ジェネレーティブ AI によるビジネスの支援
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 6 月 8 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
ジェネレーティブ AI に不慣れでもあわてることはありません。新しいビジネスツールと同様に、最初はジェネレーティブ AI に近寄りがたい印象があるかもしれません。また、あらゆる新しいテクノロジーと同様に、使い始める前には基本的な問いかけが必要です。つまり、どのビジネス課題を解決しようとしているのか、成功を測る基準は何か、チームが変化に対応できる態勢となっているか、といった問いです。
Google Cloud では、こういった面でお客様を支援する体制を整えており、本日は、組織の迅速な AI 導入の支援を目的としたさまざまな仕組みを発表します。Google は、Google のテクノロジーへの幅広いアクセス、教育とコンサルティングの多彩なプログラム、特定業界のユースケース向けのブループリント、成長し続けるパートナー エコシステムにより、お客様とそのチームがジェネレーティブ AI を理解し、デプロイし、構築を行えるようサポートします。
ジェネレーティブ AI による変革の事例
Google は、このテクノロジーを活用してすでに変革を進めているお客様の事例に刺激を受けています。この数週間、Google は Character.ai、Deutsche Bank、Uber、Wendy’s といったお客様の事例を紹介してきました。今週はさらに、次のお客様の成功事例をご紹介します。
GA Telesis は、グローバルな航空機部品サプライヤーです。ジェネレーティブ AI を使用して年間数十万件の部品注文をさばき、これまで以上に迅速、効果的に顧客に対応できるようになっています。
Mayo Clinic は、Generative AI App Builder における Enerprise Search の先行ユーザーです。Google の各種サービスを使用して、医師と研究者が必要な情報を容易に検索でき、最終的に患者の治療結果を改善できるようにする予定です。
PhotoRoom は、e コマース ビジネス向けの AI ベースの写真編集アプリです。大規模な AI モデルのスケーリングにおける Google の専門知識を活用して、これまで以上に多くのビジネスにスタジオ品質の画像を提供しています。
Priceline は、そのビジネス全体にジェネレーティブ AI を使用して、顧客には優れた旅行体験を、従業員にはワークフローの改善を提供する予定です。
Google プロダクトへのアクセスの拡大
Google は過去 4 か月にわたり、新しい水準のイノベーションを可能にする各種テクノロジーを発表してきました。その例を以下に挙げます。
Google の ML 開発プラットフォームである Vertex AI におけるジェネレーティブ AI のサポート。これには、Google とそのパートナーが提供する多彩なモデルの検索、発見、操作を 1 か所で行える Model Garden や、モデルの調整とカスタマイズ用の使いやすいツールを提供する Generative AI Studio などが含まれ、これらすべてがエンタープライズ グレードのデータ セキュリティ制御を備えています。
Generative AI App Builder は、Enerprise Search と次世代 chatbot を提供します。ビジネス プロセスの自動化と魅力的なカスタマー エクスペリエンスの構築に効果的です。
Duet AI for Google Cloudは、コンテキストに応じたコードの作成、レビュー、検査などでクラウド ユーザーを支援します。
新しい基盤モデル。コードを生成する Codey、テキストから画像を生成する Imagen、Google の最先端スピーチモデル Chirp などがあり、ソフトウェア チームの能力と生産性を飛躍的に引き上げます。
Vertex AI の各種デベロッパー ツール。テキストや画像のセマンティック(意味的)な理解に基づいてデベロッパーが洗練されたアプリケーションを構築できるようにする Text Embeddings API や、人間からのフィードバックを取り込み、モデルのパフォーマンスを詳しくカスタマイズして改善する「人間からのフィードバックを用いた強化学習」(RLHF)などがあります。
分野固有の各種モデル。ライフサイエンスとヘルスケア向けの Med PaLM や、サイバーセキュリティを扱う Sec-PaLM などがあります。これらは、業界固有のデータでトレーニングされており、企業や行政機関がセキュリティで保護された安全な条件下でそれぞれの専用 AI ツールを構築できるようにします。
創造性と生産性を引き上げる常時稼働のコラボレーターを提供する Duet AI for Google Workspace。
この流れの中で、Google は本日、Vertex AI でのジェネレーティブ AI のサポートを一般提供することをお知らせします。これに併せて、Model Garden では Google とそのパートナーが用意した 60 点を超える基盤モデルの提供が開始され、お客様はユースケースに合わせてコストと機能を最適化するために最良のモデルを選択できるようになります。また、Generative AI Studio には、本番環境におけるモデルの調整、カスタマイズ、デプロイ、ガバナンスのための各種ツールが幅広く用意されています。
さらに、Duet AI for Google Workspace Enterprise の予約購入の受付が開始されました。このツールは、ジェネレーティブ AI の機能をWorkspace 全体に埋め込み、文章の作成やビジュアル表現、データの整理、ワークフローの迅速化、会議機能の強化などを実現します。Duet AI for Google Workspace Enterprise には、Workspace Labs に登録されている数千の組織と数十万人のユーザーからのフィードバックが反映されています。このツールは、今年中に Workspace の全販売地域で一般提供が開始される見込みです。
ジェネレーティブ AI の新しいコンサルティング サービスとリソース
本日、Google は、お客様による迅速なジェネレーティブ AI の導入を支援する新たな 3 種類の方法も発表します。
第 1 の方法として、さまざまなユーザー層を対象とした無償の学習過程の提供を Google Cloud コンサルティングで開始します。大手グローバル企業の経営層にとって、このようなきめの細かいトレーニングは、責任ある開発とデプロイを維持しながら、ジェネレーティブ AI の革新的な利点をすべて実現するうえで効果的です。さらに、Google Cloud のお客様とパートナーおよびデベロッパー コミュニティの技術者に対象を広げ、オンデマンドの学習パスと認定資格プログラムもいくつか用意します。
第 2 の方法として、お客様がその AI デプロイを活用できるように、4 種類の新しいジェネレーティブ AI コンサルティング サービスを開始します。これらのサービスは、AI で強化した検索エンジンとアシスタント機能によって企業データの傾向を発見すること、大量のコンテンツから情報を要約すること、長時間を要する高コストなビジネス プロセスを自動化すること、パーソナライズを進めた新しいコンテンツを作成することを、お客様が AI を使用して実現できるように支援します。お客様ご自身のデータを使用して、組織の実際のユースケースに合った形で、本番環境対応の AI ソリューションの実践的な経験を得ることができます。ビジネスに適したジェネレーティブ AI ソリューションを組織が短時間で実装できるように設計されています。
最後の第 3 の方法として、新たなサンプル リファレンス アーキテクチャとビジネス向けワークフローのセットを初めて提供します。これらはさまざまなビジネス プロセスや業種固有のユースケースに適用できます。ジェネレーティブ AI の作業を直ちに開始できるように設計された最初のブループリントは、デベロッパーの効率向上やマーケティングでのコンテンツ制作の迅速化など、ビジネス プロセス向けフレームワークを扱い、金融サービス、小売、自動車、ヘルスケア、メディアなどにおける業種固有のユースケースに対応します。
活気に満ちた AI エコシステム
Google Cloud は、世界中に 10 万社を超えるパートナーを擁し、堅牢で革新的なエコシステムを提供してお客様をサポートしています。Google は、最もオープンな大規模クラウド プロバイダであるよう取り組んでおり、AI スタックの各レイヤで毎年新たなパートナーを追加し続けています。
Google Cloud には、ジェネレーティブ AI 開発のリーダー的ツール プロバイダが集結して、ジェネレーティブ AI アプリケーションを構築するためのさまざまなオプションをお客様に提供しています。このようなプロバイダとして、Anyscale、Gretel、Labelbox、Snorkel AI、Weights & Biases などがあります。また、世界で広く採用されているプラットフォームとアプリケーションの多くが、Google Cloud AI を使用してそのユーザーに新たな機能を提供しています。例として、Aible、Box、Canva、Dialpad、Gitlab、Jasper、SAP、UKGなどがあります。ここ数週間のうちに、世界最大規模のコンサルティング会社も Google Cloud AI を扱う専門業務の開始を発表しています。これには、Capgemini、Cognizant、Deloitte、KPMG、TCS、Wipro が含まれます。これらのコンサルティング会社全体で、今後 Google Cloud AI の専門家が 15 万人以上育成される見込みです。
Google は、次のような新しい、あるいは拡大されたパートナーシップをもとに、企業と行政機関にジェネレーティブ AI を提供する力を高め、この勢いを活かしていけることを誇りに思います。
DataStax は、Google Cloud 上限定で Astra DB にベクトル検索を追加しています。これにより、大規模言語モデル(LLM)などの AI ユースケースを使用する AI アプリケーションと AI エージェント向けに長期メモリを提供します。
Neo4j は、Vertex AI と広く採用されている同社のグラフ データベース プラットフォームとの統合を開始しています。これによって、企業はジェネレーティブ AI モデルのパフォーマンスの向上やパターン識別の改善、ユーザーは自然言語によるデータ探索を実現できます。
Twilio は、同社の売れ筋顧客エンゲージメント アプリケーションにジェネレーティブ AI を導入しています。Vertex AI を使用して、充実した顧客プロファイル、とるべきアクションに関するパーソナライズされた推奨案、コールのサマリーや分析データの作成などによってコンタクト センターのエージェントを支援できます。
Typeface は、エンタープライズ コンテンツ制作向けのジェネレーティブ AI プラットフォームです。Google Cloud の AI 言語モデルスイートを使用して、高度にカスタマイズしたデータドリブンのコンテンツを複数のマーケティング チャネルにわたって迅速に作成できるようにしています。
この AI 時代、企業は、責任ある行動との均衡を保ちつつ、野心的な考えを推し進めようとしています。Google Cloud に求められるのは、革新的なプロダクトによる大胆な展望と、業界にとって変革的なユースケースを提供することであり、AI イノベーションに向けたオープンなエコシステムを構築し続けることです。Google が行うことすべての推進力となっているのは、安全で責任のある AI 運用へのコミットメントです。それは、モデルをどのように開発するか、お客様とどのように協力してリスクを評価するか、使用する人がデータを全面的に制御し続けるためにどのように手法全体を構築するかなど、さまざまな側面にわたっています。Google は多くの組織から AI パートナーとして選ばれていることを誇りに思うと同時に、新しいお客様の AI 導入の過程を支援できることを楽しみにしています。
- グローバル Google Cloud コンサルティング、バイス プレジデント Lee Moore