The Prompt: ジェネレーティブ AI で仕事の満足度を高める
Google Cloud Japan Team
変革をもたらすジェネレーティブ AI の最新トレンド
※この投稿は米国時間 2023 年 5 月 6 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
このところ、ビジネス リーダーたちの間では、ジェネレーティブ AI が話題の中心となっています。急速に変化を続け、変革をもたらすこの分野の話題をフォローできるよう、このたび「The Prompt」と題したシリーズでGoogle がお客様やパートナーと接するなかでの気づきや、Google の AI の最新動向を紹介しています。今回は、ジェネレーティブ AI が今日最も価値のあるスキルをどのように再形成し、人々の仕事のやり方を変えているのかについて、Google Cloud の AI & ビジネス ソリューション担当グローバル VP である Philip Moyer が解説します。
革新的な技術が仕事とそのやり方を変える可能性があるということは、目新しい話題ではありません。しかし、コードの作成から米国医師免許試験(USMLE)のような共通テストの合格にいたるまで、通常は高度なスキルを持つ人間にしかできないタスクをジェネレーティブ AI がこなせるようになるにつれて、今後の変化がどれほど大きなものになるのだろうかと経営陣は関心を寄せています。
たとえば、ゴールドマン・サックスのエコノミストは、900 以上の職業を分析した結果、米国の約 3 分の 2 の職業が AI の影響を受ける可能性があると推定しています。これは驚くべき数字ですが、この種のデータを見るときに重要なのは、「AI による影響」が「AI による置き換え」と同義ではないということです。
全米経済研究所(NBER)が最近発表したレポートによると、カスタマー サポートの担当者がジェネレーティブ AI の会話アシスタントを使用した場合、平均で 14% 生産性が向上し、中でも経験の浅いスタッフに最も大きな改善が見られたとのことです。このようなデータが示すように、AI は多くの場合、タスクの自動化よりも人間の能力を拡張する場面で大きな力を発揮します。
これを念頭に置いて、今回の「The Prompt」では、ジェネレーティブ AI が職場をより楽しく充実したものにしていく方法を探っていきたいと思います。
退屈な作業や離職率を減らし、仕事を楽しいものへ
多くの仕事は、保険請求の処理、スプレッドシートからの情報の抽出、顧客対応のため何度も同じ質問に答えるといった、決まりきった反復作業であふれています。このような仕事は一般的に楽しいものではなく、もっと創造的でやりがいのある仕事に時間を使いたいと思っている従業員から時間を奪っている傾向があります。
ジェネレーティブ AI は、人々が最もストレスを感じる作業を自動化または高速化することで、仕事をより楽しくする力を秘めています。サポート センターで何時間も同じ内容の対応をしたり、重要な最新情報を見つけるために受信トレイをくまなく探したりする代わりに、ジェネレーティブ AI を使えばスタッフの労力や手間を省けます。
AI アシスタントを使用すると、一般的な問い合わせに対する応答を自動生成したり、従業員がより迅速にメールを書き、要約し、優先順位を付けられるように支援することができます。また、作業がさまざまな規制を遵守しているか確認する場合や、提案依頼書(RFP)のように、複数のソースから大量のテキストを繰り返し組み合わせて作成する場合にも効果を発揮します。このような効率化により、スタッフは、さまざまな管理業務を細切れに行ったり、適切な情報を得るためにメールを探して時間を無駄にしたりするといったことがなくなり、より面白い仕事に集中できるようになります。
このようなユースケースは、新規採用や再教育が極めて困難な職種に特に大きな効果をもたらす可能性があります。ある職務の要員をなかなか採用できない場合や、離職が頻繁に起こるような場合は、それはその職務がやりがいのないものであることを示しています。一方、NBER の論文では、カスタマー サポートの担当者が AI アシスタントを利用できるようにすると離職率が低くなり、AI を利用して反復作業を減らすことで、従業員がより充実した仕事に集中できるようになることが示されています。
従業員の「やりたいこと」と「繰り返しやらなければならいこと」の差にリーダーが注目すれば、従業員をより幸せにし、さらに生産性を高めるようなジェネレーティブ AI のユースケースに的を絞ることができます。
Google Cloud、AI & ビジネス ソリューション担当グローバル VP、, Philip Moyer
人間の生産性を高め、ROI を改善
ジェネレーティブ AI は、人間の才能を高めたり、あるいは人間の生産性を高める触媒として機能することで、組織がリソースや能力に制限のある領域で収益を上げられるのに役立ちます。
たとえば、優れたアイデアを持つ人に、優れたメッセージを生み出すための時間や経験があるとは限りません。しかし、ジェネレーティブ AI アシスタントを使用すると、ブレインストーミングで作成した箇条書きを、素早く簡単にブログ、概要資料、またはプレゼンテーションに変換できます。この機能によって熟練したライターや編集者が不要になるわけではありません。アイデア出しの早い段階でより良い原稿が作られるため、コミュニケーションの専門家は校正作業ではなく、内容に集中できるため、ワークフローを格段に速くできます。
また、自然言語プロンプトによるコード生成も良い例です。これによって優秀なエンジニアの価値が消えるというわけではありません。エンジニアの作業が速くなり、これまでバックログに残っていたシンプルなアプリのプロトタイプを、デベロッパーの支援なしで作成することができます。ジェネレーティブ AI とは、さまざまなタスクにおいて、労働者を手間のかかるプロセスから解放し、最も価値のあるタスクに専念して、新しい方向に能力を伸ばせるようにするものなのです。
優秀な人材の価値(と幸福度)を最大化
前述の点を踏まえて、組織は、給与の高い従業員が価値を創造することの妨げとなっている状況を、ジェネレーティブ AI によってどのように解消できるのかも検討する必要があります。医師は、何時間もかけて臨床記録を患者や同僚が読みやすく理解しやすい文書に書き換えています。企業経営者は、投資を誘致および確保するために、定期的に投資家向けの事業計画を作成する必要があります。デベロッパーは、仕事の大部分をコードのデバッグやレビュー、レポート、または他の人がプロジェクトを理解できるようにするための支援に費やしています。
これらは必要な作業かもしれませんが、膨大な時間がかかり、高度なスキルを持つ人の能力を最大限に活用しているとは言えません。もちろん、一日を楽しくするものでもありません。ジェネレーティブ AI は、反復作業のスピードを上げ、自分のスキルが求められる仕事に集中できるように支援します。
人間主体の AI に投資
ジェネレーティブ AI の可能性はまだ完全に明らかになってはいませんが、最も効果を発揮するユースケースは、人間を中心に据えたものであり続けるでしょう。このテーマについては、プロンプト エンジニア、AI 監査人、マシン マネージャーなど、ジェネレーティブ AI が生み出す新たな仕事の紹介も含めて、今後も取り上げていく予定です。ただし、重要な点は、従業員の「やりたいこと」と「やらなければならいこと」の差にリーダーが注目すれば、従業員をより幸せにし、さらに生産性を高め、組織に新たな価値をもたらすジェネレーティブ AI ユースケースに的を絞ることができます
Google の AI に関する今週の話題
ロボットのナビゲーションを支援:ロボットに複雑な屋外環境の移動方法を教えることは、配送や捜索救助などの実世界での用途において非常に重要ですが、ロボットが周囲の環境を認識し、目標に到達できるルートを探索する必要があるため、非常に複雑でもあります。こちらのブログ投稿をご覧ください。Google の研究者が学習ベースの転送アルゴリズムでこの課題に取り組んでいる様子をご紹介しています。このアルゴリズムは、深層強化学習を使用して、まず屋内のシミュレーション環境でロボットにナビゲーション ポリシーをトレーニングし、それを現実の屋外環境に転送するものです。
NeRF の準備を:テキストから画像への変換は、最もエキサイティングなジェネレーティブ AI ユースケースの一つですが、テキストから 3D への変換はどうでしょうか?DreamFusion をご紹介します。このシステムは、Google のテキストから画像への拡散モデルを用いて NeRF をゼロから最適化することによって構築されました。
AI で呼吸を楽に:Google Research では、これまでにも ML モデルによる網膜疾患の検出支援について研究してきましたが、これらのモデルは臨床医からのラベルを使用してトレーニングされており、その作成には時間、費用、専門知識が必要でした。Nature Genetics に掲載された論文「未加工スパイログラムのディープ ラーニングによる慢性閉塞性肺疾患の推論により、新しい遺伝子座を特定し、リスクモデルを改善」の中で、Google の研究者は、肺機能の特徴を判別できる ML モデルを使用した図示など、ノイズが多く信頼性の低いラベルを使用する場合でも、正確な ML モデルをトレーニングする方法について説明しています。詳細についてはこちらのブログをご覧ください。
GitLab がジェネレーティブに:企業の DevSecOps 機能を提供する主要プロバイダである GitLab は、Google Cloud のインフラストラクチャとジェネレーティブ AI 基盤モデルを活用し、プラットフォーム内で AI 支援機能を直接顧客に提供しています。詳細についてはこちらをご覧ください。
- Google Cloud、AI & ビジネス ソリューション担当グローバル VP、Philip Moyer