J. フロント リテイリング株式会社:Chromebook で推進するデジタル戦略と新しい働き方
Google Cloud Japan Team
大丸、松坂屋、パルコの店舗ネットワークや顧客基盤などの経営資源を有効活用することで、時代の変化に的確に対応し、顧客満足の最大化と効率経営の徹底による事業拡大を目指す JFR グループ。デジタル戦略の推進を目的に、デスクトップ端末のシンクライアント化を実践しています。シンクライアント導入プロジェクトを推進する執行役 経営戦略統括部 グループデジタル戦略部長 中山 高史 氏、経営戦略 ICT 新規事業担当 土屋 真弓 氏、井関 典克 氏の 3 名に話を伺いました。
利用している Chrome Enterprise サービス
理想のシンクライアント環境をもっとも実現しやすい Chromebook を採用
現状延長ではない「非連続な成長」に向け、小売業の枠を超えた「マルチサービスリテイラー」としての成長と発展を目指す J. フロント リテイリング株式会社(以下、JFR )。“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”というビジョンを掲げ、生活の全のシーンでお客様のお役に立てるグループへと進化しています。百貨店事業はもとより、不動産、金融、人材派遣、幼児保育など、事業の幅を着実に拡大しています。
また、「新しい顧客体験の提供」および「営業施策の高度化」という観点で、2018 年度より、本格的なデジタル戦略を推進しており、なかでも IoT 時代に向けた IT 戦略に取り組んでいます。取り組みの一環として、JFR グループ全体で、「早く、安く、セキュア」なシステム導入を目的にクラウドシフトを本格化。システム構築、および運用の基盤となる IT インフラとして、クラウド サービスを活用しています。
執行役 経営戦略統括部 グループデジタル戦略部長の中山さんは、「JFR グループのデジタル戦略には、攻めの IT と守りの IT があります。攻めの IT では、ビジネスのデジタル化を目的に、クラウドの構築に取り組んでいます。また、守りの IT では、セキュアなインフラ構築を実践しています。一方、課題として、時間と場所にとらわれない新しい働き方を実現できるモバイルワークを実現することが必要でした」と話します。
JFR グループでは、使用していた端末が時代とともに古くなりつつあり、外部からの攻撃への対策などセキュリティ上の課題も顕在化。特に、搭載されている OS のサポートが終了することも重なり、新しい端末への移行が急務でした。しかし、業務アプリケーションの稼働確認作業が煩雑なため、簡単には移行できない状況でした。
また、経営戦略統括部 グループ経営戦略 ICT 新規事業担当の井関さんは、「現場の担当者は、テレワークなどの新しいことがしたくても、できないという不満を感じていました。」と話します。そこで、業務用の端末から変えていくための検討を開始し、シンクライアントの導入を決めました。いくつかのシンクライアントを比較検討した結果、Chromebook の採用を決定します。
Chromebook を採用した理由を中山さんは、「モバイルワーク、テレワーク、ペーパーレスなどを背景に、PC を持ち歩くことが必須となっている現在、ノート PC を紛失すると大きな問題になってしまいます。Chromebook であれば、社外に持ち出しているときに、万が一紛失や盗難にあっても情報漏えいの心配がないので安心して利用できます。理想のシンクライアント環境を、もっとも実現しやすいのが Chromebook でした」と話しています。
電源を入れるとすぐに起動する、ストレスフリーの Chromebook に驚き
JFR では、2017 年 10 月~ 11 月で、検証用の Chromebook を 4 台導入し、Chromebook の検証作業を実施し、保守、メンテナンス体制を確立します。その後、2018 年 6 月に経営トップの承認を得て、7 月より本格的な導入を開始。2019 年 2 月末までに約 1,000 台の Chromebook を、JFR の本社と百貨店の本社部門、各店舗のマネージメント層、業務推進担当などに展開しています。一部の店舗では、ほぼすべての業務担当者に Chromebook を配布しています。
本社業務に関しては、一部システムの改修が必要なものを除き、現在、基本的な業務はすべて Chromebook 上で作業できるようになっています。具体的には、クラウド上の VDI(仮想デスクトップ インフラ)で既存の業務アプリが利用できるほか、テレビ会議やペーパーレス会議用の手書きアプリ、無線 LAN でプロジェクターに投影できるアプリなどが利用できます。標準機能として、G Suite も利用しています。
G Suite を導入する以前は、小売業という業務上、数字を扱う資料が多いことから、文書も、プレゼン資料も、すべて表計算ソフトで作成していました。G Suite を導入してからは、ドキュメントも、スプレッドシートも、スライドも利用されるようになっています。特に評価が高いのが共同編集の機能で、例えばドキュメントで作成した議事録を参加者みんなで編集することで、会議の効率化を実現しています。
また、オフィスの移転に伴うフリーアドレス化などにより、働き方も変化しています。例えば以前の打ち合わせは、すべて紙ベースでしたが、テレビ会議の浸透により、紙の使用量が半分程度に削減されています。中山さんは、「経営会議は、すでにタブレット端末を使ったペーパーレス会議に移行しています。今後は、会議はタブレット端末で、自席では Chromebook でという働き方に切り替えていく計画です」と話します。
テレビ会議の活用について、経営戦略統括部 グループ経営戦略 ICT 新規事業担当の土屋さんは、Chromebook を導入した効果を次のように話します。「Chromebook は、電源を入れるとすぐに起動するので驚きでした。また、百貨店の担当者との打ち合わせの仕方も変化しました。以前は、打ち合わせのために各百貨店まで移動しなければなりませんでしたが、現在はテレビ会議により、移動も少なくなり、経費の削減効果が期待できます。」
「会社として働き方改革に取り組むタイミングだったので、テレワークへの対応が必要でした。Chromebook は非常に軽く、持ち運びが楽なので、外出先や自宅で仕事をする人も少しずつですが増えていますし、すでに Chromebook だけで、業務をしている人もかなりいます。Chromebook に対する満足度は非常に高いです。」(中山さん)
システム面での効果として、Chrome OS はセキュリティ パッチの適用が自動化されていることから、作業工数の削減とセキュリティ リスクの低減が期待でき、削減できた工数で、利用者の利便性を向上させる取り組みも推進できます。
井関さんは、次のように話します。「今後 Chromebook をさらに展開することで、保守、運用面で工数の大幅な削減が期待できます。店頭では古い OS の端末が必要な業務が引き続き残りますが、できる限り Chromebook に移行していきたいと思っています。2019 年度末までに 2,000 台程度を導入する計画で、2020 年度には、さらに 3,000 台以上の Chromebook を導入する計画です。」
今後の取り組みについて中山さんは、「今後は、Chromebook と親和性の高い会議システムの導入や、 Jamboard による会議室のホワイトボードのデジタル化など、時間と場所にとらわれないコミュニケーションを実現したいと思っています。こうした取り組みで、より一層の Chromebook、および G Suite との親和性が向上できるので、今後も Google Cloud のサポートに期待しています」と話しています。
写真左から
経営戦略統括部 グループ経営戦略 ICT 新規事業担当 土屋 真弓 氏
執行役 経営戦略統括部 グループデジタル戦略部長 中山 高史 氏
経営戦略統括部 グループ経営戦略 ICT 新規事業担当 井関 典克 氏
大丸と松坂屋が経営統合する際に共同持株会社として2007 年 9 月に設立。「お客様第一主義」「社会への貢献」を考え抜き行動することが事業の発展につながるという「先義後利」を社是とし、グループ戦略の策定、百貨店をはじめとするグループ会社の経営計画・管理等を推進。全国主要都市に、大丸、松坂屋を 16 店舗、パルコを 18 店舗展開。GINZA SIX や上野フロンティアタワーなどの不動産事業、クレジット金融事業、建装事業、人材派遣業、卸売業などにも事業を拡大している。
J. フロント リテイリング株式会社の導入事例 PDF はこちらをご覧ください。
その他の導入事例はこちらをご覧ください。