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AI & 機械学習

MLB: メジャーリーグは AI をどのようにタイムリーなスコア公開に役立てているのか

2024年7月22日
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Rob Engel

VP of Software Engineering, MLB

AI を活用し、MLB アプリ、MLB 全 30 球団、そして放送各局への情報提供など、すべての試合に関する新たなインサイトを提供しています。

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※この投稿は米国時間 2024 年 6月 14 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

野球の打撃では、打者はバッターボックスに入ると、ピッチャーへじっと目を向けて、良い投球を待ちます。そして、最適なタイミングでバットを振り抜ければ、打ったボールははるか遠くへと飛び、ヒットやホームランに繋がります。

この、ヒットやホームランを打てるか否かは、野球選手が備えるパワーや並外れた運動能力、動体視力、あるいは運だけに依るものではありません。現在の野球では、選手のスキルに加えて、膨大なデータの分析が欠かせない要素となっています。選手は、これらを準備しておくことで、チャンスに対する素早い対応ができるようになるのです。

Major League Baseball(MLB)という組織は、打席に立つバッターと同様に、勝利への情熱を忘れずに、運営されています。私たちは長い時間をかけて適切なインフラを構築し、少しずつ機能とイノベーションを重ねてきました。その結果、次の大きなチャンスが訪れたときに、MLB はそのチャンスを掴み、勝利につながる動きができるようになりました。

そして次の打席に立つのは AI なのです、そのための準備も整っています。

Statcast は、試合中にグラウンドで起こるあらゆること捉えるためのシステムです。MLB は、このシステムを過去 10 年間にわたって構築してきました。2015 年に導入し、2020 年に Google Cloud に移行した Statcast は、今では、私たちが試合からデータを取得する方法の総称にもなっています。球場のいたるところに設置されたセンサーからデータをデータベースに取り込み、API を介してほぼリアルタイムで大量の情報を配信しています。

MLB アプリ、MLB.com、MLB.TV、Gameday などは、これらの API を通じて、独自のデジタル サービスに瞬時に統計データを取り込むことができます。また、こうしたデータは、データ分析や打順の組み方の向上のために全 30 球団に送られるほか、スタジアムのスコアボードにも利用されています。同時に、放送各局にも提供され、グラウンドで起こるあらゆることが可視化されて、彼らは、さまざまなストーリーを伝えられるのです。

Statcast の次のステップは、AI の新しいイノベーションをすべて統合し、スタジアムであれ、テレビやスマートフォンであれ、試合を観戦しているファンに対して魅力的な新しい体験を提供できるようにすることです。

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New Way Now: MLB knocks the fan experience out of the park

AI を国民的娯楽に活用

これまではアクセスが困難だったデータの掘り起こしも、AI を活用すると可能となり、大きな機会を提供します。現在では、データセットのコーパス全体を調べられるようになり、特定のデータに注目したり、関連性や重要性を浮き彫りにすることもできます。

AI を活用すれば、データセット内にある興味深いデータの原石を発見する、多くの機会に恵まれます。自らが所有するデータセットの中からダイヤモンドのようなデータの原石を発見する可能性があるのです。スターダムに躍り出ることを狙っているマイナーリーグの有望選手のように、ここには未だ開拓されていない可能性が眠っています。こうしたものを活用することで、私たちとパートナーはファンに野球を、より面白く興味深いストーリーとして、リアルタイムに届けられるのです。

Google Cloud の AI ツールスイートを使用すると、ボールの軌道や選手の動きと姿勢を追跡するデータを大量に取得でき、その上に予測モデリングを構築できます。これにより、確率に基づいて選手が捕球するのがどれほど難しかしいか、打球がフェンスを越えてホームランになる確率はどのくらいか、さらには走者が盗塁に成功する確率はどうかなどを明らかにすることができます。

これらの同じツールを使用すると、事後にデータを説明するモデルを構築することもできます。投球に関しては、多くのデータポイントを活用することで、各投手のカスタムモデルやニューラル ネットワークをトレーニングし、投手ごとの投球レパートリーを把握して球種を分類することもできます。

AI とファンのエクスペリエンス

未だ見つけられていない可能性とそれらに巡り合う機会は、素晴らしいものです。しかし、私たちが AI と Statcast を組み合わせて実際に実現しようとしているのは、実用的なテクノロジーとして活用することです。試合をより魅力的なものにし、私たちの組織と全 30 球団のパフォーマンスを向上させ、新しいエクスペリエンスをファンに提供する、こうしたことを実現させるのが私たち MLB という組織の原動力なのです。

私たちのアーカイブや Statcast には非常に多くのデータがあるため、人が目検や手作業でそれらを調べて本当に意味のあるものを見つけ出すのはほとんど不可能です。AI による活用があってはじめて、何が実際に有用なのかを理解できるようになるのです。

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例としては、このホームランは、統計的にも突出している、時速 120 マイルの猛スピードだったとか、ルーキーとしてデビュー戦に打ったホームランの中では最も劇的な打球だったとか、450 フィート以上のホームランが 1 試合に 3 本出たのは史上初である、といったことが挙げられます。以前は、人間が何時間もかけてデータに目を通し、このようなストーリーを見つけていました。しかし今では、AI を使用してほぼ瞬時にこのような出来事を把握できるようになったため、これらの情報を自社のコンテンツ チームや放送局に提供することで、そのストーリーをファンにすばやく届けられるようになったのです。

基本的には、ファンが、MLB の全体像を把握できる情報を届けたいと考えています。この 10 年間で、野球がどう進化してきたなどを伝えたいと考えているのです。たとえば、打球に関しては、打ち出し角度が高くなり、ホームランの飛距離が伸びました。また、このデータはバットスピードと相関しています。投球に関しては、ボールの回転数が増え、球速が速くなっています。これらの事実は、私たちのメディア チャネルや他のメディアを利用しているファンに直接インスピレーションを与えられる素晴らしい情報です。

以前は、人間が何時間もかけてデータに目を通し、このようなストーリーを見つけていました。しかし今では、AI を使用することで、ほぼ瞬時にこのような出来事を把握できるようになりました。

Rob Engel 氏

AI は、試合内容を分析する新たな方法をもたらします。ここで得られる情報はファンに対してだけのものではありません。MLB 全 30 球団も Statcast と MLB が取得するすべてのデータを利用することができます。Statcast の全データを API を通じてデータベースに取り込み、各球団が BigQuery 環境で分析できるようにしているのです。これにより、全 30 球団に対等な立場が与えられ、各球団は独自のアルゴリズムを構築して他球団との差別化を図ることができます。

過去 10 年間にわたる MLB の技術的な取り組みは、目を見張るものがありました。MLB は、ストリーミング動画を一般の人々に提供した最初の組織の一つであり、また、グラウンド上のセンサーを使用したデータ キャプチャの先駆者でもあります。現在では、Statcast、クラウド、AI を通じてそのデータを活用できるようになっています。これらのことはどれも、この素晴らしいパートナーシップと、私たちの力を真に解き放つ Google Cloud のテクノロジーなしでは不可能だったと思います。


Major League Baseball の商標および著作権は、Major League Baseball の許可を得て使用されています。MLB.com をご覧ください。

-MLB、ソフトウェア エンジニアリング担当バイス プレジデント Rob Engel 氏

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