Google Cloud を利用してCOVID-19 の創薬を進める Schrödinger の取り組み
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 6 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
新型コロナウイルスのパンデミックに対して医療業界がさまざまな取り組みを行っている中で、テクノロジーはそれを支援する重要な要素となっています。医師や看護師が、起こりうる第 2 波に備えて準備をしている今、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)と戦うための新薬の開発において、テクノロジーの役割はさらに大きくなってきています。
この創薬プロセスを加速させるために、Google Cloud のお客様である Schrödinger は、武田薬品、Novartis、Gilead Sciences、WuXi AppTec と提携して、コロナウイルスをターゲットとした抗ウイルス薬の開発を目的に、アイデア、リソース、データを共有する慈善活動に取り組んでいます。この提携の一環として、Schrödinger では、同社が所有する物理学をベースとしたソフトウェア プラットフォームにより治療薬や原料向けに有望な新しい分子の探索が可能になるため、Google Cloud からのクレジットを利用して、新薬候補の迅速な探索とテストを行っています。
Schrödinger と Google Cloud は、本年早々にまず、戦略的合意を発表しました。Schrödinger に強力なコンピューティング能力を提供することにより、同社のビジネス パートナーと社内パイプラインによる創薬の加速につながっています。
これまで創薬は医薬品化学者の経験と知識に大きく依存していました。医薬品化学者は候補化合物を一つずつ手作業で合成して検査しなければならず、多大な時間と費用がかかるプロセスでした。Google Cloud のハイ パフォーマンス コンピューティングを利用する Schrödinger のコンピューティング用プラットフォームは、このプロセスに革命を起こしています。このテクノロジーを利用すると、創薬の研究初期段階の作業を「インシリコ」(コンピュータ内)で行うことができるため、化学者はこれまでよりはるかに多くの化合物について調査を行うことができます。実際に分子を合成する際には、すでに数十億もの化合物候補が調査済みで、治療薬として優れている可能性が高いものが特定されているため、その情報を利用できます。Google Cloud のサポートを得ることで、Schrödinger のチームは、創薬研究に伴う作業を簡単にスケールアップして、COVID-19 に対する提携のニーズを満たすことができています。
コンピューティングを利用した創薬研究向けに Google Cloud から Schrödinger に提供されるクレジットは 1,600 万 GPU 時間分にのぼります。この時間量は、コンピューティングを 1 日 24 時間、1,826 年にわたって休まず実行することに相当します。これはすべて、COVID-19 に対する前臨床創薬プロセスを大きく加速させる可能性を秘めています。Google Cloud で数万もの GPU コンピューティング時間と数十万もの CPU コンピューティング時間を利用することで、Schrödinger のコンピューティング用プラットフォームでは、数十億の分子から選別と評価を行い、2 つの有望な創薬ターゲットに絞り込むことができます。このようして、提携パートナーがラボでの分析対象とする化合物を有望なもののみに絞り込むことができます。その一方で、Schrödinger の創薬チームは、新たなターゲットに目を向け、化学の領域で強力な医薬品になる可能性のある新たな分子を再び調査しています。
Google Cloud は、あらゆる人々に貢献する新薬を見つけるための取り組みにおいて Schrödinger とその提携パートナーをサポートできることを光栄に思います。
- ヘルスケア ソリューション担当ディレクター Aashima Gupta, プロダクト管理、医療、ライフ サイエンス担当ディレクター Joe Corkery 医学博士