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金融サービス

法令上の報告の新しいスローガン: シンプル、迅速、再現可能

2023年6月1日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 5 月 9 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

2008 年の世界金融危機以降、金融機関は規制環境の変化に後れをとらないように多額の投資を行ってきました。

しかし、十分なリソースを備えたチームでさえ、古いテクノロジーや高度な手動プロセスへの依存によって、進化する法令上の報告要件への対応に苦慮しています。同時に、信用、流動性、資本といった従来の領域に対する規制変化の速度は留まることを知らず、規制の範囲は気候変動リスクやオペレーショナル レジリエンスといった新しい種類のリスクを含むよう拡大しつつあります。規制当局は、すべての報告において粒度の高い一貫性のある報告を期待するようになり、規制の範囲拡大や複雑化に対処するという課題はさらに深刻化しています。

このような課題に対処するための、長年にわたる多額の投資にもかかわらず、法令上の報告に対する現在のアプローチは今でも時間と費用がかかり、データ品質の問題が山積していることが珍しくありません。ここで 1 つの疑問が生じます。最高財務責任者(CFO)や最高リスク責任者(CRO)は、財務報告、リスク報告、法令上の報告のさまざまな要件に柔軟に対応するうえで必要となるデータ アーキテクチャとテクノロジーをどのように確保できるのでしょうか。

高まる報告の需要

「世界中の規制当局は、2008 年の金融危機が繰り返されぬよう取り組みを強化しており、そのために膨大な量の法令上の報告義務が課され、その量、種類、速度は増加し続けています」と、ANZ のリスク対策および指標の変革担当責任者である Artur Kaluza 氏は述べています。

2008 年に始まった世界金融危機後の最初の 10 年間、金融機関の監督を強化するために世界的な取り組みが行われました。その結果、多数の新たな金融規制改革、データ報告要件、グローバル スタンダード、その他の規則が生まれ、銀行や保険会社から資産運用会社、住宅ローン会社など、ほぼすべての金融機関に影響を及ぼしました。この傾向は今も続いており、規制への期待はもちろん、複雑さも年々増加し続けています。

デジタル化、サイバーセキュリティ、データ主権、「環境、社会、ガバナンス(ESG)」といったメガトレンドによって規制環境が形成される現在、規制当局は報告要件を満たすことに加え、データ精度とガバナンスの向上も期待しています。

インサイト

Chris Skinner 氏の最近のブログ投稿「Tech and Cybersec in 2023: a world that is virtually different」で、Google Cloud の金融サービス ソリューション担当責任者である Zac Maufe による新しい見解が紹介されています。

「処理すべきデータ量が増え続け、規制当局の要求が厳しくなり、顧客がより迅速なサービスを期待するにつれ、プロセスを高速化して通常どおり行うだけでは不十分であることが明らかになりました。代わりに、私たちが作業のやり方を変革する必要があったのです」と、NatWest Markets でリスクおよび財務テクノロジー部門責任者を務める Chris Conway 氏は説明しています。

実際、財務データやリスクデータに対する需要の高まりは、規制の強化が大きく影響しています。すべての主要な金融規制には、より大量のデータを必要とする報告要件があり、金融機関はリスクを低減し、ストレステストを実施し、分析を行うために、大量の情報の管理、クリーニング、分析を余儀なくされています。

データの一貫性と品質の問題

金融機関は、報告の精度と効率を高めるためにテクノロジーに多額の投資を行っているものの、データ品質の課題に絶えず直面しています。リスク報告、財務報告、法令上の報告の各機能で発生するデータの重複や不整合に対処するには、データ サプライ チェーン全体で信頼性を高め、共通の定義を遵守しながら、各ユースケースをサポートするためにデータを再利用する必要があります。

現在も、そしてこれまでも、金融機関は、複雑な規制要件を満たすために、手作業によるプロセスと管理に依存してきました。基盤となるインフラストラクチャはプロダクトや事業部門ごとに編成されているため、データをサニタイズして部門間で使用できるように適合させることはより困難といえます。また、既存の法令上の報告プロセスやシステムは、単一の用途に特化したベンダーのエコシステムに依存しているため、インフラストラクチャの需要が増大し、専門的な人材が必要になります。

その結果、企業は、時間のかかる手作業によるデータ サプライ チェーン プロセスの中で、複雑に絡み合ったツールやレガシー技術スタックの管理に多大な時間、リソース、資金を投資することになるのです。

データ サプライ チェーンの変革

Google Cloud は金融機関と連携して、こうした課題に対処するための、新しい法令上の報告プラットフォームの構築に取り組んできました。

ANZ は昨年、エンドツーエンドの金融リスクおよび法令上の報告プロセスの再構築に着手しました。同行は Google Cloud を使用して、データをより迅速かつ安価に、そしてより自動化された方法で提供できるようにする、単一の統合データ プラットフォームとアーキテクチャを作成しました。

「Google Cloud により、粒度の細かいデータ処理が可能になり、下流の分離や調整処理が不要になりました。最終的に、より効率的なテクノロジーと運用モデルが実現し、従業員はより価値の高い作業に集中できるようになったのです。Google Cloud の技術スタックとアーキテクチャ パターンを使用することで、ANZ はパフォーマンスの向上、運用の効率化、費用の削減を実現しました。プロジェクトの第 1 フェーズでは、報告プロセス全体の労力を 50% 削減することができ、初日からすぐにデータを使用できるようになりました。また、データ品質(DQ)モニタリングを完全に自動化したため、労力を DQ の特定から解決へと切り替えることができました」と、Kaluza 氏は述べています。

NatWest Markets は、Google Cloudに移行して柔軟なスケーラビリティを実現し、分析機能によるリスク予測モデリングを強化し、規制遵守を合理化しています。同社は、さまざまなデータポイントからシグナルを収集し、それらを解釈してビジネス上の意思決定をタイムリーに行えるようにすることで顧客をサポートすることの重要性を認識したうえで、データ処理ワークロードを BigQuery に移行して、迅速かつ費用効率の高い方法でデータを分析情報に変換し、夜間バッチ処理の計算時間を 60% 短縮しています。

「Google Cloud は、オンデマンドのスケーラビリティ、顧客のためにできることの可能性を広げる分析機能、そしてチームをインフラストラクチャ管理から解放して顧客に注力できるようにする自動化サービスを提供してくれるので、当社にとって理想的なソリューションです」と、Conway 氏は述べています。

大規模に粒度を提供

リスク報告、財務報告、法令上の報告に対するインフラストラクチャの需要が増大する現在、品質管理が組み込まれた大規模でオンデマンドなスケーラビリティ、差異を容易に調整して明確なドキュメントとリネージを作成する機能が求められています。

Google Cloud の法令上の報告プラットフォームは、今日のレポートの需要に合わせて効率性、自動化、スピード、再利用性を実現するための 4 つの主要な柱を金融機関に提供します。

  1. ロジックやレポートのドキュメントを個別に作成するのではなく、必要なデータを特定して取り込み、レポートルールをコードとして作成します。

  2. 手動ツールを使用するのではなく、自動化されたデータ管理機能により、プラットフォーム上でデータの変換、調整、構成を行います。

  3. ストレージとコンピューティングを分離し、レポート作成ジョブを数日ではなく数分で、しかもオンデマンドで実行します。

  4. データ計算やソースデータを共有ライブラリで再利用することで、一貫性を高め、財務報告、リスク報告、法令上の報告全体にわたる追加のユースケースをサポートします。

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図: Google Cloud はお客様と連携して、業界の課題に対処するための新しい法令上の報告プラットフォームの構築に取り組んできた。

組み込みのデータ管理ツール、単一ベンダーのリスクを排除するオープンソース アーキテクチャ、データの分析と変換のための豊富でシームレスなアクセス スペースにより、Google Cloud のパワーを活用して法令上の報告をモダナイズ、変革し、必要な分析情報をいつでも得ることができます。詳しくは、Google Cloud の 法令上の報告プラットフォームをご覧ください。


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