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AI & 機械学習

AI エージェントをスマートに活用するための 5 つのヒント

2025年7月14日
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Will Grannis

VP and CTO, Google Cloud

今、話題の「AI エージェントとは何か?」、そして昨今の AI を取り巻く環境におけるその重要性について紹介します。

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※この投稿は米国時間 2025 年 6 月 25 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

このコラムでは、Google Cloud CTO オフィスのエキスパートが、読者の皆様のビジネスや IT に関する課題や質問にお答えします。Google Cloud 版の相談コーナーです。ただし、私たちが改善しようとしているのは、人間関係の悩みではなく、読者の皆様の技術的な課題です。

Google Cloud CTO オフィスのモットーは、「コラボレーションによる実践的なマジック」です。このチームは、Google Cloud の技術エキスパートと大手企業の元 CTO で構成されており、Googleの大切なユーザーが最大の課題に取り組めるよう支援しています。

本記事では、CTO オフィスの Will Grannis と彼のチームが、エージェントとは何か、そして昨今の AI を取り巻く環境におけるエージェントの重要性を解説します。

AI エージェントは、昨今のエンタープライズ テクノロジーにおいて特に注目すべき進化の一つです。私たちの多くが慣れ親しんでいる、個別に使用される AI ツールとは異なり、エージェントは人間のチームのように連携して作業します。複雑な問題を分解し、専門的なタスクを分担し、協力して作業することで、単一の AI や 1 人の人間だけでは達成できないアウトプットを形にします。

しかし、OCTO のエキスパートが指摘するように、効果的なエージェント システムを構築するには、テクノロジーだけに頼るわけにはいきません。必要なことは、インテリジェントなコラボレーションを設計する方法、責任を持ってスケールする方法、何から手を付けるべきか、といったことを理解することです。AI エージェントの検討を始めたばかりの方も、組織における AI エージェントの役割を拡大しようとしている方も、ここで紹介するインサイトが、こうした急速に進化する環境を理解するうえで役立つでしょう。最後に、今年の I/O で発表した新しいエージェントについても紹介します。


John Abel(マネージング ディレクター)

私にとって、エージェントは、文字通り、自分の代わりに業務を行ってくれる代理人のような存在です。エージェントは、ビジネス プロセスから摩擦や労力を取り除くことで、顧客、従業員、パートナーなどを支援します。

私はディスレクシアという学習障害を抱えており、エージェントが障壁を取り除いてくれるのは本当にありがたいことです。エージェントは私のアイデアを実現し、文章の作成や学習をサポートしてくれます。これは仕事だけにとどまらず、私の人生にとっても欠かせないものとなっています。

ここでは、エージェントを最大限に活用するための 5 つのヒントを紹介します。

  1. 理由を定義する: エージェントが重要な理由を理解することで、何を、どのように行うかを定義しやすくなります。理由を理解できたら、何を達成しようとしているのか、目標を明確にしましょう。

  2. 小規模から具体的に始める: 特定のタスクに焦点を当てます。小さな成果の積み重ねが基盤となり、成功につながります。先延ばしにせず、すぐに試して、学んで、改善しましょう。

  3. 人間とエージェントを組み合わせる: 常に人間参加型とし、定義した目標を達成できるようエージェントを指導します。

  4. データを理解する: エージェントはデータドリブンです。データについて、何が達成可能で、何が欠けているかを把握しましょう。

  5. 学習する姿勢を育む: AI の可能性を理解しましょう。この分野は急速に変化しているため、新しい考え方を受け入れる姿勢が必要です。

私はこの AI の時代、特に、エージェントによって障壁が取り除かれ、自分のアイデアを実現できることに非常に期待しています。エージェントは摩擦を減らすだけでなく、スケールアップも可能にしてくれます。

上級エンジニア、Antonio Gulli

企業は、AI エージェントの可能性、特に人間のチームワークをシミュレーションして強化する能力について探求を進めています。AI モデルは強力な能力を発揮しますが、多くの場合は単独で動作し、特定のプロンプトに応じて、主にツールを介して外部の世界にアクセスします。

その一方で、AI エージェントは、複数の専門的な役割(多くの場合、基盤となる AI モデルによる)の調整とオーケストレーションを可能にすることで大きな進化を遂げており、複雑なタスクにも協力して取り組むことができます。こうしたマルチエージェントの協力的アプローチには、以下のような明確なメリットがあります。

  • 専門化と段階的な改善: 個々のエージェントは、役割を高度に専門化して設計やファインチューニングができます(データ アナリスト エージェント、レポート作成エージェント、検証エージェントなど)。このアプローチにより、モノリシック システムを再トレーニングすることなく、的を絞った開発とテスト、そして各コンポーネントの段階的なパフォーマンスの改善が可能です。

  • タスクの分解とモジュール性: 複雑なビジネス プロセスや問題を、明確に定義されたシンプルなサブタスクに分解できます。各サブタスクを専用のエージェントに割り当てることで、独立した開発、各ステップに具体的な評価基準がある堅牢なテスト、デバッグの簡素化が可能になります。

  • 新たな相乗効果と成果の向上: 有能な人間チームと同様に、専門エージェント間のコラボレーションは、新たなインテリジェンスや優れた成果をもたらす可能性があります。エージェントは、情報を相互検証し、並行して作業し、出力を反復的に改善し、問題のさまざまな側面を同時に処理できます。また、単一のモデルや一人で作業する人間が生み出すものを上回るレベルの堅牢性や品質を達成できる可能性もあります。

たとえば、Google のエージェント開発キット(ADK)などのフレームワークは、高度なマルチエージェント システムの作成を劇的に簡素化します。デベロッパーはこうしたフレームワークを利用することで、主に、慎重に設計されたプロンプトを通じて、エージェントの役割、性格、機能を個別に定義できます。一方、中核となる動作のロジックや外部システムとのやり取りは、多くの場合、簡単な Python コードを使用して実装できます。

重要な進展としては、新たなメタ機能の登場があります。これは、Gemini のような基盤モデルが、デベロッパーによる微妙なプロンプトの作成や必要な Python コードの生成を支援するものです。より複雑で協調的な AI システムの作成に AI が貢献するという、このメタ相乗効果により、開発サイクルが大幅に短縮され、大きな可能性が開かれます。

簡単に設定できるうえに非常に強力な AI エージェントは、あらゆるエンタープライズ アプリケーションにおいて、私たちの思考や連携の方法に革命をもたらすでしょう。


Michael Zimmerman(プリンシパル エンジニア)

世界中の企業が、収益と効率を高めるためにエージェントベースのワークフローを導入し始めています。こうした企業は、エージェントに求められるアプローチが汎用モデルとは異なることが多く、特定のビジネス コンテキストとカスタム ワークフローを理解するエージェントを必要としています。典型的なエンタープライズ環境は、標準的な汎用エージェントに特有の課題をもたらします。

Google Cloud は、高度な機能を提供することでお客様を支援します。これらの機能には、Enterprise Knowledge Graph、エージェント間プロトコル、エージェント開発キットのネイティブ MCP サポート、カスタムツールの軌跡、エージェントの思考プロセスや推論プロセスに特定の企業情報を取り込むコンポーネントなどがあります。

また、企業でのエージェントの活用をさらに支援するために、Google Cloud のオープン性への取り組みを反映したエージェント間(A2A)プロトコルがリリースされました。A2A は、クラウド上で相互接続されたエージェントのネットワーキングを可能にし、さまざまなエージェントが連携してワークフローを実行できるようにします。これにより、部門ごとの責任や事業部門が異なることで生じる構造の分離を解消できます。


Diane Chaleff(グループ プロダクト マネージャー)

AI エージェントで何ができるかを理解することと、実際にそれをチームの日常業務にうまく取り入れることは別問題です。何から始めればよいか、将来はどのようになるのかなど、疑問に思うのは当然です。ここでは、AI エージェントに関するいくつかの実用的な考慮事項と、その全体像を紹介します。

  • 従業員に利用を促す: 従業員にはできるだけ早くエージェントを試すよう促します。最初は重要度の低いタスクから始めて、仕組みに慣れてもらうとよいでしょう。AI エージェントは、便利なアシスタントのようなものだと考えてください。大量の情報を集約し、その意味を理解することに非常に長けています。最初は概念的に複雑に思えるかもしれませんが、多くのテクノロジーと同様に、一度試してみれば、そのシンプルさに気づくことが多いでしょう。

  • 従業員の能力を引き出す: エージェントによって日常業務をスピードアップし、強化する方法については、従業員が最良のアイデアを持っている場合がよくあります。エージェントのセキュリティ確保には IT 部門が重要な役割を果たしますが、通常、具体的な業務の流れや、どこにエージェントを統合すればタスクをより迅速に完了できるかを最もよく理解しているのは、それぞれの担当者です。ただし、楽しいチャレンジを用意して従業員がエージェントを自由に試せるようにしてから、技術部門と協力してそのアイデアを開発できるよう支援することを検討してください。

  • エージェントの調達については一般市場の活用を検討する: スマートフォンが初めて登場したとき、搭載されているアプリはごく基本的なものだけでした。しかし、その後、広範なデベロッパー コミュニティがアプリケーションのマーケットプレイスを利用して、現在見られるような何百万ものアプリケーションを作成できるようになりました。AI エージェントも同様のパターンをたどる可能性が高いでしょう。新しいエージェントの開発と共有はまだ始まったばかりです。


Ben McCormack(プリンシパル エンジニア)

AI エージェントは、機械学習、自然言語処理、計画アルゴリズムなどの AI を使用して、周囲の状況を把握し、認識した情報を分析し、自ら意思決定を行い、特定の目標を達成するために行動するシステムです。多くの場合、AI エージェントは学習と調整を繰り返しながら進化し、単に質問に答えるだけのシステムではなく、人間のような行動が可能になります。

AI エージェントには、その動作を定義する独自のコンポーネントと特徴があります。

コアとなるアイデア: インテリジェントな自律性AI エージェントは AI を使用して不確実性、複雑さ、学習を管理するため、プログラミングされた単純なエージェントとは異なります。推論、問題解決、計画、学習などの思考スキルを模倣するように機能することで、目標をより効果的に達成し、状況の変化に適応します。

AI がもたらす主な特徴

より深い認識: AI により、エージェントはテキスト、画像、音声、動画などの入力をより詳しく理解できます。

  • 高度な意思決定: エージェントは、不明瞭な状況を管理し、予測を行い、複雑な目標(長期的な利益の最大化など)に向けて取り組むことができます。

  • 学習と適応: AI エージェントは時間の経過とともに進化するという特徴があります。データ、フィードバック、経験から学習し、たとえばゲームの腕を上げたり、取引戦略をファインチューニングしたり、ユーザーの好みに合わせて調整したりできます。このことは、通常と異なる状況の検出や管理にも役立ちます。

  • 複雑な目標への対応: エージェントは、推論や計画を段階的に行う必要がある、より抽象的で複雑な目標にも取り組むことができます。

AI エージェントの活用例AI エージェントはさまざまな分野で活用されています。

  • ビジネス プロセスの自動化: これまで人間による監視が必要だった企業システム間の複雑なやり取りを管理できます。

  • 高度な仮想アシスタント: 単純なコマンドを超えて、詳細な会話に対応し、複数のステップからなるタスクを実行します(例:「今夜のイベント会場近くのレストランを探し、レビューをチェックし、午後 7 時に 1 人分の予約を入れて」)。

  • 自律型タスク プラットフォーム: Auto-GPT、CrewAI、LangChain などのツールを使用すると、エージェントはオンラインでトピックを独自に調査し、コードの作成とデバッグを行い、情報を要約し、さまざまなソフトウェア ツールを使用して、広範な目標を達成できます。

  • 自動運転車: 複雑な AI(コンピュータ ビジョン、センサー フュージョン、計画、制御理論など)を使用して周囲の状況を把握し、安全に走行します。

  • よりスマートなゲーム AI: ゲームの対戦相手として、ユーザーのプレイを学習し、それに応じて AI エージェント自身の戦略を変えます。

  • AI を活用したロボティック プロセス オートメーション(RPA): ドキュメントの理解、情報の抽出、意思決定など、複雑なビジネス オペレーションを自動化します。

  • 科学研究のサポート: AI エージェントは、創薬や材料科学などの分野において、仮説の形成、実験の設計、データの分析を支援できます。

本質的には、AI エージェントは目標指向の独立したシステムであり、複雑な情報の処理、推論、学習、適応を行う AI モデルの能力によって大幅に強化されています。これにより、AI エージェントは、かつては人間の直接的な関与が必要だったタスクを実行できる、独自のテクノロジーとなっています。

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Yingchao Huang(ソフトウェア エンジニア)

AI エージェントの成功につながる主要な戦略優れた AI エージェントを構築するには、どうすればよいのでしょうか。そのためには、設計を慎重に検討し、実証済みのエンジニアリング原則を適用することで、堅牢でインテリジェントなソリューションを作成します。

スマートな組み合わせで構築: AI と従来のソフトウェアを組み合わせる特に効果的なエージェントを構築する優れた方法は、AI 独自の長所と従来のソフトウェア コンポーネントの精度を組み合わせたシステムを設計することです。AI はその得意分野(言語の理解、パターンの検出、確率に基づく推論など)に使用し、正確なロジック、精密な計算、高い信頼性が求められるデータ処理といったタスクには、従来のソフトウェアを使用します。

AI ベースのサービスとソフトウェアベースのサービスとの間の明確なコミュニケーションを確保するために、相互の通信方法(たとえば gRPC / Protobuf や REST / JSON スキーマなど、特定の入力 / 出力ルールを持つ API)を明確に定義します。これにより、両者が確実に連携して動作するようになります。重要なのは、詳細が不足している場合や不明な場合に追加情報を要求し、その応答がすべての要件を満たしていることを確認するように AI サイドを設計することです。これにより、精度が向上し、誤った仮定を回避できます。

信頼性に重点を置く: ソフトウェア エンジニアリングのプラクティスを適用する確立されたソフトウェア エンジニアリングのプラクティスを最初から組み込むことで、エージェントの信頼性を大幅に高めることができます。徹底したテストを通じてエージェントを検証できるようにします。エージェントの機能に合わせて調整したさまざまなレベルのテスト(単体テスト、統合テスト、エンドツーエンド テスト、システムテストなど)を実施します。

これは、エージェントが正しく動作するかどうかだけでなく、どのように推論し、意思決定を行い、不明確な状況に対処するかを検証する作業でもあります。成功の基準や、エージェントに期待する動作に関して、明確な目標を設定します。特に、堅牢なバックアップ プランを組み込むことが重要です。プランには、エラーをスムーズに処理する方法、システムがエラーを自動的に管理する方法、エージェントが独自に処理できない問題が発生した場合に、人間が介入したり、問題を解決できる担当者にエスカレーションしたりする明確な方法も盛り込みます。

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未来の働き方は、人間と AI の対立ではなく、人間と AI の共存です。このことは、AI エージェントに最も顕著に表れています。

今年の Google I/O では、OCTO チームがこれらの原則を実践し、人間の専門知識とインテリジェントな自動化を組み合わせる 3 つの専門エージェントを発表しました。

  • 学術研究エージェント: 研究者が最新の出版物を見つけたり、新たな研究分野を特定したりできるよう支援することで、発見を加速します

  • ファイナンシャル アドバイザー エージェント: 教育、金融、投資に関するコンテンツに即座にアクセスできるようにすることで、人間のアドバイザーの能力を強化します

  • マーケティング代理店エージェント: ドメインの提案、ウェブサイトの作成、マーケティング戦略の策定、ブランド アセットのデザインなど、すべてを連携して行い、リリースを変革します

これらは単なる概念実証ではありません。エージェントが人間の能力を置き換えるのではなく、補完できることを証明する実例となっています。

AI エージェントの時代に成功するには、単に最新のテクノロジーを導入するだけでは不十分です。人間の知能と AI のコラボレーションを慎重に設計し、両者がそれぞれの強みを発揮できるチームを構築できる組織が成功を収めるでしょう。AI エージェントの検討を始めたばかりの方も、組織における AI エージェントの役割を拡大しようとしている方も、ツールキットの中で最も強力な要素は常に、人間の好奇心、創造性、そして業務の進め方を再考しようとする意欲であるということを覚えておいてください。コラボレーションの未来を築く準備はできていますか?エージェントがあなたを待っています。

-Google Cloud、バイス プレジデント兼 CTO Will Grannis

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