The Prompt: ジェネレーティブ AI のユースケースを選択する
Google Cloud Japan Team
変革をもたらすジェネレーティブ AI の最新トレンド
※この投稿は米国時間 2023 年 4 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
このところ、ビジネス リーダーたちの間では、ジェネレーティブ AI が話題の中心となっています。急速に変化を続け、変革をもたらすこの分野の話題をフォローできるよう、「The Prompt」と題したシリーズを通じ、Google がお客様やパートナーと接するなかでの気づきや、Google の AI の最新動向を紹介しています。今回は、Google Cloud の AI &ビジネス ソリューション担当グローバル VP の Philip Moyer が、組織がジェネレーティブ AI を使用してヒューマン エクスペリエンスを向上させるための 3 つの方法について説明します。
「The Prompt」シリーズの第 1 弾では、ジェネレーティブ AI をめぐる期待によってどのような誤解が生まれるかについて説明しました。今回は、そうした幻想や誤解を乗り越えたお客様が抱く、2 つの主な疑問について考えていきます。1 つ目の疑問は「何から始めるべきか?」、2 つ目は「自身のビジネスに価値と熱意を生み出せる安全なユースケースは何か?」です。
ジェネレーティブ AI は、膨大な量のコンテンツを処理し、その中からテキストや画像といった人間が理解しやすい形式で分析結果や答案を作ることに非常に優れています。質問に対して 20 文字で答える、情報を箇条書きにする、ある考えを視覚的に表す画像を生成するといったことをユーザーが求める場合、そうしたリクエストを正確にとらえたエクスペリエンスを提供するのに、ジェネレーティブ AI は有用です。
そのため、こうした情報処理を伴うヒューマン エクスペリエンスを向上させたい分野での導入をまず検討することをおすすめします。
顧客満足度を高める
ほとんどの企業には、一般公開されているウェブサイトや、顧客対応用のコールセンターがありますが、残念ながら、顧客にとっては迷路のようにわかりづらいウェブサイトや窓口が少なくありません。コールセンターやカスタマー サービスの社内コンテンツは、ジェネレーティブ AI を導入するにあたって真っ先に検討したい領域の一つです。
まずカスタマー チームに導入することで、企業は信頼できる社内リソースを使って AI が生成した回答の品質をテストし、その精度を高めることができます。先行して導入したチームがモデルの精度に満足したら、インテリジェントな chatbot を外部の顧客向けウェブサイトに追加するとよいでしょう。カスタマー エクスペリエンスに測定可能な価値を即座に生み出し、同じ質問に繰り返し回答するコストを削減できます。
このアプローチはさまざまな業界に適用できます。たとえば医療の分野では、患者が治療のメリットを理解したり、保険の事前承認を取得したりするのを助けるために、Google はあるお客様と共同で、わかりやすいインターフェースの制作に取り組んでいます。同様に公共部門では、州の行政サービス全体に「市民ファースト」なインターフェースを構築しています。
新たなビジネス チャンスを発掘
企業内には、膨大な量の構造化されていないナレッジが眠っていることがあります。注目したい 2 つ目の分野は、そうしたナレッジを活用できるヒューマン インターフェースを構築することです。コールセンターの場合と同様、社内データに会話型インターフェースとジェネレーティブな要約を追加することは、ジェネレーティブ AI の活用を始めるための安全で反復的な方法となります。
たとえば、Google は多くの金融機関と連携し、ジェネレーティブ AI と Google のエンタープライズ検索テクノロジーを使って、社内のアナリスト レポート、10K アニュアル レポート、収支報告記録、社内投資メモに対して質問しています。
同様に、ライフ サイエンスやマテリアル サイエンスにおいても、Google はお客様と連携して特定の分子、マテリアル、疾患の状態に関する研究を自動的に要約する研究ポータルを構築しています。ジェネレーティブ AI は、非公開の研究、公開ウェブ コンテンツ、特許ライブラリなどのソースを安全にクロールすることや、研究者に会話エージェントを提供して質問できる環境を作ること、さらにはジェネレーティブ ブレインストーミングを取り入れて共同作業を行ったりすることに非常に長けています。
単調な作業を軽減する
ほとんどの企業では、単調な作業が繰り返し行われています。高給の情報担当者が、提案依頼書(RFP)への返信、5 か国語での同じマーケティング コンテンツの作成、投資メモの作成、顧客との契約におけるコンプライアンスの確認など、構造化されていないコンテンツで何度も同じ作業をしているのです。このような構造化されていない情報に関するタスクは、一般的につまらない作業とされ、間違いも発生しやすい傾向にあります。
しかし、ジェネレーティブ AI は、教えられた例をもとにコンテンツを作成するのに適しています。
そこで、ジェネレーティブ AI を活用することをお客様におすすめしている第 3 の分野が、非構造化コンテンツを大人数で作成する領域です。たとえば、マーケティングのサプライ チェーンでは、コンテンツを繰り返し作成することが非常に多くあります。金融サービスでは、ドキュメント化とコンプライアンスの確保にかかる作業が膨大です。通信業界では、機器メーカーごとの仕様に基づいてネットワーク構成を繰り返し作成する必要があります。
機会に伴う責任
ご存じのとおり、Google Cloud は、現在の状況に対処するための優れたプロダクトや機能を発表してきました。これらのプロダクトおよびプロダクト アップデートには安全性とセキュリティが組み込まれ、Google の AI の原則に則り、企業が IP、データ、個人のプライバシーの使用を制御できるようにすることに重点を置いています。ポッドキャストで配信された The New York Times との最近のインタビューで Google CEO の Sundar Pichai が述べているように、顧客、研究者、従業員にとってより良い世界を作り出すためにジェネレーティブ AI を活用できる機会は数多くあります。ただし、ジェネレーティブ AI は責任を持って使用する必要があります。エクスペリエンスを改善し、単調な作業を排除するユースケースに的を絞ることで、この世代の AI の神秘を解き明かし、、提供される価値を現実的にとらえられるようになります。
Google の AI に関する今週の話題
Google の AI の詳細に関心をお持ちの方は、ぜひ「60 Minutes」をご覧ください。Google CEO の Sundar Pichai、DeepMind CEO の Demis Hassabis をはじめとする Google のリーダーが、Bard からサッカーをするロボットまで幅広いトピックについて議論しています。前回の「The Prompt」をお読みくださった方は、Google が 4 月に行った数々のジェネレーティブ AI に関する発表についておそらくご存じだと思いますが、2 分以内にまとめられた概要をお読みになりたい場合は、Google Cloud VP の June Yang による先日の Data Cloud & AI Summit での基調講演の要約をご覧ください。
また、こちらの動画では、Google の AI の原則と Google の新しいジェネレーティブ AI プロダクトとの関わり方について、Google Cloud の Stephanie Wong が解説しています。プロダクトにとどまらず、今週は、非常に興味深い Google の AI 研究の最新情報をご紹介します。
目は心の鏡、しかしそれだけではない:Google の調査では、AI を網膜像に適用することで心血管疾患のリスクや喫煙状況まで予測できることが示されましたが、この新しい論文では、こうした知見を老化や、疾患の新しいバイオマーカー探しにまで広げています。
ML で災害を回避:自然災害の中で最も多いのが洪水です。AI を効果的に使えば、大災害が起こる前に人々に注意を喚起できます。Google は、ヨハネス ケプラー大学、アラバマ大学、エルサレム ヘブライ大学などの研究者と共同で、ML ベースの洪水予測アプローチを開発しました。こちらのブログ投稿で、最新のワークショップ「Machine Learning Meets Flood Forecasting」(ML と洪水予測の融合)についてご確認ください。洪水に対する理解を深め、より堅牢な予測と警報のシステムを構築するための Google、大学、その他の組織による取り組みを紹介しています。
AI エージェントが友だちになるとき:Google は、スタンフォード大学と共同で、人間のような行動をシミュレートするジェネレーティブ AI エージェントが仮想環境に置かれたときにどのように反応するのかを詳述した新しい論文を発表しました。この研究では、AI エージェントがお互いをイベントに招待するなどの社会的行動をとるようになることについて説明するとともに、今後数年間でジェネレーティブ AI が実現するであろう発見や機会についても言及しています。この AI エージェントのやり取りは、こちらのデモでご覧になれます。
- Google Cloud、AI &ビジネス ソリューション担当グローバル VP、Philip Moyer