Google Cloud Platform

クラウドによって促進される APAC(およびすべての国)の経済成長

GCP_APAC.jpg

※この投稿は米国時間 2019 年  10 月 16 日に Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。 

BCG が作成したクラウドへの移行: APAC の主要 6 か国が経済を上昇気流に乗せるには(Ascent to the Cloud: How Six Key APAC Economies can Lift-off)というレポートによると、アジア太平洋(APAC)地域の各国では、パブリック クラウドの導入率が北米やヨーロッパを上回るペースで伸びています。このレポートでは、APAC の 6 つの主要な市場(オーストラリア、インド、インドネシア、日本、シンガポール、韓国)におけるパブリック クラウドの経済効果を調査しています。これらの市場におけるパブリック クラウドの普及率は、米国や西ヨーロッパとの比較では依然として低い水準ですが、成長率は高く(APAC の 25% に対して米国と西ヨーロッパでは 20%)、さらに伸びる可能性が高いと思われます。

クラウドは単なるデジタル変革をもたらすだけでなく、経済的にも影響を与えます。BCG では、これら 6 つの市場の 2019 年から 2023 年の GDP において、クラウドの導入による経済効果を約 4,500 億ドルと見込んでいます。経済成長による一次的な効果として、対象地域で約 42 万 5000 件の求人が発生する可能性があるほか、パブリック クラウド導入による二次的な効果として、経済の促進を担う主要産業で、さらに 120 万件の求人が発生すると予測されています。また、クラウド導入の促進とそれを支持する政策が整備された環境では、経済効果が 5,800 億ドルまで上昇し、一次的な効果による求人が 77 万件、二次的な効果による求人が 210 万件まで増加する可能性があります。

この調査の一環として、BCG ではクラウドの導入によって APAC の企業にもたらされる 6 つの主なメリットを特定していますが、これは全世界に展開するビジネスにも幅広く当てはまるものです。ここでは、BCG の調査で報告されたメリットについて詳しく説明します。


1. チームの生産性の向上

クラウドでは、スケーラブルなバックエンド システムと各種機能によって標準化された環境が生み出されるほか、実績のあるツール群へのアクセスも可能になります。これを活用してシステムを開発することで、多くの企業では、クラウドへの移行による IT 部門の作業効率が向上しています。その結果、顧客のターゲティングやコンテンツ開発、市場への新製品の投入といった価値の高いタスクに注力できるようになります。また、G Suite などの優れたコラボレーション ツールによって管理やコミュニケーションの効率が改善するほか、人工知能や機械学習などの高度なアプリケーションを活用して明瞭な分析情報をこれまで以上に迅速に入手できるようになるため、組織全体の生産性が向上します。

L&T Financial Services は、インドの地方部で暮らす人々に対して、簡単に利用できる金融サービスを提供する企業です。同社では、スタッフが効率的に協力して業務を進められるように G Suite を活用しています。Hangouts Meet を使用すれば、リアルタイムで従業員どうしのやり取りを行えますし、ドライブを使用すれば、よりシームレスで安全な情報共有が実現します。また、小口融資を行う際、顧客の信用度を管理する行動スコアの算出に BigQuery を活用しています。

L&T Financial Services で地方金融の最高責任者を務め、デジタル、IT、アナリティクスの各部門責任者も兼任する Sunil Prabhune 氏は、次のように述べています。「クラウドは、スケーリングとリーチを実現してくれるテクノロジーです。現在は地方のお客様について膨大な数のデータポイントを利用できるため、お客様ごとにカスタマイズされた優れた商品を提供できるようになりました。また、強力なコンピューティング能力を利用できるため、新規顧客への対応も効率的に行えます。当行の地方業務における貸出実行ベースの年平均成長率は、過去 3 年間で 60% を記録しています。」


2. 市場投入までの時間短縮

パブリック クラウドにより、問題の発生を直ちに警告するフェイル ファスト アプローチの構築が後押しされ、新しい製品やサービスを迅速に市場に投入できるようになります。修正が必要な問題が発生した場合は、迅速な対応が可能です。

たとえば、モバイルゲーム メーカーの Netmarble では、アナリティクスや機械学習といった高度なパブリック クラウドベースのツールを活用し、新しいゲームの開発やインフラストラクチャの管理、業務全体へのビジネス インテリジェンスの応用をサポートしています。また、生産性向上ツールを使用して、フロント オフィスとバックオフィスの両部門間でリアルタイムに共同作業を進めています。

同社のシニア バイス プレジデントを務め、Netmarble AI Revolution Center の責任者も兼任する Duke Kim 氏は、次のように述べています。「パブリック クラウドは、イノベーションに向けた当社のビジョンに合致するものであり、高度な人工知能と信頼性やスケーラビリティに優れたクラウド インフラストラクチャによって、これまで以上に優れたプレーヤー サービスの提供を後押ししてくれます。」


3. 優れたセキュリティとコンプライアンスが確保された環境の実現

パブリック クラウドの大手プロバイダでは、毎年数十億ドルもの予算をサイバー セキュリティに割り当てています。このような予算を独自に捻出できる企業は、ほとんどありません。そのため、パブリック クラウドを導入する主な理由として、セキュリティを挙げる企業が増加しています。

顧客やパートナーに新しい製品やサービスを取り入れてもらううえで、信用の構築と維持は重要な役割を果たします。Bank Rakyat Indonesia(Bank BRI)は、この点について認識し、2018 年に ISO 27001 認証を取得することにしました。同行は、東南アジア諸国連合(ASEAN)で情報セキュリティ準拠の認証を取得した最初の銀行です。現在では、フィンテックや保険会社、金融機関のうち、信用評価や不正検出に自社で対処する人的および財政的リソースを十分確保できない企業の多くが Bank BRI との提携に頼っています。また同行では、50 種類を超えるオープン API を通じてデータを有料で提供しており、信用評価や事業審査、リスク管理の実施を必要とする 70 社以上のエコシステム パートナーが利用しています。


4. 新しい製品やサービスの迅速かつ効率的なリリース

クラウドへの移行によって得られるコンピューティング インフラストラクチャにより、多くの企業では、新しい製品やサービスのリリースだけでなく、新たなデジタル製品やサービスの国際化も実現しています。つまり、パブリック クラウドを導入することで、ビジネスモデルを大きく拡大しているのです。

Australia Post では、近年宅配サービス事業に乗り出し、同社のデジタル ビジネスを小売り、旅行、金融サービス / ソリューションの各分野にまで広げています。同社では BigQuery を使用して郵送プロセスの各段階を可視性し、分析にかかる時間を短縮しています。現在では仕分け設備の状況をリアルタイムで確認できるため、郵送の流れを妨げる問題をほぼ瞬時に特定できます。これまで、このような情報は当日の業務終了時にならないと入手できませんでしたが、現在ではわずか 15 秒以内で確認できます。これは、実に 300 倍のスピードアップに相当します。

Australia Post で CIO を務める John Cox 氏は、次のように述べています。「ほぼリアルタイムでデータ分析を実施できるため、貴重なリソースを他のタスクに割り当てることができます。そのため、処理に要する時間が短縮され、多くのオーストラリアの人々に優れたサービスを提供できるようになり、常に信頼していただけるようになりました。」


5. 顧客エンゲージメントとエクスペリエンスの強化

企業の多くは、クラウドへの移行によって、ビッグデータ分析や機械学習など、高度なツールを利用できるようになるため、カスタマー エクスペリエンスを改善できます。またほとんどの企業が、新規顧客の獲得には、競合他社よりも優れた顧客エンゲージメントとエクスペリエンスを提供する必要があると感じています。その実現のためにクラウドに目を向けているのです。

DeNA では、パブリック クラウドベースの機械学習を活用して、同社が提供するモバイルゲーム「逆転オセロニア」の新規プレーヤーに対するエクスペリエンスを改善しています。初心者のプレーヤーに複雑なゲームのプレイ方法を競いながら、そして何より楽しみながら学んでもらえるように、同社では AI を使用して初心者向けのデッキ推奨システムと、プレーヤーのスキルレベルに合わせたスマート AI プレーヤーを開発しました。

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の AI システム部部長、山田憲晋氏は次のように述べています。「パブリック クラウドの導入により、Google Cloud が蓄積してきた AI の専門知識を活用できるようになりました。当社ではこれを利用して、ゲームの複数のコンポーネントを開発、配信しています。また、クラウドのオープンかつサーバーレスなテクノロジーにより、インフラストラクチャのスケーラビリティやコードのポータビリティを気にすることなく、当社の AI モデルをホストすることができました。」


6. コストの削減

クラウドの導入によってアーキテクチャを変革し、IT 管理部門を統合した場合、大幅かつ有意なコストの削減を実現できる可能性があります。小規模で完全自律型のアジャイルな IT チームの運用により、多くの企業ではコストの効率化が実現します。これにより、IT インフラストラクチャの管理ではなく、本来のビジネスに注力できるようになります。

クラウドに移行するまで、AirAsia ではオンプレミスのインフラストラクチャで独自の IT アプリとサービスを運用していました。この方法はメンテナンスに大きな労力を必要とするため、技術チームのメンバーがビジネスに付加価値をもたらすプロジェクトに注力できない状況を生み出していました。さらに、データファーストのデジタル航空会社への転換を目指す同社にとって、このインフラストラクチャでは迅速かつコスト効率よくスケーリングすることは不可能でした。そこで同社は、クラウドへの移行によって、必要なビジネスの俊敏性を実現できるだけでなく、運用コストを 5%~10% 削減できると予測しました。現在では、幅広いサービスの価格設定を最適化し、追加手荷物や座席数、食事数の需要予測を行うことで、さらなるコスト効率の向上を図れるように、機械学習の導入を検討しています。


クラウドによる APAC(およびすべての国)でのビジネスの改善

クラウドは、スケーラブルかつ柔軟なインフラストラクチャで、従量制によるコンピューティング サービスを提供します。このような特長から、APAC のデジタル変革を推進するうえで欠かせない要素となっています。パブリック クラウドを導入することで、企業は生産性の向上やカスタマー エクスペリエンスの改善、コストの削減、市場投入までの時間短縮を実現し、ビジネスの成長を促進します。また、大企業でも対応が難しい大規模なセキュリティ対策が提供される点も、パブリック クラウドが多くの企業から評価されている理由の 1 つです。

- By Rick Harshman, Asia Pacific, Google Cloud