Nordeus、Google Cloud CDN を活用して大人気ゲームを開発
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 6 月 30 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Nordeus の主力製品、サッカーチーム管理シミュレーション Top Eleven は、10 年近く前にモバイルゲーム ランキングのトップになりましたが、いまでもその人気は健在です。
プレーヤーがまたプレイしたくなるようなゲーム体験は比類がなく、Nordeus の持つノウハウが如実に表れています。最近 Google Cloud CDN を使うクラウド環境への移行を終えた Nordeus のインフラストラクチャ チームは、よりシンプルかつスマートでコスト効率に優れた方法で成功を維持できるようになりました。
Nordeus のインフラストラクチャおよびデータ エンジニアリング担当責任者を務める Strahinja Kustudić 氏によると、Top Eleven を日常的にプレイする登録済みプレーヤーは世界中に 2 億 2,000 万人以上、さらに数百万人が同社配信中の他の 2 つのゲームをプレイしているということです。Nordeus は欧州で最も急成長しているゲーム デベロッパーとして頭角を現し、現在も新しいゲームタイトルを開発中です。セルビアのベオグラードにある本社には 180 名以上の従業員が勤務しています。
スケーラビリティと持続性に欠けたオンプレミス システムからの卒業
2019 年まで、同社がすべてのゲーム コンテンツの配信に使用していたのは、セルフマネージドのオンプレミス システムでした。そのインフラストラクチャには、大規模な本番 Hadoop クラスタと、仮想マシンベースのプライベート クラウドの本番環境を実行する 400 台以上の専用のサーバーがある、英国のデータセンターが含まれていました。
あらゆる要素をオンプレミスに配置したインフラストラクチャは Nordeus チームにとって制御、可視化しやすかったのですが、小さなチームが非常に多くの作業をこなさなければならない現状のアプローチを持続するのは難しくなっていました。
Kustudić 氏は「長い間、インフラストラクチャ チームは私ともう一人だけでした。極端なオーバープロビジョニングを行っていましたが、これは専用サーバーを稼働している場合に必要となることです。コストがかさむだけで、意味のないことでした」と述べています。それと同時にストレージとは別にコンピューティング容量もスケールしなければならないため、早急に必要な Hadoop のアップグレードもままならない状態だったとも同氏はいいます。
成長の余地がほとんどない従来の CDN
Nordeus のコンテンツ配信ネットワーク(CDN)もインフラストラクチャの問題として同社を悩ましていました。Kustudić 氏によると、以前はある CDN プロバイダがそこそこのパフォーマンスのネットワークを提供していましたが、新規ドメインの追加や他の管理タスクを行うとなると、作業が複雑になり非効率だったとのことです。
Kustudić 氏は「[CDN プロバイダに] 連絡して話し合い、証明書を送信してCDN を設定してもらう必要がありました。これは簡単ではありませんでした」と述べています。
Nordeus のオンプレミス ストレージ クラスタもまた、成長への障壁の一つとなっていました。パフォーマンスは期待どおりだったものの、サーバーのメンテナンスが面倒だったことやカスタム ストレージとファイル システムの要件により、作業はさらに複雑で非効率になりました。
同氏によると、クラウド移行プロジェクトが複雑になりそうだったため、Nordeus は取り組みに難色を示したということです。しかし、クラウドへの移行は、コストだけでなくスケーラビリティの観点からも有益です。オンプレミスのインフラストラクチャでは、当時およびその後見込まれる成長に対応できなくなっていました。
Kustudić 氏は次のように語っています。「問題はコストだけではありませんでした。スケーリング、管理、モニタリングがとても簡単になるプラットフォームを必要としていました。プラットフォームには、柔軟性はもちろん、我々の開発や行動に速さ、アジリティに耐えることも求めていました。」
すべてを取り込んだクラウド移行戦略
Nordeus が Google Cloud 移行プロジェクトを始動したのは 2019 年 4 月でした。最初から Google Cloud エンジニアの力を借り、その後半年間で Nordeus はオンプレミスのテクノロジー スタック全体を Google Cloud に移行しました。
Nordeus のチームはまずネットワークのパフォーマンスを強化し、その後これまで使用したことがなかった Terraform やオンプレミス環境の管理にも長年使用していた Ansible などのツールを活用し始めました。両方のツールは、ゲーム開発、テスト、リリースのプロセスに大きな効率性とスケーラビリティをもたらしました。2020 年 1 月までに、Nordeus はインフラストラクチャで最後となる CDN の移行に着手することになりました。
Kustudić 氏とそのチームは、Google Cloud CDN の設定プロセスのシンプルさに感激しました。同氏は次のように述べています。「CDN の設定がここまで簡単だとは思いませんでした。CDN に煩わされたくないのです。オンプレミス システムの大きな問題はそれでした。移行をしてから 1 年間、CDN に煩わされたことはありません。正しく機能し、無限にスケーラブルなことがわかっているからです。」
スケーリングを前提に設計された CDN 戦略
Kustudić 氏によると、Nordeus は、CDN の使用に対するアプローチ全体を見直しながら、スケーラビリティとシンプルさの両方を実現しました。これにより、Nordeus が新しいゲームをリリースする際、インフラストラクチャ チームと関与すべきあらゆる開発チームは、Google Cloud Platform プロジェクト、Cloud Load Balancer、Google Cloud Storage バケット、Cloud CDN インスタンスを含む CDN 環境をシンプルな Terraform スクリプトを使用してオンデマンドで立ち上げることができます。このコードベースのアプローチを使用することで、Nordeus は複数のテスト環境を簡単に設定、開発サイクル中にゲームを効率的にテスト、新しいゲームを迅速にリリースして、ユーザーの要求に基づいてゲーム インフラストラクチャを効率的にスケールできます。
Cloud Storage は、同社の CDN に関する問題の解決においても重要な役割を果たしました。カスタム ストレージ要件がなくなり、ファイルシステムに小さなファイルを多数格納する非効率性が排除されました。GCS の使用により、CDN を起点とするストレージの問題が解消されたのです。同氏は次のように語っています。「CDN と Cloud Storage のシンプルさは驚くべきものでした。スケーリングについて一切心配しなくても、いつも問題なく機能しています。」自社製のオンプレミス ストレージのクラスタの代わりに GCS を使用する別のメリットとして、インフラストラクチャ チームがユーザーのエラーとファイルのバックアップについて心配する必要がなくなったことがあります。GCS 内蔵のバージョニング機能がこれらを行うからです。
インフラストラクチャ チームを解放して成長の実現に注力
Kustudić 氏は、Google Cloud CDN がレイテンシを改善したことで大きな影響を与えたのは明確だと指摘しています。特に欧州では、レイテンシが 15~20% 低減しました。同氏は、Nordeus がコスト削減のために Google Cloud へ移行した訳ではないものの、実際にコストが削減されたことも指摘しました。月間の CDN 運用コストが約 50% 削減されました。
Nordeus にとって、Google Cloud CDN によるコスト削減よりも、成長の実現、より高速なリリース頻度をサポートするための開発チームの強化、世界のゲーム業界における卓越性の維持などの、重要な目標に注力できることの方が重要です。
Kustudić 氏は次のように述べています。「非常に調子が良く、設定はとても簡単です。プライベート クラウドのときよりも機能が多く、より高速で柔軟なプラットフォームを手に入れることができました。」以上はあらゆるビジネスにとって重要な点ですが、競争の激しい業界で第一線の地位を維持するよう取り組む急成長企業にとっては、特に重要な違いを生み出します。
Cloud CDN の詳細
Cloud CDN の詳細については、Google Cloud CDN のソリューション ページをご参照ください。機能、ドキュメント、顧客事例などが掲載されています。Cloud CDN の使用を開始するには、入門ガイドをご覧ください。また、こちらではベスト プラクティスをご確認いただけます。
-インフラストラクチャ モダナイゼーション担当ソリューション マネージャー Yannick Guillerm
-Google Cloud プロダクト マーケティング マネージャー Shubhika Taneja