Deutsche Bank がクラウドスキルを大規模に構築している方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 10 月 27 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Deutsche Bank(DB)は、ヨーロッパに深く根ざした、グローバルなネットワークを持つドイツの大手銀行です。DB は、従来のインフラストラクチャ管理におけるワークロードを軽減することで、エンジニアリング コミュニティが金融サービスの提供をモダナイズすることに集中できるようにしたいと考えていました。需要に応じて動的にスケールできるソリューションの実現と、新しいアプリケーションの製品化までの時間を短縮したいという DB の強い思いが、インフラストラクチャをクラウドに移行する重要な推進力となりました。Deutsche Bank と Google Cloud は、2020 年後半に戦略的パートナーシップを結び、DB の Google Cloud への移行を加速させ、次世代のクラウドベース金融サービスの共同イノベーションを実施しました。この複数年にわたるパートナーシップは、金融サービス業界では初めてのことです。
Deutsche Bank は、オンプレミスのコアシステムを Google Cloud に移行する過程で、人材育成と企業全体のスキルアップを通じて組織内の技術的な自給率を高める必要性を強く感じるようになりました。クラウド コンピューティングの専門知識を備えた人材に対する需要があらゆる分野で急増する一方で、クラウドスキルの成長とトレーニングの普及は、業界全体におけるクラウドへの移行に対する取り組みに後れを取っているのが現状です。最新のレポートからもわかるように、専門知識を持つ人材プールを拡大するために、組織自らが事前に対策を行う必要があります。
Deutsche Bank が直面していたスキルの習得と人材育成に関する課題の規模は、非常に大きなものでした。長年にわたり外部の請負業者に依頼してきたため、銀行のエンジニアリング能力と専門知識の多くは、常勤の従業員以外の人材に集中していたのです。さらに、金融業界全体で起きていた、クラウドスキルの専門知識を備えた人材獲得競争が激しさを増し、この状況を悪化させました。DB のエンジニアリング文化を再活性化する必要があるのは明白で、人材の育成、獲得、維持が、DB のクラウド変革の取り組みにおける重要な要素となりました。
最近の IDC による調査1によると、包括的にトレーニングを受けた組織では、開発者の生産性が促進され、イノベーションが加速し、従業員の定着率が向上することがわかっています。DB には、数十か所に配置されたテクノロジー、データ、イノベーション(TDI)部門に所属する従業員が 15,000 人ほどおり、費用対効果を確保しつつ、さまざまな形式で包括的な学習体験を提供する方法について戦略的に考える必要がありました。戦略的パートナーシップにより、Deutsche Bank は、Google Cloud プレミアム サポート、コンサルティング サービス、学習サービスといった Google Cloud カスタマー エクスペリエンス サービスの専門知識とリソースを活用して、ビジネスニーズを満たし、特定のスキルギャップを対象とした、新しい体系的な学習プログラムを開発できるようになりました。
プレミアム サポートの一環として、Deutsche Bank は、テクニカル アカウント マネージャー(TAM)と連携し、提案された学習プログラムによって、より広範なクラウドへの移行プロセスのサポートがどのように行われるかについて、先を見越したガイダンスを受けました。このプロジェクトを確実に成功させるために、Deutsche Bank をサポートする TAM は、アプリとデータ、インフラストラクチャとアーキテクチャ、オンボーディングと管理をはじめとする、Deutsche Bank 全体のさまざまな分野と連携を取りました。また、クラウド コンサルティング サービスでは DB と連携して、プログラムがもたらす長期的な影響と、ビジネス全体を支える動的なエンジニアリング文化を構築するために、プログラムを継続的に改善する方法について検討しました。Google Cloud 学習サービスを活用することで、Deutsche Bank が企業規模で認定資格プログラムを実施するために必要なシステム、専門知識、プロジェクト管理が提供され、今回の人材育成の取り組みが実現しました。金融サービスのような複雑で規制の厳しい業界では、業界特有のコンテンツへのニーズが非常に高まっています。この新しい Deutsche Bank クラウド エンジニアリング プログラムでは、専門家が作成したコンテンツとコホート アプローチを活用して、学習者のビジネスニーズに合わせたコンテンツを提供しています。さらに、同僚と対象分野の専門家との間で自己省察、ディスカッション、ディベートを行う場を設けています。クラスルーム トレーニングは意図的にアジャイルに行われ、さまざまな形式で繰り返されることで見えてきた、DB 社員のスキルセットのギャップを埋め、特定の学習機会を必要なチームに対して優先的に提供しています。
Google Cloud Skills Boost は、Deutsche Bank が技術的な自給率の向上を目指した戦略において、もう一つの重要な要素です。Deutsche Bank は Google Cloud の支援を受け、特定の分野におけるクラウドスキルの向上を目的として設計された、キュレート済みの学習プログラムを作成しました。DB は、オンデマンドのコース、クエスト、ハンズオンラボを組み合わせることで、ニーズや技術的な専門知識のレベルが異なる複数のチームに対して、同時に専門のトレーニングを実施しました。Google Cloud Skills Boost では、各自で学習プロセスを簡単に追跡できるように、統一された学習プロファイルを提供すると同時に管理者が行うコホートの管理も簡素化しています。
また、同様に重要だったのが、連続的な専門能力の開発を行う文化を強化するために、スキルアップを支える継続的な共有スペースを確立することでした。現在、Deutsche Bank では、学習に専念する「エンジニアリング デー」を毎月設けていて、すべての技術者が新しいスキルの開発を目指して学習に取り組むことが推奨されています。セッションの多くは DB を対象とした分野の専門家が担当し、現行のプロジェクトで特定の Google Cloud プロダクトまたはサービスをどのように活用しているかを確認します。
この広範な企業規模の取り組みと並行して、対象を絞ったアプローチも採用され、Advanced Solutions Lab(ASL)を通じて、Google Cloud 独自の人工知能(AI)と機械学習(ML)のエンジニアから直接学ぶ機会が得られる 2 つの連続したトレーニング コホートも提供しています。その結果、DB のデータ サイエンスと機械学習(ML)の専門家が初めて Vertex AI の MLOps の使用を検討し、Google Cloud でエンドツーエンドの ML パイプラインを構築して、ML プロセス全体の自動化を実現できました。
「当行は Advanced Solutions Lab に参加することで、イノベーションに向けた取り組みを加速させ、S&P の株式予測を検討するためのプロトタイプと、視覚障がい者の方が手に持っている通貨を認識できるようにアプリを構成する方法を開発できました。これらの ASL プログラムは、創造性を引き出すだけでなく、人間関係を構築し社内の専門知識を向上させる良い機会にもなりました。」 - Deutsche Bank クラウドおよびイノベーション ネットワーク担当データ分析責任者 Mark Stokell 氏
戦略的パートナーシップを結んでから最初の 18 か月で、5,000 人以上がトレーニングを受け、週に約 10 個の新しい Google Cloud 認定資格を取得しました。また、社内の DB クラウド エンジニアリング認定資格の取得のため 1,400 人以上のエンジニアがサポートを受けました。多くの従業員がこの新しい学習プログラムに理解を示し参加していることは、このプログラムの成功と、TDI 部門に携わる従業員の継続的な専門的能力の開発に投資し続けることの価値を示唆しています。
「スキル開発は、長期的な成功のための重要な要因です。クラスルーム トレーニング、ゲーム性のある Cloud Hero のイベントを取り入れた社内イベントの強化、Google Cloud Skills Boost による継続的なスキル開発の機会の提供を組み合わせることで、本当の意味で会社全体と関わることができたと感じています。当行は、コホートベースのプログラムを活用し、大規模な学習を可能にする革新的な方法を開発しています。これにより、何百人もの従業員が具体的な進歩を遂げ、認定資格を取得するモチベーションを高めています。常に高い満足感を得ていることから、学習者がこのプログラムを気に入っていることは明らかです。」 - Deutsche Bank 北米テクノロジー センター最高技術責任者 Andrey Tapekha 氏
人材育成の取り組みを成功させた Deutsche Bank は、クラウド変革を進めるための、継続的な機会と課題に対処する体制を整えました。DB と Google Cloud は現在、戦略的パートナーシップによる共有リソースと専門知識を基に、次のことに目を向けています。
それは、この学習プログラムが企業全体に与える影響を評価し、支えとなる動的な学習文化を確立させることで、どのように新しい人材を引きつけることができるかを検討することです。
Google Cloud カスタマー エクスペリエンス サービスを活用した、組織の人材変革に向けた取り組みに対するサポートの詳細は、以下をご覧ください。
● 専門家による技術的なガイダンスとサポートでビジネス イノベーションを後押しする Google Cloud プレミアム サポート
● チームのクラウド教育を発展、多様化させる Google Cloud トレーニングと認定資格
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1. IDC ホワイト ペーパー(Google Cloud 学習サービスが資金提供)「To Maximize Your Cloud Benefits, Maximize Training」IDC #US48867222、2022 年 3 月。
- EMEA クラウド学習サービス担当顧客トレーニング責任者 Sebastian Trost
- CCE EMEA グローバル ビジネス担当顧客文化および変革スペシャリスト - Finn Toner