Navagis と Google Maps Platform が連携して COVID-19 ワクチン接種会場検索システムを構築
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 3 月 25 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: Navagis の創立者であり CEO である David Moore 氏が、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大のさなかで Google Maps Platform チームと連携し、日本全国の人がワクチン接種を受けられるようにするためにどのように貢献したかを語ります。
Navagis の設立のきっかけは、米国南部湾岸を襲ったハリケーン カトリーナにさかのぼります。当時、私は米国陸軍工兵隊を率いて、Google Earth の 3D マッピング テクノロジーを配備し、一刻を争う任務にあたっていました。以来、Navagis は Google Cloud プレミア パートナーとして、多種多様な業種や組織を対象に、ロケーション インテリジェンス上の課題を解決するソフトウェア ソリューションを提供しています。
こうした経験を通じて私が学んだのは、地図分析情報は、災害発生時において人々の命を守るために絶大な威力を発揮するということです。COVID-19 は世界中で人類にまったく新しい課題をもたらしました。日本も例外ではありません。1 億 2,500 万にのぼる人口を対象にワクチン接種可能な場所(および各種条件)を知らせるため、試行錯誤を繰り返していました。
Navagis の最終目標は、日本のワクチン接種会場に関する正確かつ詳細なリアルタイムのデータセットを構築するということです。日本に住み、混乱や不安を目の当たりにしていた私がチームリーダーとしてこの任務を請け負った際、強く感じたのはその緊急性です。
このプロジェクトは、開始当初から問題が山積みでした。というのも、ワクチン接種会場の正確かつリアルタイムな検索システムを構築するにあたって、日本は特有の課題に直面していたのです。1 つ目は、北は北海道から南は沖縄まで、数千の地方自治体に住所データが分散しているということ。2 つ目は、厚生労働省が全国のワクチン接種会場に関するウェブサイトを開設しましたが、そのデータソースが常に更新され続けていたということです。住所データが各地域に分散しているのに加え、都道府県によって住所の表記規則が異なるという問題も重なり、位置情報に矛盾が生じがちであるということがわかってきました。このように、主に日本語で表記されている、膨大な分散データの整合性を保つために必要となったのは、実地での活動ならびに経験則です。
求められていたのは、ワクチン接種会場の位置を単に地図化するということだけではありません。それぞれの会場について、受付時間や、安全上の注意、COVID-19 ワクチンの接種資格など、ワクチンに関するあらゆる情報をまとめて提供する必要がありました。
24 時間体制のチームワークにより便利で情報豊富な地図ソリューションを構築
地図システムには、AI と高度な衛星技術、そしてクラウド コンピューティングの処理能力さえあればよいと思われがちです。もちろん、これらは必要不可欠な要素ですが、一方であまり知られていないのは、ワクチン接種場所情報を提供するために、人手による大量かつ集中的な作業が必要になるという点です。特に、日本のような広大かつ複雑な国家で、医療的緊急性も高いとなると、こうした側面が際立ってきます。
この課題に早急に対処すべく、私たちはタイムゾーンを越え、週末も通して Google Maps Platform チームと連携しながら、急ピッチでシステムの実現に取り組みました。ワクチン接種施設は、コンベンション センターの特設会場など、意外な場所に設置される場合もあります。そのため、政府のウェブサイトに掲載されているワクチン接種会場の住所を Google Maps Platform の場所データと照らし合わせる作業が必要でした。
こうした照合作業を通じて、わずか 2 週間足らずで国内の数万か所をワクチン接種会場として特定し、マークを付けることができました。さらに、Geolocation API と Places API を駆使して、それぞれの会場に関する情報も詳しく表示されるようにしました。
このプロジェクトの特徴として、ワクチン接種会場の検索という一定の目標を達成するために、複数のチャネルを通じてデータを提供しているという点が挙げられます。具体的には、Google と連携し、一般ユーザー向けの Google マップアプリおよびウェブサイトの両方でワクチン接種会場を検索したり、場所や交通手段を確認したりできるようにしています。また、「この会場は重要性が高いので、地図に表示してほしい」といったリクエストも頻繁にあります。そうしたリクエストに迅速に対応し、会場情報を追加掲載して、エンドユーザーが地図で確認できるようにもしています。こうした作業のため、多くの人手を動員しました。
強力な API でワクチン接種会場のピンポイント検索が可能に
Google Maps Platform が提供する API なくしては、このように短期間で 35,000 か所にのぼるワクチン接種会場を検証するという大規模な任務を達成することは不可能でした。具体的には Geocoding API および Places API を使って、政府のウェブサイトから位置情報を抽出し、最新の情報を利用しながら、各会場が実際に存在するかどうかの検証作業をスピーディに行うことができました。Places API は、情報のカバー範囲の広さ(日本全国)、情報の詳しさ(ランドマークや電話番号など、各会場に関する複合的情報)という 2 つの側面で極めて重要な役割を果たしています。
政府のウェブサイトからワクチン接種会場の住所を抽出し、抽出データを Places API で処理して、住所データの品質を評価するという手法は、絶大な効果を発揮しました。さらに、Google ストリートビューによって追加検証し、それぞれの場所を視覚的にダブルチェックしているほか、クリニックや病院を個別に確認して、日本の都市内における正確な緯度や経度を特定しています。
COVID-19 の先を見据えて
2021 年夏前の時点では、日本のワクチン接種率は世界に遅れをとっていましたが、今では人口の約 80% が接種を完了し、世界のトップクラスに躍り出ています。オミクロン株が世界的に流行する前は、1 日あたりの感染者数は全国で 100 人程度にまで抑えられていました。
日本でワクチン接種会場検索システムを確立するという新たな挑戦が終わりに近付いた今、私たちは大きな喜びを感じています。
今後も Google Maps Platform と連携し、人々が日常生活の幸せを取り戻せるよう貢献していきたいと思います。
Google Maps Platform について詳しくは、ウェブサイトをご覧ください。
- Navagis の創立者兼 CEO David Moore 氏