Google Cloud と SAP が金融サービスのお客様向けに強力なスケーラビリティを実証
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 1 月 12 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
ミッション: SAP 金融製品の補助元帳向けにスケールアウト クラウド ソリューションを提供し、パフォーマンス、スケーリング、信頼性を実現
金融企業ではこれまで、SAP 金融製品の補助元帳(FPSL)など、多くのリソースを必要とする重要アプリケーションを実行する際、一体的でシングルノードのスケールアップ アーキテクチャを採用してきました。しかし、この種のシステムは長期的な拡大・成長を前提として設計されているわけではありません。扱うデータ規模が大きくなるにつれ、システムの利便性は低下し、費用がかかるようになります。
FPSL を大規模に実行できるクラウドの機能性を実証するため、Google Cloud および SAP のエンジニアが Google Cloud の金融製品の補助元帳に対して SAP S/4HANA を活用し、半年間の概念実証(POC)を実施しました。PayPal などの専門の決済機関によって実行されるものと似た決済シナリオを実行するため、スケールアウト アーキテクチャが活用されました。金融企業は長年、この製品を従来のシングルノードのシステムで実行してきましたが、SAP は現在、FPSL を最適化し、簡単にデプロイできるスケールアウト ソリューションとしてパブリック クラウドで実行できるようにしています。システムの需要が高まってスケールアウトが必要になる場合、管理者は、分散アプリケーション アーキテクチャの一部として並行して実行する新しいシステム インスタンスを追加しますが、特に規模が極めて大きくなる場合、クラウドネイティブのスケールアウト アーキテクチャで FPSL などのアプリケーションの実際の需要に対応できるかどうかが問題になります。
テストでは、Google Compute Engine VM インスタンスのさまざまな種類に加えてネットワークとストレージのリソースが含まれ、またSAP HANA のデータベースとアプリケーション サーバー環境の両方が、96 TB の SAP HANA スケールアウトまで拡張されたマルチノードのクラスタにわたるものでした。テスト環境の詳細については、ホワイト ペーパーをご覧ください。
FPSL を実際に近い状況で機能させるため、合計 1,000 万件の当座預金口座と、1 日 4,000 万件のビジネスの決済トランザクションなどがテストデータとして生成され、使用されました。このデータを 2020 年の営業年度全体および 2021 年の営業年度半期分をシミュレートするために使用した結果、年末の会計処理向けに合計 120 億件の決済データと 2,000 億件の補助元帳項目が得られました。
Google Cloud での SAP S/4HANA FPSL のスケールアウト: 明らかになった 3 つの重要なポイント
Google Cloud と SAP によって 2020 年 4 月から 9 月に行われた内部測定の結果、豊富なハードデータが得られました。FPSL の顧客にとって、パフォーマンス、信頼性、効率性は重要なメリットです。
1. パフォーマンスとスケーラビリティは、もはや FPSL を利用するうえでの制約事項ではなくなりました。当会計年度の残高に関しる 2,000 億件のレコードが 30 秒以内に処理され、システムのパフォーマンスとスケールがさまざまなレベルで証明されました。複数のアプリケーション サーバーからリクエストされる並行タスクの増加に応じてシステムがスケールされ、パフォーマンスとスループットが問題なく保たれました。並行化を通じてクエリのランタイム速度が 40 倍に向上し、オンプレミスのスケールアップ システムのパフォーマンス レベルと比較して、ランタイムが 2 時間から 44 分へと短縮(63% 減)されました。ブラック フライデーやサイバー マンデーをシミュレートしたピークデータ量テストでは、トランザクションは 4,000 万件から 1 億 6,000 万件に増加し、1 日あたりの品目数は 5 億件から 20 億件へと 4 倍になりました。こうした状況において、以下の図は、レスポンス時間が比例線よりやや高い程度で推移し、システムが期待どおりに機能したことを示しています(200% のボリュームには 200% よりやや長いランタイムが必要になります)。
「SAP と Google Cloud の連携を通じて実現したテクノロジー、プロダクト、サービスによって、バックオフィスで大きなアジリティとスケーラビリティが得られました。Google Cloud に移行することで、増加するトランザクション量、世界中で絶え間なくリリースされる新しい金融製品、そして迅速な運用を必要とする M&A の統合アクティビティに対応できるようになりました。」 - PayPal 従業員テクノロジーおよびエクスペリエンス担当バイス プレジデント Dan Torunian 氏
2. Google Cloud の VM のライブ マイグレーションにより、信頼性が損なわれることはなく、逆に強化されます。Google Cloud のテスト環境は 24 週間連続でアクティブに実行されました。毎日実際のシステムにより、シミュレートされた複数の営業日に対する処理が行われ、日々の決済処理と年初来残高の更新処理が継続サイクルとして実行されました。処理が終了すると、ダウンタイムなく同様の処理が再度開始されます。
予期せぬダウンタイムが生じないだけでなく、システムのメンテナンスやセキュリティ パッチの適用の結果生じるダウンタイムも避けることができます。Google Cloud のライブ マイグレーション機能は、システムのメンテナンスやパッチ適用が必要な際、HANA VM のデータベースとアプリケーション インスタンスをサーバー間でシームレスに移動させ、それらを稼働させ続けます。CPU 使用率はデータベースではわずか 20~40%、アプリケーション レイヤーではわずか 15~30% であり、追加のワークロードの需要に対し十分な余裕があることも実証されました。
環境のデータ保護もテストされました。SAP HANA 向けの Google Storage Backint エージェントを使用して、Google Cloud のマルチリージョンの Cloud Storage で複数のバックアップを実行および保存した結果、99.95% の可用性(または「イレブンナイン」の耐久性)、マルチリージョンのレプリケーション、包括的な暗号化が、下り(外向き)コストなく実現しました。またバックアップでは、マルチリージョンでレプリケートされたクラウド ストレージ バケットに対して 5 GB/秒よりも速い速度が継続的に計測されました(5.39 GB/秒で 16.97 TB = 54 分間)。
3. データ階層化などの新しい最適化機能を有効にすることで、メモリ フットプリントが 78% 削減されました。この調査では、ストレージ費用の管理戦略としてのデータ階層化にもスポットライトをあてています。SAP HANA ネイティブのストレージ拡張データは、優先度の高低によるアクセスに対し、「ホット」と「ウォーム」のパーティションに分割することができます。優先度が低いデータは、アプリケーションからは見えたままになるものの、「ページ読み込み可能」として扱われメモリから削除されます。この機能のおかげで、システムのディスク ストレージに対するデータ量のわずかな増加のみで、メモリ フットプリントの 78% の削減という結果が得られました。これは、トランザクションとデータ量が増え続けるにあたり、効率性を示す重要なデータです。
「96 TB の SAP HANA スケールアウト構成における、金融製品の補助元帳ソリューション向け SAP S/4HANA は、SAP と Google Cloud の技術のよいところが組み合わさり、PayPal に画期的な機能を提供してくれています。スケーラブルな分散システムを構築する Google Cloud の専門性と、ミッション クリティカルなビジネス プロセス オートメーションを提供する SAP のあくなき取り組みを組み合わせることで、PayPal はさらにスケールする余裕を保ちつつ、SAP HANA の世界有数規模のスケールアウト クラスタを実行できるようになりました。」 - Google 技術インフラストラクチャ担当シニア バイス プレジデント Urs Hölzle
本投稿では、明らかになったポイントのごく一部のみをご紹介しました。Google Cloud がさまざまな金融サービス企業に信頼され、極めて重要かつ機密性の高いコア アプリケーションのホストに利用されている理由についてさらに詳しくは、ホワイト ペーパーをダウンロードして SAP と Google Cloud のテスト結果のさらなる分析情報をご確認ください。成果に関する SAP の観点もあわせてご確認ください。SAP のお客様向けのすべての Google Cloud ソリューションについては、こちらをご覧ください。
-Google Cloud コンピューティング担当バイス プレジデント兼ゼネラル マネージャー June Yang