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DevOps & SRE

2023 年の State of DevOps Report: 組織文化の重要性

2023年10月19日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 10 月 6 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

デジタル トランスフォーメーションが急速に進むなか、ソフトウェア デリバリーを成功させるには、ポジティブな組織文化とユーザー重視の設計が重要となります。また、近年テクノロジー分野では AI が話題の中心になっているものの、AI 開発ツールがチームに及ぼす影響はまだそれほど大きくありません。

これらは 2023 年の Accelerate: State of DevOps Report で報告された調査結果の一部です。このレポートは、Google Cloud の DevOps Research and Assessment(DORA)チームが毎年公表しているものです。

State of DevOps の調査では、9 年間にわたり、世界中の 36,000 人を超える専門家からデータを集めています。この調査は、同種の調査としては最大規模かつ最も長く続いているものとなります。今年は、DevOps で高い成果を出している方々が、技術、プロセス、組織文化に関する能力をどのように開発手法に組み込み、成功を収めているかを探りました。具体的には、DevOps 手法を取り入れることによりもたらされる以下の 3 つの主な成果と、その達成に貢献する能力を調べました。

  • 組織的なパフォーマンス - 顧客やコミュニティに価値をもたらす
  • チームのパフォーマンス - チームのイノベーションとコラボレーションを支援する
  • 従業員の健康 - 燃え尽き症候群を減らし、満足度 / 生産性を高める

今年は自発的な回答者数が昨年比で 3.6 倍に増加したため、確固としたデータセットに基づいて、業務の進め方とその成果の関係をより深く分析することができました。調査にご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。

ソフトウェア デリバリーのパフォーマンス評価

DORA の調査では、組織のソフトウェア デリバリーのパフォーマンス レベルから、全体的なパフォーマンス、チームのパフォーマンス、そして従業員の健康状態を予測できることがわかっています。そこで、ソフトウェア変更のスループットと安定性を把握するために、次の指標を使用しています。

  • 変更のリードタイム: コードの変更を commit してからデプロイするまでの時間
  • デプロイの頻度: 変更を本番環境に push する頻度
  • 変更のエラー率: ソフトウェアのデプロイによりエラーが発生し、すぐに対処する必要が生じる頻度
  • デプロイ失敗の復旧までの時間: デプロイの失敗時に復旧にかかる時間

今回の分析では、4 つのパフォーマンス レベルが明らかになりました。これには、昨年のコホートでは確認できなかった「エリート」レベルも含まれます。「エリート」レベルに到達している世界中の組織は、スループットと安定性の両方を実現できています。

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5 つの主な分析情報

ソフトウェア デリバリー能力を向上させる方法を理解したいチームにとって、重要ないくつかのポイントがあります。今年のレポートから得られた主な分析情報を以下にご紹介します。

  1. 健全な組織文化を確立する

組織文化は、技術力を築き上げ、技術的パフォーマンスを高め、組織のパフォーマンス目標を達成し、従業員の成功を支援するために不可欠です。組織文化が健全であれば、燃え尽き症候群を減らし、生産性を高め、仕事への満足度を高めることができます。メンバーが受け入れられていると感じ、帰属意識を持てる、生成的な文化のあるチームは、生成的な文化がない組織と比べ、組織のパフォーマンスが 30% 高くなっています。

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従業員の健康改善につながる組織文化の側面

2. ユーザーを念頭に置いてビルドする

望みどおり迅速かつ効果的にデプロイできたとしても、ユーザーのことを考えていなければ意味がありません。DORA の調査では、ユーザー重視のアプローチでアプリケーションやサービスをビルドしているかどうかが、組織全体のパフォーマンスを予測するうえで特に重要な要素であることが明らかになっています。ユーザーを念頭に置いてビルドすることで、DORA の調査対象である技術、プロセス、組織文化のすべての能力にわたり、改善を実現して推進していくことができると思われます。ユーザーを重視するチームは、重視しないチームと比べて 40% 高い組織的パフォーマンスを達成しています。

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3. 質の高いドキュメントで技術的機能を強化する

質の高いドキュメントは、DevOps の技術的能力(継続的インテグレーション、トランクベース開発など)が組織のパフォーマンスにもたらす効果を高めてくれます。つまり、質の高いドキュメントは、こうした技術的能力を確立するだけでなく、その重要性を高めるうえでも役立つということです。たとえば、質の高いドキュメントがある場合、SRE の取り組みが組織のパフォーマンスにもたらす効果は 1.4 倍になると予想されます。全般的に、ドキュメントの質が高い場合、質が低い場合と比べてチームのパフォーマンスが 25% 高くなります。

4. 仕事を公平に配分する

マイノリティとされている人や、女性、ジェンダーを自己決定している人は、燃え尽き症候群に陥る可能性が高いことがわかっています。その原因として、構造的、環境的な複数の要因が考えられます。反復作業を多く引き受けている回答者は、燃え尽きの程度が大きくなる傾向があり、またマイノリティ集団のメンバーは、より多くの反復作業を引き受ける傾向があるという結果は予想どおりでした。マイノリティの回答者は、マイノリティではない回答者と比べて、燃え尽き症候群の報告が 24% 多く、反復作業の量が 29% 多くなっています。また、女性や、ジェンダーを自己申告している人々は、男性と比べて 40% 多くの反復作業を行っています。

5. クラウドでインフラストラクチャの柔軟性を高める

迅速な弾力性、オンデマンドのセルフサービスといったクラウドの特性を生かすことで、チームはクラウドのメリットを最大限に享受できます。こうした特性から、インフラストラクチャがより柔軟であることを予測できます。たとえば、パブリック クラウドを使用した場合、クラウドを使用しなかった場合と比べてインフラストラクチャの柔軟性が 22% 高くなります。この柔軟性により、インフラストラクチャの柔軟性が低い場合と比べて、組織的パフォーマンスを 30% 高めることができます。

AI はまだ初期段階

AI を活用した開発ツールに対する期待が高まっています。今年の調査結果からもそのことがわかります。実際に回答者の過半数が、調査対象となった作業にある程度の AI を取り入れています。しかし、AI ツールが業界全体で広く協調的に使われるようになるまでにはまだ時間がかかると DORA は考えています。今後どのように導入が拡大していくのか、組織が重視するパフォーマンス指標や成果にそれがどう影響するのかについて、DORA は強い関心を寄せています。現時点での AI ツールの導入状況は以下のとおりです。

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DORA の分析情報をお客様のコンテキストに適用

DORA による調査からわかる重要ポイントは、高パフォーマンスを実現するには継続的な改善が必要であるということです。組織、チーム、従業員の成果を定期的に測定しましょう。また、最適化が可能な領域を特定し、段階的に変更を加えることで徐々にパフォーマンスを高めていきましょう。

ここでご紹介した分析情報をぜひ活用してください。チームの現在の手法や課題に合わせて、この調査結果を取り入れてください。ボトルネックについては率直に話し合いましょう。指標は、他社と比較するよりも、自社の前年のデータと比較するほうが有効です。持続可能な成功は、弱点を特定して修正を繰り返すことで実現します。DORA のフレームワークは、お客様がパフォーマンスを大きく向上させるために、次に重視すべき能力を判断するの役立ちます。

この「Accelerate: State of DevOps Report」が、さまざまな規模、業界、地域の組織で DevOps 機能の向上に役立つことを願っております。皆様のご意見やご感想をお待ちしております。このレポートと Google Cloud での DevOps の導入についての詳細は、以下をご参照ください。

- DORA リサーチ担当リーダー Derek DeBellis

- デベロッパー アドボケイト Nathen Harvey

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