株式会社ディー・エヌ・エー:データ分析基盤の構築でリアルタイムなデバイスデータの収集・分析を実現。コロナ禍の安心・安全なイベント開催に貢献
Google Cloud Japan Team
株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)のスポーツ事業本部では、新型コロナウイルス禍においても、イベントの来場者が、安心してエンターテインメントを楽しめる環境の構築に貢献するためのさまざまな取り組みを推進。その一環として、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」が正しく導入されているかを確認するための COCOA 稼働状況可視化システムを開発し、公開しています。このプロジェクトについて、システム部の責任者、およびエンジニアに話を伺いました。
(利用している Google Cloud ソリューション)
(利用している Google Cloud サービス)
将来的な拡張性やコスト効率を期待し BigQuery を採用
新型コロナウイルスの影響により、多くのイベントが中止、または延期を余儀なくされています。イベントを開催できるとしても、厳密な新型コロナウイルス対策が求められるため、イベントの主催者は対応に苦慮していました。そこで有効になるのが、DeNA が開発した COCOA 動作状況チェッカー、および COCOA 導入率測定器で構成される COCOA 稼働状況可視化システムです。
COCOA 動作状況チェッカーは、イベントや小売店・飲食店の入口で、来場者のスマートフォンから接触確認信号が正常に発信されているかを、個人情報の取得なしにチェックできるセンサー デバイスです。一方、COCOA 導入率測定器は、COCOA 動作状況チェッカーで収集したデータから導入率を計測するための仕組みです。この仕組みに、Google Cloud のデータ分析基盤である BigQuery が採用されています。DeNA スポーツ事業本部 システム部 ソフトウェアエンジニアの武藤さんは、次のように話します。
「BigQuery は、データ量が多くても書き込みに時間がかからないことやクエリが柔軟なこと、データポータルや Looker など、さまざまなツールを使ってデータの可視化がしやすいことなどの利点があります。フルマネージド サービスで分析環境を短期構築できるので、センサー デバイスの開発に注力できます。また、センサー デバイスから、OSS のデータ収集ソフトウェアである Fluentd を使って直接データを書き込むシンプルな構成にできます。さらに、大規模イベントでは、クエリを無制限に行う必要はなく、イベント開催期間中のデータに閉じたクエリしか行う必要がないので、利用していないタイミングでも、将来スケールしても、BigQuery の方が固定費が安価で、かつ拡張性も高いと考えました。最善を考えると BigQuery の一択でした。」
また、DeNA スポーツ事業本部 システム部 エンジニアリング・マネージャーの木村さんは、「今回のプロジェクトは、以前より社内で研究開発を続けてきた測位技術やビーコン技術を活用できる良い機会でした。どのようなデータが把握できれば安心してイベントに来てもらうことができるのか正解が分からない中、いろいろなデータを取得することが必要でしたが、BigQuery の活用によりスピード感をもってシステムを構築できました」と話しています。
シンプルな構成の実現やリアルタイムな可視化、高速な大量データ分析が BigQuery 採用の効果
COCOA 稼働状況可視化システムは、センサー デバイスによるデータ取得、BigQuery によるデータ集約、データポータルによるデータの可視化の 3 つの機能で構成されています。COCOA のインストールを判定するセンサー デバイスは、Linux の SDK(Software Development Kit) が利用でき、Wi-Fi で簡単につながるシングル ボードコンピュータをベースに開発。各センサー デバイスは、インターネットを介し、Fluentd を使って、BigQuery に直接データを書き込む仕組みになっています。
「各センサー デバイスは、インターネットに直接つなぐことで、もし 1 つに不具合が発生しても、ほかのセンサー デバイスに影響を与えない構成になっています。センサー デバイスと BigQuery の接続も、新たに開発するのではなく、OSS を使ってシンプルに実現しています。センサー デバイスは、毎秒数百件程度のデータを収集可能。個人を特定できない状態で COCOA のインストール情報を BigQuery に集約しています。BigQuery に集約されたセンサーデータは、データポータルを使って可視化できます。」(武藤さん)
データポータルでは、リアルタイムの COCOA 有効デバイス数、および時系列の COCOA デバイス数などを可視化できます。リアルタイムの COCOA 有効デバイス数は、2 つのセンサー デバイスを通過した COCOA のインストール情報を 1 件に集約してカウントする工夫をしています。1 つのセンサー デバイスでは遠くの電波も拾ってしまい、1 件の COCOA のインストール情報を複数件としてカウントしてしまうことを防ぐためです。一方、時系列の COCOA デバイス数では、イベント開始前から終了後までの来場者の行動をモニタリングできます。
武藤さんは、「大規模イベントでは、データ量が予測しにくく、事前にプロビジョニングをしてリソースを確保することが困難です。BigQuery は、フルマネージド サービスでリソース管理を気にすることなく、大量データも高速に処理できる実績があったので安心して利用できました。データポータルも、一般的な BI のように専用サーバーを構築することなく分析ができるので便利です。リアルタイムの可視化により、シンプルな構成で短期間に構築できたのは BigQuery を使った効果で、ほかのサービスでは実現できなかったと思います」と話します。
また木村さんは、次のように話しています。「Google ドキュメントなどと同様に、Google アカウントを使って、データポータルで作成したダッシュボードを、ユーザーに簡単に共有できるのも便利です。収集したデータをなるべくリアルタイムに可視化し、ダッシュボードを使って価値を容易に共有できました。ダッシュボードは、1~2 人日で開発しましたが、フルスクラッチで開発すると、もっと工数がかかったと思います。また、Google Workspace を使っていなかったら、ダッシュボードを見たいユーザーが増えるたびにアカウントを作成し、SSO と連携するなど、権限管理の議論が必要でした。DeNA はセキュリティに厳しい会社なので、セキュリティ対応だけでも 2 週間以上かかっていたと思います。」
テクノロジーを駆使し、リアルイベントのハウ ツーなら DeNA と言われる企業を目指す
今後 DeNA では、さまざまなテクノロジーを活用した新型コロナウイルス対策に取り組んでいく予定です。武藤さんは、「今回のプロジェクトは、CSR(企業の社会的責任)的な要素が強かったのですが、今後は、IoT などの技術を使い、いろいろなデータを BigQuery に集約し、データポータルで簡単に可視化することで、エリア マーケティングなどの、さまざまな分野で活用したいと思っています。COCOA 稼働状況可視化システムの構築で培ったノウハウを、イベント会場や店舗などに展開することで、来場者により楽しんでもらえる、安全なイベントの実現に貢献し、リアルイベントのハウ ツーなら DeNA と言われるようになりたいと思っています」と話します。
また、木村さんは、「COCOA 動作状況チェッカーを使ってデータを取得し、COCOA 導入率測定器でデータを見える化できたことで、今後運営側も意識して来場者に COCOA のインストールを促すことができます。今後は、COCOA 導入率可視化システムを、アフターコロナ時代にリアルイベントを開催していくためのツールにしたいと思っています。そのためのサポートを、今後の Google Cloud には期待しています」と話しています。
1999 年 3 月に設立。2012 年より「Delight and Impact the World(世界に喜びと驚きを)」というミッションに基づき、E コマース、コミュニティー、ゲームなどのインターネット事業だけでなく、スポーツ事業、オートモーティブ事業、ヘルスケア事業など、幅広い領域に事業を拡大。スポーツ事業では、プロ野球チームや長距離陸上チーム、名門バスケットボールクラブを運営。関係各所と連携しながら、横浜スポーツタウン構想の実現に向け、デジタル活用によるスポーツへの貢献にも取り組んでいる。
インタビュイー(写真右から)
・スポーツ事業本部 システム部 エンジニアリング・マネージャー 木村 真 氏
・スポーツ事業本部 システム部 ソフトウェアエンジニア 武藤 悠輔 氏
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