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Google Maps Platform

「食」の楽しさと喜びをさらに届けるために、日本企業で初めて Google Maps Platform モビリティ ソリューションを導入した menu

2023年1月27日
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Google Maps Platform Team

今日の記事では、株式会社レアゾン・ホールディングスのグループ企業である menu株式会社において、テイクアウトやフードデリバリー事業を推進する佐藤祐一氏、丹羽隆之氏、三谷達生氏にお話を伺いました。同社は 2019 年のサービス提供開始以来、テイクアウトやフードデリバリー業界で第3位に躍進。高まるニーズと期待に応えるべく、Google Maps Platform が提供する新たなソリューション、ライドシェアやデリバリー向けに特化した Google Maps Platform モビリティ ソリューション を、日本企業として初めて導入しています。

急成長を支える独自のビジネスモデル

株式会社レアゾン・ホールディングスの執行役員で、menu株式会社で取締役を務める佐藤裕一氏は、同社のビジネスモデルと企業戦略を次のように説明します。

「レアゾン・ホールディングスは『世界一の企業へ』というビジョン、そして『新しい”当たり前”を作り続ける』というミッションを掲げており、menu もその一環としてスタートしました。テイクアウトサービスを足がかりに、フードデリバリービジネスへ進出。最近はスーパーや百貨店などを対象にしたクイックコマースや、社員食堂の代わりにデリバリーを利用していただくような福利厚生の分野にも参入して、事業を拡大しています。」

ただし menu株式会社が目指しているのは、単に効率よく食事を届けることではありません。佐藤氏は「むしろ最も重視してきたのは、『食』がもたらす高揚感やエンターテインメント的な楽しさを広く提供することでした」と語ります。事実、同社はレアゾン・ホールディングスグループ全体が培ってきたゲーム業界や広告業界のノウハウを活かしたIPコラボ、あるいはガチャシステムなども積極的に展開してきましたが、他にも様々な工夫を行っていることで知られます。佐藤氏はその発想の原点を解説しています。

「ご家族でフードデリバリーを利用される方も多いのですが、お子さまが食べたいものと、親御さんが食べたいものが違うということはよくあると思います。別なお店の料理も、一回の注文で届けてもらえるならば選択の幅も広がりますし、自宅でフードコートにいるようなユーザー体験もできます。お客さまの中には、お酒もついでに買ってきてほしい、日用雑貨も届けてほしいと願われる方もいらっしゃるでしょう。」

このようなニーズに応えるために、menu アプリは複数の店舗から同時に購入できるコンボ注文機能を提供しています。一方では、基本配達料が無料になる会員制度の導入や、たとえばミシュランなどに選定された高級料理店などとの画期的なパートナーシップも実現させており、これらの試みもリピート率の高さにつながっているとのことです。

デリバリー業界は配達員の確保が難しい、注文が入ってもマッチング(配達員の手配)ができないといった課題を慢性的に抱えてきました。しかし佐藤氏は「ありがたいことに、その手の問題に悩まされたことはありません」と語ります。

「menu が配達員の方にも支持されているのは、配達するほど報酬が上がる仕組みを整えたことや、配達していただく方にとってもアプリやシステムが使いやすいという特徴が評価されているからだと思います。」

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menu サービスの全体像

開発を支えたユーザーファーストの発想

株式会社レアゾン・ホールディングスで 取締役 CTO 兼  CHRO を務める丹羽隆之氏は、開発プロジェクトを推進する上で重視した方針を詳細に語っています。

「飲食業界はデジタル技術に関する知識の差がすごく大きく、いまだに FAX を利用しているお店もあれば、IT を駆使しているお店もあります。ランチタイムはデリバリーに特化する店舗もあるなど、経営方針も千差万別です。そのような店舗に向けてアプリを開発していく際には、使いやすさを最大限に高めることが鍵になります。開発の際には、できるだけ操作を簡略化してタップ回数を減らす、画面を注視していなくてもいいように音でアラートを出す、必要な場合には、ワンタップで調理完了の予定時刻を遅らせることができるようにするなど、現場のニーズにこだわっています。弊社では技術開発部門のスタッフが営業スタッフに同行し、店舗経営者の方々とデリバリーに適したメニューを検討するような取り組みも行っています。」

menu株式会社は、配達員向けアプリの開発でも同様の努力を重ねてきました。丹羽氏は「開発者自ら実際にベータ版をいろいろな状況で使っています。たとえば、どんな天気でも見やすく、安全で便利に操作できるUIなどを煮詰めてきました」と振り返ります。このような方針は、注文者向けのアプリを開発する際にも徹底されました。

「各店舗には『商圏』がありますし、お客さまの立場にたてば、過去の注文履歴やお好みなどを踏まえ、パーソナライズされたおすすめ情報が表示されるのが理想的です。これを実現するため、レアゾン・ホールディングスの研究チームが独自に検索エンジンを開発して menuアプリに組み込んでいます。類似サービスでは、広告でアプリに表示される店舗のランキングが変わることがありますが、私たちは情報の信頼性を高めるために、広告もすべて排除してきました。このようにお客さまを第一に考える姿勢は、今や業界を問わずにスタンダードになってきていると思います」

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menu アプリの画面例 - 注文用と配達員用

menu のシステムやアプリを開発するにあたって、丹羽氏は Google Maps Platform を選択。決め手になったのは「スピード感と使いやすさ」だと語ります。

「私たちはゼロからテイクアウトのビジネスを立ち上げ、その延長線上でデリバリーも手掛けるようになりました。このような場合には、マーケットシェアを確保する上でも開発のスピード感が非常に重要です。Google Maps Platform はアカウントを作るだけで使えますし、実用的な API や世界中で共有されているナレッジも活用できるので最適でした。」

関連して丹羽氏は、システムの安定性も選択の理由として挙げています。

「デリバリー業界ではユーザーの利便性を高めながら通信コストを下げることが肝要になりますが、ランチタイムはデータトラフィックが増え、操作が重くなりがちになってしまいます。しかしインフラとして採用している Google Cloud のロードバランサーや、Google Maps Platform そのもののスケーラビリティのおかげで、安心してシステムを運用できると考えました。」

menu株式会社のデリバリーサービスは、Google Maps Platform の API や SDK を活用してきました。Maps Javascript API は、注文が入っているエリアと、配達員の位置を社内で確認するために利用。Maps SDK for AndroidMaps SDK for iOS は注文者が店舗を探す際や、配達員が店舗や届け先に向かう際に使用しています。Geocoding API は住所を緯度経度情報に変換し、地図上で表示するために活用。Directions API は報酬の算出根拠となる経路情報の取得、Places API は注文者が初めて届け先を指定する際に、入力の利便性を高めるために利用しています。

新たなシステムとサービスのための必須要件

ただし丹羽氏は menu株式会社が右肩上がりの成長を続ける中、すでに新たなシステム・サービスに対する必須要件も見据えていました。

「1 つ目の要件は、直線距離ではなく実際の経路に基づいて配達員と店舗の距離を取得し、より店舗に近い配達員に配達依頼を通知できるようにすることです。これは配達に要する時間やコストを短縮しつつ、遅延を減らすことにつながります。2 つ目は、1 回の注文で複数の店舗から同時に注文できる『コンボ注文』の件数を増やすことです。従来は、基準店舗から半径が一定距離以内にある店舗のみが表示されていました。しかし、お届け先までの経路にある店舗も選択の対象に含めることができれば、さらに利便性の高いサービスが提供できます。3 つ目は配達員のアプリにナビを組み込むことです。これまでは住所が表示されたアプリと地図アプリを交互に確認する形になっていましたので、画面の遷移なしに統合したいと考えていました。」

それを可能にしたのが Google Maps Platform モビリティ ソリューションでした。丹羽氏は「私たちが追求してきた実際的な使いやすさを高めていく上でも、Google Maps Platform モビリティ ソリューションの導入は大きな一歩でした。」と語ります。

Google Maps Platform モビリティ ソリューションの活用がもたらした効果と、さらなる可能性

menu株式会社 で開発部門の執行役員を務める三谷達生氏は、Google Maps Platform モビリティ ソリューションの導入がいかに 3 つの要件を解消し、ユーザー エクスペリエンスの向上につながったかを詳しく語っています。

「より店舗に近い配達員に配達依頼を通知するという1つ目の要件、そしてコンボ注文を増やすという2つ目の要件は、ComputeRoutesMatrix API の活用でクリアしました。まず ComputeRoutesMatrix API では、配達員と店舗の距離を経路ベースで取得できるので、配達員が店舗に商品をピックアップに行くまでの距離を、平均で半分ほどに短縮することに成功しました。また ComputeRoutesMatrix API は、基準店舗からお届け先までの経路距離を複数地点まとめて取得するので、配達ルートの途中にあるコンビニエンスストアも商品ピックアップの対象となり、コンボ注文にもさらに柔軟に対応できるようになりました。配達員のアプリ上でナビ機能を使用可能にするという 3 つ目の要件は、 Navigation SDK の導入によって実現しています。」

「Google Maps Platform モビリティ ソリューションを使うことで、ComputeRoutesMatrix API は 2 か月ほどで実装できましたが、Navigation SDK は弊社で使っているライブラリと競合したため、少し作業に時間がかかりました。しかし Google 側と 2 週間に 1 度ぐらいのペースでミーティングを行い、この問題もしっかり解決することができました。今後は Journey Sharing を活用して、配達員の位置をリアルタイムに表示する機能も提供していきたいと考えています。」

Google Maps Platform モビリティ ソリューションを導入した成果は、様々な形で早くも現れています。コンビニエンスストアに限定すれば、ComputeRoutesMatrix API  の採用によって、コンボ注文の件数は2倍アップしました。Directions API で経路を取得する場合には、配達員や店舗の数に応じた API コールが必要で処理の遅延が発生する懸念もありましたが、ComputeRoutesMatrix API では 1、2 回の API コールで経路取得が済むため、より安定したシステム運用が可能になりました。三谷氏は「Google Maps Platform モビリティ ソリューションを導入した結果、サーバーの運用費用を注文 1 件あたりのコストに落とし込むことができたのも、事業を拡大していく上で大きな追い風になります」と指摘します。

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menu アプリの画面例 - ナビ画面

食事以外の目的でも眺めたくなるアプリへ

三谷氏は Google Maps Platform モビリティ ソリューションがもたらした特筆すべき成果として、「アプリの可能性自体がどんどん広がりつつある」点も挙げています。

「たとえば Google Maps Platform モビリティ ソリューションを活用して、将来的に建物の入り口まで経路が表示されるようにできれば、もっとスピーディで効率的な配達が実現できます。一方、Journey Sharing の実装が完了すれば、現在のように 5 分単位ではなくほぼリアルタイムで、しかも弊社のサーバーに負荷をかけずに配達員の現在位置を表示できるようになります。これはお客さまのユーザー体験を向上させる上でもきわめて効果的です。もともと menu アプリは『お腹が空いたら、まず開くアプリ』になることを目指して開発しましたが、ゆくゆくは食事を選ぶ時だけ利用していただくのではなく、日常生活のあらゆる場面で『なにかおもしろいことないかな?』と、いつも眺めていただけるようなアプリに育て上げたいと思っています。

今回、私たちは日本企業として初めて Google Maps Platform モビリティ ソリューションを導入しました。Google Maps Platform モビリティ ソリューションはデリバリービジネスを発展させていく上で、不可欠なソリューションであることは間違いありません。これを機に店舗、配達員、お客さまのすべてに、さらに喜んでいただけるサービスを提供していきたいですね。」


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menu株式会社

menu は、親会社である株式会社レアゾン・ホールディングスのグループ会社として設立され、フードデリバリー・テイクアウトアプリ「menu」を通じて、お客さまの注文を飲食店に伝達し、飲食店と配達員のマッチングを行うフードデリバリー事業を展開しています。

インタビューイ

・三谷 達生 氏(写真左)

・丹羽 隆之 氏 (写真右)

・佐藤 裕一 氏

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