ソースネクスト: Migrate to Virtual Machines でシステム停止時間を最小限に抑えながら Google Cloud へのスムーズな移行を実現

Google Cloud Japan Team
AI 通訳機「POCKETALK(ポケトーク)」や会議室用ウェブカメラ「Meeting Owl(ミーティングオウル)」など、常識を変える画期的なソフトウェア製品やハードウェア製品の企画、開発、販売を手がけるソースネクスト株式会社(以下、ソースネクスト)。同社は以前、社内システムをオンプレミスと他社のクラウド サービスで運用していましたが、他社のクラウド サービスで稼働していた複数台の仮想サーバーを、Migrate to Virtual Machines を使って Google Cloud にスムーズに移行しています。この移行プロジェクトについて、ソースネクストのシステムディビジョンの担当者 2 名、および移行計画の立案から実装までサポートしたアイレット株式会社(以下、アイレット)の担当者 2 名に話を伺いました。
利用しているサービス:
Compute Engine, Cloud NAT, Cloud VPN, Migrate to Virtual Machines, Google Cloud Console, Virtual Private Cloud(VPC), Network Intelligence Center など
利用しているソリューション:
インフラストラクチャのモダナイゼーション, データセンターの移行, バックアップと障害復旧
POCKETALK の開発、運用インフラへの導入実績で Google Cloud を採用
1996 年の創業以来、「製品を通じて、喜びと感動を世界中の人々に広げる」ことをミッションに、パソコンやスマートフォン向けのソフトウェア製品、および各種ハードウェア製品の企画、開発、販売を事業として展開するソースネクスト。現在は IoT 製品にも事業を拡大し、新しいビジネスの創出に取り組んでいます。
この目的を達成するためには、独創的な製品やサービスを開発するだけでなく、市場や顧客ニーズの変化、時代の流れに合わせて社内システムを柔軟かつ迅速に運用していくことが重要となります。そこで計画されたのが、クラウド サービスへの統合でした。


「従来、弊社ではオンプレミスと他社のクラウド サービスが併用されたハイブリッド環境で、社内システムの運用やさまざまな開発をしていました。しかし、製品サービス部門とシステム部門で別々のクラウド サービスが利用されていたため連携性に課題を抱えており、インフラの利用や運用も煩雑化していました。これらの課題を解消するために、会計やレポート表示、分析、監視用などのシステム部門で稼働していた複数台の仮想サーバーを、他社のクラウド サービスから Google Cloud に移行することにしました。」そう語るのはソースネクスト システムディビジョンの岩崎 和彦氏です。
ソースネクスト システムディビジョンの越田 一寿氏は、Google Cloud への移行を決めた理由を次のように説明します。


「他社のクラウド サービスに問題があったわけではないのですが、POCKETALK などの製品では開発環境や運用周りのシステム群に Google Cloud が利用されていたので、将来的な連携性も考えて Google Cloud を選びました。クラウド サービスを統一すれば、管理性の向上やコスト削減だけでなく、多くのスケール メリットが期待できます。」
Migrate to Virtual Machines で業務に影響しないデータ転送を実現
他社のクラウド サービスから Google Cloud に移行する場合には、大きく分けて 2 つの方法があります。1 つは、独自に仮想サーバーの情報をバックアップしてから移行する従来の方法。もう 1 つは、Migrate to Virtual Machines のような移行ツールを使う新たな方法です。越田氏が選択したのは後者でした。
「移行作業ではシステムの停止時間を最小限にしながら、安心・安全に作業を完了できることが条件になります。従来の方法では、移行に必要なディスクのコピーを取る最中はシステムを停止させなければならないため、その間は業務が止まってしまうという懸念がありました。しかし移行ツールを使えば業務を止めず、バックグラウンドでデータを同期させながら、最小限のダウンタイムでシステムを切り替えることができます。移行ツールを選ぶ際には、いくつかの製品を検討したうえで、利便性や安定性で高い評価を得ていた Google Cloud の Migrate to Virtual Machines を利用することにしました。」
Google Cloud への移行は、2022 年 8 月に始まりました。まず 11 月までに利用可能なシステムやシステム構成などを検討して事前にテストを実施し、12 月から 2023 年 3 月にかけて、Google Cloud の Compute Engine への移行作業が行われました。
設計された移行環境では、仮想サーバー用インフラとして Compute Engine 、インターネットへの接続に Cloud NAT を採用。システムの移行には、他社のクラウド サービスを Google Cloud に連携させるために、Cloud VPN でセキュアな接続を実現しました。さらにデータの移行には Migrate to Virtual Machines を利用し、業務に影響を及ぼすことなく、バックグラウンドでのデータ転送を可能にする工夫がされました。


Google Cloud への移行をサポートしたのは、 Google Cloud の Sell および Service エンゲージメント モデルにて Premier Partner として認定されているアイレットでした。
アイレットは、他社のクラウド サービスから Google Cloud に移行する際のインフラ構成の提案、および移行作業なども幅広く行っています。アイレット クラウドインテグレーション事業部 チームリーダー エンジニアの言上 侑也氏は、Migrate to Virtual Machines を利用するメリットとして、エージェントレスで作業できる点も指摘します。


「ソースネクスト様とは、プロジェクト管理ツールでやり取りを行いながら計画を立案し、移行ツールで作業を進めていく方針を提案しました。移行ツールを使わない従来のディスクのエクスポート / インポート方式の場合は、インポート後の OS のバージョン違いでトラブルが起きたりしますし、動作確認だけでも 2~3 割、工数が増えてしまいます。また 1 日単位でシステムを止めることが必要で、休日や夜間に作業する形になるため、労力も 3~4 倍かかると思います。Migrate to Virtual Machines を利用すれば、これらの課題はすべてクリアできます。」
システム移行作業では、オンプレミス、他社のクラウド サービス、そしてGoogle Cloud 間のネットワーク接続に問題があり、移行に必要な通信がされない状況が発生しました。しかし言上氏は Network Intelligence Center を活用して、問題を迅速に解決しています。
「ネットワーク接続を確立する際には、Google Cloud の Cloud コンソールで利用できる Network Intelligence Center を利用して、3 つの環境間で通信はできているか、どこまで通信が到達しているか、そして広報経路の設定内容などを調査しました。Network Intelligence Center は一般的な製品よりもきめ細かく確認ができるので、とても便利でした。」(言上氏)
アイレットのチームは Network Intelligence Center を活用し、複雑なネットワーク環境の中でトラブルが起きている箇所を識別。オンプレミスのルーターの設定を確認して問題を特定し、適切な設定を行うことにより、当初のスケジュール通りに移行作業を完了させました。岩崎氏は「アイレット様はネットワークの専門家も投入してトラブル シューティングを行い、このプロジェクトにおける最大の難関をしっかり乗り越えてくれました」と語ります。
一方、アイレット 執行役員の後藤 和貴氏は「Google Cloud への移行プロジェクトでは、自社の強みを発揮できた」と説明します。


「弊社にはクラウド サービスやネットワークはもとより、オンプレミスに関する知見を持ったエンジニアもそろっていますので、総合的なサポートができたと認識しています。今後はクラウド ネイティブな環境にステップアップし、全体のシステムを最適化する提案をしていきたいです。Google Cloud が強みとする AI やビッグデータを使ったデータ分析、モバイルの活用、アナリティクスなどの分野でも、お役に立てればと考えています。」
クラウド ネイティブな環境の構築、AI やビッグデータ活用などでさらなる発展を
Migrate to Virtual Machines を活用した Google Cloud への移行は、ソースネクストにさまざまな効果をもたらしました。差分同期が取れるため、検証テストをする必要がないこともアドバンテージになりました。従来の方法でシステムを切り替えた場合は、定められた期限内にテストをする必要があります。しかし Google Cloud は、空き時間を見つけてフレキシブルに移行ができるので、精神的な負担も軽減されます。越田氏は「ほとんどの社員がシステムが切り替わったことを意識せずに、業務を続けられた点は大きなメリットでした。お客さまに質の高いサービスを提供していくためには、やはり安心・安全な環境で社内システムを稼働させていくことが大切になります」と言います。
岩崎氏は Google Cloud 自体の魅力も改めて認識したと語ります。
「Google Cloud を利用するのはシステムディビジョンで初めてでしたが、コンソールに慣れると、画面表示が見やすい、UI が直感的で使いやすい、仮想サーバーを作りやすいなどのメリットを感じました。システム部門の仮想サーバーを一気に移行するというのはかなり大掛かりな作業ですが、移行後の運用は非常に安定していますし、ランニング コストもかなり削減できています。」
さらに岩崎氏はこの成果を踏まえたうえで、今後の発展に強い意欲を覗かせました。
「現時点では、オンプレミスに古いサーバーやインフラが残っています。また、製品サービス部門とシステム部門のインフラも別々に運用されていますので、 Google Cloud を軸に両部門の連携強化も検討したいと思っています。これが実現できれば、社内システムの標準化がもっと進み、システム開発の担当者が、製品やサービスの開発をサポートするような流れも生まれてくるでしょう。アイレット様には本当に幅広くサポートいただきましたし、そういう仕組みづくりでも協力を期待しています。今後も信頼できるパートナーとして、共に新たな目標に挑戦していければと考えています。」


ソースネクスト株式会社
1996 年 8 月、パソコンソフトの企画、開発、販売を目的とした株式会社ソースを設立。1999 年 10 月に現在の社名に変更。社名は「次の常識をつくる(We Source What's Next.)」に由来します。「世界一エキサイティングな企業になる」というビジョンに基づき、業界初「更新料 0 円」のウイルス セキュリティ ソフト「ZERO」や、双方向の AI 通訳機「POCKETALK(ポケトーク)」、文字起こし AI ボイスレコーダー「AutoMemo(オートメモ)」など、これまでの常識を覆す新たな製品を生み出しています。
アイレット株式会社
(Google Cloud パートナー)
2003 年に創業。2010 年からクラウド事業を開始し、先進性の高い IT ソリューションを提供するパートナーとして日本のクラウド ビジネスを牽引。ウェブシステム開発、スマホアプリ開発・運用、クラウドを活用したインフラ設計・構築・運用のフルマネージド サービス「cloudpack」を提供するなど、高い技術力とホスピタリティを特徴としており、2023 年 8 月時点で導入社数 2,500 社以上、年間プロジェクト数 4,300 件超の実績を誇ります。
インタビュイー(写真 右から)
ソースネクスト株式会社
・システムディビジョン 越田 一寿 氏
・システムディビジョン 岩崎 和彦 氏
アイレット株式会社
・クラウドインテグレーション事業部 チームリーダー エンジニア 言上 侑也 氏
・執行役員 後藤 和貴 氏
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