Rémy Cointreau、Google Cloud で SAP を運用して顧客中心主義を推進

※この投稿は米国時間 2020 年 10 月 14 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

サプライ チェーンは、絶えず変化する消費者のニーズを見据え、計画を練って対応するという課題に向き合っています。商品の製造に 100 年を要することもある企業の場合、どうなるかを想像してみてください。そのケースに該当するのが、高級蒸留酒を取り扱う家族経営の酒造元であり、1724 年創業の Rémy Cointreau です。

消費者から寄せられる期待がうなぎ上りとなり、高級飲料ブランド間の過酷な競争にさらされている中、Rémy Cointreau が打ち立てたのは、消費者本位のビジネスという戦略でした。コニャックのレミーマルタンとルイ 13 世、リキュールのコアントロー、ブランデーの St-Rémy といった主要ブランドの高級飲料を超える何かを提供することが、味わう人に至福のひとときをもたらす結果になります。同社の最高技術責任者である Sebastien Huet 氏は、次のように明かしています。「単にコニャックを売るだけで終わりにしたくなかったのです。私たちが売り出したかったのは、フランス流の生き方です。そのためには、商品の販売から体験の販売へと軸足を移すことが欠かせませんでした。」

この構想の実現に向かう中で Rémy Cointreau が実感したのは、ビジネスを構成するあらゆる要素について、アジリティを高めなければならないことです。自社 SAP システムの柔軟性を高めて、財務、製造、サプライ チェーン各部門の業務を促進し、SAP システム上の貴重なデータに容易にアクセスできるようにして、ビジネス上の意思決定や画期的な顧客体験につながるアプローチを見出せるようにする必要がありました。このような変革を果たすため、Rémy Cointreau はクラウドへの移行が必須であると判断します。

まず、Rémy Cointreau は長年のパートナーである oXya からの支援を取り付けます。Rémy Cointreau と oXya の関係は、マネージド サービスの提供環境であったオンプレミスの SAP 環境を oXya へと移行したことを含め、10 年間にわたって続いています。oXya は Rémy Cointreau の SAP ランドスケープが抱えていた課題を掘り下げ、ビジネス上や機能上の要件を同社と連携して把握した後、さまざまなクラウド ソリューションのベンチマーク評価を実施しました。Rémy Cointreau のビジネス環境は 2 つの SAP ランドスケープにまたがるもので、インターフェースとデータ整合性に課題を抱えていたため、1 つの SAP システムに統合したうえで S/4HANA に移行する必要がありました。SAP 環境によってさらに多くの価値の実現を促すには、適切なクラウド プラットフォームの選定が不可欠となっていました。

日立グループ傘下の oXya で最高技術責任者代理を務める Matthieu Petitprez 氏は、次のように述べています。「スケーラビリティ、柔軟性、費用の節減が重要であったほか、Rémy Cointreau から強い要望があったのは、SAP では得られないデータの側面に焦点を当てることでした。Google Cloud は固有のデータ分析ツールと管理ツールを備えていて、この目的に申し分なく合致していました。SAP を BigQuery や人工知能のサービスと統合して、SAP ソリューションにそれまで以上の価値をもたらすことが可能になりました。」

Huet 氏は、同社が 30 年あるいは 40 年にわたる契約をサプライヤーと結ぶのは珍しくないことだとして、次のように述べています。「上質のコニャックを創り上げるまでに歳月を要するのと同様に、私たちが価値を置くのは、長期にわたって寄り添ってくれるパートナーです。Google Cloud と SAP が戦略的に提携していることで、これは妥当な選択であったという思いを強くしました。Google Cloud は競合他社よりも SAP との戦略的パートナーシップの幅が広く、SAP の価値を明らかに高めています。」

COVID-19（新型コロナウイルス感染症）の感染拡大に伴い、移行についてはリモートで進めることを余儀なくされたものの、Rémy Cointreau、oXya、Google Cloud の Professional Services Organization（PSO）の共同作業を通じて、2020 年 4 月に欧州での運用開始が果たされました。Huet 氏は次のように述べています。「COVID-19 の影響でリリースが遅れることを懸念していたのですが、移行はスケジュールどおりに迅速かつ容易に進みました。Google Cloud のテクノロジーは自身の役割を果たすと同時に、当社が信頼していたパートナー 2 社との連携も支援してくれました。」

ビジネスのアジリティを活かして製造とサービスを改善

Google Cloud Platform にデプロイした SAP S/4HANA は、欧州をベースとする Rémy Cointreau の環境で本番運用されています。S/4 のほか、SAP のサプライ チェーン計画ツールである Advanced Planning and Optimization（APO）に加えて、SAP Business Warehouse も Google Cloud に移行しました。まもなく、同様のデプロイがグローバルな規模で実施される予定です。

デプロイからさほど時間が経っていませんが、Rémy Cointreau は、Google Cloud によってアジリティをさらに引き上げるための大きなステップをすでに見据えています。たとえば、Google Cloud の場合、技術的な運用環境の調整がきわめて迅速かつ容易です。大量のリソースを消費する分析を新たに開始する場合も、数分でキャパシティを拡張して需要に対応できます。キャパシティをロールバックして、必要な規模のリソースのみが使用されるようにすることも可能です。

このようなアジリティを手にしたことで、IT チームは、将来のキャパシティを見越して新たな実装をプロビジョニングするという重圧から解放されます。起こり得るピークに備えてキャパシティを確保するのではなく、予想される需要を見通してデプロイした後、容易にキャパシティを調整して、実際に生じた負荷を相殺できます。Huet 氏は次のように述べています。「キャパシティ プランニングがきわめて簡単になりました。本番運用を開始してほどなく、いくつかの更新を実施する必要が生じました。メモリの増量などです。それまで 1 か月ほどかかっていた作業を、今では数分で完了できます。文字どおり、5 週間分の作業が 5 分で済むようになりました。これは飛躍的な改善です。」

Rémy Cointreau が Google Cloud への移行を決めたもう一つの重要な要因は、SAP のバックボーンを Salesforce などの主要な SaaS アプリケーションへと接続できることでした。カスタマー エクスペリエンスを一層重視する方向へと進み始めるにあたっては、顧客との間で、長期にわたる確固とした関係を築くことが不可欠です。SAP、Salesforce、自社の e コマース プラットフォームのデータをあらゆる角度から捉えられるようになることで、従来は提供し得なかった、顧客に合わせてカスタマイズされた体験を容易に創出できます。

データドリブンの未来へ

Rémy Cointreau の社内ユーザーは、クラウドのデプロイによる恩恵をすでに享受しています。Huet 氏は次のように述べています。「大きな改善の一つは、ライブデータを分析できることです。これは従来はできなかったことです。以前は、データを取得して分析可能になるまでに 24 時間のタイムラグがありました。本番環境を管理する側にとって 1 時間という時間は大きく、この点は特に重要です。」

これまでに実現できたアジリティや接続性の改善と同様に、今後一層大きな成果がもたらされると Huet 氏は見込んでいます。「目下、重点的に取り組んでいるのは Google Cloud 環境で SAP の体制を確立することです。この取り組みの完了後に注目したいのは、データ分析を新たなレベルへと引き上げることができる BigQuery などのテクノロジーです」と同氏は述べています。分析対象となる分野は、商品のトレーサビリティやカスタマー エクスペリエンスなどが考えられます。同氏は次のようにも語っています。「Google Cloud Platform へのデプロイが完了したので、どのような事柄にも取り組めます。統合環境を通じて複数のソースからデータを抽出し、数日で分析できます。何かの価値を確かめるために、3 か月間のプロジェクトを組む必要はもはやありません。」

Google Cloud との同社のパートナーシップに関して Huet 氏が楽観的な見方を崩さない理由は、このアジリティと創造性にあります。同氏は次のように指摘しています。「最高の瞬間が訪れるのは、まだこれからであると考えています。」

Rémy Cointreau による Google Cloud への SAP のデプロイについて詳しくは、こちらの事例紹介をご覧ください。oXya が提供する SAP のお客様向けの Google Cloud 関連サービスやソリューションについても併せてご覧ください。

-Google Cloud SAP 担当マネージング ディレクター Snehanshu Shah