【Next Tokyo ’23 】DAY1 基調講演ハイライト。生成 AI テクノロジーと Google Cloud 最新アップデート！

Next Tokyo ’23 初日は、生成 AI を中心とした Google Cloud のアップデートを紹介しました。基調講演はオンデマンドで提供されているので、見逃した方はぜひこちらからご覧ください。

今年、最も話題になったテクノロジーは「生成 AI」です。この急速に進化するテクノロジーは、「触ってみる」段階から、「生成AIを活用したアプリケーションやソリューションを開発する」段階に移行しています。ただし、「ハルシネーション」として知られる、事実に即していない回答を生成する問題など、解決すべき課題も依然として存在します。Google Cloud は、「グラウンディング」と呼ばれるアプローチを採用し、外部データソースを参照しながら事実に基づいた回答を生成できるようにしています。

企業が生成 AI を本格的に導入するには、最適なインフラストラクチャを選択することが重要です。この分野でも、Google Cloud の GPU や TPU が広く利用されています。例えば、2023 年 9 月には、AI の学術領域でリーダーシップを発揮する東京大学の松尾研究室で大規模言語モデルを体系的に学ぶサマースクールが開催され、Google Cloud の GPU プラットフォームが採用されました。11 月には、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が、ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業における「生成AI基盤モデル」開発支援に関する公募を開始しました。本支援事業において、Google Cloud は NVIDIA H100 GPU を含むリソースを提供する予定です。

Google Cloud の AI ソリューション

Google Cloud は迅速に生成 AI を活用したアプリケーションを構築するために、Vertex AI という統合開発・運用プラットフォームを提供しています。特に、2023 年 5 月には、大規模言語モデルの最新バージョンである PaLM 2 を発表し、8 月にはその日本語対応について発表しました。PaLM 2は、業界固有の情報を学習させた LLM も提供しており、たとえば「Med-PaLM 2」は、医療情報のデータを学習させ、医療に関する質問に適切な回答を生成できます。

中外製薬の取り組み

中外製薬では「デジタルを活用した革新的な新薬創出」に取り組んでおり、Google のグループ企業である DeepMind が提供する「AlphaFold2」を Google Cloud 上で実行する環境を用意しています。これにより、研究プロセスを大幅に短縮し、多くの薬の候補を迅速に創出できることが期待されています。さらに、Google の AI 基盤と医療用言語モデル「Med-PaLM 2」を活用して、治験関連文書の検索・処理を迅速化し、臨床試験の計画を効率化する取り組みを行っています。また、Tech Acceleration Program (TAP) を活用し、内製化の取り組みも進めており、アプリケーション開発を内製で行い、AI の柔軟な利用とシステム間連携を実現する計画を進行中です。

Vertex AI の最新アップデート

Vertex AI は、生成 AI によるユーザー体験向上を支援する統合開発・運用プラットフォームです。ユーザーは Vertex AI を使用して、新たなアプリケーションを作成し、製品開発やマーケティングチームにリアルタイムの顧客嗜好情報を提供したり、医療従事者により良い患者ケア方法を提供したり、メーカーが迅速に新しい従業員を訓練する方法を見つけたりすることができます。

また、顧客や従業員向けに、生成AIを使用した検索と会話アプリケーションを簡単に構築できる Vertex AI Search と Vertex AI Conversation の日本語での一般提供を発表しました。デモでは、Vertex AI Search とグラウンディングを用いることで、ハルシネーションを簡単に防ぐことができることを説明しました。

Vertex AI の最新アップデートの一部を紹介します。

• Codey のチューニング一般提供: コードを作成してコーディングの問題に対する回答を提案するだけでなく、企業独自のコードベースから情報を安全かつ確実に抽出し、既存のコードで最適に動作するように出力を調整できるようになりました。
• マルチモーダル Embeddings: コストとサイズをバランスして、性能向上を行いました。これにより、テキストと画像の両方を利用して、テキストや画像の検索、レコメンドができるようになりました。また、ビデオの Embeddings も現在プライベートプレビュー段階にあり、間もなく一般リリースされる予定です。
• 基盤モデルのデータレジデンシー DRZ 日本リージョンのサポート: Google Cloud の生成 AI サービスをご利用のお客様は、日本を含むアジア、北米、欧州の 10 か国から Data Residency（DRZ: データ所在地）を選択することが可能になります。
• Vertex AI Search と Conversation 日本語利用: Vertex AI Search を利用すれば、企業データを検索し、それに対しフォローアップの質問をしたり、知りたいことを要約するためのアプリケーションを短時間で構築できます。 また、Vertex AI Conversation により、人間のようなチャットボットを数回クリックするだけで作成できます。

ZOZO における 生成 AI への取り組み

ZOZO が提供する WEAR は日本最大級のファッションコーディネートアプリで、多様なユーザーが投稿したコーディネート画像から最新のトレンドを知ることができます。これまで WEAR では、コーディネートの説明文を社員が作成していましたが、今後の拡大を考えると質と量の両面で課題がありました。そこで、Vertex AI を採用し、PaLM 2 を使った文章生成による業務の効率化に取り組みました。Vertex AI を選んだ理由は、使いやすさ、ファッション特有の言葉の安定感、文章生成速度、および文章の質の標準化でした。

Duet AI in Google Workspace について

Duet AI in Google Workspace は、すでに 数千以上の企業で 100 万人以上に使用されております。。Duet AI は Google が独自に開発した大規模言語モデル PaLM 2 を利用しており、安全で管理性の高い Web ブラウザーのみで利用可能なだけでなく、個々のサービスへの生成 AI 技術の提供、そして複数のサービスやコンテンツをシームレスに連携させることができる高度な生成 AI 技術を提供します。Duet AI を利用すると、例えば、ユーザーの代わりにブログの記事を書いてくれます。その時、ユーザーがすでに持っているドキュメントや、部門で管理されている別のスプレッドシートなど複数のコンテンツを題材として、ユーザーが書きたいブログを書き上げてくれます。また、Duet AI を使用すると、Google Meet は 300 以上の言語の組み合わせをリアルタイムで自動的に検出して翻訳し、ユーザーにすぐに字幕を提供できます。さらに、Duet AI は会議に遅れて参加した人に、それまでの情報を要約して表示してくれます。Duet AI for Google Workspace は 2024 年末までに日本語のサポートを開始する予定です。

Duet AI in Google Cloud は、Google Cloud に最適化されたモデルとしてトレーニングされた AI コラボレーターです。コード生成、コードの説明、引用元の提示、テストコードの生成、API 設計と公開、アプリケーションの移行および最新化、アプリケーションの安全性の確保を実現できます。さらに、デプロイの自動化、アプリケーションが正しく設定されていることを保証、デバッグをサポートします。また、データ分析の分野では、BigQuery と Looker の Duet AI を使用することで、自然言語および SQL、Python、LookML の自動生成機能を使用して、データにアクセスして分析できます。データベースの分野では、Duet AI が Database Migration Service を強化し、 Oracle データベースから AlloyDB への移行をサポートします。

セキュリティについて

Google Cloud における セキュリティは Sec-PaLM 2 によって強化されています。Sec-PaLM 2 は、セキュリティに特化した大規模言語モデルです。脆弱性情報、マルウェア、攻撃者のプロファイルなど、最前線で得られた脅威インテリジェンスが組み込まれています。さらに、Google Cloud は AI の支援を受けつつ、下記の 3 つのユースケースに取り組んでいます。

• 最前線におけるサイバー攻撃からの防御
  Mandiant では、年間 1800 件以上もの侵害調査を行っています。また、世界最大規模のマルウェア・データベースである Virus Total を提供しています。Google Cloud では、これら専門的な経験と知見、およびインテリジェンスを各種ソリューションとサービスに組み込み、お客様のサイバー防御態勢強化を支援しています。
• セキュリティ運用のモダナイゼーション
  Chronicle Security Operations は、従来の固定的なセキュリティ運用を変革します。お客様のセキュリティ テレメトリーを取り込み、高速な分析を行います。お客様は、Google の実用的な脅威インテリジェンスを脅威の検知と対応に利用し、プラットフォーム上で Mandiant の専門家によるサポートを受けることもできます。
• Google Cloud プラットフォーム自身におけるセキュリティ
  Google Cloud 自身におけるセキュリティにおいても、信頼性の高いクラウドサービスを提供し、セキュリティを向上させています。

加えて、「Assured Workloads」が、日本で正式に利用可能となりました。これにより、データの日本国内での保存、組織ポリシーの違反検出、暗号化方法の詳細な制御などが可能となり、金融、官公庁、医療、社会インフラを担う企業や組織での利用が見込まれます。