭載の chatbot と仮想エージェントを実現

※この投稿は米国時間 2023 年 7 月 19 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

エンタープライズ検索アプリと対話型 chatbot は、最も広く利用可能な生成 AI のユースケースといえます。Google は、Generative AI App Builder（Gen App Builder）の開発にあたり、これらの機能を組み合わせてデベロッパーが使いやすい一つのプロダクトとすることを目指しました。同時に達成すべき目標として、洗練された基礎モデルの利用を可能にすること、独自のデータを活用してモデルを作成する際の複雑さを取り除くこと、アプリへのモデルの実装を効率化すること、そしてエンタープライズ対応の信頼性、監査可能性、セキュリティ、データ ガバナンスを実現することを掲げました。

このたび、許可リストに登録されたお客様、または Google Cloud の営業担当者へのリクエストによりアクセスが承認されたお客様を対象に、Gen App Builder の対話型 AI を一般提供（GA）することを発表いたしました。

先月行った Gen App Builder の Enterprise Search の 一般提供開始の発表に続き、今回のニュースにより、ML 経験のないデベロッパーでも、カスタマー サポートや従業員サポート、コンシェルジュ支援（パーソナライズされたプロダクトの特定、旅行計画、銀行業務など）、タスクの自動化（食事の注文、予約、e コマースなど）、デバイス制御（会話型マニュアル、車内アシスタントなど）などに対応する、AI を搭載した chatbot や会話体験を簡単に構築できるようになります。Gen App Builder の対話型 AI により、許可リストに登録されたお客様にご利用いただける機能は次のとおりです。

• 生成 AI エージェント機能を使用して、質問に正確に回答できる、人間らしい自然な chatbot や音声 bot を構築できます。ウェブサイト、Q＆A リスト、マニュアル、ドメイン全体、その他ウェブ上のドキュメントや Google Cloud に安全に保存されているドキュメントなど、組織のデータを参照するだけでこの機能を利用できます。Gen App Builder の対話型 AI は、ノーコードでのセットアップなど、使いやすいツールを備えているため、これまで何か月もかかっていた作業を数時間から数日で、はるかに高い品質で完了できます。  

• AI エージェントの出力に引用を含めたり、お客様が特定の商品について質問した後にプロダクトのページを表示するなど、文脈的に会話に関連するウェブページを自動的に読み込むよう構成できます。

• 生成ツールを使用すると、基礎モデルを簡単に利用でき、これまでの会話またはエージェントの状態に基づき、動的な情報を取り込む機能を含め、プロンプトを完全に制御できます。お客様はこの機能を使用して、コンテンツの生成、要約の作成、複雑な NLU 処理、複数の LLM コールの連結などを行うことができます。

• 生成フォールバックにより、ユーザーの意図と一致するインテントがない場面にも適切に対処でき、質問が会社のサイトやデータ以外のトピックに関わる場合でも、完全な生成出力を使用してカスタマイズされた、共感を呼ぶ出力を提示できます。

これらの新機能は Dialogflow と完全に統合されているため、お客様は、これらの機能を既存のエージェントに追加でき、完全に確定的な機能と生成機能を混在させることができます。

新しい生成機能に加え、一般的な対話型 AI タスクと業種特有のユースケースをデプロイするのに必要な時間と労力を削減するため、事前構築済みのコンポーネントも追加しました。これらのコンポーネントは、多くのご要望をいただいた、数値入力とクレジット カードの CVV 入力を収集するための機能を含む、仮想エージェントとインテグレーションのためにすぐに利用できるテンプレートを備えています。最初のセットは一般提供されており、2023 年内にさらに多くのセットがリリースされる予定です。

Google は、お客様がこれまでに Gen App Builder の pre-GA（一般提供前）リリースを活用して達成された革新的な成果に関して嬉しく思っています。たとえば、Orange France は最近、フランス語の生成 AI 対応 chatbot である Orange Bot を発表しました。同社のウェブサイトに組み込まれた Orange Bot は、同社が持つサポートに関する知識を利用して、顧客の質問に対する的確かつ迅速な回答を独自に生成しており、対話型検索エンジンおよび「サポートとお問い合わせ」のウェブサイトへの入口の役割を果たしています。この chatbot は、顧客との関係を変革し、管理費用を最適化して、これまで以上にユーザーに配慮したサービスを提供するという長期的な事業目標に基づき開発されました。

「Gen App Builder を使うことで、Orange Bot を着想から本番稼働までわずか 3 週間で実現できました」と Orange France のデータ、AI、自動化担当バイス プレジデントの Médéric Chomel 氏は語っています。同氏はまた、「SIM カードの有効化、請求先住所の変更、Orange TV の保護者による使用制限の管理の方法など、お客様が求めている情報を迅速かつ正確に提供できるようになりました。また、Orange Bot は対話型検索エンジンとして、また『サポートとお問い合わせ』ページへの入口としても機能しています。開始当初から、年間 1,500 万件のやり取りを管理できると期待しています」とも述べています。

開発者は、これらの機能により、細々した作業による遅延や注意散漫に悩まされることなく、サービスの設計と生成アプリの迅速なデプロイに集中できます。このブログ投稿では、Gen App Builder の対話型 AI を活用して、AI 搭載型の魅力的なサービスを実現する方法をご紹介します。

次世代の会話型アプリの構想

chatbot は何年も前から存在していますが、まずは以下の動画を見ながら、生成 AI がどのように世の中を変えるのかを想像してみましょう。各組織は、Gen App Builder の対話型 AI を使用することで、やり取りをオーケストレートし、ユーザーをタスクに集中させて生産性の高い状態に保ちながら、必要に応じて話題を切り替えることのできる自由な会話を実現できます。

新しいスマートフォンを探している買い物客が、チャット アシスタントを導入しているウェブサイトにアクセスしたとします。この買い物客はまず、アシスタントに新しい Google スマートフォンに乗り換えたいと伝えます。

ウェブサイトが直ちに下取りオプションなどの関連コンテンツを案内し、アシスタントは、買い物客に Google Pixel Fold、Google Pixel 7、または Google Pixel 7 Pro を提案して、これらが最新の Google スマートフォンであることを知らせます。興味を持った買い物客は、これらのスマートフォンのうち、白のものがあるのはどれかをたずね、アシスタントは Google Pixel 7 と Google Pixel 7 Pro の両方で「Snow」と呼ばれる色のものが入手可能であると答えます。

ユーザーが質問するときは、テキスト オートコンプリート機能により、正確な回答が得られるよう適切な質問文を作成しやすくなっています。たとえば、ユーザーが「7 Pro との違い」と入力し始めた場合、アシスタントは「Google Pixel 7 Pro と現在使っているデバイスとの違いは何か？」と提案してくれます。買い物客がこの提案を受け入れると、アシスタントは、画像と簡単な概要を含む多様な比較表を生成してくれます。

ユーザーが、現在使っているデバイスとは異なり、Google Pixel 7 Pro には望遠レンズを搭載した 4,800 万画素のカメラが実装されていることに注目し、比較表を掘り下げてみたいと思ったとしましょう。買い物客が「望遠レンズとは何か？」とたずねると、アシスタントが「望遠レンズとは、一般的にレンズ焦点距離が 70 mm を超えるレンズを指し、遠くの被写体を拡大するのに適しており、一般的に野生動物、スポーツ、ポートレートに使用されます」と説明します。

アシスタントがウェブサイトのコンテンツから以前の回答を生成したのに対し、レンズの質問の場合、回答には組織のサイトに含まれていない情報が使用されます。Gen App Builder では、この例のように、会社のデータに基づいた回答のみを表示するのか、それとも、そこに回答が見つからない場合に、基礎となるモデルの一般的情報や外部情報源を基に得られる回答を許可するのかを、組織が選択できます。この柔軟性により、私たちが bot の回答として想定している「申し訳ありませんが、お答えできません」というよりも優れた回答を提示できます。こういった種類の回答には、必要に応じて引用が含まれるため、ユーザーは、回答を生成するためにどの情報源のコンテンツが使用されたかを知ることができます。

Google Pixel 7 Pro が乗り換え機種として魅力的であることに納得した買い物客は、次に現在のデバイスの下取り価格について質問します。アシスタントは、情報源としてウェブサイトのコンテンツに立ち戻り、対話形式のビジュアル入力に沿って回答し、ユーザーが現在使用中のスマートフォンの状態が下取り価格にどのように影響するかを評価できるよう支援します。

アシスタントは、返品ポリシーに関する質問に答えた後、買い物客が購入する気持ちになっている可能性があることを認識し、ショッピング カートを作成するかどうかをたずねます。ユーザーが確認すると、サイトがすぐにチェックアウト プロセスに切り替わります。その後、アシスタントは、買い物客に何か他に必要なものはないかとたずね、買い物客は、ビジネス アカウントへの切り替えに興味があると答えます。この答えがきっかけとなり、アシスタントが人間のエージェントを会話に参加させます。これはあらかじめ定義した処理パスをいかにシームレスに生成 AI を主体としたやり取りに組み込めるかを示す一例です。

人間のエージェントに交替後も、買物客は人間のエージェントに再度状況を伝える必要がなく、負担を感じることはありません。Gen App Builder には Agent Assist 機能があり、買い物客が質問を続けると、これまでのやり取りを要約して回答を提示します。その結果、AI アシスタントから人間のエージェントへの引き継ぎがスムーズに行われ、買い物客は自身の懸念への答えを効率よく得たうえで購入を完了できます。

一連の流れを通して、顧客は人間とのようなやり取りを行え、摩擦の少ない形で情報を得て行動に移ることができ、必要に応じて会話相手を柔軟に切り替えることもできます。こういった機能はすべて、前の世代の chatbot の機能をはるかに超えるものです。

Gen App Builder による chatbot と仮想エージェントの構築

前の例で示したように、Gen App Builder は確定的な、インテントに基づく処理（ユーザーの発言を事前定義されたインテントに対応付けることで、事前設計された会話の流れに従うような処理）だけでなく、会話の範囲を拡大する生成的処理（スマートフォンのカメラに関する質問に対応したり、比較表を生成するような処理）も実行できます。

Generative AI App Builder の会話オーケストレーションでは、bot にこういった種類のタスクフローを追加するための複数の方法が用意されており、順を追って設定をすることができます。たとえば、各組織は、認証や注文状況の確認などの一般的なタスクに対応するために、事前構築されたフローを使用できます。デベロッパーは、ワンクリックでこれらのフローをキャンバスに追加し、基本的なフォームに記入して有効化できます。ビジネス ロジックを視覚化し、事前構築されたタスクとカスタムタスクを取り込むこともできます。AI がユーザーの会話を案内するため、グラフはシンプルなものになります。

英語のサポートは現在許可リスト登録ユーザーに一般提供されており、さらにデンマーク語、オランダ語、フランス語、ドイツ語、ヒンディー語、イタリア語、ブラジル ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語といった言語でのサポートがプレビュー版として提供されています。

また、Google は、Gen App Builder の Enterprise Search にも新機能を追加し続けており、マルチモーダル画像検索がプレビューで利用できるようになりました。マルチモーダル検索では、テキスト入力や画像入力を組み合わせて検索することで、関連する画像を見つけることができます。Gen App Builder の Enterprise Search と対話型 AI 機能により、各組織は、一般的な生成 AI 利用方法に沿って生成 AI の技術をますます安全かつ効率よく利用できるようになっており、Google も、こういったユースケースがお客様に価値をもたらしていることを嬉しく思っています。

会話を開始

わずか数ステップで chatbot を設定することから、高度なカスタマイズや、深みのある会話フローの作成にいたるまで、Gen App Builder の対話型 AI は、ML の専門知識を持つあらゆるレベルのデベロッパーのお役に立ち、従業員と顧客の両方に対しより豊かな体験を簡単に提供するお手伝いをいたします。まずは、Gen App Builder と Google Cloud の対話型 AI テクノロジーの詳細をご覧ください。Gen App Builder の対話型 AI をお試しいただく場合は、営業担当者までご連絡ください。