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ハイブリッド クラウド

複数のクラウドからマルチクラウドへ: 成功のための重要な要素

2021年6月30日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2021 年 6 月 18 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

進展を続ける組織であるほど、クラウドは、成長促進、効率化、コスト削減のための強力なツールとなりえます。実際、クラウドは非常に強力であり、そのためほとんどの組織ではクラウドが複数使われることとなりました。Flexera1 の調査の対象となった企業の 92% もが、何かしらの形で意図的なマルチクラウド戦略を採用していると回答しています(これには、1 つ以上のパブリック クラウド、オンプレミス データセンター、プライベート クラウド上に加え、エッジ ロケーション上も該当します)。つまり、今日の企業組織にとって、マルチクラウドはきわめて現実的な選択肢です。

問題は、それぞれのクラウド プラットフォームで独自の管理手法が採用されているということです。これにより、運用上の不一致が発生するため、複数の環境をまたいだセキュリティやコンプライアンスの維持が困難になり、より高額なコストが発生します。また、デベロッパーの生産性低下、貴重な人材にかかる負荷の増大、全体的なコスト増加にもつながります。では、複雑性とコスト増の影響を最小化しつつ、複数のクラウド プロバイダを使用することにより得られる利点を獲得することは可能なのでしょうか?

その点においては心配無用です。複数のクラウド上で実行することは決して難しくなく、コストも不要で、オペレーション チームに負荷がかかることもありません。適切な対策を行うことで、やむを得ず複数のクラウドで実行している状態から脱却し、マルチクラウド アセットで収益を上げるとともに、デベロッパーやプラットフォーム管理者にとっても好ましい状態とすることができます。この方法について説明する前に、なぜ複数のクラウド上で実行することになってしまうかを簡単にまとめましょう。その後、Google がどのように Anthos、Looker、BigQuery Omni、Apigee API 管理などのクラウド サービスをマルチクラウド環境に導入し、クラウドが提供するあらゆるものを活用できるようにしているかをご説明します。

なぜ複数のクラウド上で実行するのか

なぜ多くの組織で複数のクラウド プロバイダが使用されるか、それは、トップクラス機能の追求と関連しています。たとえば、あるプロバイダが広範なコンピューティング オプションを提供していて、他のプロバイダがデータ分析や AI サービスを強みとしていて、他のプロバイダがレガシー環境のサポートを提供している、ということはありえるでしょう。

複数のクラウドで実行するという決定は、しばしば役員室でなされます。このようなビジネス上の意思決定は時として、クラウド プロバイダのロックインを回避する、単一のクラウド インフラストラクチャへの過度な依存を回避するための規制を遵守する、その地域に固有の消費者保護法(GDPR、カリフォルニア州消費者プライバシー法、GAIA-X など)の要件を満たすなどのためになされます。

また、たとえば買収などの結果として、気が付いたら複数のクラウド上で実行することになっていた、ということもあります。さらに、非推奨のクラウドですでに効果的に実行されているワークロードがある場合には、プラットフォームの再構築を行う価値はないと組織で結論づけられることもあります。

複数のクラウドで実行することになった経緯には関係なく、これを適切に機能させ、複雑性を最小化し、費用を低く抑え、余計な仕事を生み出さずに人材を活用する必要があります。マルチクラウド アセットを簡素化および強化できるプラットフォームが必要であり、マルチクラウド対応のツールが求められます。Google を活用したマルチクラウド化の取り組みを成功させる方法について、そのいくつかをご紹介します。

コンテナから最新のオープン クラウドへ

複数のクラウドを利用する環境で運用する場合に組織でよくなされる手法として、まず整合性やポータビリティを探ることから始め、プラットフォーム チームのスキルとプロセスを標準化すると同時に、コンテナを使用してワークロードを複数のクラウドで実行できるポータブル形式に再パッケージ化するというものがあります。Google は Kubernetes を開発し、自社のコンテナの大規模なフリートを管理するとともに、これをオープンソース化することで他社も同様の成果を上げられるようにしました。その後、Kubernetes を組織で実行しやすくするために、信頼性と安全性の高いフルマネージド サービスである Google Kubernetes Engine(GKE)を開発しました。

その数年後には、すべてのパブリック クラウドとプライベート クラウド上での Kubernetes クラスタの管理を簡素化できるよう設計された安全性の高いマネージド プラットフォーム、Anthos を発表しました。このプラットフォームは、GKE に似たエクスペリエンスと Google の最良のオープンソース フレームワークを拡張して提供するもので、Google Cloud がサポートするコントロール プレーンを使用して分散環境にあるサービスを一貫性を持って管理できます。

今では、マルチクラウド組織は、オープンソース テクノロジーを使用して VM とコンテナの両方で実行されている重要なワークロードをデプロイし、必要に応じて移行して、最新のマイクロサービス ベースのアーキテクチャでこれを再想定できる完全なオープンクラウド アプローチを活用できます。

Anthos を利用することで、一貫した Google Cloud サービスを他のクラウドで活用できるようになります。たとえば、Apigee ハイブリッドの導入により、デベロッパー ポータル、API モニタリング、分析などのクラウドベースの Apigee 機能を使用しながら、ハイブリッド環境で API ランタイムをデプロイできるという柔軟性が実現されています。Apigee ハイブリッドは、クラウド全体に存在する信頼できるデータを API を介して公開し、より高速なアプリ構築をサポートします。また、Anthos 向けのハイブリッド AI 機能により、ワークロードの場所によらずに、Google 独自の AI テクノロジーを利用できます。AI をオンプレミスに置くことで、データの近くで AI ワークロードを実行しながら安全性を維持できるようになります。また、ハイブリッド AI では最高水準の AI テクノロジーにオンプレミスで簡単にアクセスできるため、開発プロセスが簡略化されます。ハイブリッド AI として最初のサービスである Speech-to-Text On-Prem は、現在 Google Cloud Marketplace を通じて Anthos で一般利用できるようになりました。今後 Google は、真に一貫したマルチクラウド体験を実現するべく、追加の Google Cloud サービス、開発ツール、エンジニアリング プラクティスを他の環境に拡張していきます。

マルチクラウド データ分析プラットフォームで新たな分析情報を獲得

ビジネスで最適な意思決定を行うためには、データにアクセスし、分析情報を(時にはリアルタイムで)迅速に取得するための機能を実現する必要があります。このことは、複数のクラウドにデータがある場合でも同様です。残念ながら、クラウド プロバイダ間でデータを移動する費用は、多くのビジネスにとって持続可能なものではなく、クラウドをまたいでデータを分析し、操作することは依然として困難です。Google はユーザーに、Google の分析、人工知能、機械学習の機能を、データの場所にかかわらずに活用してもらいたいと考えています。データクラウドを使用すると、組織全体でデータを安全に統合できるため、サイロを解消し、アジリティを高め、イノベーションを迅速化し、データから価値を引き出して、ビジネス変革をサポートできます。

複数の環境にまたがるユーザーをサポートするために、Google は昨年、BigQuery Omni をリリースしました。これは、複数のパブリック クラウドに保存されたデータを分析する新しい方法であり、BigQuery のコンピューティングとストレージの分離によって実現されています。他社製品とは異なり、BigQuery Omni では、データをパブリック クラウドから別のパブリック クラウドに移動またはコピーする必要(および、高額な下り(外向き)コストを支払う必要)がありません。また、BigQuery Omni は Anthos を利用しているため、基盤となるインフラストラクチャを管理せずにデータをクエリできます。BigQuery Omni for Azure(現在公開プレビュー版)を使用すれば、パブリック クラウド全体のデータを 1 つの画面で分析できるようになります。これに加え、BigQuery Omni for AWS を使用することで、Google Cloud、AWS、Azure のデータにアクセスし安全に分析できるようになります。

マルチクラウド エコシステム全体で統合されたビジネス インテリジェンスであり、組み込みの分析プラットフォームである Looker も利用できます。Looker のデータベース内アーキテクチャは、さまざまなデータベースと SQL 言語をサポートしています。Looker を使用すると、複数のクラウドに保存されているデータを直接クエリして、必要なときに必要な場所で管理されたリアルタイム データをウェブスケールで提供できます。これは、BI レポートとダッシュボード、組み込みの分析、自動化されたデータドリブン ワークフロー、完全にカスタムのデータ アプリ エクスペリエンスなどを介して行えます。そのため、Looker のマルチクラウド サポートの継続的拡張をここで発表できることに、大変嬉しく思います。今回、Azure でホストされる Looker が含まれ、60 を超えるデータベース言語がサポートされるようになりました。これで、Looker インスタンスを主要なクラウド プロバイダ(Google Cloud、AWS、Azure)のいずれでもホストできるようになりました。

複数のクラウドにまたがる、クラウドネイティブなアプリを大規模に構築

理想は、開発チームがプラットフォーム固有の詳細について心配せずに済むことです。既存のアプリをモダナイズし、クラウドネイティブなマイクロサービスを構築して、あらゆるクラウド プラットフォームにデプロイすれば、一貫したサービスを場所に関係なく提供できます。さらに、インフラストラクチャ レイヤからサービスのパフォーマンスとトポロジに至るまで、すべてのクラスタを 1 つの画面から、均一な手法で管理できるようになります。多くの組織にとって、マルチクラウドはこのようなニーズに効率的に対処してはじめて価値あるものになります。

Anthos を使用すると、Kubernetes をどこでも(プライベート クラウドや Google Cloud のみならず、Azure や AWS 上でも)実行できるようになります。また、実行している場所に関係なく、Google Cloud の一連の開発ツールを環境にシームレスに統合できるため、デベロッパーやオペレーターはアプリケーションを簡単に構築、デプロイ、管理できます。たとえば、デベロッパーは Cloud Code を使用して、使い慣れた IDE 内で Kubernetes アプリケーションを作成できます。

アプリやデータを、その場所に関係なく保護する

複数の環境で実行するのであれば、セキュリティについてないがしろにすることはできません。Google Cloud のソリューションは、ユーザー、ネットワーク、アプリ、データなど、マルチクラウド環境にあるあらゆるものを保護するように設計されています。また、Google のクラウド環境でシステムを稼働していない組織であっても、これら全体での脅威の検出や調査が可能になります。Google の信頼されるクラウドは、お客様のデジタル トランスフォーメーションを実現すると同時に、お客様のリスク、セキュリティ、コンプライアンス、プライバシーの変革もサポートします。

Google のプラットフォームであれば、透明性を実現し、データ、運用、ソフトウェア全体でデジタル主権を確保できます。Google は、ユーザー自身による検証や個別の制御が可能な安全な基盤を提供し、データの場所や運用に関する制御性を維持すると同時に、その地域の規制に違反することなく自身のデータセンターからクラウドに移行できるようにしています。

マルチクラウド ジャーニーを始める

クラウド プロバイダの中には、マルチクラウドを今後進むべき道と考える顧客を無視し、クラウド サービスを顧客が必要とする場所に提供しないプロバイダがいますが、Google のアプローチはこれとは異なります。Google の目標は、データの場所やアプリケーションの実行場所に関係なく、ユーザーをサポートすることです。クラウド導入を次のレベルに持っていく準備ができているのであれば、Google のホワイトペーパー、5 ways Google can help you succeed in a hybrid and multicloud world(ハイブリッドとマルチクラウドの世界で Google を使用して成功するための 5 つの方法)をぜひご覧ください。または、Google までお問い合わせいただき、Google Cloud のマルチクラウド テクノロジーでこれを実現できるかどうかご確認ください。


1. Gartner の調査

-アプリケーション モダナイゼーション プラットフォーム部門エンジニアリング担当ゼネラル マネージャー兼バイス プレジデント Eyal Manor

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