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リテール

小売業者にとってデータ クリーンルームがデータ共有とデータ プライバシーの未来の鍵となる理由

2023年4月21日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 4 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: 今回は Lytics にお話を伺いました。同社の顧客データ プラットフォームでは、マーケティング担当者が Google Cloud を活用したデータ サイエンスおよび ML の意思決定エンジンを使用して、カスタマイズされたデジタル エクスペリエンスや 1 対 1 のマーケティング キャンペーンを構築しています。


データ クリーンルームは、ビジネス全体で、そのブランド間で、あるいはパートナーとともに情報を活用するための優れたツールですが、多くの場合、十分に活用されていません。データ クリーンルームは、データに焦点を当てた、物理的なクリーンルームに相当するもので、クリーンルーム内のものを継続的に保護することを目的としています。マーケティング部門から、IT 部門、経営陣に至るまで、クリーンルームはチームによるデータの使い方を変革する手段になります。IAB のデータによると、クリーンルームは今や、オーディエンス分析、測定、データの有効活用に不可欠なビジネス ソリューションにもなっています。それでも、前述したような用途は、クリーンルーム テクノロジーで可能なことのほんの一部にすぎません。結果として、「企業は 2023 年に、先を見越して自社のデータ クリーンルーム機能を最大限に活用するために 29% 多く投資する」と IAB は予測しています。

Lytics の顧客データ プラットフォーム(CDP)を使用することで、組織はより有意義に顧客とつながることができます。当社は Google Cloud と連携して、今こそ、小売ブランドや日用品(CPG)ブランドがデータ、特にデータ クリーンルームで何を成し遂げられるかを根本から考え直すべきだと考えています。

クリーンルームが非常に重要である理由

クリーンルームは長年、セキュリティを維持しながらデータを拡張するために、金融業界や医療業界で使用されていますが、現在は、プライバシーが重視される現状に対応している小売ブランドや日用品ブランドの間で普及が進んでいます。

サードパーティのクロスサイト Cookie を通じて収集されるデータとは対照的に、ブランドが直接収集するデータは、今後さらに価値が高まっていくでしょう。クリーンルームにより、簡単かつ確実に以下が可能になります。

  • データの共有と有効活用。マーケティング、IT、経営陣の各チームが優れた情報を利用できるようになると、会社全体が強化されます。同時に、個人情報(PII)を保護でき、データリスクに関する懸念も排除できます。

  • 顧客プロファイルの強化。今日のデータのソースは無数にあります。クリーンルームにデータを保存することで、より詳細な情報で既存の顧客プロファイルを強化し、チーム間で顧客のビューを拡充できます。

  • 連絡先の共有。連絡先情報はアウトリーチに不可欠です。正確な連絡先情報がないプロファイルは役に立たないため、クリーンルームを使用してこのような詳細情報を追加することは非常に重要です。

  • マッチリストの利用。使用可能なデータポイントが増えるため、リストを比較し、連絡先を特定の特徴や ID と照合することが可能になります。

  • 共同キャンペーン。会社の他の部門と協力してキャンペーンを実施することで、効率的かつ正確に、一貫性のあるメッセージを伝えることができます。

会社全体でクリーンルームのユースケースを特定

データ クリーンルームは、収集して保存する情報を一般化したいと考えている小売業者や日用品企業にとって不可欠ですが、全社的なデータ品質やパイプラインの状態を担当する技術チームやデータチームを主な対象として作られているツールであると誤解されることがよくあります。実際にはその逆で、社内のさまざまな事業部門でデータ クリーンルームを使用することで得られる大きなメリットは数多く存在します。

マーケティング組織でのクリーンルームの主なユースケースの一部を以下にご紹介します。

1. コンプライアンスの確保

コンプライアンスは、今日のマーケティング運用において絶えず存在し、重要性が増している側面です。コンプライアンスの状況は常に変化しており、考慮すべき新たな更新事項や必須事項が追加されています。マーケティング担当者は、データ クリーンルームのプロバイダを利用することにより、推測でコンプライアンスに対処しなくても、生じ得るあらゆる不一致や変更を常に把握することができます。マーケティング チームにとって、データポリシーとデータの使用方法を確実に遵守することは、時間と資金の大きな節約になります。

2. データの匿名化の活用

個人を特定せずに顧客や顧客グループの情報を取得できるようになることを想像してみてください。匿名化は、顧客データのプライバシーを保護しながらマーケティングを行う効果的な方法です。実際、パーソナライズかプライバシーかという悪評高いパラドックスは、データ クリーンルームを介して匿名化データを使用することで解決できます。個人を特定できる情報が含まれているデータでも、クリーンルーム内で暗号化またはハッシュ化によってスクラブできるため、使用可能です。

3. 優れたプロファイル最適化

データ クリーンルームでは、顧客プロファイルに含まれているデータを分析、操作、フィルタできます。たとえば、サードパーティ データを除去して自社データのみを確認したり、既存の自社データにサードパーティ データをオーバーレイしたりできます。クリーンルームでは、たとえば、特定のメール メッセージや商品の特長には反応するものの、それ以外には反応しないグループなど、さまざまな要因を考慮できます。データ クリーンルームは、A/B テスト、セグメント化、リスト作成用の優れた機能を提供します。その一方で、データは保護され、安全が確保されます。

IT チームやデータチームは、クリーンルームを使用することで、次のようにデータの影響力を強化、拡大できる可能性があります。

1. データのプライバシーとセキュリティのレベルアップ

業界を問わず、IT プロフェッショナルにとって、プライバシーとセキュリティは最優先事項ですが、顧客中心の対応が成功に不可欠である小売業界と日用品業界では特に重要になります。毎日のように、ビジネス運営やブランドの評判を脅かす恐れがある新たなサイバー脅威が出現しています。ランサムウェア攻撃やデータ損失によってシステムが侵害されると、多額の費用がかかる場合があります。データ クリーンルームは、データを管理、整理、使用できる安全な環境をブランドに提供できます。データ漏洩やセキュリティ侵害のリスクを軽減しながらデータを使用できる優れたソリューションです。

2. ML の強化

AI と ML は、IT チームにより複数の用途で使用される機会が増えています。重要なのは、アルゴリズムにフィードして ML を改善するのに十分なデータを用意することです。データ クリーンルームは、豊富で実用的な情報を幅広く提供します。この情報は、機械による学習と適応の方法を改善し、よりスマートで精度の高い、優れたモデルを構築するうえで役立ちます。優れたモデルがあれば、提供された分析情報を拡張し、より良い結果を生成できるようになります。

経営陣とリーダシップのチーム向けのユースケースは次のとおりです。

1. 収益の増加と費用の削減

データ共有は、データ マネジメント費用と財務面の可能性の両方において機会をもたらします。まず、データ マネジメント プロセスの簡素化により、組織はデータ マネジメント費用を大幅に削減できます。また、所有するデータの効率的なアクセス、分析、使用を通じて運用費も削減できます。

2. より多くのパートナーシップの確保

データ共有における提携により、組織はブランドを安全かつ十分に拡大できる新たな関係を築くことができます。新しいデータパートナーと新しいデータセットを利用することで、新しい共通点を見出すことができます。そこから思いがけない新しいビジネス機会が生まれるかもしれません。これは組織に幅広い影響をもたらす可能性があります。たとえば、小売業者はそのデータと関係を活用して、商品開発、カスタマー サービス、マーケティング、販売で新しい機会を創出できます。

そのデータすべてが必然的に、詳しい分析情報や発見につながります。このような新しい観察結果から、これまでは想像できなかった形でデータを収益化する新しい収益源が見つかる可能性があります。それは新しい収益源に限らず、新しい商品やサービス、場合によっては新しいビジネスモデルかもしれません。

BigQuery で構築された Lytics Clean Room Solution について

Lytics と Google Cloud は、BigQuery と Lytics Platform 内で、安全なデータ交換サービスである Analytics Hub を活用して、データを安全に共有するためのスケーラブルで再利用性の高いサービスを開発しました。

Lytics Clean Room Solution は、Lytics が提供する、Google Cloud 上で実行される安全なデータ共有および拡充ソリューションです。このソリューションは BigQuery との統合を特長としており、それによって Lytics は、データ共有を簡素化し、活用するのに最適なアプリケーションとなっています。これは、企業が既存の BigQuery データ ウェアハウスを構築または拡張するうえで役立つデータセットを統一、統合することで実現しています。Analytics Hub により、Lytics は、データの価値を最大限に引き出すことを重視している組織のために、より効果的にデータ マネジメントのニーズに対応し、複雑なデータ共有シナリオで価値創出までの時間を短縮できる機能を提供しています。つまり、パートナーシップのコラボレーションを安全かつ確実に行い、ブランド間でのデータの有効活用をわずか数時間で実現できます。

小売ブランドや日用品ブランドも同様に、Lytics Clean Room Solution を使用することで、BigQuery でホストされるデータを安全に共有し、共有データを顧客プロファイルに取り入れて有効活用できます。このソリューションでは、ミッション クリティカルなデータをより厳密に管理し、迅速に有効活用することができます。また、このソリューションを活用して、プライバシーに関する厳しい制約、業界のコンプライアンス基準、新たな規制に対応することもできます。

データ クリーンルームは、ビジネスの運営方法や、顧客とのつながり方を変革するための、比類のない機会をもたらします。特に小売業界では、クリーンルームのように、補完的で、統合された、スケーラブルなテクノロジーにより、その機能を最大限に活用し、企業データツールを、ビジネスを推進するツールへと変えることができます。ただし、そのためには、投資を行い、それを最大限に活用するための先見の明が必要です。

小売ブランドや日用品ブランドが、接続された、インテリジェントで安全なデータを利用してビジネス価値を引き出す方法の詳細については、Lytics と Google Cloud が提供する新しい電子書籍をご覧ください

- Lytics、プロダクトおよびプロダクト マーケティング担当シニア バイス プレジデント Jeff Seacrist 氏
- Google Cloud、セールス、リテール、および CPG 戦略 ISV ポートフォリオ担当ディレクター Vikas Jain

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