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デベロッパー

Google が提案する未来の仮想デスクトップ

2022年12月23日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 12 月 9 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

Google で働く社員の大半が、業務で仮想デスクトップを使用していることをご存じでしたか?これは Google でクライアント コンピューティングのパラダイム シフトがあったことの表れであり、パンデミックやリモートワークの変革においては特に重要な意味を持ちました。Google では、引き続き社員がどこでも生産的に働けるようにしたいと考えています。この投稿では、仮想デスクトップの歴史と、導入時から Google が得た多数の利点について詳しくご紹介します。

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背景

2018 年、Google はクラウド上の仮想デスクトップを開発し始めました。そして、物理ワークステーションの代わりとして、Google Compute Engine 上で動作する仮想デスクトップを Google Cloud で作成した方法について説明したホワイトペーパーを公開しました。詳細な調査を行った結果、物理ワークステーション フリートをクラウド上の仮想デスクトップへ移行可能だということがわかりました。この調査は、クラウド ワークステーションと物理デスクトップを比較して社員の満足度を調べるという、ユーザー エクスペリエンスの分析から始まりました。この調査でわかったのは、クラウド デスクトップのユーザー満足度のほうが物理デスクトップよりも高いということです。これは、Google におけるクラウドベースのクライアント コンピューティングにとって非常に重要な瞬間となりました。この発見を受けて、Google の望む未来の(仮想)ワークステーション プラットフォームになり得るかどうかを理解するため、Compute Engine のさらなる分析を行いました。

現在、Google 社内では仮想デスクトップの使用が大幅に増加しています。世界中の社員が Compute Engine 上で Linux や Windows の仮想デスクトップを組み合わせて、業務を進めています。コードの記述、本番環境システムへのアクセス、問題のトラブルシューティング、生産性向上への取り組みなどを行う際は、仮想デスクトップによって作業に必要なコンピューティングが提供されています。仮想デスクトップへのアクセス方法はシンプルで、Secure Shell(SSH)経由でも、グラフィカルなアクセスツールの Chrome リモート デスクトップでもアクセスすることができます。

シンプルさとアクセシビリティのほかにも、Google は仮想デスクトップから多くの恩恵を受けています。たとえば、セキュリティ対策の改善、サステナビリティに関する取り組みの強化、Google の IT インフラストラクチャに関連するメンテナンスにかかる労力の低減などを実現しました。また、これらはすべて、物理的なワークステーション フリートよりもユーザー エクスペリエンスを向上させながら達成しています。

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Google データセンターの例

クラウドと物理デスクトップの比較分析

Google が実施した、クラウドの仮想デスクトップと物理デスクトップの比較分析を詳しく見てみましょう。この調査では、ユーザー エクスペリエンス、パフォーマンス、サステナビリティ、セキュリティ、効率性という 5 つの主な柱に基づき、クラウド デスクトップと物理デスクトップを比較しました。

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ユーザー エクスペリエンス

ユーザー エクスペリエンスの調査担当者は、仮想デスクトップへの移行が始まる前に、仮想デスクトップが社員満足度にどのような影響を与えるのかについて詳しく把握したいと考えました。そこでわかったのは、社員に仮想デスクトップのメリットがもたらされていたことです。つまり、貴重なデスクスペースを解放して、世界中のどこからでもアクセス可能な常時接続、常時利用可能なコンピューティング エクスペリエンスを獲得して、物理デスクトップと比較してメンテナンスのオーバーヘッドを削減できました。

パフォーマンス

パフォーマンスの観点から見れば、クラウド デスクトップは単純に物理デスクトップよりも優れています。たとえば、Compute Engine で実行するとコンピューティングとパフォーマンスを予測しながらオンデマンドの仮想インスタンスをスピンアップしやすくなります。これは、物理ワークステーション ベンダーではかなり難しいことです。仮想デスクトップでは、パフォーマンスに関するユーザーのニーズに基づいて Google が開発した仮想マシン(VM)ファミリーの組み合わせが活用されます。これには、社員が日常業務に使用するような Google Compute Engine の高効率な E2 インスタンスや、より要求の厳しい機械学習業務に使用するような高性能の N2 インスタンス / N2D インスタンスが含まれます。Compute Engine は、実質的にあらゆるコンピューティング ワークフローに対応できる VM シェイプを提供します。さらに、Google 全体の仮想デスクトップ フリートは一度の構成変更や簡単な再起動をするだけで、(より高い CPU や RAM を有する)新たなシェイプにものの数分でアップグレードできるため、(性能の向上などを目的に)マシンのアップグレードを気にかける必要がなくなります。そのうえ、Compute Engine には機能や新たなマシンタイプが追加され続けるため、この領域での能力は高まる一方です。

サステナビリティ

Google はサステナビリティに真剣に取り組み、2007 年以降カーボン ニュートラルを達成し続けています。物理デスクトップから Compute Engine 上の仮想デスクトップへ移行すると、Google のサステナビリティの目標であるカーボン ニュートラルなデスクトップ コンピューティング フリートにより近づくことができます。社内の設備チームは、仮想デスクトップを未来のワークスペース計画の成功として称賛しています。これは、物理ワークステーションが減ることで、新しいビルを建設する際にかかる初期費用の削減、キャンパスで使用するエネルギーの大幅な削減(最大 30%)、キャンパスで必要とされる暖房換気空調システムや回路サイズに関連する費用のさらなる削減につながるためです。最後に、物理ステーションが減ることで、物理的な電気電子機器廃棄物の削減や、工場からオフィスまでのワークステーションの輸送に関連する二酸化炭素の削減にも役立ちます。Google という企業単位では、こうした変化がサステナビリティの観点において非常に大きな成功につながるのです。

セキュリティ

仮想デスクトップにはそもそも侵害対象となるデスクトップ ハードウェアが存在しないため、不正な行為者がデータを抜き取ったり、物理デスクトップ ハードウェアを侵害したりする可能性を軽減できます。これはつまり、USB 攻撃や悪意あるメイド攻撃などの攻撃や、ハードウェアに直接アクセスしてセキュリティを破るための類似技術を懸念する必要がなくなります。さらに、クラウドベースの仮想デスクトップへ移行すると、Confidential ComputingvTPM といった Google Cloud のさまざまなセキュリティ機能を利用することによるセキュリティ対策の強化も実現します。

 

効率性

これまでは、IT 部門が新たなマシンを提供したり物理ワークステーションを修理したりするまで、社員が何日も待つのは珍しいことではありませんでした。しかし現在では、クラウドベースのデスクトップをオンデマンドで即座に作成したり、サイズ変更したりすることができます。クラウドベースのデスクトップは常にアクセス可能で、メンテナンスに関する問題の影響を実質的に受けることはありません。IT 部門は保証請求や障害対応、リサイクルといった懸念事項に対応する必要がないのです。こうした時間の節約が実現することで、IT 部門は負荷を軽減しながら、より優先順位の高い作業に注力できるようになります。Google のような規模の企業では、こうした効率化の積み重ねがすぐに成果となって現れます。

考慮すべき点

Google は仮想デスクトップから多大なメリットを得ていますが、仮想デスクトップが企業にとって適切かどうかを判断する前に、考慮すべき点がいくつかあります。まず、仮想フリートへの移行では、クライアントのインターネット接続が一貫して高い信頼性とパフォーマンスを実現する必要があることを認識しておかなければなりません。リモートや海外で働く従業員の場合、地理的に Google Cloud のリージョンに近いことが重要です(レイテンシを最小限に抑えるため)。さらに、物理ワークステーションが不可欠というケースもあります。これには、ハードウェアのテストやデバッグに USB などの直接的な I/O アクセスが必要な場合や、超低レイテンシのグラフィックスや動画編集、CAD シミュレーションが必要な場合などが挙げられます。最後に、Google ではこうした仮想デスクトップとその他のコンピューティング フリート間での相互運用性を確保するため、アセット管理などの IT システムを仮想デスクトップと統合するという追加のエンジニアリング作業が必要になりました。このようなソリューションを検討する前に、こうした機能や統合が自社に必要かどうかについて慎重に分析する必要があります。しかし、最終的にクラウドベースのデスクトップが自社にとって最適なソリューションだという結論に至るのであれば、Google が享受しているような多くのメリットを実感できると確信しています。

まとめ

Google の社員をクラウドの仮想デスクトップに移行するのにかなりのエンジニアリング業務が発生しましたが、そのメリットは同じくらい大きなものでした。この移行を行ったことで、社員の生産性や満足度の向上、セキュリティの強化、効率の向上、パフォーマンスやユーザー エクスペリエンスの大幅な改善が実現しました。つまり、クラウドベースのデスクトップは Google 社員の仕事の仕方を変えるのに役立っています。パンデミック中は、危機的な状況の中で仮想デスクトップのメリットを実感しました。社員が世界中のどこからでも自分の仮想デスクトップにアクセスできるため、社員の安全を確保し、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染経路を減らすことができました。Google は引き続きどこでも作業可能なモデルを採用し、Compute Engine に新機能や機能強化を追加し続けることで、今後より多くの社員がクラウドでコンピューティングを行うようになることを楽しみにしています。


- Google コンピューティング マネージャー Nick Yeager
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