AI 時代に Google Cloud と SAP で拓く持続的なビジネス イノベーションへの道
Marius Törringer
Global Leader, SAP Business, Google Cloud
Souvik Choudhury
Director, Product Management, Google Cloud
※この投稿は米国時間 2024 年 6 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google Cloud と SAP は、クラウドは安全性が高く、高性能で信頼性の高いインフラストラクチャを提供する以上のものであるべきだと考えています。そしてまた、分析と生成 AI によって企業が自社データを最大限に活用できるように、包括的でオープンなマルチクラウドのプラットフォームを提供すべきであるとも考えています。これは、サプライ チェーン、財務、人事などの SAP システムに格納されている重要データについて、特に言えることです。
Google Cloud の生成 AI と分析のソリューションを SAP のデータと統合することにより、私たちのパートナーシップは、組織が所有する情報の可能性を最大限に引き出し、継続的なイノベーションの推進、困難なビジネス上の課題への取り組み、より賢明な意思決定を実現できるよう支援します。
今回の SAP Sapphire カンファレンスで、AI とインフラストラクチャ全体にわたる新たな進展を発表できることを嬉しく思います。具体的には、SAP のお客様がイノベーションを促進し、データをより効果的に管理できるよう支援することを目的とした、次の内容が含まれます。
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よりレジリエントなサプライ チェーンを実現する AI ベースのソリューション。このソリューションは、Google Cloud Cortex Framework と Gemini モデルを SAP の Joule と Integrated Business Planning (IBP) for Supply Planning に組み合わせたものです。
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SAP Datasphere を使用した統合分析サービスを Google Cloud Marketplace で提供開始します。
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Google Cloud のメモリ最適化 X4 インスタンスの導入により、クラウド市場で最大級の SAP 認定コンピューティング インスタンスが提供され、最大 32 TB の SAP HANA ワークロードをサポートします。
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RISE with SAP、SAP BTP、SAP Datasphere の地域拡大および RISE での EU Access のサポート。
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Gemini の複数のアップデートにより、SAP ユーザーが SAP ワークロードにより多くの生成 AI 機能を導入し、SAP の生成 AI ハブから Google Cloud の大規模言語モデルにアクセスできるようになります。
AI を活用したレジリエントなサプライ チェーンの加速
SAP と共同でイノベーションを進める活動を通じて、Google ではお客様が競争優位性を得るのに役立つ、ビジネス上重要なユースケースにより深く掘り下げて取り組んでいます。サプライ チェーン管理を強化し、サプライ チェーンのリスクを軽減するために、Google が提供するデータ ソリューションと AI ソリューションを組み合わせて利用することは、ごく自然な対応といえます。
Cortex Framework と Gemini モデルを SAP の生成 AI アシスタントである Joule と Integrated Business Planning (IBP) for Supply Planning に統合することにより、企業は検出されたイベントやリスクからのインサイトの取得を加速でき、よりスピーディーに、よりインテリジェントなサプライチェーンの対応を可能にする機会を特定できます。
AI を活用したレジリエントなサプライ チェーンにより、需要をより正確に予測し、サプライ チェーンのリスクを低減できます。ユースケースには以下のようなものがあります。
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マーケティング キャンペーンなど多様なデータソースを統合した需要予測の強化。
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気候やイベントデータなどの追加的なデータソースを加味した、供給混乱の先行的な検知とアラートによるサプライ チェーンのリスクの低減。
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より精密な計画による最適運用、最適な在庫レベルを維持する能力、自動化の機会。
SAP Datasphere が Google Cloud Marketplace で提供開始
SAP Datasphere と BigQuery のインテグレーションにより、BigQuery 内の公開データセットや Google Ads などの他の統合データを含む、SAP および非 SAP データへのリアルタイムでのアクセスが継続的に提供され、このアクセスは Cortex Framework によって加速されます。SAP Datasphere の Replication Flow は、現在 BigQuery との双方向のレプリケーションと連携を提供しており、ペタバイト規模の分析やデータ サイエンスのためのプラットフォームだけでなく、Gemini と Vertex AI を使用した ML や生成 AI の基盤を実現します。こういったことがすべて「導入後すぐに」利用できる SAP Datasphere for Google Cloud は、Google Cloud Marketplace で入手できます。
Datasphere for Google Cloud によって大きな成果を得ているお客様の例として、売上報告プロセスをモダナイズした大手家電メーカーがあります。Datasphere、BigQuery、Google Dataform を使用して販売パイプラインを自動化し、既存の PDF 報告書に代わるリアルタイムの売上報告ダッシュボードを構築し、報告プロセス全体をモダナイズしました。その結果、所要リソースの大きな低減、運用スピードの改善、販売に関するビジネス インサイトの深化などの効果が得られています。
新しい X4: 比類のないパフォーマンス、信頼性、およびセキュリティを備えた過去最大規模のクラウド インスタンス
より多くのグローバル企業がクラウド上の SAP S/4HANA への移行を進める中で、巨大なワークロードを実行できるメモリおよびコンピューティング集約型マシンに対する需要の増加が続いています。そこで Google は、16 TB、24 TB、32 TB のインスタンスを特徴とする X4 マシン ファミリーを導入することにいたしました。X4 ファミリーは、特に SAP HANA OLTP と OLAP のワークロードを最高の性能と信頼性で実行できるように設計されており、次のような複数の側面において業界をリードします。
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初の SAP HANA 認定 32 TB インスタンス
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他の認定ハイパースケール製品と比較して倍以上となる 1,920 個の vCPU を備え、Google Cloud 独自の Titanium オフロード技術により業界トップクラスのコンピューティング性能と Hyperdisk ブロック ストレージ性能(最高 10,000 MBps のスループット)が得られます。
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99.95% の Compute Engine メモリ最適化単一インスタンス SLA という業界最高レベルの SLA により、X4 インスタンス ファミリーでは SAP ワークロードに対する並外れた信頼性が保証されます。
これらのシステムでは、さらに Google Cloud のインフラストラクチャの差別化要因によるメリットが得られます。その例としては、SAP ワークロードに対して低レイテンシを提供する最大級のネットワーク フットプリントや、組み込みの暗号化やプロアクティブな脅威検出などの堅牢なセキュリティ対策が挙げられます。
Deloitte の米国最高技術責任者である Shawn Lund 氏はこう語っています。「この何年かで、当社の SAP HANA システムのデータは顕著に規模が拡大し、ますます高い性能が必要になっています。24 TB の X4 マシンと Hyperdisk ストレージを導入したことで、将来のデータの増大に対応できる余裕を確保できたのと同時に、処理性能の向上にも期待しています。そのうえ、Google の X4 マシンはクラウド ネイティブなので、システム管理と運用を自動化する機会ももたらしてくれます。」
RISE with SAP のお客様向けのイノベーション
新プロダクトの高性能 X4 インスタンス ファミリーは、最も信頼性が高く、スケーラビリティに優れた RISE with SAP ワークロード向けクラウド プロバイダとなるために、Google Cloud が継続的に投資していることを示す好例です。
RISE with SAP の CTO である Lalit Patil 氏はこう語っています。「SAP と Google Cloud は共同イノベーションの強固なパートナーシップを結んでおり、RISE with SAP のお客様に利益をもたらす新しい差別化されたソリューションを継続的にリリースしています。
SAP Sapphire では 2 つの新プロダクトを発表しました。
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SAP RISE 向けの新しい X4 システム: SAP RISE が Google Cloud の最新の 16 TB、24 TB、32 TB の X4 システムに対応しました。この共同設計された製品は、お客様の POC を通じて厳格にテストが実施されているため、最大規模で要求の厳しい SAP ワークロードでも、必要な信頼性とパフォーマンスが得られます。
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EU のお客様向けのコンプライアンス強化: Google Cloud 上の RISE で EU Access を使用できるようになりました。これにより、欧州のお客様の規制とコンプライアンスの要件に対応できます。」
最近 Google Cloud 上で RISE with SAP を導入したお客様として Asian Paints が挙げられます。Asian Paints の CIO である Aashish Kshetry 氏は、次のように述べています。「RISE with SAP 用に Google Cloud を選択したのは、SAP との強いパートナーシップを持っており、この地域での大規模なインストールを管理する能力があるからです。Google Cloud 上の最新のインフラストラクチャとプラットフォームに SAP S/4HANA をデプロイし、自社のイノベーションと継続的な成長につなげたいと考えています。」
以下のような他の事例でも、Google Cloud が RISE with SAP のユーザーにとっての理想的なクラウド パートナーであることが裏打ちされます。
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SAP BTP と Datasphere のサービス地域の拡大が進んでおり、今四半期にイスラエルと日本で、また今年後半にサウジアラビア、オーストラリア、ブラジルで新しいリージョンが立ち上がります。
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ABAP SDK for Google Cloud の SAP BTP への拡張。これにより Google Cloud は、SAP BTP 上のフルサポート版 ABAP SDK をリリースする初のハイパースケーラーとなり、お客様は 55 個の Google Cloud API(Vertex AI、BigQuery、Pub/Sub など)によって SAP のビジネス プロセスに AI、分析、自動化を組み込むことが可能になります。
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SAP の Customer Database Platform(CDP)による Vertex AI への直接統合。これにより企業はビジネス運営で予測機能を活用し、顧客体験を改善して成長を加速できます。
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SAP 向け Gemini Assist。これは Google Cloud Workload Manager(WLM)内の機能で、SAP の管理者が SAP のデプロイを自然言語インターフェースで操作できるようにします。
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SAP の生成 AI ハブで Google Gemini LLM が利用可能となり、SAP の製品ポートフォリオ全体で SAP Joule とともに組み込み生成 AI 機能をサポートします。Google Cloud のモデルは、S/4、Ariba、SuccessFactors などのワークロードを強化できます。SAP のお客様は引き続き Google Cloud の最新モデル、たとえば 5 月に Google I/O で発表された Gemini Flash などにリリース時点でアクセスできます。
大規模ワークロードに関するお客様課題の解決
Cintas は、世界中で 100 万社以上の企業に業務用製品とサービスを提供している会社で、200 台以上のサーバーと 130 TB 以上の大規模な非圧縮データベースを含むオンプレミスの SAP 環境を、Google Cloud で変革しました。ある事業部門における RISE with SAP ユースケースを含むリフト&シフトの移行後、Cintas は非圧縮データベースの規模を 68% のオーバーヘッドの減少となる 41 TB まで削減できました。安定的に高速動作するクラウドネイティブなデータ管理プラットフォームを基盤に、同社は Google Cloud Cortex Framework など Google Cloud の技術を使用して AI と分析の取り組みを加速しようとしています。
ムンバイに拠点を置く Mahindra & Mahindra Ltd. は、80 もの企業群からなる多国籍企業連合を、初の RISE スケールアウト アーキテクチャを採用した SAP S/4HANA Cloud の Private Edition の 1 インスタンスで統合しました。同社は Google Cloud と SAP の専門家と密に連携して、ピーク時のワークロードに必要な柔軟な分散型 HANA データベースを作成し、応答時間が 12% 高速になる効果を実現しました。さらに Mahindra & Mahindra では、デベロッパーの生産性が 35% 向上し、大量の計算を要するトランザクションが 15% 改善しました。一例を挙げると、新しいシステムでは 30 分間に 100,000 台以上の自動車を販売するという需要に耐えることができました。
詳細は Sapphire の会場で
皆さまの計画や課題を教えていただけることを心待ちにしております。また、SAP とのイノベーションに関する継続的な共同取り組みによって結集された強みを活かし、RISE を含む Google Cloud 上の最適化された SAP 環境で、皆さまが自信を持って未来に備えられるようにする方法を共有することを楽しみにしています。
また、Sapphire での SAP Analytics Cloud(SAC)ロードマップのセッションも楽しみにしています。非 SAP データや非構造データの分析情報を SAC で取得し、計画や分析を高度化できるよう設計された SAC と BigQuery のインテグレーション機能を SAP から新しく発表します。
ぜひ Sapphire Orlando の #302 ブースにお立ち寄りください。たくさんの質問をお待ちしております。また、AI/ML、生成 AI(Gemini)、サプライ チェーン、サステナビリティなどのデモもご覧いただけます。または、 https://cloud.google.com/solutions/sap で、すぐに詳細をご覧いただけます。