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通信

ジェネレーティブ AI: 通信サービス プロバイダにおけるクラウド変革の次のフェーズ

2023年6月27日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 6 月 16 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

通信サービス プロバイダ(CSP)は今、転換期を迎えています。収益の停滞、5G 需要への対応で酷使されるネットワーク、革新的な顧客エクスペリエンスを提供するという課題など、通信産業には変革を求める大きなプレッシャーがかかっています。

ここ数年にわたって、世界中の CSP が、このような課題を解決するために AI を利用するようになりましたが、オペレータの営業費用の多くは以前と変わらずインフラやデータ管理に充てられています。そのために、コアとなるデータ アセットを活用し、顧客の個別のニーズに対応した顧客エクスペリエンスの差別化を実現する能力には限りが生じています。

ここで登場したジェネレーティブ AI は、マシン インテリジェンスの一種で、最近非常に大きな話題を呼んでいます。まるで人が書いたかのような文章を生成し、新しい画像を創作し、さらには楽譜まで作ってしまう能力には、誰もが驚かされています。これは AI のツールセットに加わった興味深い要素であり、パターン認識によって予測や効率改善提案、大規模データセットの解釈を行う能力を持つ ML を補完するものです。

注目の的となったジェネレーティブ AI ですが、Google Cloud は、通信産業においてはより実用的な視点でこれをとらえています。ジェネレーティブ AI には、CSP が日常的に使用しているさまざまなツールやプロセスを効率化できる能力があるので、すでに進行中の変革を加速することができ、人とコンピュータの間の自然なやり取りを新たな次元で実現し、話し言葉による指示で動作し、対話的に自然な応答ができるように機械をプログラムできます。

ジェネレーティブ AI は、既存の Google Cloud データ、AI、ML のサービスの上に構築されます。たとえば、発信者とコンピュータの間で人のようなやり取りができる Contact Center AI は、何年も前から CSP に採用されており、顧客とコールセンターで仕事をする人の両方の満足度向上につながっています。こうした技術にジェネレーティブ AI を追加することで、CSP やその顧客にはたとえば、役に立つ情報を提供するだけでなく、顧客の支払いやいろいろな手続きを補助できる仮想エージェントなど、さらに大きな可能性とインパクトがもたらされることになるでしょう。ジェネレーティブ AI を利用すれば、CSP は顧客からの電話のサマリーを利用して顧客の感情を理解し、クロスセルやアップセルの可能性を導き出すこともできるはずです。また、顧客の会話から得られる知識を利用する仮想エージェントを高速かつ容易に構築してデプロイすれば、さらに革新的でカスタマイズされた顧客とのやり取りが可能になるかもしれません。そして、これはまだ始まりにすぎないのです。

3 つの主要エリア

コンタクト センターは、実用的なジェネレーティブ AI が新しい価値の創出に効果を持つエリアの一例にすぎません。現在 CSP が直面している主な課題を考えてみると、ジェネレーティブ AI が革新をもたらすかもしれないエリアが 3 つ浮かび上がります。

  1. エクスペリエンスのカスタマイズ: 顧客コールセンターのやり取りの改良に加えて、ジェネレーティブ AI によれば e コマースの対話でより良いカスタマイズを提供できます。これには顧客が機種や通話プランを選択する過程を支援できる大きな効果があります。顧客離脱を抑え、興味を持ってもらえそうなサービスを提案し、顧客ライフサイクルを管理する上でも、カスタマイズは重要です。たとえば、ジェネレーティブ AI を使用すれば、特定のテーマについてカスタマイズされたマーケティング キャンペーンのコンテンツを作成して、カスタマイズされた文章や画像を使って個人向けのマーケティングができるでしょう。

  2. ネットワークの自動化: ジェネレーティブ AI はまた、ネットワークの計画や運用に使用される多様で複雑な AI / ML モデルを、大規模言語モデル(LLM)と接続することで、自動化ネットワークの実現の道を切り拓いていきます。LLM では、ネットワークの容量の計画や性能といった領域でネットワークの挙動を理解し、対応計画を作成することができます。たとえば、ジェネレーティブ AI は、顧客エクスペリエンスや感情のデータでモデルのトレーニングを行い、予測能力を改善することも可能です。重要なのは、こうしたモデルのチューニングに使用する顧客データ セットが公開のものではなく、精選された内部顧客データであることです。つまり、プライバシー、真正性、関連度が非常に重要となり、知的財産の保護も同様です。さらに、ジェネレーティブ AI では、高いレベルのレポートや分析が必要となるネットワークの計画や設計の支援もできるようになると考えられます。

  3. 運用の効率化: オペレーション センターの稼働率とフィールド サービスの効率はどちらも、コスト管理と顧客満足度の改善に対して重要です。特に、フィールド サービス機器にジェネレーティブ AI を応用すると、解析や分析のスピードが上がり、設置や部品、トラブルシューティングについても効果があり、トラックを出す回数を最小化し、フィールド サービスのトレーニングも改善されます。さらにジェネレーティブ AI は、IT 開発プロセスにおける生産性の向上にもつながり、信頼性の高いソフトウェア プロダクトやサービスのを提供するためのコードの生成やトラブルシューティングが可能になります。

データ セキュリティと信頼性

ジェネレーティブ AI ではあまり議論されない内容ですが、この技術に活用する LLM の構築やトレーニングにおけるデータ品質はセキュリティは重要です。多くの CSP では、知的財産が LLM に入り込んだり漏れたりすることで、システムや知的財産のセキュリティがリスクにさらされる可能性について相当の注意を払っています。Google は以前から業界最先端のデータ セキュリティとプライバシーの技術を提供していますが、ジェネレーティブ AI と Vertex AI を統合することで、全データが CSP の環境内に安全に保管されることを保証できます。

一方、CSP では、LLM が正確な情報を生成することを確認するために、トレーニングについてシナリオやユースケースを構築しており、トレーニングに使用するデータも所有するデータから選んだ、管理できる小さい量のデータとし、時によりパートナーから得た信頼度の高いデータも合わせて用いています。Google Cloud はまた、さらにデータの真正性と信頼性を強化するため、プロンプト エンジニアリング、チューニング、人間からのフィードバックを用いた強化学習といったツールを提供しています。これにより、ネットワーク トポロジの最適化など、小規模でインパクトの大きい問題を対象とした、最初のジェネレーティブ AI アプリケーションが誕生する可能性があります

人の要素

当然ながら、人はジェネレーティブ AI の成功のための重要な要素であり、AI の情報を自身のノウハウと合わせてコールセンターでの問題解決やフィールド サービス対応に使う場合や、マーケティングやクリエイティブのチームで新しいプレゼンテーションやマーケティング資料の作成にジェネレーティブ AI を利用してブレインストーミングする場合、運用技術者が AI の提案を補強して採用する場合など、さまざまな意味を持ちます。Google は人にできないことを補完するような技術を数多く構築してきました。たとえば、新しいワークフローの能力や生産性を高めるために、無数とは言えないまでも大量のレコードや情報源を統合しています。

通信分野は、新技術に敏感で、可能な限り最高の新技術を貪欲に学び取って導入する変化の速い分野であり、その中にはジェネレーティブ AI も含まれます。CSP とのミーティングでは毎回なんらかの新しいアイデアが生まれ、新しいユースケースや業界に変革をもたらすようなイニシアチブが生まれます。このように速いペースの変化は刺激的なものですが、まだ始まったばかりなのです。

今後のブログ投稿でも、近々、このような刺激的な CSP 業界のユースケースの詳細を紹介したいと考えています。また、Google Cloud が世界中の CSP と協業して包括的なクラウド変革を生み出している様子について、詳細をご確認ください。


  • 通信サービス プロバイダ業界担当グローバル ゼネラル マネージャー Amol Phadke
  • Google Cloud、グローバル通信業界ソリューション担当ディレクター Navneet Sahani
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