コンテンツに移動
Google Cloud

COVID-19 パンデミックを共に戦い抜こうと奮闘する世界の中小企業

2020年11月11日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2020 年 10 月 30 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

世界のどこにいようと、例外なくすべての人が今後、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)がもたらした「ニューノーマル」に適応して暮らしていかなくてはなりません。最先端の AI テクノロジーを使って医療研究を加速する取り組みや遠隔医療を実現させて医師や患者を守る取り組みなど、企業や組織のさまざまな取り組みから、Google は多くのことを学ばせていただいております。Google Cloud の中小規模ビジネス(SMB)のお客様は、新しいものを作り出して世界中の政府機関や組織をサポートしようと奮闘しています。ウイルスとの戦いに打ち勝つ勇気を与えてくれる、これらのお客様の取り組みをいくつかご紹介します。

何百万人の人に今すぐ必要な情報を届ける

COVID-19 によって、情報を求める人の数が激増し、医療サポート センターに問い合わせが殺到しました。一方で、「社会的距離」措置により、従来の顧客サポート システムが混乱をきたし、コールセンターのスタッフは安全が強化された新しい方法を模索しながら、困っている人々に引き続きサポートを提供しなくてはなりませんでした。市民に情報を提供し続けるためのソリューションが必要なことは明らかでした。そこで、Landbot.ioClustaar は起業家や企業、政府機関とすばやく連携して対応に乗り出しました。

スペインのスタートアップである Landbot は、ウェブサイトの閲覧中に必要な情報をすばやく簡単に見つけることができるソリューションを開発しました。ノーコード ソリューションの Landbot は、ウェブと一般的なメッセージング プラットフォームの両方に簡単に実装でき、会話形式のプロンプトでユーザーが必要とする情報を把握できる、対話型、適応型のメッセージ スレッドを提供しています。パンデミックが始まって以降、アイルランドのオンライン薬局や米国の病院から、シリアの COVID-19 公式コミュニケーション チャネルに至るまで、世界中の組織が有料あるいは無料の Landbot を使って一般市民に緊急情報を伝えてきました。Landbot はこれまでに 2 億 8,000 万通のメッセージを自動作成し、2,000 万人を超えるユニーク ユーザーからの緊急リクエストに対応しています。これは、Landbot.io が成長し、Google の構築に使用されたのと同じツールとインフラストラクチャを使ってより多くのリソースを開発し続けられるように、Google Cloud スタートアップが無料クレジットを提供したことで実現しました。

また、フランスでは Clustaar が、地方自治体やメディアのウェブサイトに送られてくる医療や行政に関する大量の問い合わせを処理するために開発した最前線用 chatbot を使って、カスタマー サポート部門にのしかかる重圧を軽減しています。Google Cloud スタートアップ プログラムのサポートを受け、Clustaar では 150 万人を超える人々から寄せられる 800 万件以上の問い合わせを処理できるようにアーキテクチャをスケールしました。

遠隔医療や医療研究を可能にする

COVID-19 による重症化リスクが特に高く、健康状態を頻繁にモニタリングする必要のある人々にとって、ロックダウンは新たな課題を生みました。つまり、外来通院が難しくなってしまったのです。糖尿病患者がウイルスから身を守るために自己隔離するように求められていたとき、SocialDiabetes は自宅で 24 時間 365 日モニタリングを続けられるアプリを開発しました。無料でダウンロードできるこのアプリでは、リアルタイムでモニタリングと診断を行い、血糖値計と連動させることで患者の血糖値データを自動収集できます。患者が許可すれば、収集した情報を医師に送信することもできるので、医師側も、離れた場所からこれまでと同じように患者の相談に乗ったりアドバイスしたりすることが可能です。SocialDiabetes には、医師と患者がリモートでつながりを保ちやすいように、ビデオ会議やチャット システムが備わっています。Google Cloud スタートアップのサポートを受け、SocialDiabetes では COVID-19 のパンデミック中、この重要なプラットフォームを HCP として無料で使用できるようにしました。

医学界が懸念するもう一つの問題は、COVID-19 以外の生物医学や他の疾患領域の研究開発が、研究所の封鎖や臨床実験の遅延、科学分野の資金再分配によって、後れを取ってしまうのではないかということです。こうした問題に対処しようと、英国を拠点とする AI スタートアップである Biorelate が、同社の主力製品であるブラウザ対応の詳細検索ツール、Galactic AI を、研究者が無料でアクセスできるように開放したことで、研究者はデスクにいながら既存の生物医学研究データをこれまで以上に活用できるようになりました。ソリューションのスケールに有用な Google Kubernetes Engine を使えば、さまざまなソースから集めた 3,000 万を超える生物医学研究資料を自動で取り込み、世界中の科学的成果のデータをキュレートしてつなぎ合わせることで、隠れた分析情報を引き出すことができます。長期計画を展開中の同社は、創薬を専門とする研究者の登録を増やし、学術研究員ができるだけ長く Galactic AI を利用し続けられるようにしようと取り組んでいます。

一般市民に真実を伝え続ける

一方で、COVID-19 に関する過剰な情報に晒されることも、一般の人々にとっては違った意味で問題です。2020 年の 1 月から 4 月の間に公開された COVID-19 に関するソーシャル メディアの投稿は 1 億件、ニュース記事やブログ投稿などの長文形式のドキュメントは 2,500 万件を超えました。そうしたドキュメントの中には、医療専門者が発表した重要な勧告だけでなく、生命を危険に晒しかねない陰謀説や誤った情報もありました。メディアや一般市民による関心が急激に高まったことで、オンラインの誤った情報と戦う AI 搭載プラットフォーム、Logically のワークロードの数は、通常の月の 10 倍に跳ね上がりました。需要の急増への対処を迫られた Google Cloud は、Logically をグローバル Google Cloud プレミア パートナーである Searce に接続し、Google Kubernetes Engine(GKE)を使ってすばやくスケールアップしました。Searce を利用することで、プリエンプティブのノードプールとオンデマンドのノードプールを組み合わせて Google Cloud 上に実装し、費用対効果の高い方法でスケールすることに成功しました。新しくなったアーキテクチャで Logically は、COVID-19 に関するオンライン情報のファクト チェックを望むユーザーや公共部門のパートナーに優れた可用性を提供できるようになっています。パンデミックに関する誤った情報の拡散を防いで、世界の 10 億人を超える人々の情報環境を改善しようと、同プラットフォームでは 50 万件の虚偽の投稿や記事を特定し、ソーシャル メディアでの bot が関与したインスタンスは 1,300 万件にのぼることをパートナーに警告してきました。

コーディングなしでパンデミックに対応する

Faces Advendurance は、冒険イベントや耐久スポーツ イベントを企画する南アフリカの企業です。こうしたイベントに参加できることこそが、パンデミックの最中に多くの人が求めていた平常であり、ウイルスが拡散するにつれて、同社は参加者の安全を確保する環境づくりに注力することにしました。同社では、登録とロジスティックの新しいプロセスをすばやく構築するために、Google Cloud のコード不要アプリ開発ソリューションである AppSheet に着目しました。

Faces Advendurance の情報システム マネージャーである Hennie Scheepers 氏は、自身をプログラマーとは捉えていませんが、AppSheet を使って迅速にアプリを作成し、エントリー プラットフォームからオンラインで事前登録を済ませたレース参加者のデータを Google スプレッドシートにインポートしておき、参加者がレース会場に到着した際にボランティアがスマートフォンで管理できるようにしました。これにより、イベントやレースごとの人数を制限しつつ、COVID 規制を遵守することがはるかに簡単になりました。Faces Advendurance では、近距離無線通信による自動認識技術(RFID)のタイミング システムを採用しています。これはレース参加者に渡された追跡コード付きタグを、参加者がフィニッシュ ラインをまたいだ時点で RFID リーダーが自動的に読み取るというものです。参加者の結果はスプレッドシート上で自動的に更新され、レースの主催者がアプリで結果をリアルタイムで確認できるようになっています。

2020 年 9 月に行われたイベントで、Scheepers 氏は次のように述べています。「これ以上ないほどうまくいきました。新しい登録システムについて、参加者の皆様から数多くのお褒めの言葉をいただきました。」

AppSheet チームは、医療機器の総合的なメンテナンス ソリューションのプロバイダである USMEDIC をはじめとする各企業と提携し、医療機器の追跡および管理システムを構築、デプロイして、COVID-19 に対応する医療組織をサポートするなど、さまざまな方法で積極的にパンデミックへの対応を進めてきました。

ウイルス拡散を阻止するために共同で取り組む

フランス繊維業界は、Comité Stratégique de Filière Mode & Luxe の指揮の下に結束し、マスクや医療用ガウン不足を解消するために生産ラインを変換することで、差し迫る景気後退に直面しながらも収入源と雇用を維持しています。こうした人たちを支えているのが、Savoir Faire Ensemble という、マスクや医療用ガウンの縫製が可能なプロであれば無料で登録できるウェブ プラットフォームです。パンデミックのピーク時にこうした製品が必要になれば、このプラットフォームを通して簡単にサプライヤーに直接注文できるようになっています。現在 Savoir Faire Ensemble に参加している企業は約 1,500 社で、パンデミック中の作業をサポートするために、1,500 を超える Google アカウントが無料で開設されました。同コンソーシアムは Google Workspace のコラボレーション ツールとコミュニケーション ツールを使って、サプライヤーの作業を調整し、購入者や会員候補者からの質問に応えています。Google スプレッドシートを閲覧する会員の数は毎日数百人にのぼり、コンソーシアムのウェブサイトで行われるすべての注文を表示し追跡するために使われています。Savoir Faire Ensemble は現在フランス最大の繊維および衣服コンソーシアムに成長し、パンデミックが始まって以降、9,000 万枚のマスクと 1,200 万枚の医療用ガウンを生産しています。

イタリアでは COVID-19 への対応において、全国の専門家がリアルタイムで連携できるような新しいプロトコルや手順、ツールの必要性もまた強調されていました。救急医療チームによるこうした連携が実現するように、イタリアの麻酔蘇生疼痛および集中治療学会である SIAARTI は、こうした分野のガイドラインや臨床プロトコルを作成しました。Biotest Italia のサポートを受け、学会は COVID-19 に関する知識を共有するために、まず採用しやすい治療プロトコルから始めて、病院を同じ地域、地方、全国単位でグループ化できる多機能通信プラットフォームを構築しています。SIAARTI は、情報の交換に Google Currents を使い、Google フォームで収集したデータを Google データポータルで分析し、Google Meet を使ってトレーニングと会議を行うことで、COVID-19 のガイドラインと記事を集めたリポジトリを作成し、イタリアの医療従事者の間でプロトコルやその他の機密データを安全に共有することに成功しています。

科学コミュニティによる治療法の探求を支援する

COVID-19 によって世界は一見停止しているかのように見えますが、科学コミュニティは今、ウイルスに関連した研究成果をどんどん発表し、治療が必要な人にできるだけ多くの知見を届けようと時間との戦いに挑んでいます。こうした取り組みをサポートしているのが、英国を拠点とする企業、Causaly が開発した生物医学研究検索ツールです。このツールは、生物医学に関する新しい予測を迅速に出せるよう、世界中の科学文献に機械学習を適用して、研究論文中に埋没している重要な証拠をこれまで以上にすばやく見つけ出します。Causaly の AI プラットフォームは、ベータコロナウイルス属に関してこれまで報告されたすべての薬剤をすばやく識別でき、従来の文献論評検索では見つけることができなかった関係を見つけ出すことができます。Google Compute Engine を使って自然言語処理パイプラインを実行し、すべての分析結果が入ったグラフ データベースをホストするこのプラットフォームは、人工知能を活用して 3,000 万件もの生物医学文献の中から証拠をすばやく読み取って解釈し、瞬時に公開できるので、研究者は疫学データやバイオマーカー、遺伝子、治療標的の分子を迅速にマッピングできることはもちろん、候補となる治療法を特定することも可能になります。Causaly の AI プラットフォームは 2020 年 4 月の時点で、CORD-19(COVID-19 Open Research Dataset)の一部として公開された 4 万件の COVID-19 論文と 3,000 万件の既存の生物医学関連の出版物を分析しました。そこから今後の COVID-19 研究治療に役立つ可能性の最も高い 250 の化合物を特定し、研究者が情報をすぐにダウンロードして利用できるようにしました。Causaly のデータセットはまた、今後の COVID-19 研究に役立てられるように、Global Health Drug Discovery Institute(GHDDI)に提供されています。

こうした中、Google Cloud は、奮闘している企業をはじめ多くの企業に必要なツールを提供することで、革新的なソリューションを世に出すお手伝いを続けています。パンデミックの間はもちろん、収束した後も、お客様の取り組みを微力ながらも後押しできるよう、今後も取り組んでまいります。

-Google Cloud EMEA SMB 販売担当責任者 PJ Dwyer

投稿先