Google Workspace、ChromeOS、Android における日本語環境の改善
Google Cloud Japan Team
GIGA スクール構想の推進により、MM 総研が発表した「GIGA スクール構想実現に向けたICT 環境整備調査」によると、Google Chromebook は 43.8 %の学校で使われています。そして Google Workspace for Educationはさらに多くの児童に利用されています。
世界人口のおよそ 15% にあたる約 10 億人が、なんらかの障がいを抱えているといわれており1、また日本には、読み書きの困難なディスレクシアの子どもたちが少なくとも 4.5%は存在することがわかっています。前述のMM総研の記事によると 327 万 8110 台のChromebook が 2021 年 1 月時点でも出荷されており、Chromebook や Google Workspace for Education を使っている方たちのなかには読み書きに困難さを抱えている子どもたちも多くいるのではないでしょうか。
Google のコアバリューの一つは、ユーザーへの支援を提供し、可能な限りサービスを利用しやすくすることです。私たちは上記の現状を踏まえ、ChromeOS 、 Google Workspace 、そして Android における日本語環境の改善について真摯に取り組んでおります。本稿ではそのうちの最新のいくつかの改善点についてご紹介したいと思います。
1. UD(ユニバーサルデザイン)フォントの導入
この度 Google Fonts , ChromeOS (M103 以降), Google Workspace にモリサワ社の UD フォント を導入いたしました。Google ドライブ、 Google スライド 、Google スプレッドシート 、Google フォーム などで UD フォント をお使いいただけます。 Google Workspace 、 ChromeOS での UD フォント の利用方法についてはこちらをご参照ください。
モリサワ社の UD フォントは、「文字の形がわかりやすい」「文章が読みやすい」「読み間違えにくい」をコンセプトに開発されたユニバーサルデザイン(UD)フォントです。より多くの方にとって読みやすく使いやすいように設計されており、ユーザ評価に基づく読みやすさのエビデンスを取得しています。 ICT 化が進む教育現場やビジネスでの書類作成をはじめ、正確な情報伝達が必要な場面でお使いいただけます。また ChromeOS にも搭載されたことで、Web ページをUD フォントで読むことが可能となりました。
Google Fonts からは SIL Open Font Licence というオープンソースのライセンスによる提供となり、個人での利用のみならず、学校での配布資料や町内会の回覧資料、企業の看板など商用非商用問わず自由に多くの方に無償で使っていただけます。従来のBIZ UDフォントに加えてIPAフォント Ver.003(最新)の全ての文字をカバーするよう文字を追加した上位互換の位置づけのBIZ UDフォントですが、拡張を続けており、BIZ UD明朝 、BIZ UDP明朝 Bold(2022年11月以降提供開始予定)を追加開発中で、より使いやすいラインナップとなる予定です。
フォント デザインの特徴
以下は従来の Noto Sans との比較です。大文字の ” I ” や小文字の ” l ” が判別しやすいデザインということがわかります。
また、明朝体は本来横線が細い書体ですが、BIZ UD明朝 は横線が太く設計されているため、遠くからでも読みやすいことがわかります。
その他、より多くの方にとって文字の判別がしやすい、文字の誤読を回避できるということを第一に考え、他の書体と比較しても文字デザインの工夫が随所でされています。
フォント作成にあたっては、当事者の見え方を研究して改善していくという工程がとられています。視力低下によるぼやけを再現し、フォント デザインはブラッシュアップされていきました。
このようにして開発されていった UD フォント、BIZ UDゴシックは TBUDゴシックをベースに開発されたフォントですが、TBUDゴシックと TBUD丸ゴシックは、弱視の生徒に最も人気が高く形状がはっきりしていて読みやすいと好評価を得ています。
2. Google IME の精度の向上
日本語の変換精度を高めるために変換辞書の改善を定期的に行っております。データベースの拡充によりニュースで使われている新しい言葉や名字のカバー範囲が大幅に増える予定です。例として、辞書の改善により「コロナ禍」など最新の用語の変換も可能になりました。
3. 多言語キーボードアプリ、Gboard での改善
Gboard は Android 、ChromeOS 、iOS 端末向けの日本語仮想キーボード アプリですが、変換精度の向上を継続的に行っています。一例として、変換候補の生成方法を見直し、より自然な語句のみが提示されるようにしました。
また子どもたちのなかには、文字を書くことが苦手、という子どもも多くいます。タイピングの代替手段となる、「音声入力」や「手書き入力」、また Android の一部のバージョンでは、多言語への同時翻訳機能も付き、アクセシビリティの観点の機能についても、精度の改善を続けています。
Google は、ChromeOS 、 Google Worksapce 、また Android 環境において、アクセシビリティやダイバーシティの概念を念頭に今後も改善を続けて参ります。
1. 出典: 世界銀行、Disability Inclusion Overview、2022 年 4 月 - 本研究の成果は「中野泰志・新井哲也(2012). 弱視生徒用拡大教科書に適したフォントの分析 ロービジョン学会誌, 第 12 巻, 81-88.」に掲載