メインフレームのモダナイゼーションのその先へ: 可能性を広げる手段
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 8 月 6 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
メインフレームのモダナイゼーションは、ここ 10 年ほどホットなテーマとなっています。多くの人々がメインフレーム時代の終焉を予測していましたが、メインフレームは今なお存在感を放ち、力強い成長を見せています。時間の経過とともに、「モダナイゼーション」という言葉自体が、さまざまな形で顕在化してきています。そのため、このテーマについて論じるにあたり、まず「モダナイゼーション」とは何かを定義する必要があります。
かつて Henry Ford 氏は、「何が欲しいかと尋ねれば、人は皆、もっと速い馬が欲しいと答えただろう」と述べました。しかし、Ford 氏が世に送り出したのは大衆の生活を改善する自動車でした。モダナイゼーションは進化に似ています。後から考えてみると、ライフスタイル、レジリエンス、知識、コミュニケーション、そして知恵全般において、人類が成し遂げてきた進歩を反映しているのです。
スマートフォンにおいても同様で、この分野におけるモダナイゼーションは、軽量化、画面幅の拡大、速度の向上、ストレージの増加を意味しました。その後、2007 年に入って iPhone が登場。これは革新的で、人とデジタル機器との関わり方を一変させました。
メインフレームのモダナイゼーションを決定する
メインフレームのモダナイゼーションに着手するかどうかは、通常、インフラストラクチャ オーナー、アプリケーション オーナー、ビジネス オーナーという 3 つの利害関係者によって決定されます。長い間、メインフレームのモダナイゼーションの焦点は、高コスト、利用可能なスキルセットの不足、データ ロックイン、最新のツールやプロダクトとの統合の不備など、インフラストラクチャとアプリケーションの問題を解決することに当てられてきました。言い換えれば、メインフレームのモダナイゼーションでは、インフラストラクチャ層とアプリケーション層にしか焦点を当ててこなかったということです。
本稿では、最も重要な関係者でありスポンサーである「ビジネス オーナー」の重要性を理解していきたいと思います。
データとアプリケーションの特性に応じたプロセス
長きにわたり、メインフレームのモダナイゼーションのプロセスは、単にワークロードをメインフレームから移動させることと定義されてきました。ビジネスの拡大にはほとんど、あるいはまったく焦点が当てられてこなかったため、このようなプロジェクトを開始または完了しても大きな成果は得られませんでした。
しかし、メインフレームのモダナイゼーションは、ビジネス上の重要課題という視点から捉えるべきです。変革に着手する際は、事前に目標を明確にしておく必要があります。これにより、適切なパートナーや信頼できるアドバイザーを特定し、全体的な取り組みを最適化して、その目標に到達するまでの中継地点の数を最小限に抑えることができます。
メインフレームのモダナイゼーションに対する Google のアプローチは、ビジネスニーズをモダナイゼーション イニシアチブの最前線に置くことを軸にしています。これらのアプローチを 1 つずつ見ていきましょう。
One Google: 大規模な Google のエコシステムの一部である Google Cloud サービスは、マップ、検索、広告などのプロダクトと簡単かつシームレスに統合するため、高度にパーソナライズされた強力なユーザー エクスペリエンスを提供できます。ほとんどの企業のお客様は、これらのサービスのいずれか、または複数のサービスの既存サブスクライバーであるため、Google Cloud サービスとの統合も簡単です。
データファーストのモダナイゼーション アプローチ: Google は、メインフレームのモダナイゼーションに対して、メインフレームから Google Cloud Datastore への「記録システム」または「エンゲージメント システム」の移行を含む、データファーストのアプローチを提供しています。このアプローチにより、さまざまな方法でデータを最大限活用できます。
データや AppSheet のようなツールを活用して、ビジネス ユーザー(つまり、シチズン デベロッパー)がアプリを構築できるようにする。
ウェブアプリとモバイルアプリを Google Cloud のデータにルーティングすることで、メインフレームの使用量を削減する。
メインフレームから Google Cloud に移行したデータを高度な分析に組み込むことで、お客様の行動を理解し、市場に適した製品を生み出す。
Google Cloud の AI / ML: 人工知能と機械学習を使用した未加工データからの情報と知恵の抽出において、Google に並ぶものはありません。お客様は、市場のトレンドや行動パターンを理解するうえで大きな競争優位性を獲得できます。さらに、高度にパーソナライズされたエクスペリエンスを提供しながら、お客様の要件も優に満たせるようになります。
業界専用ソリューション: Google は、ビジネスに特化した業界別ソリューションに多額の投資を行ってきました。その DNA と文化にイノベーションが深く根ざしている Google では、検索をはじめ、物事を常に枠に縛られずに捉えてきました。その一例が AlphaFold です。これは、Google の DeepMind によって作成された、タンパク質構造の予測を行う人工知能プログラムです。また、Verily は世界中の健康データを活用し、人々がより長く、より健康的な生活を送れるようにすることをミッションとしています。同様に、Waymo は完全自動運転に、Wing はドローン配達にそれぞれ重点を置いており、Route4Me は企業に使いやすい運転ルートの最適化ソリューションを提供しています。金融サービスでは、Google Pay、Lending DocAI、Procurement DocAI、クレジット カード不正使用のリアルタイム検出ソリューションなどが挙げられます。
このようなビジネスの拡大と強化には、最先端のクラウド インフラストラクチャが必要です。
ハードウェア セキュリティ: Google OpenTitan は、ルート オブ トラスト(RoT)シリコンチップで透過的かつ高品質なリファレンス デザインと統合ガイドラインを構築する、初のオープンソース プロジェクトです。
データ セキュリティ: データの所有権はユーザーにあります。ユーザーがルールを設定し、誰が何にアクセスする必要があるかを決定します。Google Cloud は、保管中や移動中だけでなく、処理中もデータを暗号化します。
レイテンシ: 社内ネットワークに光ファイバーと海底ケーブルが含まれ、他のソリューションに比べてレイテンシの影響が大幅に減少します。Google 検索も同じプラットフォーム上で実行されています。
スケーラビリティ: Alphabet は、Android、Chrome、Gmail、ドライブ、マップ、検索、Play ストア、YouTube、フォトの 9 つのプロダクトを有し、それぞれ 10 億人を超えるユーザーを抱えています。これらは Google Cloud 上で動作しており、すべてのユーザーに安定したエクスペリエンスを提供しています。
100% カーボン ニュートラルなフットプリント: お客様がカーボン ニュートラルに対する義務を果たせるようサポートし、地球を救うことに貢献します。
Sabre、Deutsche Bank、Albertsons Companies、Telus のような大規模ディールの多くは、Google がお客様とのビジネスの拡大と再定義に注力していることを物語っています。Google Cloud がメインフレームのモダナイゼーションに注力するようになったことで、ビジネス関係者はビジネス トランスフォーメーションに価値を見出しています。「IT のレンズ」を通してモダナイゼーションを検討しメインフレームを廃止するのではなく、現状の問題を解決し、自社にとっての「道しるべ」を定義して、その目標達成に向けて協力するパートナーとしてのポテンシャルを Google に見出したのです。
まとめ
最後に、自動車の話でこのブログを締めくくりましょう。Tesla は自動車が化石燃料に依存せず、ソフトウェアで駆動し、同時に二酸化炭素排出量の削減にも貢献できる可能性を示しました。とはいえ、これは Ford 氏が始めた革新的とも進化的とも言えるシナリオがあってこそ可能となったものなのです。