bot のある日常: RPA と AI でデジタルタスクを自動化
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 3 月 17 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
bot がやってくるとは言っても、bot が処理するのはいわゆる「退屈な」作業なので、恐れる必要はありません。
ロボティック プロセス オートメーション(RPA)とは、ひとことで言えば AI を搭載したお手伝いさんです。このお手伝いさんには、これまで手動で行っていた繰り返しタスクを任せられます。たとえば請求書を受領し、データを抽出して、そのデータを帳簿システムに入力するなどの作業を行わせることができます。
RPA は、大企業の運営を効率化できる新しいテクノロジーとして CIO の間で以前から注目されてきました。ビジネス プロセス オートメーションや、サーバーレス テクノロジーなど開発者の負荷軽減につながる高レベルでの抽象化の流れとも合致します。RPA を導入するとルールベースの処理を伴う日常業務を自動化でき、顧客対応や製品の改善などといった、より高い価値を持つ業務に多くの時間を使えるようになります。
開発者の時間を増やすことにつながるため、Google Cloud では RPA bot を将来に向けた投資であるととらえています。RPA のリーダー企業である Automation Anywhere は、Google Cloud との複数年にわたる協力関係を築いて、顧客が API 管理、ローコードまたはノーコードでの開発、ML ワークフローの構築を通してアプリケーション自動化を進めていけるよう支援する戦略を取っています。Automation Anywhere の Automation 360 プラットフォームは Google Cloud で使用できるようになる予定(一般提供は 2021 年 5 月)で、これにより Apigee、AppSheet、AI Platform など複数の Google Cloud サービスで RPA 機能が利用可能になります。正直な話、我々開発者は常に時間が足りません。2020 年は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)をきっかけとしてデジタル化の流れが加速しました。その結果、開発者はデータの入力、増え続ける API の管理、クラウドネイティブ アプリとオンプレミスのレガシー システムの統合に関する動作確認などに多くの時間をかけなくてはならなくなりました。必要な API を既存ソフトウェアが提供していない場合は、ユーザーと開発者が時間とリソースを注ぎ込んで対応するしかないわけですが、その作業内容はなんというか、いかにもロボット的なものです。
RPA テクノロジーを導入して請求書の処理、コールセンターのワークフロー、従業員のオンボーディングなどといった日常業務を自動化している企業はすでに増え始めています。RPA は、ビジネス ロジックに従ってアプリケーションからデータをキャプチャして解釈し、トランザクション処理、データ操作、応答のトリガー、他のデジタル システムとの通信などを行います。
RPA の立ち位置
Google Cloud が目指しているのはサーバーレスでイベント ドリブンなアーキテクチャを広めることであり、RPA はこの目的に合致しています。2021 年 1 月にリリースした Cloud Workflows では、サーバーレスのワークフローを使用して、Google Cloud と HTTP ベースの API サービスのオーケストレーションと自動化が可能です。Cloud Workflows はサービス指向であり、大規模な新興システムでイベントを連結できます。Cloud Workflows を Cloud Functions や Cloud Run など他のサーバーレス サービスと組み合わせれば、外部 API の呼び出しによる柔軟なサーバーレス アプリケーションの作成も可能です。
データ処理の側面から見ると、Cloud Composer はフルマネージドのデータ ワークフロー オーケストレーション サービスで、パイプラインの作成、スケジューリング、モニタリングができ、データ処理パイプライン(バッチ処理や ML ワークフローなど)とは極めて相性が良いと言えます。
RPA は ML と AI を活用するので、サーバーレスを補完する存在でもあります。RPA は、通常は人間が手動で行う煩雑なビジネス プロセスを AI で自動化します。また同時に、Google Cloud の Document AI や Lending DocAI のような AI サービス群に新たな機能性をもたらす存在でもあります。たとえば、Document AI を使用すると、融資プロセスにおいて手動で行われてきた書類の突き合わせ作業を自動化して、融資アプリケーションのプロセス全体にかかる時間を短縮できます。そこに RPA bot を組み合わせれば、別のシステム(クラウドベースの融資プラットフォームなど)に接続することも可能になります。
私は、RPA が価値を発揮する場所は金融サービス、製造、医療とライフ サイエンス、通信、小売り、公共部門といった業界それぞれの特有のユースケースにあると考えています。RPA を使えば、文書やスプレッドシートの中に埋もれた情報(XML ファイル、ウェブサーバーのログ、センサーデータ、メール、画像などに含まれる非構造化データ)を探し出す、頭の痛くなるような作業を自動で処理できます。
そのため、Google Cloud エコシステムにおいては Apigee、AppSheet、Google Cloud ML API、Google Cloud AI Platform が RPA 導入のよい入口となります。これらはローコードで使え、API 管理ができ、ML に焦点を当てているプロダクトであり、コンピュータ ビジョン、自然言語処理、ML を統合してビジネス文書やメールに含まれる情報のカテゴリ分割、抽出、検証を行う Automation Anywhere の機能との相性は抜群です。たとえば、Automation Anywhere の IQ Bot は構造化されていないデータを掘り起こし、前述のような処理(たとえば数値データを抽出して、それを使用して計算を行い、結果を別のアプリケーションに転送する、など)を自動で行うことができます。
一方で、Apigee はハイブリッド環境やオンプレミス環境の境界をまたいで API のフル ライフサイクル管理レイヤとしてデプロイし、環境全体を単一の画面で管理できます。これにより、Automation Anywhere の内部 API や bot を、適切にデザインされたセキュアなマネージド API として可視化できます。そして、AppSheet を使えば、それらのフルマネージド API を使ってノーコードでカスタム アプリケーションを構築できます。Google スプレッドシートや Salesforce などのデータソースとの接続機構も組み込まれているので、これらと組み合わせて承認、監査、スケジューリングに活用できます。
RPA bot は退屈な処理を片付けますが、それを活用する方法はいくらでもクリエイティブに考えられます。たとえば、RPA を別のテクノロジーと組み合わせて使用し、複数のプロダクトを連動させることができます。また、Google Cloud の NLP API を使用する RPA bot を作成して、よくある質問のメールに適切な応答を返したり、すばやく会議のスケジューリングを行ったりすることも可能です。さらに、Cloud Workflows を使えば、顧客からの注文を処理し、サプライヤーに在庫の補充を発注して、大量発注があれば外部 API を呼び出してセールス担当者に通知を送信することもできます。トレーディング カードの宣伝文句ではありませんが、まさに「いろいろ集めて交換しよう」です。
RPA と開発プロセスを切り離さない
RPA ではローコードの視覚的な方法でアプリケーションの構築や統合ができることが強調されますが、RPA は長期的な視点から見る必要があり、自動化された開発サイクル全体に組み込むべきものです。RPA においても、例外処理とデータ構造の重要性は変わりません。ある意味では、RPA はソフトウェア テスティングの対極に位置します。テスティングは不具合をあぶり出してソフトウェア アプリケーションの動作を「止める」ための自動化ですが、RPA は業務の処理を「止めない」ことを主眼に置いた自動化です。RPA bot の構築と維持管理は、高い耐久性を備えた bot を作ることであり、また、bot を限界ぎりぎりまで酷使しているときにはそれがわかるようになることです(そのようなケースでは、従来型のソフトウェア開発プロジェクトとして取り組むほうが有効な場合もあります)。
Google Cloud にはサーバーレス、API、AI の各サービスが揃っており、Automation Anywhere と Google Cloud を使って画期的なことを行う下地は整っています。自動化はこれからさらに浸透していきます。そうした中にあって、本質的に余計なことを行わない RPA は、基盤となるシステムに障害を発生させることなく既存インフラを最大限に活用し、開発者の時間を解放してロボットにはできないタスクに従事できるようにする助けとなることでしょう。
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