プロダクション レディな AI エージェントの構築: スタートアップ向けヒントとアドバイス

Iliana Quinonez
Director, Customer Engineering for Startups, Google Cloud
Ahsif Sheikh
AI Customer Engineer, Google Cloud
※この投稿は米国時間 2025 年 10 月 8 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
スタートアップはエージェント AI を使用して、複雑なワークフローの自動化、新しいユーザー エクスペリエンスの創出、技術的に不可能とされていたビジネス上の問題の解決に取り組んでいます。それでも、特に AI エージェントの統合を伴う今後の方向性において最適なものを選ぶには、技術的な複雑さが伴うことが多くあります。
スタートアップがこの新しい状況に対応できるよう、Google は「スタートアップ向け技術ガイド: AI エージェント」をリリースしました。このガイドは、エージェント システムの可能性を最大限に引き出すための、体系的で運用主導のロードマップを提供します。
この可能性を具体的に見てみましょう。AI エージェントは、高度な AI モデルのインテリジェンスとツールへのアクセスを組み合わせて、お客様に代わって、お客様の管理の下で動作できます。従来の AI とは異なり、エージェント AI は複雑なタスクを分解し、計画を改良して、外部のリソースやツールを動的に活用できます。重要なポイントは、AI エージェントは複雑な複数ステップの問題に取り組むことができるということです。最終的には、受動的なツールから、能動的な問題解決ツールへと変貌します。
エージェント AI の活用を考えているスタートアップは、まず以下の手順を検討する必要があります。そして、構築の準備が整いましたらガイドで詳細を確認するか、Google Cloud の AI エキスパートにお問い合わせください。
方針の選択: 構築、使用、統合
スタートアップの道のりはそれぞれ異なります。そのため、Google Cloud は、エージェント システムの包括的な開発をサポートできる、柔軟なエージェント エコシステムを提供しています。これにより、次のことが可能になります。
- 独自のエージェントの構築: エージェントの動作を高度に制御する必要があるチームには、オープンソースの Agent Development Kit(ADK)が最適な開発フレームワークです。ADK は、カスタムのコードファースト アプローチ向けに構築されており、デベロッパーは AI 搭載エージェントの構築、管理、評価、デプロイを行うことができます。アプリケーション ファーストのアプローチでは、Google Agentspace が AI ワークフォース全体をオーケストレートし、技術者以外のチームメンバーがノーコード デザイナーを使用してカスタム エージェントを構築できるようにします。
- Google Cloud エージェントの使用: マネージド エージェントを使用すると、迅速なプロトタイピングと既存のアプリへの AI の簡単な統合が可能になり、インフラストラクチャの管理ではなくコア ビジネス ロジックに集中できます。Gemini Code Assist はデベロッパー向けの AI アシスタントで、Gemini Cloud Assist は Google Cloud 環境向けの AI エキスパートです。
- パートナー エージェントの導入: より専門的なユースケースについては、Google Cloud Marketplace を介してサードパーティまたはオープンソースのエージェントをスタックに簡単に統合できます。また、Agent Garden を利用して、データ推論とエージェント間のコラボレーションをすでにサポートしている事前構築済みの ADK エージェントをデプロイすることも可能です。
どちらのパスを選択しても、Google のエコシステムは相互運用性を重視して設計されており、Model Context Protocol(MCP)や Agent2Agent(A2A)プロトコルなどのオープン スタンダードに基づいて構築されています。


最初のエージェントを構築するための 4 つのステップ
スタートアップ向け技術ガイド: AI エージェントでは、プロダクション レディな AI エージェントを構築するための完全なロードマップを提供しています。Agent Development Kit(ADK)を使用して最初のエージェントを定義するのに役立つ 4 つのコアステップをご紹介します。
ステップ 1: エージェントにアイデンティティを与える
まず、エージェントの核となるアイデンティティを定義します。ログ記録と委任のために一意の名前を付け、他のエージェントがタスクをルーティングできるように機能の明確な説明を付け、推論を強化する適切な AI 基盤モデル(Gemini 2.5 Pro や Gemma など)を特定する必要があります。ここでは精度が重要です。使用しているモデルは、この定義のすべての部分をプロンプトとして扱います。曖昧な説明は「コンテキスト ポイズニング」につながり、エージェントが誤った目標を追求する原因となります。
ステップ 2: 指示を含む「最優先事項」を記述する
次に、指示パラメータを使用して、エージェントに「最優先事項」を与えます。ここでは、ペルソナ、主な目標、すべきこととすべきでないことを定義します。効果的な指示では、エージェントに求める結果を明確に指定し、複雑なタスク(少数ショット プロンプトなど)の例を示し、エージェントにツールの使用方法を指示します。
ステップ 3: ツールでスーパーパワーを付与する
外部 API の呼び出し、データベースの検索、他のシステムとのやり取りを行う機能をエージェントに装備することで、エージェントを単なる会話者から行動を起こせるシステムに変えることができます。これにより、より幅広い機能が提供されます。たとえば、バグ アシスタント エージェントは、ツールを使用して CRM からユーザーの詳細を取得したり、プロジェクト管理システムでチケットを作成したりします。エージェントは、ツールの名前と説明に基づいて使用するツールを選択するため、ループ動作や誤ったアクションを回避するには、名前と説明を明確かつユニークにすることが重要です。
ステップ 4: ライフサイクルをマスターする: テスト、デプロイ、運用
エージェントの構築は、1 回限りのタスクではなく、継続的なサイクルです。エージェント システムは非決定的であるため、標準的な単体テストでは不十分です。Google Cloud のガイドでは、エージェントの「軌跡」(段階的な推論)を評価して、品質と信頼性を確保する方法を紹介します。この運用上の厳格さ(AgentOps と呼んでいます)は、Vertex AI Agent Engine や
Cloud Run などのプラットフォームでエージェントを確実にデプロイするために重要です。


すでにエージェントを活用しているケース
スタートアップはエージェントのジャーニーを常に革新しています。Google Cloud のモデルとアーキテクチャを使用してエージェント システムを実行している 2 つのスタートアップをご紹介します。
行動につながる分析情報で従業員エンゲージメントを向上
次世代の従業員エンゲージメント ソリューションを提供する Wotter は、従業員が何を求めているかをより深く理解し、適切なタイミングで適切な人に適切な質問をすることで、組織が従業員を最大限に活用するために必要な分析情報を提供することを目指しています。
Gemini 2.5 Flash は、スピードと長文コンテキストの推論を兼ね備えた、Wotter のスマート アシスタントに最適な基盤モデルでした。Wotter の Flash モデルは、エージェント手法を使用して、従業員のやり取りやフィードバックなど、広範かつ継続的なデータソースを管理します。同時に、このデータに関するクエリに数秒で応答し、クエリあたりの費用も低く抑えます。
法律業界の長年の課題を解消
法律業界の皆様はよくご存じのとおり、複雑な文書審査は夜間や週末の残業になることがあり、戦略的な業務から注意をそらしてしまいます。そこで登場したのが Harvey です。Harvey は、法律の専門家が効率を最大限に高め、法律事務所や顧客にとって重要な活動に集中できるよう、ドメイン固有の AI を提供しています。
Harvey は複数の基盤モデルを評価し、最終的に Gemini 2.5 Pro が BigLaw Bench ベンチマークで 85.02% というトップスコアを達成したことを確認しました。BigLaw Bench は、複雑な法的タスクを代表する初のベンチマークです。Gemini 2.5 Pro は、数百ページの資料からなる入力に対して、優れた推論能力を発揮しました。これは、法律業務では一般的なシナリオです。その後、モデルはこれらの資料を使用して、より長い形式の包括的な出力を生成し、より深い分析情報と分析を可能にしました。
これらのコア機能により、Gemini 2.5 Pro は、デュー デリジェンス、レビュー、ユースケースの作成をサポートするために大量のドキュメントを推論する必要がある複雑な法的業務全体でその可能性を実証しました。さらに、Vertex AI は厳格なセキュリティとプライバシーを保証し、顧客の間で Harvey プラットフォームに対する信頼を築いています。Gemini と Vertex AI は、Harvey の将来のプロダクト開発のビジョンにおいて重要な部分を占めるようになりました。
より早く構築
スタートアップ向け技術ガイド: AI エージェントでは、ビジョンをプロダクション レディなものにするためにチームが必要とする青写真を提供します。ADK のようなコードファーストのフレームワークと、このガイドの運用原則を使用することで、非公式な「バイブ テスト」から、エージェントのライフサイクル全体を構築および管理するための厳格で信頼性の高いプロセスに移行できます。スタートアップ企業にとって、この規律あるアプローチは強力な競争優位性となります。
お客様の AI 導入の進捗状況を問わず、Google がサポートいたします。今すぐ Google のスタートアップ チームにお問い合わせください。Google for Startups クラウド プログラムで最大 35 万米ドルの Cloud クレジットを獲得できる可能性があります。
ー Google Cloud、スタートアップ担当カスタマー エンジニアリング ディレクター、Iliana Quinonez
ー Google Cloud、AI カスタマー エンジニア、Ahsif Sheikh



