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プロンプト エンジニアリングの活かし方 - 見えてきた「未来の働き方」

2023年10月23日
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Google Cloud Japan Team

生成 AI は、私たちの働き方だけでなく、考え方までを刷新することを求めます。従業員はそんな生成 AI の活用をどこからはじめられるのか、そしてそれを組織はどのように支援できるのかを解説します。

※この投稿は米国時間 2023 年 9 月 27日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

ほとんどの企業が、生成 AI と大規模言語モデル(LLM)が持つ可能性を探求しており、その可能性はすでにケーススタディや実際の使用例に表れています。経営幹部は、こうした技術から最大の利益を得ることができる部署はどこかという問題だけではなく、従業員のメリットを最大にするにはどのような方法をとるべきかという重要な問題に取り組んでいます。

たとえば、MIT、BCG、UPenn Wharton などの機関が発表した最近の論文では、従業員が生成 AI を利用してパフォーマンスを著しく高めた事例が示されています。元々パフォーマンスが優れていた従業員については 17% の生産性向上が見られた一方、パフォーマンスが低かった従業員はなんと 43% も生産性が向上したのです。

LLM が従業員の生産性に与える影響が完全に明らかになるのはこれからです。しかし、その破壊的な技術があらゆるレベルで産業に革命を起こし、あらゆるレベルの従業員に多大な影響を与えることは明らかです。大きな成果につながるかどうかは、従業員が生成 AI について十分に理解しているか、その技術をどのようにワークフローに組み込むかにかかっています。生成 AI アシスタントや、企業向け生産性向上ソフトウェアに組み込まれた機能を利用しても、画期的と呼べるほどの成果が得られないケースもあるかもしれません。

こうした土台があるため、モデルに磨きをかけ、最適な結果を生み出すための手法、プロンプトエンジニアリングが不可欠なスキルになりつつあるのです。多くの企業は、この技術を強化し、ビジネスのあらゆる側面に取り入れていこうとしています。

ではなぜこのプロセスは、LLM と効果的に連携するうえでそれほど重要なのでしょうか?プロンプトの作成者の言葉やアイデアによって、出力される結果が標準的か飛び抜けたものか定義されるからです。プロンプトの作成者をサポートする方法を以下に示します。

プロンプトの力

LLM を最大限に活用するには、望ましい出力を得るためにそれをどのように扱うべきか、理解する必要があります。

検索クエリが検索エンジンから特定の結果を返すのと同様に、生成 AI のプロンプトはモデルから返されるレスポンスを導き出します。選んだ言葉やフレーズ、プロンプトの構造、提供するコンテキストは、出力を形成する指示とガイダンスとして機能します。もしプロンプトが不正確で、設計が不適切かあいまいであれば、生成される出力もおそらく同様になります。

簡単に言えば、LLM は学習した以上のことを認識できません。

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たとえば、Google の Pathways-based Language Model(PaLM)2 は、数十億ページのテキスト、ウェブページ、学術論文などを学習し、自然言語でテキストやコードを生成するモデルを作成しました。しかしモデル自体は、この情報やその適用方法について意識的な理解や認識を持っていません。

次のようなプロンプトがあるとします。

「弦理論の説明を書いてください。」

このプロンプトはレスポンスを生成しますが、モデルの動作を制御するためのその他のガードレールは提供していません。どのようなタスクの遂行を目指しているのか指定していませんし、求めている結果に関する追加の指示も含めていません。これは、同僚があなたに対して、目的とする範囲や具体的な成果物に関する詳細を示さずにプロジェクトの完了を依頼するようなものです。

コンテキストが重要であるという点で、プロンプト エンジニアリングも例外ではありません。あなたはプロデューサーであるだけでなく、監督でもあります。できるだけ具体的で明確な指示を出すほど、「俳優」は動きやすくなります。

弦理論のクエリを実行する LLM は、弦理論の定義を要約する短い段落を作成するタスクなのか、基本的な概念を説明する動画のスクリプトを作成するタスクなのか、フレームワーク全体を概説する複数のコースを含む完全な教育カリキュラムを作成するタスクなのかを知りません。

プロンプト エンジニアリングではコンテキストが重要です。あなたはプロデューサーであるだけでなく、監督でもあります。できるだけ具体的で明確な指示を出すほど、「俳優」は動きやすくなります。

効果的なプロンプトとしては、たとえば次のようなものが挙げられます。

「物理学を初めて学ぶ 12 歳から 14 歳の生徒向けに、弦理論の基本的な概念を説明する 300 ワードのブログ記事を書いてください。自然な言語とわかりやすい文章を使って回答を作成してください。」

コンテキスト、対象読者、トーン、声、フォーマットに関する詳細を提供することで、モデルに、レスポンスを生成する際の判断を助ける枠組みが与えられます。場合によっては、コンテンツを作成する際に LLM が理想的な見込み客を理解できるように、代表的な例を示したり、顧客、市場、業界に関する追加情報を提供したりすることもあります。

プロンプトは、モデルがその能力を活かし、特定のビジネス要件と対象読者の要件を最も効果的に満たすための設計図のように機能します。重要になるのは、モデルの可能性を引き出し、高品質で関連性のある正確な結果が得られるような、適切なプロンプトを作成することです。

プロンプトとレスポンスのサイクル

プロンプト エンジニアリングは、初期のプロンプトだけでなく、レスポンスも重要な役割を果たします。これは入力と出力の共生的な関係です。初期のプロンプトが方向性を定義するとともに、生成された結果を通じて、後続のプロンプトを微調整するためのフィードバックが可能になります。

レスポンスは、プロンプトやトレーニング データの強みと弱みを反映する鏡のようなものです。「不正確な」結果は、改善すべき点を明らかにし、望むレスポンスを生成するために、どの部分で明確さが不足しているか、どんな追加情報が必要かについて、有用な手がかりを提供することが多々あります。

上記の弦理論のプロンプトを使用して、以下のような追加のコンテキストを加えると、出力がどのように変わるかを評価できます。

  • LLM がレスポンスを生成する際に想定すべきペルソナ
  • 小見出し、箇条書き、行動喚起などのフォーマット情報
  • 引用、例、または逸話を追加するという指示
  • コンテンツから除外する情報に関する具体的な詳細

入力するたびに、生成された結果を期待値と照らし合わせて分析し、必要に応じて修正し、希望する結果が得られるまでこのプロセスを繰り返すことができます。この継続的な対話ループを通じてさまざまなアプローチを試すことができ、構造と表現の個々の変更によりモデルのレスポンスの品質、精度、適合率がどのように変わるかを確認できます。

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プロンプト エンジニアリングは、科学であると同時に創造的なアートでもあります。その成功には、大規模言語モデルの技術的な制約を認識したうえで、パフォーマンスと精度を最大化する能力が欠かせません。モデルが異なれば、アーキテクチャ、トレーニング方法、データセットも異なります。特定のモデルに適したアプローチが、別のモデルでは効果的でない場合もあります。クエリを試すことで、異なるモデルがどのように決定を下すかがわかるとともに、不要なバイアスやハルシネーション(事実とは異なる内容や文脈に合わない出力)を軽減する方法が得られます。

プロンプトを活用して生産性向上を実現

生成 AI の活用は始まったばかりですが、私たちの時間とエネルギーを奪う反復的なタスクを引き受けることで、すでに私たちが価値の高い仕事に集中する助けになっています。

マーケターは、コンテキストに合った魅力的なコンテンツを数分で起草する方法を見つけつつあります。デベロッパーは、AI 駆動のコード生成、コード補完、デバッグなどを行う生成 AI アシスタントによって、生産性を飛躍的に向上させています。コンタクト センターの担当者は、生成 AI インターフェースと生成された要約のサポートにより、対応時間を短縮し、自身の作業負担を軽減しながらも、カスタマー エクスペリエンスを向上させています。

生成 AI を導入する組織が増え続ける中で、かつてなく重要になっているのは、従業員がこうしたモデルと技術を最大限に活用できるスキルと知識を持つことです。従業員が、バイアスのかかった出力や不可解な出力といったよくある問題を回避しつつ、適切な入力を設計し、微調整を行う方法を習得できるように、トレーニング プログラムに投資するか、生成 AI を取り上げた Google Cloud Skills Boost などの無料のリソースの利用をご検討ください。

従業員が自身の知見と業界の専門知識を活かし、組織のデータと結びつけながら生成 AI を使用し始めれば、それまでのパフォーマンス レベルにかかわらず能力が強化されます。ただし、ツールを持っているだけで、すべての従業員や部門に均一なメリットが保証されるわけではありません。

一方、トレーニングや Google Cloud の生成 AI の学習パスなどの無料のコースへの投資は最も高いリターンをもたらすはずです。十分なトレーニングを受けた従業員の価値は、プロンプト作成における個人的な生産性の向上にとどまらず、ビジネス全体に広がり、生成 AI 時代における成功と成長を促進することにつながります。


冒頭の画像は、Google Cloud で Midjourney を使用して、「マンガ風に描かれた、周囲に思考やアイデアが浮かんでいる多様なジェンダーと人種からなるエンジニアのグループ」というプロンプトで作成しました(思ったほど簡単ではありませんでした。何度もやり直し、さらに微調整を加えて、約 1 時間で作成しています)。

- スタッフ デベロッパー アドボケイト Priyanka Vergadia

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