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リテール

THE YES、Google Cloud で e コマースを変革

2021年1月15日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2020 年 12 月 17 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

この 1 年は、小売業界歴史上最も激動の年であったとして思い出されることでしょう。世界中の小売業者とブランドは、ビジネスを迅速に変革し、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によってもたらされた課題に適応しなければならないという重圧を経験しました。

従業員と買い物客をパンデミックから守るために、小売業者は店舗を閉めて店内の流通量を制限したため、消費者は今まで以上に電話、ノートパソコン、タブレットを使って買い物をするようになりました。2021 年が小売業界にとってどんな年になるかを予測することは難しいとしても、1 つ確かなことは、オンライン ショッピングの台頭です。

今年はオンライン ショッピングが最前線に立ち、ほとんどの小売業者の売上を牽引するといった、e コマースに革新の嵐を巻き起こしています。小売業者やブランドが来年の計画を練る中で、多くがデジタル戦略やオンライン戦略を優先し、多額の投資を行うことになるでしょう。

THE YES は、新しく立ち上げられたオンライン ショッピング プラットフォームで、アイコニックなファッションブランドや新進気鋭のファッションブランドからの好みに応じたおすすめを基に構築されており、小売業に必要とされるイノベーションの好例です。Google Cloud がそのプラットフォームの強化に役立てることを嬉しく思っています。同社は今までの e コマース スタックを完全に再構築し、基盤に人工知能(AI)を埋め込んで、何百ものアイコニックな世界的ブランドから一人ひとりの買い物客向けに厳選した商品のみを集めたカスタマイズド オンライン カタログを提供します。

私は THE YES の創業者兼 CEO の Julie Bornstein 氏と、共同創業者兼 CTO の Amit Aggarwal 氏と話をし、同社の詳細やプラットフォーム全体で Google Cloud をどのように活用しているのかについて伺うことができました。

Tharp: 皆さんにとって今年は重大な 1 年となりましたね。年末商戦がたけなわですが、この年末のアプリのパフォーマンスはいかがでしたか。期待どおりでしたか。 

Bornstein 氏: ありがとうございます。当社にとってとてもエキサイティングな年で、年末商戦も例外ではありませんでした。COVID-19 のため、たくさんの買い物客が家に留まり、ブラック フライデーにはアプリからのショッピングが急増し、ブラック フライデーの 65% のオンライン セールスがスマートフォンで行われたものでした。THE YES については、年末商戦で売上が 2 倍になりました。ただ面白いことに、世の中がセールやお買い得品に注目している中で、当社の売上の 3 分の 2 は正規料金の商品が占めているのです。これが AI の力なのです。レコメンデーション エンジンが証明してくれたのは、良い提案があれば、正規料金での健全なビジネスを継続していけるということです。当社が最終的に考えているのは、ブラック フライデーの販売サイクルについてではなく、テクノロジーを使って、膨大で繊細なファンション カテゴリーの中から買い物客が欲しいものを見つけられるようにすることです。

Tharp: Aggarwal さん、元 Google 社員として顧客の立場となり、Google のソリューションを実装する側になった感想を教えてください。

Aggarwal 氏: 面白い体験でした。当社の AI 搭載アプリは、それぞれの買い物客のために独自の「ストア」を構築するため、すべてのおすすめが各買い物客のスタイルやお気に入りブランドに固有のものになります。これを可能にするために、当社は新しい買い物の仕方を生み出し、その技術インフラストラクチャを一から構築する必要がありました。Google での経験を活かして、THE YES の構築方法を形作ることができました。今、以前とは逆の立場にいることで、テクノロジーがいかに買い物客に個人的な体験を与えられるかということを直に理解することができ、それがやりがいにつながっているのだと実感しています。そしてもちろん、ジュリーのような業界の未来を切り開く小売業のエキスパートと働けるのは光栄です。

Tharp: THE YES と Google Cloud がどのように連携しているのか説明していただけますか。

Aggarwal 氏: テクノロジーは当社のマーケットプレイスにおける基盤であり、e コマースの未来を切り開くものです。THE YES では、ファッションを理解してエンコードする AI を構築し、ファッション分野における最も広範な検索エンジンとレコメンデーション エンジンを開発することに着手しました。Google Cloud はこれを実現するための重要なパートナーでした。Google Cloud テクノロジーにより、新しいことを試す、モデルをトレーニングする、実験してすばやく学習するといったことが簡単にできたため、開発に 3~4 年かかるはずの作業が加速されました。

1 対 1 モデルを使用して、リアルタイムで e コマースの技術スタックを再構築し、買い物をする各ユーザーに結果とレコメンデーションを適応させました。これは、通常は非常に高価で、非常に難しい構築方法です。Pub/SubSpannerKubernetes Engine といった Google Cloud ツールのおかげで、これを効率的でパフォーマンスが高く、費用対効果の高い方法で行うことができました。また、ブランドとの統合を容易にするために、Cloud Vision API を使用し、また人間の介入を必要としない方法で多くのブランドからのデータをインテリジェントに取り込む機械学習モデルを使用しています。これを基盤とし、BigQueryLooker を使って、リアルタイムでデータとトレンドを本当に理解し、会社の意思決定を行うことでブランドがビジネス目標を達成できるようにしました。

Google Cloud を利用することで、インフラストラクチャに時間をかけずに、自社のコア技術とドメインの専門知識に集中することができ、当社の開発者はそれを容易にするツールを持っています。

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Tharp: ブランドにとっての利点は何でしょう。どうやってこんなにもたくさんのファッション界のアイコニックなブランドとパートナーになることができたのですか。

Bornstein 氏: Balenciaga や Prada から Everlane や Levi’s まで、225 のブランドとパートナーになっています。ショッピングや小売がこれまで以上にオンライン化されている時代に、THE YES はブランドに新しいチャネルを提供し、非常に興味は高いものの、ネットに不慣れで特定のブランドを検索することなど考えたこともないお客様を導くことができます。広告に大々的に投資する以外の方法で、巣ごもり中の買い物客の注意を引くことは非常に困難です。ブランドは、特にショッピングの初期の段階で、適切な対象者にリーチする独自の方法を探しています。ブランドは、買い物客が別のアプリやブラウザに移動することなく、アプリ内で簡単に購入の手続きができるという点に価値を見出し、気に入っています。

さらに、ブランド自体は商品をアプリに統合するためにほとんど何もする必要がありません。それでいて、ブランドの美学、商品説明、価格は適正に保たれます。

Tharp: 当面の課題は何ですか。また、テクノロジーはどのように THE YES がこれらを克服するのに役立っていますか。

Aggarwal 氏: 今日、ユーザーは選択肢に圧倒されています。一方でブランドはブランド価値とアイデンティティを維持しながらお客様にリーチする方法を模索しています。e コマースの汎用型モデルは、もはや機能しません。消費者は、自分にあったスタイルとサイズを求めて、商品ページをスクロールし続けることにうんざりしています。当社の高度な技術によって、消費者とブランドの間のギャップの橋渡しを促進します。他の e コマース プラットフォームは消費者データにアクセスはできても、それを活用してショッピング体験をカスタマイズする方法を知りません。THE YES では、AI を活用した洗練されたアルゴリズムを用いて、消費者が欲しいものを、消費者のサイズで、フィードの一番上に提供します。

Tharp: オンライン ショッピングの台頭は小売業界では語り尽くされた話題ですね。しかし、今年の記録的なオンライン年末商戦や全体的に前例のないレベルのオンライン トラフィックからも、パンデミックによってこのトレンドがいかに推し進められたかがわかります。小売業界の未来はどうなると思いますか。

Bornstein 氏: そのとおりですね、以前からオンライン ショッピングの台頭が話題になっていましたが、世界的なパンデミックの影響で、世界中の多くの小売業者がこのプロセスを加速させています。ブラック フライデーのオンライン販売は今年だけで 20% 増となっており、この 1 年に見てきたことのいくつかは、多くの小売業者の戦略の一部として残っていくと言ってもいいでしょう。消費者はオンライン ショッピングの方法をより多く求めており、ブランドは流通チャネルを多様化し、成長させる必要があります。今後も、より多くのブランドがデジタルでその存在を広め、AI などの先進技術を導入して、消費者によりパーソナライズされた体験を提供するための新たな方法を模索していくことが予想されます。

Tharp: これは THE YES にどのように影響しますか。消費者やブランドが 2021 年に期待できることは何ですか。

Bornstein 氏: 年末商戦の締めくくりに、THE YES チームの今後の展開を楽しみにしています。今年は、何百ものブランドのカタログからあらゆる商品のテキストと画像を使ってすべての側面を理解するソフトウェア システムを含む、ファッションにおいて最も広範な分類を構築しました。現在、買い物客は iOS App Store で THE YES を見つけられます。将来については、Google Cloud パートナーとともに革新的な技術を構築し続け、より多くのブランドをお客様にお届けしていきたいと考えています。

-Google Cloud 小売および消費ソリューション部門バイス プレジデント Carrie Tharp

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