株式会社ディー・エヌ・エー:世界的大型タイトルを Compute Engine で運用。従来環境からのスムーズな移行と安定性を両立
Google Cloud Japan Team
スマートフォンを主戦場とした国内モバイルゲーム市場において、『逆転オセロニア』や『ファイナルファンタジー レコードキーパー』『メギド72』など、数々の人気タイトルを要する株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)。これまでも多くのサービスのバックエンドとして Google Cloud を利用してきましたが、2019 年夏にリリースされたビッグタイトル『ポケモンマスターズ』では、そのシステム基盤に Compute Engine を採用。その背景と成果について聞いてきました。
利用している Google Cloud サービス:Compute Engine
DeNA の開発力を活かすなら Compute Engine が最適な選択肢
この度 Google Cloud を導入した株式会社ディー・エヌ・エー システム本部IT統括部IT基盤部は、今回紹介する『ポケモンマスターズ』を中心に複数の大型ゲームタイトルのインフラ運用を担当する部門。その副部長である土屋 圭さんは Google Cloud を導入した背景には 2 つの文脈があると言います。
「 1 つが、2019 年夏に我々が他社との共同開発でリリースした世界的大型タイトル『ポケモンマスターズ』などを安定して稼働させられるゲーム基盤を必要としていたこと。DeNA のゲームタイトルはこれまでオンプレミスあるいは他社クラウド プラットフォーム上で運用していたのですが、オンプレミスは全世界向けに配信するにはサーバー リソースの観点で懸念が大きく、他社クラウドも 1 社だけではいざという時に不安があります。ビジネス継続性を保つためにももう 1 つ選択肢を持っておきたかったのです。」(土屋さん)
そうした事情もあり、実はかねてから Google Cloud についてはパフォーマンスや安定性の検証を行っていたとのこと。結果、DeNA の求める基準をクリアしていることが分かったため、満を持して『ポケモンマスターズ』への導入が決定しました。
「検証の結果、Google Cloud はネットワークの品質において従来よりも安定していることが分かりました。また、従来のシステムで若干不満のあったディスクの性能や安定性も高く、ゲームタイトルのパフォーマンス向上が期待できそうな手応えがあったのです。」(魏さん)
「そしてもう 1 つが、我々がオンプレミスを脱却してマルチクラウドに移行したいと考えていることです。これからの DeNA は、複数のクラウドを組み合わせて良いところ取りをし、指先 1 つで自由自在に切り替えて行くような世界を目指しています。そう考えると、やはり Google Cloud は外せないだろうという気持ちもありました。」(土屋さん)
「世界的大規模タイトルの安定運用」と「全社的なマルチクラウド化推進」という 2 つの文脈から Google Cloud の導入を決めたという DeNA。現在は主に Compute Engine を中心とした運用を行っているそうです。近年、急激に人気を高めているフルマネージド型プラットフォーム、あるいはコンテナ技術を利用しない理由について、土屋さんは次のように説明します。
「何よりもまず、我々の超大規模トラフィックを捌く運用ノウハウを活かすには IaaS がベストだと考えました。DeNA のインフラ エンジニアは Linux を素で扱うことに長けているので、無理にマネージド サービスを利用するメリットはさほどありません。コスト面でも IaaS の方が割安ですしね。また、リードタイムを考えると既存のアセットをそのまま使い回したいという事情もありました。ただし、将来もこの方針を貫くかはわかりません。」(土屋さん)
土屋さんは「あくまで個人的な考え」と前置きしつつ、長期的には DeNA も徐々にフルマネージド サービスを利用していくことになるのではないかと予想します。
「App Engine のようなフルマネージドサービスの性能、機能がどんどん良くなっている中、IaaS には、我々のようなインフラ エンジニアが付いて回らねばならない弱点があります。さらに最近は、トレンド、志向の変化もあって、IaaS を活用できるエンジニアの数が減っていますから、いずれは DeNA も App Engine や、Google Kubernetes Engine(GKE)などを活用していくことになるでしょう。
もちろんその上で、Compute Engine 上で提供されている各種機能は前向きに導入。テックリードの本田さん曰く「既存の環境からただ載せ替えるだけでなく、オート スケーリングなど便利な機能は積極的に活用するようにしました。新しい環境でいろいろ試せたのは良かったですね」とのことです。
「今回、リリース日に突発的なトラブルが起きたのですが、Compute Engine のおかげで復帰にかかる時間を大幅に短縮できました。従来環境の場合、インスタンスを数百台分作り直すのに 3 ~ 4 時間は要していましたが、Compute Engine ではこれが数十分で完了。負荷試験をきちんとやっていたこともあって、その後は大きなトラブルもなく、安定してサービスを提供できています。」(土屋さん)
ちなみに現在は利用していないものの、今後使っていきたい機能については、お三方とも Cloud Spanner を挙げてくださいました。
「データベースは技術面では最も難易度の高いところ。大規模になるほどデータの一貫性、可用性、分断耐性の保証が難しくなり、レイテンシの問題も大きくなります。そうした問題を解決できる Cloud Spanner は Google Cloud のキラーなプロダクトの 1 つだと思いますよ。」(魏さん)
同じ緊張感で問題解決に取り組んでくれるプロフェッショナルの存在がありがたかった
なお、今回の導入に際しては、Google Cloud コンサルティングサービスとテクニカルマネージメントサービスを含んだ最上位サポートも活用。失敗の許されない大規模タイトルをスムーズに運用していくため、万全の体制で臨んだと言います。
「とはいえ具体的に何か危惧することがあったということではなく、漠然とした不安を拭いさりたかったというくらいの理由でした。ただ、今ふり返ってみると、我々では追えない部分の問題を深堀りし、問題解決のためのアドバイスをしてもらえて、大きなメリットがありました。たとえば、開発中にロードバランサの負荷がきちんと分散されないということがあったのですが、それに対して、サービスの細かい仕様まで調べてフィードバックをしてくださり、無事問題を解決することができました。なによりありがたいのが、プロフェッショナル サービスチーム が、我々のシステム構成や状況をあらかじめ把握してくださっていること。コンテキストのすりあわせを必要とせず、すぐに問題解決に取りかかってくれるので助かりますし、話が早いですよね。」(土屋さん)
「リリース直前、バックエンドとの通信量が(DeNA 側からは見えない)クォータにひっかかるという問題があったのですが、それを Google Cloud 側が事前に把握してくれていたおかげで、事なきを得たこともありましたね。」(魏さん)
隔週の定例ミーティングでは、構成と負荷試験のレビューがメイン。プロフェッショナル サービスチームは Google Cloud Platform(GCP) の内部にまで精通していることもあり、DeNA 側のエンジニアだけでは解決できなかったような問題もスムーズに解決していくことができたと言います。
「なにより感心したのは、プロフェッショナル サービスチームが、我々と同じ当事者意識をもって問題解決に取り組んでくれたこと。とても心強かったです。また、現在の GCP の要件では実現できないことについて、Google Cloud の枠に囚われない形でワークアラウンドを提案してくれたことも。このようなことはなかなかできないことだと思っています。」(土屋さん)
(写真左から)
・システム本部 IT統括部 IT基盤部 魏 晅中 氏
・システム本部 IT統括部 IT基盤部 副部長 土屋 圭 氏
・システム本部 IT統括部 IT基盤部 本田 恭 氏
株式会社ディー・エヌ・エー
1999 年に設立されたモバイルを中心としたIT企業。収益の中心はゲーム事業となっているが、その他にもインターネットを活用したヘルスケア事業、ソーシャルLIVE事業、横浜DeNAベイスターズなどを運営するスポーツ事業など、幅広く展開。ゲームに留まらない多彩なビジネスに挑戦している。従業員数は 2,437 名(連結 / 2019 年 3 月末時点)
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