令和トラベル: Gemini で旅行代理店業務の大胆な自動化を実現、テクノロジーの「活用力」で新しい旅行体験を創り出す

Google Cloud Japan Team
株式会社令和トラベル(以下、令和トラベル)は、「あたらしい旅行を、デザインする。」をミッションに掲げ、2021 年に創業したオンライン特化型の旅行代理店です。同社は創業当初から徹底したテクノロジー活用を推進し、コロナ禍を経て再び活気を取り戻しつつある国内外旅行市場の中で大きな成長を続けています。その裏側には、Google Cloud、そして Gemini を活用した大胆な業務自動化と、顧客体験(UX)の変革がありました。今回は、同社 執行役員 CPO の麻柄 翔太郎氏に、Gemini 導入の背景、具体的な活用事例と成果、そして AI が切り拓く旅行ビジネスの未来について伺いました。
利用しているサービス:
Gemini, Google Workspace
利用しているソリューション:
生成 AI
創業時からの「自動化」戦略を、生成 AI が「ブースト」させる
令和トラベルは、旅行したい、人と交流したいという人間の営みは失われない、という信念に基づき、2021 年に創業しました。以降、店舗は持たず、テクノロジーとオンラインを基軸とした旅行サービスを展開。パッケージ ツアーに特化した豊富な品揃えは、旅行アプリ「NEWT(ニュート)」で提供されます。
「旅行の検索アプリといえば NEWT、と第一想起されるブランドにしたい」と、地域やユーザー層はあえて絞らず、オールジャンルで圧倒的な品揃えに努める同社。執行役員 CPO の麻柄 翔太郎氏は、最大の差別化要因が「技術活用力」だと説明します。


「私たちの強みは、技術そのものの『開発力』というよりも、技術をサービス価値と事業収益に転換できる『活用力』にあります。その中核にあるのが業務の『自動化』です。弊社は創業初期から旅行代理店のすべての業務をソフトウェアで自動化してしまおうというビジョンを持っていました。パッケージ ツアーの作成・販売業務は、手配、在庫や料金の管理、時差のある日程表作成や細かな調整など、非常に複雑です。限られたリソースで、充実した品揃えと価格競争力を両立させて事業拡大を実現するには、高度な自動化が不可欠だったのです。」
自動化を推進するうえで、生成 AI の登場は決定的な役割を果たしました。
「自動化を進める準備は、以前から取り組んでいました。例えば、予約獲得からツアー終了までの一連の業務にかかる時間や費用をすべて可視化し、自動化できる要素を見極めて効率化する地道な営みは、事業成長のドライバーにもなっていました。そこへ登場したのが、生成 AI だったのです。私たちにとって生成 AI は、変革のために無理に導入するものではなく、これまで進めてきた DX 戦略をブーストさせる、絶好の追い風でした。」(麻柄氏)
生成 AI の導入に際しては複数のモデルが比較検討され、Gemini が採用されました。麻柄氏は、「精度」と「コスト」のバランスの良さ、ならびに総合力が評価されたと振り返ります。
「大量のツアーデータやコンテンツを処理しつつ、お客さま一人ひとりにリアルタイムでレスポンスを返すためには、高い推論精度だけでなく、運用に耐えうるコスト パフォーマンスが求められます。Gemini はコンテキスト サイズやレスポンス スピード、生成物のクオリティ、コストを含めたバランスが最も良く、私たちの求める条件すべてを満たすことができると判断しました。また、すでに採用していたアプリケーション開発基盤である Google Cloud との親和性や、Google マップ など旅行体験と結びつきの強い他の Google プロダクトとの将来的な連携を見据えた点も、決め手となりました。Google のテクノロジーに対する投資の大きさは世界トップクラスで、発展性や切り拓く未来に期待が持てます。これらのメリットを総合的に超えるサービスが出てこない限り、他を選ぶ理由はないと感じています。」
生産性を大きく高める、Gemini 6 つのユースケース
令和トラベルでは Gemini を活用した多様な機能が稼働しており、社内業務の効率化とカスタマー体験の向上の両輪で成果を上げています。
1.ツアータイトルの自動生成
数万件に及ぶツアー商品の「魅力が伝わるタイトル」を、AI が自動生成する機能です。
「1 か月に 1 万件近いツアーを新規作成するため、パッケージ ツアーのタイトル作成は大きな業務負荷となっていました。Gemini に既存のタイトルやライティング ルールを学習させることで、単なる情報の羅列ではない『いい感じ』のタイトル生成が実現しています。現在は、さらにノウハウを蓄積して、ルールベースでは表現できない、人の感情を揺さぶるような高品質なコピーライティングとなるようチューニングを重ねており、将来的にはコンテンツを見ている人に最適化された表現が可能になるのではと期待しています。」(麻柄氏)
2.マガジン記事の下書き自動生成
オウンド メディアの旅行ガイド「NEWT Magazine」の記事制作においても、構成案をもとにデータ収集・文章生成・画像選定・CMS 入稿までのフローを Gemini で自動化し、コンテンツの量産体制を確立しました。スタッフは、プランニングやファクト チェック、校閲に集中することができ、制作スピードが大幅にアップしました。
3.見積り・提案書作成の自動化
「NEWTトラベルコンシェルジュ」は、顧客の要望をヒアリングし、オーダーメイドの旅行プランを提案・サポートするサービスです。この業務改善に大きく貢献しているのが、Gemini を活用したツアーの見積り・提案書の自動作成機能です。顧客の条件に合うホテルのリストアップから、顧客向け提案書(PDF)の作成までを、短時間で効率よく進められるようになりました。
「オーダーメイドのツアーは、プレゼン用の資料もオーダーメイドで手厚く作成するため、多くのリソースが取られていました。導入後は、⾒積りや提案書作成の作業効率が 3 倍以上向上し、受注 1 件あたりの平均工程数は約 30% 削減されました。その結果、より丁寧にお客さまに対応することが可能となり、スタッフ 1 人あたりの接客数も増加。受注額も 1.2〜1.5 倍に伸長しました。今後は航空券の見積りも自動化し、最大 55% の工数削減を目指しているところです。」(麻柄氏)
4.ツアーへの自動タグ付け
この機能では、約 10 万件のツアーデータに対し、「世界遺産」「大自然と触れ合う」といった特徴タグを自動付与しています。インプットされるツアーデータに、「タグを付与すべきか否か」という二値分類問題に LLM を利用し、実用的な精度を実現。カスタマーの絞り込み検索の利便性を大幅に向上させました。


5.トラベルプランナー
「トラベルプランナー」は、ツアーの日程(フライト スケジュールとホテル)を元に、現地滞在中の食事や観光プランを AI が旅程表の形で自動提案してくれる機能です。「旅先で実際に何ができるのか具体的な情報がほしい」というカスタマーの声に応えて開発されたサービスで、単なる人気スポットの羅列ではなく、テーマに沿ったプランニングを提供します。
現在、令和トラベルでは、AI を活用した自社サービスの定量的な品質評価を行う目的で、独自の指標(スケジュールの完全性、滞在先との関連性、独自性、有用性)に基づく評価と改善の仕組みを構築しました。麻柄氏は、評価改善を経たサービスの発展に期待を寄せています。
「この指標に沿って社内検証し、フィードバックと改善を繰り返した結果、トラベルプランナーは 4 項目全てで 90% 以上の評価を獲得できるまでになりました。実際のサービス利用率も好調で、意外なところでは、利用者が自分のプランをシェアできる機能が好評をいただいています。将来的には最適な旅行プランをその場で提案し、カスタマイズもできるサービスに発展させたいと構想しています。すでにその見通しも立ちつつあり、AI を活用した旅行体験をさらに納得感のあるものに変えていく仕組みは、今後ますます大事になってくると考えています。」
6.NEWT Chat(宿泊施設向けお問い合わせ Bot)
宿泊施設側の公式サイトに埋め込む問い合わせ対応 Bot です。AI エージェントが独自に Deep Research して施設情報を学習・収集することで、NEWT アプリから、宿泊先の設備やイベントの詳細についても柔軟な回答を得ることができます。
これら 6 つの機能をはじめとするサービス開発は、プロダクト開発組織内の AI チームが主導し、徐々に他のプロダクトチームへもナレッジを展開する「イネーブラー」型の体制で進められました。小さなプロトタイプから検証を始め、利用者の期待値と精度のバランスを見極めながら実装するアプローチが、短期間での多機能リリースを成功させています。
AI エージェントで「あなた専属の旅のコンシェルジュ」に
令和トラベルは創業以来、一貫した DX 推進と積極的な最新技術の活用で、業務効率化と顧客サービスの向上を実現してきました。しかし麻柄氏は「これはまだ序章に過ぎない」と強調します。
「トラベルプランナーや NEWT Chat は、生成 AI でなければ実現できなかったサービスです。無限の発展の可能性があると感じていますので、さらに技術検証を重ねてそのポテンシャルを深く探っていきたいですね。また、現在は Gemini の活用が中心ですが、今後は Vertex AI などの活用も視野に入れ、より高度な機械学習モデルの構築や、複雑な業務を一気通貫で自動化するエージェントの開発などにも挑戦していきたいと考えています。」
最後に、麻柄氏は今後の展望について次のように結びました。
「私たちが目指しているのは、AI がまるで専属のコンシェルジュのように、旅行体験のすべてを伴走してサポートする世界です。従来の旅行予約の多くは、カスタマー自身が検索・比較を行う『セルフサービス』が主流でしたが、NEWT はカスタマーを深く理解し、『今のあなたには、この旅行がぴったりです』と提案できる存在へと進化していく。そのような圧倒的な提案力を持つ AI エージェント開発の技術プラットフォームとして、Google Cloud には期待をしています。
円安や物価高といった外部環境の変化により、旅行者はより『失敗のない』『コストパフォーマンスの高い』旅を求めるようになっています。令和トラベルは、テクノロジーの力で期待に応え、スマートで感動的な旅行体験をすべての人に届けていきます。」


株式会社令和トラベル
株式会社令和トラベルは、コロナ禍の 2021 年創業した、国内・海外の旅行事業を行う旅行代理店のスタートアップ。旅行が人生を豊かにする、人と交流したいという人間の営みは失われないという信念に基づき、テクノロジーとオンラインを基軸にした旅行サービスを展開。かんたんにツアーの検索、比較検討が可能で、おトクなパッケージツアーを、旅行アプリ「NEWT(ニュート)」を中心に提供している。
インタビュイー
執行役員 CPO 麻柄 翔太郎 氏
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