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Google Maps Platform

物流業界を効率化しドライバーの待遇を改善、CBcloud の Google Maps Platform 活用法

2022年10月18日
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Google Maps Platform Team

今日の記事は、日本で新たな物流プラットフォームを提供しているCBcloud のエンジニアマネージャー、徳盛太一朗氏によるものです。CBcloudは、先進の技術によって物流業界のDX化を推進。現代社会のニーズに応えながら、ドライバーの総合的な待遇改善、そして日本全体の経済の活性化に貢献しています。

深刻化する人手不足、物流の変革に挑戦

個人から個人へ。そして企業から個人へ。物流は私たちの生活を根本で支えるインフラであり、社会全体にとって「血流」とも言うべきものとなっています。特に近年は E コマースが発展。また新型コロナウィルスの影響で、ステイホームやリモートワークが増加したことにより、ますます大きな役割を担うようになりました。

しかしその一方で、物流業界はドライバーが置かれている過酷な労働環境や、深刻な人手不足、業務効率の低下といった大きな課題に直面しています。

私たちは、「届けてくれる」にもっと価値を。というビジョンを掲げています。それが意味するのはドライバーの環境改善――努力が報われる労働環境を作り出し、社会的な地位や付加価値を高め、活躍の場を広げていくこと。テクノロジーの力を使ってドライバーを Empower(元気にする、力を与える)していく試みに他なりません。

そこでひとつの鍵となるのは効率化です。効率化を図っていくことは、物流に携わるすべての人、ドライバーはもとより企業、そして利用者にも恩恵をもたらします。このエコシステムを構築するのが私たちの目標です。

様々な試みは私たちが掲げる「モノのMaaS®(Mobility as a Service)」、すなわち、人や物の移動をサービスとして改めて定義し、最新のテクノロジーを活用しながら効率化や収益化、地域が抱える諸問題の解決を図っていく構想の一環です。


PickGo と SmaRyuポストにより、構造改革と効率化を実現

物流業界には、元々の荷主から出された荷物が下請けへ、そのまた下請けへと回される多重下請け構造があり、実際に荷物を運ぶドライバーに適正な賃金が支払われていないのが実情でした。このような課題を解消したいという想いがきっかけで、私たちは「PickGo(ピックゴー)」というプラットフォームを開発し、2016 年から提供を開始しました。 PickGo は、中間業者や下請け構造を介さずに、荷主と配送パートナーを直接結びつけるシステムで、24 時間 365 日・全国に対応。配車完了までの時間は最短 56 秒、配車完了率は 99.2% を実現しています。 

当初は、個人事業主の軽貨物ドライバーからスタートしましたが、2020 年 2 月からは一般貨物、2020 年 9 月からは二輪車(自転車・バイク)による配送にも対応。さらにタクシーや鉄道、飛行機による輸送方法も組み込まれた、総合的な物流プラットフォームに発展してきました。

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しかし PickGo を運営する中で、昨今のコロナ禍や EC の拡大にドライバーの作業が追いついていない現状が表面化してきました。そこで、宅配をより効率化させるために生まれたのが「SmaRyu ポスト(スマリュー ポスト)」です。宅配業務は基本的に成果報酬で、1 日に何個配達できるかが従事者の収入に影響します。また、大量の荷物を配送する場合には、「ルーティング(最適なコースと配送順番の決定)」や「荷積み(ルーティングに応じた順番で荷物を車両に載せる作業)」などを自ら行いますが、その方法自体が非常にアナログ的になっていました。従来、このような作業は、ドライバー個人の経験や目算に頼っていましたし、土地勘がない場合は、行き先の把握にかなりの時間を要するケースもありました。SmaRyuポストは一連の作業を自動化し、出発前の工程を数十分まで短縮。「ルーティング機能」でお届けする住所から経路を算出し、「荷積み位置指定機能」で車内の荷積み位置を自動指定できるようにすることで、配送工程全体の効率化も図っています。

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マストツールとしての Google Maps Platform


ドライバーの環境を改善していく上では、流通の仕組みをアナログからデジタルへ変えられるような枠組み(プラットフォーム)を構築しつつ、誰でも簡単に使えるアプリが必要です。ここでは精度が高く、開発のしやすい地図データが基盤となります。その意味で Google Maps Platform は必要不可欠になっていました。


Google Maps Platform の採用は、サービスの提供開始をいち早く実現するという目的にも適っていました。現に導入はきわめてスムーズに完了できました。また Google Maps Platform では、多様な機能を備えた API や開発のための SDK が揃っていましたので、私たちは既に用意されているツールを利用するだけで、プロジェクトに着手できました。


これらのシステムを開発する際、何より大切にしたのは、物流の現場における実用性と使いやすさ、ユーザーエクスペリエンスを最大限に高めていくことでした。


私たちのサービスを使えば、様々な問題や課題を一気に解決できます。しかし、インターフェースがわかりやすく、不慣れな方でも直感的に操作できる、あるいは画面がスムーズに切り替わって、すぐに距離やルートを表示できるようなものでなければ、利用に踏み切るハードルは高くなってしまいます。


そこで私たちは、高機能でありながら使いやすく、スマートフォンやアプリの操作などにあまり慣れていない方でも利用できる製品を提供することを目指しました。


それを可能にしたのが Google Maps Platform の API や SDK だったのです。


まず Maps Javascript API は地図に各種の情報を載せて、わかりやすく表示するための基盤ですので、「PickGo」と「SmaRyuポスト」のシステムで利用されています。Maps SDK for Android は、Android 端末上でアプリを動かす上で鍵を握っています。この製品を使うことで、アプリに自然に Google マップのデータを組み込むことが可能になります。Directions API は、PickGo で距離を算出する際に主に利用されています。今後はルート最適化にも、さらに役立てていく予定です。


Places API for Web は、建物の名称などを入力することで住所が特定され、マップ上にピンが表示されるような仕組みを実現するのに利用されています。これもユーザーエクスペリエンスの向上に不可欠です。

そして Geocording API。これはお客様からいただいた住所を、正確な緯度と経緯情報に変換するもので、「SmaRyuポスト」などでルーティングを行う際に必要となります。
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このように見てくると、基本となる地図データから、地図データを軸にした様々な機能・ユーザーエクスペリエンスに至るまで、Google Maps Platform が全面的に活用されていることがおわかりいただけるかと思います。

配送の準備時間を 80% 短縮

Google Maps Platform をベースにしたシステムは、配送の効率化と劇的な時間短縮を可能にしました。たとえば「PickGo」では、注文を受けてから距離と料金を算出するまでの所要時間が、従来に比べて 50% から 60% ほど短縮されたと考えられています。また「SmarRyuポスト」では、大量の荷物を仕分けしながらルーティングもされるので、人が経験や目算で処理した場合に比べて、所要時間を 80% も短縮できると見込まれています。

「PickGo」に登録しているパートナーは、軽貨物のドライバーが 4 万人で、二輪が 15,000 人。一般貨物は10,000 台以上がシステムを導入しています(2022 年 6 月末時点、自社調べ)。さらに他社との業務提携を通じて、配送ネットワークを拡大しています。

Google Maps Platform の採用は、『テクノロジーに対するリテラシー』の向上にもつながりました。Google マップは毎日の生活でも広く利用されているため、多くの人が親しみを持っています。事実、「SmaRyuポスト」の Android 版を提供し始めた際には、『あ、これ見たことがある』というような声が、現場でよく聞かれました。

Google マップの認知度や普及率の高さは、年齢や性別を問わずに、新しい技術を利用し始める敷居を下げ、関心を喚起する上でも大きな追い風となったのです。

こうして物流業界が活性化してくると、地域の活性化にもつながっていきます。過疎化が進む地域では、身近な店舗が次々と閉店。移動手段も急速に減ってきているため、生活に必要な食料品や雑貨の安定確保が大きな課題となっています。Google Maps Platform を活用したシステムは、各地域が抱える課題を解決するためのソリューションも提供しています。

ラストワンマイルへの挑戦。デジタル マッピング ツールが秘めた可能性

物流業界の構造を改革し、ドライバーの待遇を改善する。そしてさらにはドライバーだけでなく荷主や企業の生産性や価値を向上させ、社会全体を活性化していく。この目標の達成に向けて、私たちの挑戦はこれからも続いていきます。

私たちは、テクノロジーの力を利用して、人々が秘めた価値や能力を解放するーー運送業の主役であるドライバーに改めてスポットライトを当て、やりがいや生きがいを見出したり、スキル向上への意欲を高めるような状況を、作り出していきたいと思っています。



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CBcloud株式会社 

2013年創業。フリーランスドライバーおよび一般貨物自動車運送事業者と荷主を即時につなぐ配送マッチングプラットフォーム「PickGo」や宅配事業者向けの業務効率化システム「SmaRyu Post」、運送事業者の業務支援システム「SmaRyu Truck」など、物流業界に独自のITソリューションを提供する。


インタビュイー

・エンジニアマネージャー  徳盛太一朗氏


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