データベース

Endear、AlloyDB を利用して大量のデータソースをシームレスに統合

2024年8月1日

JP Grace

CTO, Endear

Gemini 1.5 モデルをお試しください。

Vertex AI からアクセスできる、Google のもっとも先進的なマルチモーダルモデルです。

※この投稿は米国時間 2024 年 7 月 19 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: Endear は、高度なパーソナライズと顧客の分析情報の提供を促進する、オムニチャネルの顧客管理（CRM）プラットフォームです。既存のデータベースでは増大する需要に対応できなくなった同社は、堅牢でスケーラブルなソリューションに移行する必要があると考えました。現在、Endear は AlloyDB for PostgreSQL を利用しています。この Google Cloud のフルマネージドデータベースサービスにより、小売ブランドに高度なソリューションを継続的に提供するために必要なパフォーマンス、スケーリング、可用性を獲得できます。

ビッグデータを処理する Endear の小規模なチームにとって、CRM テクノロジーの最前線に立ち続けるというビジョンの鍵となるのは、適応性とスケーラビリティです。当社の業務では、e コマースプラットフォーム、POS システム、マーケティングプラットフォーム、カスタマーサービスプラットフォーム、ロイヤリティプラットフォームなど、複数のサイロから顧客データを集約して統合する必要があります。

こうした環境では、クライアントに実用的な分析情報をリアルタイムで提供するために、データを正確、安全、効率的に処理しなければならないという多面的な課題が生じます。当時のデータベースサービスでは、この課題に本格的に対処するのが困難になってきたため、技術革新、戦略的予測、オペレーショナルエクセレンスに関する当社の基準を満たす新たなソリューションの選定に乗り出しました。

CockroachDB や複数の Google Cloud サービスを含む各種データベースソリューションを検討しましたが、高度なデータマネジメント機能とスケーリング機能が決め手となり、最終的には AlloyDB を採用することにしました。それ以降、このソリューションが当社のデータ戦略の基盤となっています。

Google Cloud を採用した経緯

何年も前のことですが、Endear のデータベースソリューションとして Cloud SQL を導入しました。このソリューションが、当社のワークロード要件と予算に合致していたためです。会社の成長に応じてアーキテクチャを拡大していくなかで、Cloud SQL では対応できなくなっていることに気づきましたが、それでも料金とスケーラビリティの面で Google Cloud が最適であることは変わらないという事実が間もなく明らかになりました。

選定プロセスでは、費用、パフォーマンス、柔軟性、運用の簡易性に注目し、さまざまなベンダーのソリューションを評価しました。そのなかで、当社のニーズを満たしながら最適なバランスを提供するソリューションは AlloyDB だけでした。たとえば、CockroachDB にはスケーラビリティがありましたが、その料金構造は時間の経過に応じて費用がかさんでいくものでした。また、強整合性と水平方向のスケーラビリティで知られる Spanner や、分析ワークロード向けの高スループットとスケーラビリティで人気の Bigtable も評価しました。いずれも高性能なプロダクトでしたが、AlloyDB の機能の組み合わせの方が、当社に固有のワークロードパターン向けのパフォーマンスを発揮できるという点で適していました。

最終的に、AlloyDB に移行して会社の成長に対応するという決断を下しました。AlloyDB は PostgreSQL との互換性を備えているため、1 秒あたり数千トランザクションのスケーリングが可能な、標準ベースのオープンなリレーショナルデータベースを構築できました。しかもそのパフォーマンスは、多くの場合は高額な専用ソリューションでしか達成できないようなレベルにありました。また、フルマネージドサービスであるため、プロビジョニング、スケーリング、メンテナンスで発生する運用上のオーバーヘッドも大幅に削減されました。さらに、Google Cloud のエコシステムに関する知識を活かして短期間で使い方を習得し、一貫性のある技術スタックを実現できました。常に Google のネットワーク（VPC）内で処理されるため、接続のセキュリティとプライバシーを確保できるだけでなく、インターネットを介してサードパーティのサービスと通信する場合に発生する追加のレイテンシ、費用、複雑性を回避することもできます。

AlloyDB への円滑な移行

Google Cloud の Database Migration Service がほとんどの作業を担当者に代わって実行してくれたおかげで、Cloud SQL から AlloyDB への移行は驚くほどシームレスでした。最初に、既存の Cloud SQL データベースにレプリケーションスロットを設定し、新しい AlloyDB クラスタをポイントするようにしました。これにより 2 つのデータベースの間にリアルタイムのデータ同期を確立し、移行時のデータ損失を回避できました。

次に、PostgreSQL の接続プーラーである PgBouncer を使用してデータベース接続に対応しました。その結果、Secret Manager で接続文字列を迅速に入れ替え、古い Cloud SQL データベースからのトラフィックを新しい AlloyDB にリダイレクトできるようになったため、ダウンタイムは発生しませんでした。また、新しい AlloyDB データベースで徹底的なパフォーマンステストを実施し、当社のワークロードとパフォーマンスの要件を問題なく処理できることも確認しました。

残りの作業は、AlloyDB をプライマリデータベースとして使用するようにアプリケーションの設定を更新し、新しいデータベースの稼働を開始することだけでした。移行作業は最初から最後まで快適で、運用に及ぼす影響を最小限に抑えながら AlloyDB の使用を開始できました。最も重要な点は、当社のブランドが重視するカスタム機能の構築をいち早く再開できたことです。

今になっても、AlloyDB を選択して正解だったと考えています。導入からわずか 1 年後、次のような大幅な改善が見られたからです。

6 倍の接続数: 昨年は、1 つの PgBouncer 接続プールで約 400～500 の接続を提供していました。現在では、1 つの AlloyDB クラスタで 3 つの PgBouncer 接続プールを使用し、それぞれが平均で 1,000 をわずかに下回る数のデータベース接続に対応しています。
1 秒あたり 6 倍のトランザクション数: 現在のピーク値は、プライマリクラスタで 1 秒あたり約 5,000 トランザクション、読み取りクラスタで 1 秒あたり 10,000 トランザクションです。移行前は、実行可能なトランザクションは 1 秒あたり約 1,500 にとどまっていました。
驚くほど高速な応答: AlloyDB ではワークロードを簡単に維持してスケーリングできるため、P99 の集計クエリレイテンシを 10 ミリ秒以内に抑え、エンドユーザーに優れたエクスペリエンスを提供し続けることができます。

Google Cloud ファミリーとの連携

当社のプラットフォームでの各種アプリケーションとユースケースのサポートにおいては、マネージドデータベースが重要な役割を果たしているため、AlloyDB は当社のデータアーキテクチャに最適でした。アプリケーションとインテグレーションのデータを処理する AlloyDB に加えて、以下の Google Cloud サービスも利用しています。

Google Cloud のマネージド Elasticsearch クラスタ: アプリケーションの検索機能とオーディエンスセグメンテーションを強化します。
BigQuery: 強力なデータウェアハウス機能により、大規模なデータセットでの複雑なクエリの実行を可能にします。
Firestore: リアルタイムのデータベース機能を提供し、アプリ全体でシームレスな同期と即時更新を可能にします。
Pub/Sub: リアルタイムメッセージングを実現します。
Google Cloud Storage: 耐久性と可用性の高いオブジェクトストレージを提供します。

Google のデータクラウドのマネージドサービスを戦略的に利用することで、データマネジメントとスケーリングの複雑性に対処する必要がなくなり、お客様への価値の提供に注力できるようになります。

お客様のための未来に向けたプラットフォーム構築

当社が先を見据えて重視している領域は、運用面でのアジリティの維持、発生した段階での課題への対処、新機能とのシームレスな統合です。

なかでも画期的なのは、当社のソリューションに AI を統合する計画でしょう。AI には固有の要件があり、特にデータのストレージ、処理、分析機能においては多くが求められます。Google Cloud のデータベースは、アプリケーションと AI モデルの間でシームレスなデータの流れを確保するために役立つだけでなく、データマネジメントと分析のための高性能なツールとセキュリティ機能も備えています。たとえば、当社は意思決定を促進する AlloyDB の機能に関心を寄せています。AlloyDB によって集約クエリが高速に実行され、その結果をスムーズに利用できるため、小売店の担当者がより多くの決定を直接下すことができるようになります。

継続的な成長とイノベーションという当社のビジョンは、Google Cloud のデータベースによってもたらされる機能およびサポートと密接に結び付いています。当社にとって Google Cloud は、単なるプラットフォームではなく、AI などの新たなテクノロジーを活用する取り組みのパートナーであり、未来の課題への対処と新たな可能性の発掘を支援してくれる存在です。Google Cloud がもたらす強固な基盤のおかげで、当社は自信をもって調整とスケーリングを行い、業界をけん引することができています。