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Google Cloud

ChromeOS、Android における日本語環境の改善 vol.2

2024年4月2日
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Google Cloud Japan Team

この記事は「ChromeOS 、 Google Workspace 、そして Android における日本語環境の改善」の続編となります。このたび、細かな字形の使い分けに対応したフォント、IPAmj明朝フォントが ChromeOS の バージョン123 のシステムフォントとして追加されました。このフォントは表示言語を日本語に設定すると有効化されます。また他の改善点についてもご紹介いたします。

※掲載のスクリーンショットは、2024年3月現在のものとなり、UI等は変更される可能性があります。

1.IPAmj明朝フォント サポート

フォントのポイント

IPAmj明朝フォントは、人名の表記等で細かな字形の差異を特別に使い分ける必要のある業務等での活用を想定した、約 6 万字を収録したフォントです。

なぜこのフォントが重要なの?

自治体が使用する名前や地名には、システムフォントに含まれていない異体字と呼ばれる文字が多く含まれています。これまでは、「外字」という仕組みで、自治体ごとに異なる文字コードを割り当てた異体字を使用していました。しかし、外字による文字コードの違いは情報の標準化を進めるうえでの大きな課題となっていました。

2021 年 9 月 1 日に施行された「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」により、自治体の情報システムの標準化が義務付けられました。このプロセスでは、外字から IPAmj明朝フォントで使用される文字コードに置き換える文字同定と呼ばれる作業が行われます。 さらに 2025 年には、この作業で同定できなかった外字を置き換えるために、約50,000 文字が追加された拡張バージョン (MJ+) が導入される予定です。

Google では地方自治体や教育機関など、人名を扱う多くのお客様から長らく IPAmj明朝フォントの ChromeOS への導入に対してご要望をいただいておりましたが、約 6 万字を収録するこの IPAmj明朝フォントの導入には、44.5 MByte というサイズの大きさが課題となっていました。このたび、ChromeOS 言語パック機能がリリースされたことにより、日本語を選択した環境ではこのフォントがインストールできるようになりました。

参考リンク:

IPAmj明朝フォントのインストールと表示方法

インストールと表示設定方法

① Chromebook の右下のステータスエリアから Chrome 設定画面を開きます。

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② システム環境設定から、ウェブサイトの言語に日本語を追加します。ログアウト後、次回ログイン時にバックエンドで日本語フォントがダウンロードされます(言語を削除したあとも、ダウンロードされたフォントは削除されません)。

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③ chrome://settings/fonts と入力し標準フォント、 Serif フォント、 Sans Serif フォントを 「IPAmjMincho」 に変更します。

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文字情報基盤検索システムのページなどでフォントの表示の確認ができます。以下の例では右側の IPAmj明朝が設定されたバージョンでは正しい字形で表示されているのがわかります。

IVS サンプル集から検証

IVS サンプル集からも IPAmj明朝フォントを検証できます。

Chromebook では、Word や Excel などの Office ファイルも Microsoft ファイル用の基本エディタで開く、編集する、ダウンロードする、保存するなどの操作を行うことができます(詳細)。IPAmj明朝フォントを使用した Word ドキュメント、Excel での確認や編集も可能です。

Word ドキュメントの比較

基本エディタ 上では入力も可能ですが、Google ドキュメントに変換すると字形が変わります。

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Excel ドキュメントの比較

基本エディタ上で入力も可能です。Google スプレッドシートに変換も可能で、入力も可能です。

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IPAmj明朝フォントに対応した異体字の入力方法

Chromebookでは、以下の4つの方法で異体字を入力することができます。

  1. コピー&ペースト
  2. 文字コードから入力
  3. ターミナルからコマンドで入力
  4. ユーザー辞書の利用

A. コピー&ペースト

IVS対応のポータルサイトなどの異字体が表示されているページから、コピー&ペーストできます。IPAmj明朝フォントの設定がされたアプリケーション (例えば Gmail) であれば同じ異体字の字形でペーストされます。 PDF へのダウンロードなども可能です。別のフォントが指定されているアプリケーションでも、表示される字形はコピー元と異なりますが、異体字の情報を含んだ文字としてペーストされます。

B. 文字コードから入力

① Google 日本語入力を選択し、”U+”に続けて文字コードを入力し、変換された候補を選択します。 文字コードは大文字でも小文字でも可能です。

② もしくは英数入力を選択し、 Ctrl + Shift + U を同時に押し、そのまま"U+”をつけずに文字コードを入力し、スペースキーを押します。

③ Unicode では基本となる文字コードに続けて、字形を指定する IVS という文字コードを追加すると、「邊」や「辻」などに対しての異体字を表現できます。以下の「邊」の例では、同じ文字コードの ”U+908A” に対して、11 ものバリエーションがあるのがわかります。

④ IVS まで入力する際は②の方法でスペースで変換後、以下の動画のように続けて IVS まで入力し、変換します。

以下は「邊」を示す文字コード 908A に続けて、異体字を指定する IVS の E0110 を入力した例です。英数入力を選択して Ctrl + Shift + U を同時に押し、そのまま"U+”をつけずに文字コードを入力し、スペースキーで決定、を2回繰り返します。

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Linux コンテナ上にインストールしたLinux アプリでも同様に入力が可能です。

C. ターミナルからコマンドで入力

より詳しい方向けの情報ですが、Chromebook の Linux ターミナルからも入力が可能です。

① Chromebook の Linux 機能を有効化。Chromebook の右下のステータスエリアから Chrome 設定画面を開きます。

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② ChromeOS について > デベロッパーから Linux 開発環境をオンにすると、Linux を使うためのターミナル アプリがインストールされます。Chromebook への Linux インストールについての詳細はヘルプページを参照してください。

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③ ランチャーからターミナル アプリを起動し、文字コードからの異体字入力が可能となります。

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(IPAmj明朝のインストールされていない ChromeOS バージョン 121)

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(IPAmj明朝のインストールされた ChromeOS バージョン 123)

D. ユーザー辞書の利用

特に使用頻度の高い単語についてはユーザー辞書のご利用もおすすめです。ユーザー辞書はデバイス間では同期されません。

① Chromebook の右下のステータスエリアから Chrome 設定画面を開きます

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② デバイス > キーボードと入力 > 入力設定 > 日本語 を選択

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③ ユーザー辞書を選択

特に使用頻度の高い単語については、ユーザー辞書に登録しておくことで、入力が容易になります。辞書名を決めて(例 地名)、よみ、単語、品詞、必要であればコメントを入力します。単語は、前述の異字体の入力方法の手順に従って、異字体を入力します。

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例えばこちらのサイトに紹介されているように、奈良県葛城市と東京都葛飾区の「葛」は同じ文字コードの文字 (U+845B) ですが異なる字形が用いられています。

<葛城市>

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葛城市ホームページより引用)

<葛飾区>

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葛飾区ホームページより引用)

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候補ではシステムは別のフォントを使っているため奈良県葛城市と異なる字形で表記がされていますが、入力は設定された字形でされています。

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(ChromeOS バージョン 123 の基本エディタ上で入力)

2. Noto Serif 変体仮名フォントリリース

Google Noto Fonts シリーズに、新たに Noto Serif 変体仮名フォントが追加リリースされました。「変体仮名」はひらがなの異体字で、現在ではあまり使われていませんが、平安時代の文学や和歌、お蕎麦屋さんの看板などで見られる文字です。Android オープンソースプロジェクト(AOSP) にも追加されました。

https://github.com/notofonts/hentaigana/releases/tag/NotoSerifHentaigana-v1.000

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3.日本語入力の精度の向上

日本語の変換精度を高めるために変換辞書の改善を定期的に行っております。データベースの拡充によりニュースで使われている新しい言葉や名字のカバー範囲が大幅に増えました。例えば「粟戸(あわと)さん、木場崎(きばざき)さん、国府島(こうじま)さん、崎内(さきうち)さん、仏木(ほてぎ)さん、 箕澤 (みのさわ)さん、六角(むすみ)さん、寄口(よりぐち)さん」などが、新しく追加されて変換できるようになった名字の一例です。

Google は、ChromeOS 、 Google Worksapce 、また Android 環境において、アクセシビリティやダイバーシティの概念を念頭に今後も改善を続けて参ります。

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