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顧客事例

株式会社Colorful Palette:GKE で構築されたリアルタイム通信エンジン『Diarkis』の導入で約 10 万ユーザーがバーチャル ライブに同時接続し体験を共有

2021年5月7日
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Google Cloud Japan Team

2020 年 9 月にリリースされ、わずか半年で早くも 300 万ダウンロードを突破したスマートフォン向けリズム&アドベンチャー ゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。そのサービスを支えるリアルタイム通信エンジン『Diarkis』は Google Kubernetes Engine(GKE) 上で動作しています。年末年始のカウントダウン イベントでは 10 万ユーザーに迫る同時接続があったという本サービスが、どのようにしてその難局を乗り切ったのか、開発に携わるエンジニアの皆さんにお伺いしました。

(利用している Google Cloud ソリューション)

アプリケーションのモダナイゼーション

(利用している Google Cloud サービス)

Google Kubernetes Engine など

作品体験を高めるためには高性能なリアルタイム通信エンジンが必要

今や一般層にまで認知を拡げているボーカロイド、初音ミクを中心としたメディアミックス プロジェクト「プロジェクトセカイ」。その中核を成すゲームアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク(以下、プロセカ)』の目玉システムの 1 つである「バーチャル ライブ」は、人気バーチャル シンガーらが繰り広げる音楽ライブに観客となって参加できるという、ファンにとって夢のような仕組み。本作ではそれ以外にも「みんなでライブ」という 5 人のユーザーが集まって協力プレイするというモードも用意されており、こちらも人気を博しています。こうしたリアルタイムのやりとりを実現するために使われているのが、株式会社 Diarkis が提供する大規模マルチユーザー間通信エンジン『Diarkis』です。

実は『プロセカ』は、サービス開始当初『Diarkis』ではない、一般的な SaaS 型リアルタイム通信エンジンを採用していました。しかし、『プロセカ』の開発を主導した伊藤さんは、ゲームリリース直後のライブイベントの成功を受けて、既存のリアルタイム通信エンジンではすぐに限界に達してしまうと確信。そこでより高性能なリアルタイム通信エンジンを求めて株式会社Diarkis が提供する大規模マルチユーザー間通信エンジン『Diarkis』を検証し、移行を決意します。

『Diarkis』に移行したことで、1 つのライブに参加できる人数が 15 名から最大 100 名までのユーザーが参加できるようになり、待合エリアでコミュニケーションをとったり、ペンライトを振る、バーチャル アイテムを投げてステージ上にエフェクトを発生させるなどといったアクションを多くの人たちと共有して楽しむことができるようになりました。

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「バーチャル ライブはイベントと連動して開催されるという特性上、1 日のうち特定の時間帯のみ急激に負荷がスパイクし、それ以外の時間帯はほぼ負荷がなくなるという、ピーキーな負荷のかかる施策です。一般的な SaaS 型のリアルタイム通信エンジンはピーク時の最大同時接続ユーザー数で料金が決まることが多いため、『プロセカ』とは相性が悪いところがあります。また、今後取り組んでいく予定の施策において、 SaaS 型のエンジンでは技術的な制約が大きく、やりたいことが実現できないのではないかという危惧もありました。その上で、今後の 5G 普及や、長引く COVID-19 禍に伴うオンライン イベントの重要性の拡大を踏まえ、リアルタイム通信エンジンを自社で柔軟に構築、運用できるようなスタイルに切り替えていこうということに。そして、その観点でさまざまな選択肢を比較、検討した結果、『Diarkis』が最も優れた選択肢だと結論づけました。 Kubernetes や Go などといった先進技術を駆使しており、技術的な投資価値が高いというのも決め手の 1 つでしたね。」(伊藤さん)

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まだ、設立から 1 年半足らずという新興企業のプロダクトながら、話題のビッグタイトルのリアルタイム通信エンジンに抜擢された『Diarkis』。その強みについて、同社代表取締役の高橋さんは次のように説明してくださいました。

「『Diarkis』で最も推したい部分は、リアルタイム接続では難しいとされていた並列分散の仕組みができていること。既存の仕組みではユーザー数の増減にサーバー台数を追随させるのがとても難しかったのですが、『Diarkis』はユーザー数に合わせて自動的にサーバー台数を調整するようになっており、高い安定性とコスト削減を両立できます。」(高橋さん)

こうした特性はリアルタイム通信が重視されるゲーム分野はもちろん、バーチャル オフィスなど時間帯によって利用者数が増減するサービスとの相性が良好。事実、ゲーム以外にも多くのプロジェクトへ導入されています。昨年度は経済産業省主導の地域分散クラウド技術開発事業の通信基盤として採用されました。

そんな『Diarkis』は Google Kubernetes Engine 上で動作。サービスの性質上、数あるマネージド Kubernetes の中で最も安定性に優れている GKE を選んだと高橋さんは言います。

「『Diarkis』はクラスタ内で実行されるたくさんの Pod がそれぞれ密接に通信を行う形でリアルタイム通信の仕組みを実現しています。一般的な Kubernetes の用法とはかなり異なっているのですが、そうした使い方においても GKE は優秀で、特に Pod の縮退のあたりの挙動が安定しているところなどはとても気に入っています。」(高橋さん)

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多くのファンが押し寄せたカウントダウン イベントを難なくクリア

『プロセカ』立ち上げの成功を受けて、『Diarkis』への切り換えをスタートさせたのは 2020 年 10 月のこと。その当時の " 状況 " について、伊藤さんは「始まった瞬間から大変でした」と苦笑いしながら次のようにふり返ってくれました。

「10 月からの作業開始にもかかわらず、年内に移行を完成しなければいけない、とんでもないスケジュールが組まれてしまいました(笑)。『プロセカ』が予想以上に多くのファンの方々に支持された結果、従来の仕組みでは年末年始のカウントダウン イベントを乗り越えられないことが明確だったからです。ただ、幸いなことにグループ内にそうした分野の技術研究をしているチームがあり、彼らの助力を受ける形で開発スピードをアップ。通常では考えられない速度で移行を進めることができました。」(伊藤さん)

そんな助っ人の 1 人である石川さん(同じサイバーエージェントグループの一員である株式会社グレンジに所属)は、主にカウントダウン イベントを想定した負荷試験を担当。グループとして培ってきた Google Cloud のノウハウを駆使して効率的なテスト環境を構築していきました。

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「人気タイトルということで、最低でも 5 万ユーザーが同時接続するくらいのかなりハードなテスト環境を用意する必要があると考えました。そこで、やや費用は張るのですが、C2 マシンタイプと呼ばれる、より高性能なノードを 600 台以上並べて大きな負荷をかけています。このあたりの知見は、過去タイトルで培っています。サイバーエージェントグループ全体では、けっこう Google Cloud を利用している事例が多いんですよ。」(石川さん)

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「負荷試験ツールは Locust を使い、ワーカーは結局 2,500 くらい立てましたね。

最終的な目標として 10 万人同時接続くらいまではやろう、と。」(安部さん)

グループの垣根を越えた開発によってなんとか短期間での開発を達成することができた『プロセカ』。2020 年の年末にはすでに 250 万ユーザーを突破しており、イベントのクライマックス、カウントダウンのときには実際に 10 万ユーザーに迫る規模の同時接続があったそうです。

「みるみるうちに接続数が伸びていき、正直、かなりハラハラしていたのですが、Google Cloud 上の『Diarkis』は最後まで非常に安定していました。むしろゲームアプリ側のサーバーの方が危なかったくらいだったのですが(笑)、なんとかお客さまに不愉快な思いをさせることなく年末年始を乗り切ることができました。」(伊藤さん)

カウントダウン イベントという挑戦を乗り越え、次なるステージへと向かい始めた『プロセカ』。「今後は 1 つのライブ会場の上限人数を 1000 人、1 万人と拡大していくことにも挑戦したい、野外フェスに迫る人数を集めたい」と語る伊藤さんは、今回の取り組みが Colorful Palette 社内に『プロセカ』に留まらない大きな変化を生んだと言います。

「実は特に大きな気付きを得たのは、我々エンジニアではなく、企画チームのメンバーたちでした。そんなことは無理と端から諦めていたようなことが『Diarkis』を使えば実現できるのではないかということで、これまで出てこなかったような新しい企画がどんどん上がってきているんです。また、私としても Google Cloud のようなパブリック クラウドを使うことでここまでのことができるのかという学びがありました。今後も積極的に活用していき、よりサービスの品質を高めていきたいですね。」(伊藤さん)


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株式会社Colorful Palette

2018 年 6 月 1 日設立。サイバーエージェントグループの一員として、「人生を彩るコンテンツをつくる。」をモットーに、魅力的なキャラクター コンテンツを活かしたスマートフォン アプリの企画開発に携わる。『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』は同社初タイトルとなる。従業員数は 75 名(2021 年 4 月時点)。

インタビュイー

株式会社Colorful Palette
・エンジニアリング マネージャー 伊藤 寛起 氏
・エンジニア 安部 永 氏

株式会社グレンジ(サイバーエージェント グループ)
・エンジニア 石川 泰式 氏


株式会社Diarkis

(Google Cloud  パートナー)

インタビュイー
・代表取締役社長 高橋 信頼 氏


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