Network Service Tiers をアルファ リリース : クラウド ネットワークの選択が可能に
Google Cloud Japan Team
私たち Google はこのほど、Network Service Tiers のアルファ版をリリースしました。サービス レベルに応じて階層分けされたクラウド ネットワークを提供するパブリック クラウドは、主要プロバイダーの中では Google Cloud Platform(GCP)が初めてとなります。
パフォーマンスに最適化された Premium Tier は、比類のないサービス品質を持つ Google のグローバル ネットワークを使用して提供されます。一方、コストに最適化された新しい Standard Tier は、他の大手パブリック クラウドに匹敵するパフォーマンスを魅力的な料金で提供するネットワークです。
Google のテクニカル インフラストラクチャ担当シニア バイス プレジデントである Urs Hölzle は、「私たちはこの 18 年で世界最大のネットワークを構築しました。私たちのネットワークのトラフィックは、インターネット トラフィック全体の 25~30 % を占めるとも言われています」と前置きしたうえで、Network Service Tiers について次のように述べています。
「Premium Tier を選択すれば、私たちのネットワークと同じインフラストラクチャを享受できます。ですが、ユース ケースによっては、より安価で、よりパフォーマンスの低い選択肢のほうが望ましいこともあります。Network Service Tiers では、お客様に合ったネットワークをアプリケーションごとに選べます。」
Premium Tier の威力
Google Cloud のお客様は、強力な Premium Tier をすでにご利用いただいています。Premium Tier は、適切にプロビジョニングされた、低レイテンシで信頼性の高い Google のグローバル ネットワークでトラフィックを伝送します。このネットワークは、全世界で 100 か所以上の POP(Google ネットワークとインターネットの接続ポイント)を備えた広大なグローバル プライベート ファイバー ネットワークで構成されています。この点で、Google のネットワークはあらゆるパブリック クラウド プロバイダーの中で最大です。
Premium Tier の場合、エンドユーザーから Google Cloud 内のお客様のアプリケーションへのトラフィック(上りトラフィック)は、エンドユーザーに最も近い POP から Google の高パフォーマンス プライベート ネットワークに入ります。GCP はこのトラフィックを GCP のプライベート ネットワーク経由でお客様のアプリケーションに伝送します。
同様に、GCP はお客様のアプリケーションからエンドユーザーへのトラフィック(下りトラフィック)を Google ネットワーク経由で伝送し、エンドユーザーが世界のどこにいても、エンドユーザーに最も近い POP から送出します。これにより、こうした下りトラフィックのほとんどは 1 ホップでエンドユーザーの ISP に送信され、宛先に到達します。そのおかげでネットワークの混雑が最小限に抑えられ、パフォーマンスが最大化されます。
私たちは Google ネットワークを、高い冗長性を持つように設計しました。アプリケーションの高い可用性を確保するためです。Google ネットワーク上のどの 2 地点間でも、少なくとも 3 つの独立した経路(N+2 の冗長性)があります。そのため、2 地点間の特定の経路が途絶したとしても、トラフィックは確実に流れ続けます。
つまり、Premium Tier ではファイバー ケーブルが 1 本切れてもトラフィックは影響を受けません。ファイバー ケーブルが 2 本同時に切れても、多くの場合、お客様のアプリケーションに対するトラフィックの送受信は中断せずに継続されます。
GCP のお客様は、Premium Tier のもう 1 つの機能であるグローバル負荷分散も幅広く利用できます。管理が容易な 1 つのエニーキャスト IPv4 または IPv6 仮想 IP(VIP)を利用できるだけでなく、複数リージョンにまたがるシームレスなスケーリングに加え、他のリージョンへのオーバーフローやフェイルオーバーも可能です。
Premium Tier では、Google 検索、Gmail、YouTube といったサービスや、Google のお客様である The Home Depot、Spotify、Evernote などのサービスと同じネットワークを利用できます。
現時点では、homedepot.com の 75 % が Google Cloud から提供されています。私たちは、複数リージョンにまたがって運用することで高い可用性を確保したいと考えました。Google のグローバル ネットワークは、Google Cloud を選択する理由となる最も強力な機能の 1 つです。
Ravi Yeddula 氏、The Home Depot のプラットフォーム アーキテクチャ & アプリケーション開発担当シニア ディレクター
Standard Tier の導入
新しい Standard Tier は、他の主要パブリック クラウドに匹敵するネットワーク品質を、Premium Tier よりも安い料金で提供します。なぜ Standard Tier のほうが安いのでしょうか。GCP からの下りトラフィックは、Google ネットワークではなくパブリック インターネットに送信され、ISP を経由してエンドユーザーに送信されるからです。
同様に、エンドユーザーから GCP への上りトラフィックについては、GCP の宛先があるリージョン内でのみ Google ネットワークで伝送されます。エンドユーザーのトラフィックが異なるリージョンから送信された場合は、そのトラフィックはまず ISP とパブリック インターネットを経由して、GCP の宛先があるリージョンに送信されます。
Standard Tier のネットワーク パフォーマンスと可用性は、Premium Tier に比べると低くなります。GCP とGCP に最も近い POP の間の短いホップでのみ、お客様の下りおよび上りトラフィックは Google ネットワークで伝送されます。そのため、Standard Tier のパフォーマンス、可用性、冗長性といった特性は、お客様のトラフィックを伝送する ISP のネットワークとインターネットに依存します。場合によっては、Premium Tier と比べて頻繁にネットワークの混雑や停止に見舞われるかもしれません。ただし、その頻度は他の主要パブリック クラウドと同等のレベルです。
Standard Tier では、新しいリージョナル クラウド負荷分散サービスなど、リージョナル ネットワーク サービスのみが提供されます。負荷分散仮想 IP(VIP)は他のパブリック クラウド サービスと同様にリージョナルです。マルチリージョンで負荷分散を行う必要がある場合、Premium Tier で利用できるグローバル負荷分散と比べて管理が複雑になります。
Premium Tier と Standard Tier のパフォーマンス比較
私たちは、Network Service Tiers のパフォーマンスの予備測定を Cedexis に委託しました。同社はインターネット ベースのパフォーマンス監視および最適化ツールを手がける企業です。Cedexis による測定の結果は予想どおり、Premium Tier のほうが Standard Tier よりスループットが高く、レイテンシが低いというものでした。こちらの “Network Tiers” セクションで、測定結果を示すライブ ダッシュボードを見ることができます。同社はウェブ サイトで測定方法も説明しています。
Cedexis が作成した下のグラフは、Premium Tier と Standard Tier について、HTTP 負荷分散トラフィックのスループットの 50 パーセンタイル(中央値)を時系列で示しています。Standard Tier(青線)のスループットは平均 3,223 kbps、Premium Tier(緑線)は平均 5,401 kbps で、Premium Tier のスループットが Standard Tier の 1.7 倍弱となっています。
一般に、Premium Tier はどのパーセンタイルでも、Standard Tier よりかなり高いスループットを示します。
Premium Tier と Standard Tier の料金比較
Premium Tier と Standard Tier では新料金を導入します。新料金の詳細はこちらで確認できます。この新料金は、Network Service Tiers の正式リリース(GA)時に適用が開始されます。アルファおよびベータの段階では既存のインターネット下り料金が適用されます。Network Service Tiers の新料金(GA 後)では、北米と欧州における下りトラフィック(GCP からインターネットへ)の料金は、Standard Tier のほうが Premium Tier よりも 24~33 % 安くなっています。この Standard Tier の料金は、他の主要パブリック クラウド プロバイダーのインターネット下りオプションよりも安価です(2017 年 7 月時点で公表されていた通常料金との比較)。上りトラフィックは Premium Tier、Standard Tier とも無料です。
また、Premium Tier の下りトラフィック料金は、トラフィックの送信先に基づく現行の算定方式から、送信元と送信先の両方に基づいた方式に変更されます。ネットワーク トラフィックのコストは、Google ネットワークでのトラフィックの伝送距離に左右されるからです。これに対し、Standard Tier の下りトラフィック料金は送信元に基づいて算定されます。Google ネットワークでの伝送距離があまりないからです。
適切な Tier の選択
強力な Premium Tier が、これまでどおりお客様のワークロードのデフォルト Tier です。以下に、お客様の要件に最適な Tier を選択するための決定木を示します。アプリケーションに合わせた Tier の構成
万能のネットワーク技術は存在しません。また、Google Cloud 内のお客様のアプリケーションは通常、可用性やパフォーマンス、フットプリント、コストの要件がさまざまに異なります。きめ細かく管理したい場合はリソース レベル(インスタンス、インスタンス テンプレート、ロード バランサごと)で Tier を構成し、すべてのリソースにわたって同じ Tier を使用したい場合は包括的なプロジェクト レベルで Tier を構成します。今すぐお試しあれ
クラウドを利用するお客様はサービス レベルやコストの選択肢を求めています。サービスをビジネス要件に対応させることは、お客様が抱えるクラウドの最適化ニーズに応えることになります。Google は、Network Service Tiers のアルファ リリースにより、最適化ニーズへの対応を初めて行動に移したパブリック クラウド プロバイダーです。Premium Tier は品質の保証を必要とするお客様向け、Standard Tier はコストを抑える必要があるお客様や、グローバル ネットワーキング ニーズが限られているお客様向けです。
Dan Conde 氏、ESG のアナリスト
Network Service Tiers についてもっと知りたい方はウェブ サイトをご覧ください。そしてアルファ版にサインアップして、ぜひお試しください。フィードバックをお待ちしています。
* この投稿は米国時間 8 月 23 日、Cloud Networking の Product Manager である Prajakta Joshi によって投稿されたもの(投稿はこちら)の抄訳です。
- By Prajakta Joshi, Product Manager, Cloud Networking