Google Cloud パートナーが AI を使用して持続可能な経済を構築した方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 12 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
気候変動の影響を次々と目の当たりにする中、気候変動対策の必要性がこれまで以上に喫緊の課題となっています。変革を支持しているのは世界中の一般市民だけではありません。気候関連の災害により、年間 5,000 億ドルを超える損害が世界経済にもたらされていることから、ビジネス リーダーも気候変動対策を重視しています。最高経営責任者が持続可能性を最優先事項として挙げる割合は、2022 年には 37% 増加(前年比)しています。
Google は、2030 年までに事業所とバリュー チェーン全体で排出量実質ゼロを達成するという大きな目標を掲げています。お客様やパートナーの皆様と協力して新しい持続可能なソリューションを開発するとともに、気候変動対策への取り組みを支援する AI などのテクノロジーの応用にも力を注いでいます。
たとえば、私たちは昨年、Google Cloud Ready Sustanability プログラムを立ち上げ、Google のパートナー エコシステムが開発した持続可能なソリューションを顧客が識別してデプロイできるようにしました。このプログラムが焦点を当てているのは、Google Cloud 上に構築されたパートナー ソリューションで、Google Cloud の AI や地球観測の機能に加え、特定の気候や ESG 関連分野の専門知識を活用するものです。これらのソリューションは、デジタル サステナビリティ、ESG(環境、社会、企業統治)パフォーマンス管理、持続可能な調達、フリートの電気化、エネルギーの最適化、グリーン ファイナンスなど、重要な領域にわたって顧客をサポートします。
AI を使用して脱炭素化経済の資金調達を支援
Google Cloud Ready Sustainability パートナーである ESG Book は、金融市場が企業のサステナビリティに関する取り組みを理解するための情報にアクセスできるようにし、投資家が十分な情報に基づいて投資判断を下せるようにしています。
ESG Book は Google Cloud AI を活用して、顧客がその膨大な量のデータを理解できるよう支援しています。たとえば、Google Cloud Document AI は、関連する ESG 情報が含まれたドキュメントを検索し、それらのドキュメントを解析して適切なデータを探し出し、そのデータを抽出して構造化データセットに入力するという一連のワークフローを自動化します。こうしたデータを投資家に販売し、投資判断に役立ててもらうことができます。同社は AI を使用してワークフローをこのように自動化することで、手動によるデータ収集作業を約 50% 効率化させることができるため、チームは経済の脱炭素化に役立つ製品をより多く開発できるようになると考えています。
このような製品の 1 つが、ニュース感情分析ツールです。このツールは、AI を使用して数百万のニュース記事の感情を照合、要約、分析し、自社のレポートではカバーしきれない企業の持続可能性や環境への取り組みについての分析情報を得ることができます。このように感情をスコアに変換することで、ESG Book の AI ワークフローは、各企業の拡張された評価を作成し、アウトサイドインの視点を提供して、金融市場が最も持続可能な企業に投資できるようにしています。
詳細なレポートで企業の温室効果ガス排出量の削減を支援
もう 1 社の Google Cloud Ready パートナーである Watershed は、企業が排出量を削減し、大気中から数百万トンの炭素を除去するのを支援しているエンタープライズ気候プラットフォームです。Google Cloud を使用することで、Watershed は監査可能なきめ細かいサステナビリティ レポートを企業の日常的な意思決定に取り入れ、Everlane のスニーカーのような温室効果ガス排出量を抑えた商品を製造するためのサプライ チェーンの脱炭素化など、排出量削減プログラムを実現するために大規模な作業を行うことができます。
サプライ チェーンの排出量に関するこのようなレベルの詳細を提供するために、Watershed のモデルはプロセスのあらゆる部分に最新のデータを利用しています。たとえば、あるセーターを作るのに必要なエネルギーについて古い数値を入力すると、サプライ チェーン全体のモデル化された数値が歪んでしまう可能性があります。そのため、Watershed は AI を使用してより頻繁にデータを測定、収集、更新し、データを合成して傾向やパターンを探してモデルに反映させ、できるだけ排出量レポートの正確性を確保できるよう試行を重ねています。
生成 AI による排出量レポートの再定義
Watershed と ESG Book の両社は、プロセスの合理化を図るだけでなく、顧客が二酸化炭素排出量データと接する方法を一変するような新しい製品やサービスを提供する生成 AI の可能性に特に期待を寄せています。Watershed の生成 AI に関するビジョンは、企業がサプライ チェーンにある膨大な量の非構造化テキストベースのデータをモデリングに使用できる形式に変換し、社内プロセスの効率を向上させることです。また、関連するサステナビリティのデータセットでトレーニングさせた大規模言語モデル(LLM)を使用して ESG レポートを作成する機能を顧客に提供すれば、企業は時間を大幅に節約できるため、その時間をサステナビリティ目標に向けた取り組みに費やせます。
ESG Book はすでに、AI で企業の GHG 排出量を予測していますが、資産運用会社や投資銀行などの投資家が膨大なデータセットをまったく新しい方法で照会できるようにするために、生成 AI をどのように使用できるかを模索しています。現在、ESG Book が提供しているスクリーニングや可視化のツールは高度に構造化されています。しかし、同社は生成 AI を使用して、顧客が非構造化の自然言語の質問を使ってデータを無限にマイニングし、傾向分析、ヒートマップ、相関関係、あるいは現状ではスケーリングが難しい極めて具体的なリクエストなどの分析情報を取得できるようにする計画です。ESG Book は、顧客がそのデータを使って企業のサステナビリティに関する取り組みについて、かつてないほどの分析情報を取得できるようにすることで、脱炭素化の未来に備える企業に向けてさらに的を絞り込んだ投資フローを実現したいと考えています。
差し迫った課題に対応するパートナーとプラットフォーム
AI を使用したより持続可能なビジネスの運営支援はまだ初期段階にありますが、Watershed や ESG Book の事例が示すように、パートナー主導型の AI ソリューションは、環境のサステナビリティに関する企業の考え方や行動を変革する大きな可能性を秘めています。環境面と経済面のそれぞれから重圧がかかる中、AI はカーボンフリーの未来を実現していく上で重要な役割を担っています。私たちが直面している課題の規模を考えれば、AI を活用した気候変動対策にますます期待が高まります。
COP28 開催期間中のブログについては、こちらをご覧ください。
-グローバル パートナー エコシステムおよびチャネル担当コーポレート バイス プレジデント Kevin Ichhpurani
-Google Cloud Ready Sustainability 担当グローバル ISV リード Denise Pearl