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コスト管理

Cloud FinOps チームを構築する際に考慮すべき 5 つの重要事項

2024年2月29日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2024 年 2 月 9 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

昨今の目まぐるしく変化するビジネス環境では、クラウド費用を効率的に管理することが重要事項になっています。これを達成するために、組織はクラウド費用を最適化し、クラウドへの投資から価値を生み出すべく、Cloud FinOps チームにますます注目しています。

そのため、成功する Cloud FinOps チームを構築するには慎重な計画と検討が必要です。このブログ投稿では、成功する Cloud FinOps チームを構築する際に考慮すべき 5 つの重要な要素について詳しく説明します。

1.目標を定義し、Cloud FinOps 憲章に文書化する

成功する Cloud FinOps チームを構築するための最初のステップは、明確な目標と目的を持つことです。明確に定義された目的がなければ、チームは取り組みを調整し、組織に価値を示すのに苦労する可能性があります。このような場合に、Cloud FinOps 憲章が役立ちます。Cloud FinOps 憲章は、チームの使命、目標、戦略、責任の概要を説明する文書です。

Cloud FinOps 憲章にはいくつかの目的があります。

  • 不確実性の中での指針: チームにロードマップを提供し、不確実性や課題に直面した場合でもチームが計画どおりに前進できるよう支援します。
  • 経営陣の賛同: 十分に文書化された憲章は、経営陣の賛同を確保するための高度なツールとなり得ます。チームの使命が明確に定義され、組織の目標と一致していることを示すことができます。
  • 優先順位付け: 定義された目標に沿った取り組みやプロジェクトに優先順位を付けるのに役立ち、チームの取り組みを最も重要な領域に集中させます。
  • 効率: 明確なロードマップがあれば、チームはより迅速に行動し、情報に基づいた意思決定を行うことができ、不必要なタスクに費やす時間と労力を削減できます。

2.Cloud FinOps レキシコンを作成する

効果的なコミュニケーションはどのチームでも不可欠であり、FinOps も例外ではありません。FinOps のレキシコン、つまり共通の用語集を作成すると、チームの全員が同じ用語で話せるようになり、誤解が減り、意味が明確になります。

Cloud FinOps レキシコンの作成が有益な理由は次のとおりです。

  • 明確さ: 共通の用語集により、用語と概念がチーム全体で一貫して理解されるようになります。この明確さは、複雑な財務上の概念または技術的な概念を扱う場合に特に重要です。
  • 効率: チームメンバーは共通の語彙を共有すると、より効率的にコミュニケーションできます。これにより、より迅速な意思決定と問題解決が可能になります。
  • オンボーディング: 新しいチームメンバーが共有の用語集にアクセスできれば、オンボーディングがよりスムーズになります。これにより、該当分野に関する理解が促進され、より短期間で生産性を向上させることができるようになります。
  • 部門横断的なコラボレーション: IT や財務などの他のチームと連携する場合、共通の用語集によりコラボレーションが促進されます。財務上および運営上の問題について話し合う際の混乱を最小限に抑えられます。

Cloud FinOps レキシコンを作成するには、Cloud FinOps と組織に関連する重要な用語と頭字語を特定し、専門用語を可能な限り排除して各用語の明確かつ簡潔な定義を作成します。レキシコンをチームと共有し、全員がアクセスできるようにします。コミュニケーション、文書化、レポート作成において一貫してレキシコンを使用するようチームメンバーに奨励します。Cloud FinOps レキシコンのサンプルはこちらこちらでご覧ください。

3.Cloud FinOps 文化を確立する

FinOps チームの構築は、適切なスキルを持つ個人を採用するだけにとどまりません。組織内で FinOps 文化を育むことが重要です。この文化では、費用意識、コラボレーション、継続的改善を重視する必要があります。

Cloud FinOps 文化を構築する際に考慮すべき点は次のとおりです。

  • 部門横断的なコラボレーション: IT、財務、運用チーム間のコラボレーションを促進します。費用削減の機会を特定するには、効果的なコミュニケーションと連携が不可欠です。
  • トレーニングと教育: チームメンバーやその他の関係者向けのトレーニングと教育に投資します。費用最適化の重要性とそれを達成するうえでの役割を全員が理解できるようにします。
  • 継続的改善: 継続的改善の考え方を養います。クラウド リソースと費用管理プロセスを定期的に確認して最適化することをチームメンバーに奨励し、インセンティブを与えます。ゲーミフィケーション手法を使用して楽しく取り組めるものにし、費用対効果を最も向上させたチームに贈る四半期ごとの「コストチャンピオン」賞を設けます。他のチームにも学びと奨励の機会を与えられるようにタウンホール ミーティングで共有します。
  • 費用の可視性の民主化: クラウド リソースにかかる費用について、リソースを使用するすべてのユーザーにある程度の可視性を担保します。これによって責任感が浸透し、財務上の説明責任を果たす文化が組織全体で育まれます。

4.進捗を測定するための KPI と指標を定義する

「測定できるものは管理できる」。これは Cloud FinOps にも当てはまります。Cloud FinOps チームとその費用最適化の取り組みの成功を評価するには、進捗状況を正確に測定し、組織内の財務責任と価値実現を推進できる明確な KPI と成功指標を定義することが重要です。Cloud FinOps の指標を定義するときは、すぐに観察できる指標から始めます。チームが成熟するにつれて、ユニット エコノミクス指標の追跡をスタートすることができます。一度に追跡する指標を増やしすぎないように注意してください。ビジネスにとって重要となる主要な指標に限定し、継続的なフィードバックのリズムを確立し、継続的に指標を反復処理するようにします。

注目する指標の例を次に示します。

  • クラウド イネーブルメント: 理解度とトレーニングが不足していることが原因で、多くの組織が Cloud FinOps の導入に失敗しているため、これは見逃すことのできない指標です。クラウド イネーブルメントは、トレーニングまたは認定を受けたビジネスリーダーの数を、組織全体のクラウド学習者の総数で割ることによって導き出されます。

これは、クラウドの価値、持続可能なビジネス成果の推進においてクラウドが果たす役割をビジネスリーダーが深く理解するうえで役立ちます。

  • クラウド割り当て: 担当ビジネス オーナーに割り当てられた総クラウド費用(各事業部門が利用したタグ付け可能リソース、複数の事業部門で共有されたタグ付け可能リソース、タグ付け不可リソース)の割合としてこの指標を測定します。この指標はショーバック モデルとチャージバック モデルに対応できます。また、リソースのタグ付けの基本的な効果と精度、事業部門への費用配分が反映されます。
  • クラウド最適化による節約の実現: この指標を取得することで、組織では内部の非効率な部分について状況を常に把握できます。また、経営陣は費用削減の実現に注力することで、クラウドでワークロードを実行することでもたらされる真のメリットを実感できます。これは、最適化可能なクラウド サービス全体に対する最適化済みのクラウド サービス全体の割合として測定されます。
  • 予測精度: 予測精度を測定することで、企業は計画を実行に移した場合の結果を明らかにできるようになるほか、クラウド費用の割り当てをより適切に制御できるようになります。予測精度は、年間のクラウド予想費用に対するクラウド実際費用の比率を取得することで導き出されます。効果的に予測を行うことで、経営幹部や投資家を動揺させるようなこともなくなります。
  • FinOps の自動化: 費用削減につながる自動生成された推奨事項のうち、何件が実際に導入されたかを導入率として評価することで測定されます。組織が新しいワークロードをクラウド環境にオンボーディングする際、実用的で効果の高い推奨事項とモニタリング機能がないとクラウドの無駄が増えるため、この指標は重要です。

指標の選択は、Cloud FinOps チームの目標と組織固有のニーズに合わせて行う必要があることに注意してください。Cloud FinOps の主要な指標について詳しくは、こちらをご覧ください。

5.ツール戦略を慎重に選択し、頻繁に再評価する

Cloud FinOps に合ったツールを選択することが重要です。ただし、クラウド テクノロジーの状況は常に進化しており、新しいツールやサービスが定期的に導入されています。そのため、ツール戦略を慎重に選択し、定期的に再評価する準備をしておくことが重要です。

Cloud FinOps ツールを選択して再評価するときは、次の要素を考慮してください。

  • スケーラビリティ: 組織の成長やクラウド使用パターンの変化に合わせてツールがスケールできることを確認します。
  • インテグレーション: 既存のクラウド インフラストラクチャやその他の関連システムと統合できるツールを探します。
  • 費用と ROI: クラウドの使用量に応じて費用が増加するツールもありますが、費用が固定されているツールもあります。意思決定を行う前に、ツールの費用と潜在的な投資収益率を評価しましょう。ツールの導入による節約効果は、ツールの費用を上回るものでしょうか。
  • カスタマイズ: ツールを使用してレポートとビューをカスタマイズおよび分類して、組織に関連するデータを表示できるようにします。
  • テクノロジー: 優れたツールとは最新のテクノロジーを組み込んだものです。たとえば、最近のツールには AI / ML 機能が備わっているため、より効率的に作業を終えることができます。
  • 利便性: ユーザー フレンドリーで、チームに実用的な分析情報を提供するツールを選択しましょう。

結論として、成功する Cloud FinOps チームを構築するには、慎重な計画が必要になるほか、費用意識と継続的改善の文化の実現に向けた取り組みが不可欠です。クラウドの状況は常に変化しているため、アジリティと適応性を維持することが Cloud FinOps で長期的に成功する鍵となることを忘れないでください。Cloud FinOps チームの構築について詳しくは、こちらのホワイトペーパーをご覧ください。

Google には、信頼できる Cloud FinOps 運用モデルを使用して Cloud FinOps チームの構築を支援することを専門とする Cloud FinOps のエキスパート チームもあります。このサービスについて詳しくは、こちらをご覧ください。

-Cloud FinOps プロフェッショナル Dumebi Oti

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