顧客事例

大日本印刷株式会社:AI を活用したプロダクトを開発するハッカソンを実施。Google Cloud により、短期間で高品質な製品を実現

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長年培ってきた「P&I(Printing & Information)」という強みを生かし、常に新しい価値への挑戦を続ける大日本印刷株式会社(以下、DNP)。情報イノベーション事業部では、 リアルとデジタルを融合(DX)し、顧客にとって最高の価値(CX)を提供する「DX for CX」 をキーコンセプトに掲げ、AI の積極的な活用を推進しています。これらの取り組みについて、「生活者の体験価値向上に向けた AI プロダクトの提案(販売)」と「AI 人材育成」を目的に Google Cloud のエンジニアも参加して行われたハッカソンの活動を中心に、DNP の責任者および参加したエンジニアたちに話を伺いました。

利用している Google Cloud サービス:VisionAPIAutoMLText-to-SpeechDialogflowCloud Functions

ハッカソンで Google Cloud を活用した 短期間での AI サービス開発を効果的に体験

「DNP では年に数回ハッカソンを開催していますが、今回のハッカソンは Google Cloud のエンジニアが、どのようなマインドで仕事をしているのかを知る良い機会でしたし、DNP の立ち位置を再確認できたことにも大きな意味を感じています。」

こう話すのは、DNP情報イノベーション事業部 ICTセンター システムプラットフォーム開発本部DX基盤開発部 部長の和田 剛さんです。

情報イノベーション事業部では、新たに掲げた「DX for CX」のコンセプトの下、単なるデジタル化・ICT 化の推進に留まらず、「リアル」な世界に「デジタル」な手段を統合した DNP ならではの新たなサービスの開発に積極的に取り組んでいます。中でも、技術領域では AI をキードライバの 1 つに位置付け、AI 活用を加速させるための「プロセス確立(手法の確立)」と「人材の育成」が急務と判断。そこで実施したのが、Google Cloud の AI テクノロジーを活用してプロダクト開発を行うハッカソンです。

ハッカソンは、2020 年 2 月にスタート。DNP およびグループ会社の DNPデジタルソリューションズ(DDS)から選抜された 15 名のエンジニアおよび Google Cloud のエンジニアが参加しました。一般的にハッカソンと言えば、与えられたテーマに対し 1 日〜数日で集中的に実施するものが多い中、今回は半年以上の時間をかけ活動を継続、プロトタイプの作成だけでなく、最終的には実用化、事業化を視野に入れている点が特徴です。

2 月末のキックオフ後は、まず、Google Cloud の提供する AI 系のオンライン講座で、 Google Cloud を使った AI 活用の基本学習を約 3 か月間実施。並行して、何を作るかアイデア出しが行われました。

DNP情報イノベーション事業部 ICTセンター システムプラットフォーム開発本部 DX基盤開発部 AI技術推進グループ グループリーダーの阿部友和さんは、スタートからの経緯を次のように振り返ります。「15 名のメンバーから出されたアイデアは約 180 にも上りました。その中から、世の中に出すことができるプロダクトを意識し、どこにニーズがあるのか、お金を出して購入したいと思うプロダクトなのか、現実的な事業化も見据えた視点から意見を出し合い、4 月末には MVP(Minimum Viable Product)開発に進める 3 案を決定しました。5 月からは 3 つのチームにわかれて MVP 開発を実施し、約 2 週間という短期間でプロトタイプを作り上げました。各メンバーは、日々の業務との兼務、また図らずもコロナ禍によりオンラインでのコミュニケーションが中心とならざるを得ない状況で、非常に質の高いプロダクトを作ってくれました。同時に、この学習かつ実践の過程が非常に価値のあるものになったと考えています。」

さらに、MVP 開発と並行して、プロダクトのコンセプトや機能的特徴をまとめた企画書である PRD(Product Requirements Document)の作成にも着手。7 月以降は、開発したプロトタイプを実際に利用し、本当に価値があるのか、事業として展開できるのかの検証もスタートし、ブラッシュアップが進められています。

DNP情報イノベーション事業部 ICTセンター システムプラットフォーム開発本部 DX基盤開発部 AI技術推進グループで、ハッカソンの事務局を担当した米澤美貴さんは、「Google Cloud の担当者に定例会の開催や AI の学習環境の提供など、十分なサポートを提供してもらえたので事務局としても助かりました。また、エンジニアとしてもハッカソンに参加しましたが、Google Cloud を使うことで、AI 活用のためのモデル作成の時間を短縮できました」と話しています。

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(ハッカソンの様子)

Google Cloud の AI 活用でアプリを開発

ハッカソンにエンジニアとして参加したメンバーに、開発の様子を伺いました。

A チームでは、「旅先で好みに応じたおススメの場所を教えてくれるインタラクティブ ツール」を、5 名のエンジニアで開発。このプロダクトは、空港や駅の構内などで、音声認識技術による対話型のインタフェースにより、AI が利用者の好みの場所を分析し、おススメを提案してくれるものです。画像認識に Cloud Vision API、機械学習に Cloud AutoML、対話型インタフェースに Dialogflow、経路の案内用に Google マップ、それらを繋ぐ複雑な処理に Cloud Functions などを利用し、サーバーレス環境で開発が行われました。 

A チームリーダーで、DDS北日本システム本部盛岡システム部 熊谷晃さんは、「Google Cloud は、使いたい AI サービスがそろっていて、いずれでも 3 ステップ程度で直感的に設定できる点が便利だと感じました。また、これまでの開発経験やノウハウを生かして、延べ 100 時間もかからず開発できました。現在は案内図での活用だけですが、今後はエンターテインメントの要素を入れて、より楽しみながら情報を得られる仕組みに強化していきたいと思っています」と話します。

B チームでは、「子ども向けのコミュニケーション ツール」を、6 名のエンジニアで開発。ここでは、機械学習の Cloud AutoML、音声変換の Cloud Text-to-Speech などを利用。カメラでキャプチャした映像を AI で分類し、音声に変換して提供する仕組みも取り入れられています。

「開発においては通常 1 番手間のかかるモデルの作成部分を、Cloud AutoML を使うことで、一気にモデル作成ができ非常に便利でした。現在、SSML を利用して、機械的な音声を、より人に近い音声にすべく取り組んでいます。」(情報イノベーション事業部ICTセンターシステムプラットフォーム開発本部、B チームリーダーの神山直都さん)

C チームでは、「食材と料理をテーマにしたプロダクト」を、当初は 5 名、現在は 4 名のエンジニアで開発。 料理のスキルアップを目指している利用者をサポートする仕組みに AI を活用しています。Vision API や Cloud AutoML を活用し、食材や個数、調味料、調理器具などの検出もスムーズに行われる仕組みを実現しています。 

C チームメンバーのDDS西日本システム本部 福山システム第1部の杉尾 愛さんは「Google Cloud は操作が容易で、2 週間という短期間でも AI に必要な学習をさせ、アプリを実用化できる最低限の機能を持たせた”使える”レベル感にまで持っていけました。開発期間を短縮できたことで、今後追加する機能のアイデア出しなどに時間を有効活用できたと思います」と話します。

自社に最適化した開発プロセスを確立し、 AI をさらに加速していきたい

DNP は、長年培ってきた独自の P&I の強みを活かして、紙のチラシとデジタルの広告を融合させた仕組みや、情報銀行事業など、さまざまな分野で挑戦を続けています。阿部さんはこのハッカソンで得られた成果をこう話します。「各チームが世の中にとって本当に必要なものは何かを考えてアイデアを出してくれました。3 つのプロダクトは、今後、事業化しても問題のないレベルに仕上がっています。一般的に、AI 活用ではサーバなどのインフラ リソースの確保が困難と言われますが、Google Cloud を採用したことで、特別なハードウェアを調達せず、また、社内の人材のみで、ここまで早く、短期間で高品質な AI を活用したプロダクトが実現できることを実感できたことは、今後 AI 推進を加速していくにあたり、大きな自信となりました。」

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(情報イノベーション事業部 ICTセンター システムプラットフォーム開発本部 DX基盤開発部 AI技術推進グループ グループリーダー 阿部 友和 さん)

今後、DNP では、ハッカソンで生まれたプロダクトを実用化し、世の中にアウトプット、さらに事業化を目指すステップに入ります。 

「MVP 開発手法や PRD 作成など、Google Cloud のエンジニアとともに実体験した文化や開発ノウハウは、DNP の社内にフィードバックして、DNP に最適化された開発プロセスを確立して行きたいと思っています。また、このハッカソンを通じて、Google Cloud を活用した AI プロダクトを開発できるプロフェッショナルなエンジニアが社内に育成されることになります。このメンバーをコアに、さらに積極的に AI を使いこなすエンジニアを育成し、さまざまな分野での AI 活用を加速していけると期待しています。」(阿部さん)


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(後列右から)
大日本印刷株式会社
・情報イノベーション事業部 ICTセンター システムプラットフォーム開発本部
 DX基盤開発部 部長 和田 剛 氏
・情報イノベーション事業部 ICTセンター システムプラットフォーム開発本部
 DX基盤開発部 AI技術推進グループ グループリーダー 阿部 友和 氏

(前列右から)
・情報イノベーション事業部 ICTセンター システムプラットフォーム開発本部
 DX基盤開発部 AI技術推進グループ 米澤 美貴 氏
・情報イノベーション事業部 ICTセンター システムプラットフォーム開発本部
 開発第1部 第1グループ 神山 直都 氏(B チーム)

(中央 PC 画面内、右から)
株式会社 DNP デジタルソリューションズ
・西日本システム本部 福山システム第1部第3課 杉尾 愛 氏(C チーム)
・北日本システム本部盛岡システム部第1課 熊谷 晃 氏

大日本印刷株式会社
「DNP グループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念に基づいて、1876 年の創業以来強みとしてきた印刷技術や情報技術をいかし、出版印刷や商業印刷から、包装、建材、ディスプレイ関連製品、電子デバイスなど、幅広い事業領域でビジネスを展開する世界最大規模の総合印刷会社。国内外の約 3 万社の顧客企業や生活者に対し、幅広い分野で多様な製品やサービスを提供。

株式会社DNPデジタルソリューションズ
DNP グループ 3 社(大日本印刷、DNP 情報システム、DNP コミュニケーションデザイン)の 3 つの部門が集まって、2018 年 2 月に設立されたデジタルコミュニケーションの専門企業。(1)システムインテグレーションおよびウェブサイトの企画、制作、運営、運用、保守、管理、販売、(2)情報システムの企画、設計、開発、保守および運用管理の受託、(3)コンピュータおよび通信ネットワークの導入、運用管理の受託、(4)インターネットデータセンターの運用、賃貸および保守管理などを事業として展開。


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