クラウドへのスイング: 試合とファンの体験を向上させ続けるメジャーリーグ ベースボール
Google Cloud Japan Team
MLB の歴史的なルール変更は、各試合時に生成される膨大なデータを活用する機会となり、選手とファンの両方により良いものをもたらしました。
※この投稿は米国時間 2023 年 10月 11 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
メジャーリーグ ベースボールにとって、今年は、単なるシーズンではありませんでした。2023 年のシーズンは、画期的な 3 つのルール変更とともに幕を開けました。これは野球史上最大級の変更と言えるでしょう。リーグはピッチタイマーを導入し、ベースのサイズを大きくしたほか、守備シフトを制限しました。これらのルール変更の意図は明らかで、試合中の動きを増やすことを目的としています。
シーズン終了後の大量データを分析してみると、結果は明らかです。試合のペースが速くなり、試合時間が短縮され、盗塁数が増加したうえ、運動能力がより顕著に発揮されるようになりました。昨シーズンより、9 イニングの平均試合時間は 24 分短くなり、走者の盗塁の成功数は増えて、打率と1 試合あたりの打点がともに昨シーズンより上昇しています。
これまでも野球ファンは常に数字を追い、スポーツの統計に深く関わってきましたが、今回のルール変更により、データへの関心がかつてないほど高まっているようです。
どのルールを変更するかを決定するうえで重要になるのが、長年の研究と経験に、テクノロジーを注入することです。クラウド コンピューティング、高度なビデオ、ワイヤレス センサーにより、これまでより多くのデータ、そしてより多種のデータが利用できるようになり、それらはすべてゲームプレイを最適なもにするために欠かせないものとなっています。
新しいルールがどれほど重要であるのか、ファンはお気に入りのチームや選手の成績を見て、ルール変更前とルール変更後を比較するだけで容易に理解できます。特に目を惹く統計データは次のとおりです。
- 試合時間が 24 分短縮されている。
- 盗塁試行回数が 1 試合あたり 1.2 回から 1.8 回へと 50% 増加し、成功率は 4% 増加している。
- 平均打率が .243 から .249 に向上している。
- 1 試合の平均打点が 9.2 に上昇している(昨シーズンの 8.6 と比較)。
- 観客動員数はさらに増加し、リーグ全体で 7,000 万人を超え、2017 年以来の快挙となった。
メジャーリーグ ベースボールと Google Cloud は、現在 4 シーズンにわたりテクノロジー パートナーとして提携しています。両者はともに、ファン エクスペリエンス、デジタル プロパティ、セキュリティなどにおけるイノベーションの推進に貢献してきています。
クラウドは野球に関わるすべての人に新しいエクスペリエンスを構築するプラットフォームを提供してくれました。こうした新しいデジタルで拡張されたエクスペリエンスがどんなにエキサイティングですが、クラウド上のデータと分析によってあらゆるレベルで強化されたフィールドでのエクスペリエンスに匹敵するものはありません。
今やスピードが勝負の鍵を握っています。そして、最速を提供するのがクラウドです。
クラウドでスピードアップ
リーグは現在、MLB の 30 球場すべてにおいて、各所に設置された高速カメラを使い、グラウンド上で起こるすべての出来事を追跡し、各選手と各プレーに関する情報をしっかりと記録しています。
MLB は毎シーズン 40 テラバイト以上のデータを収集しています。マウンド上のピッチャーから始まり、ピッチャーがボールを投げるたびに、ボールがリリースされたときの腕の角度から、プレートに到達するまでのボールの回転数や曲がり方に至るまで、独自のデータイベントが生成されます。打者のスイング軌道を追跡し、バットのどの位置でボールを捉えたのか、バットからのボールの打ち出し角度、ボールの移動速度などが記録されます。すべてが測定され、すべてが数値化されます。
野球では Hawk-Eye と呼ばれる追跡システムが使用されています。このシステムにより、すべてのデータがキャプチャされてスタジアム内のローカル サーバーにアップロードされ、Google Cloud の Anthos プラットフォームで実行されます。そのデータは、Google Kubernetes Engine(GKE)を介して、スタジアム内のサーバーと同じシステムを実行しているクラウドに送られます。そこから、MLB Club、ブロードキャスト パートナー、ファンなど、その情報の潜在的な利用者すべてにデータを送ることができます。
今やスピードが勝負の鍵を握っています。そして、最速を提供するのがクラウドです。
このデータの基盤となるのが、Statcast と呼ばれるもので、2015 年に導入され、2020 年に Google Cloud に移行されました。
ハイブリッド クラウド アプローチにより、MLB はあらゆるプロダクトやストリームにデータを取り込んで交換できるデータブルペンを効果的に構築しました。コーチがタフなバッターと対峙するように、リーグ、チーム、ブロードキャスト パートナーすべてが、進化する野球のニーズやファンの好みや傾向に適応できます。
「Statcast は世界クラスの追跡システムで、メジャーリーグ ベースボールに、これまで想像できなかった方法でデータに命を吹き込み、ファン向けの最高峰の製品を構築する力を与えてくれます」と MLB のソフトウェア エンジニアリング担当バイス プレジデントである Rob Engel 氏は言います。
今、最も盛んなアクションが見られる場所はクラウド
MLB のシステムがハイブリッド クラウド上で実行されているのと同じ様に、デジタルの世界と球場でのニーズを融合させたハイブリッドなプロダクトやエクスペリエンスを提供する機会が生まれます。
この統合データ プラット フォームから開発された注目すべき例の一つが、革新的なフィルム ルームです。ここには、1920 年代までさかのぼる試合のデジタル化されたクリップが保管されています。左投手からの変化球を捉えた大谷選手のホームランをすべて見つけたいと思いませんか?MLB はこれらのハイライトを数秒で提供できます。
これにより、ファンが自分自身のハイライト リールを作成する魅力的な機会が生まれ、放送局やスカウトはアーカイブにアクセスしやすくなります。より広く言えば、センサーや作成されたデータの精度とアクセス性により、リーグはボールの縫い目やスイングの輪郭に至るまで、試合の細部を研究できます。さらに自然言語モデリングによる検索可能性により、データベースにアクセスするために技術的な知識はほとんどまたはまったく必要なくなります。
このレベルの詳細な情報は、各打席を可能な限りエキサイティングなものにするのに役立ちます。特にルールの変更に伴い、それが重要な焦点となっています。
このようなデータがエクスペリエンスの向上に役立つ別の事例としては、放送局がプレーの速いペースについていけるようにするためのサポートが挙げられます。放送局は、野球ファンが好む統計データをたっぷり盛り込んだ実況を提供しながら、試合の動きに対してもより迅速に対応しなければなりません。
ここでもクラウドが役に立ち、ほぼリアルタイムに試合データを MLB ブロードキャスト パートナーに提供します。リーグはスタジアムに設置されたサーバーから送られてくる情報を利用することで、解説を補うだけでなく、その場で可視化もできます。
根本から変える
野球へのリアルタイム データの投入は、野球のプレイ方法、指導方法、管理方法を日常的に変えるという、驚くべき偉業を達成しました。クラウドのスピードと有用性は、野球自体のスピードやもたらすものに大きな影響を与えました。
ビデオやデータは、ほんの数秒後にダッグアウト内の安全なタブレットに送信され、選手やコーチにチームのパフォーマンス向上に役立つ知見を提供できるようになりました。
球場のデータはすべて、ファンにとって試合をより良いものにする場合にのみ価値があります。
「クラブとリーグは同じデータを使って、選手、チーム、試合中のプレーそのものについての洞察を得て、選手登録枠、試合管理、ルール変更に関する、十分な情報に基づいた意思決定を下すことができます。Google Cloud のパワーのおかげで、MLB はビジネスの期待に応え、またそれを超える規模での Statcast の構築が可能となっています」と Engel 氏は述べます。
野球には非常に深い歴史があり、その中で統計やデータは非常に重要な役割を果たしています。過去と未来に命を吹き込み、新たな方法で野球を豊かにできるのは驚くべきことです。スポーツと社会のあらゆる場面で、革新的な技術が採用されており、リーグはその先頭に立っています。適切なデータを適切な方法で見ることができれば、私たちの人生における愛すべき多くの側面を向上させることができます。
MLB が行う変更はすべて、野球をより良いものにすることを目的としています。ファンにとっても、選手にとっても、監督、コーチ、フロント オフィスにとっても。、送局や広告主のようなリーグのパートナーにとっても、より良いものになることが望まれています。クラウドは野球にさらなるスピードをもたらし、よりダイナミックでエンターテインメント性の高いプロダクトを作り、新しい方法でファンを魅了することで、このスポーツをいつまでもエキサイティングで馴染み深いものにするために役立っています。
メジャーリーグ ベースボールの商標および著作権は、メジャーリーグ ベースボールの許可を得て使用されています。MLB.com をご覧ください。
- Google Cloud、スポーツ担当主要アカウント エグゼクティブ Tyrone Millard